人間強度が下がらなかった話   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ。
何とか久しぶりに一日二話投降ができそうです(^^

今回のエピソードは、暦君の一人語という形になります。
相変わらずちっさい妹が色々な意味で元気一杯(むしろ暴走気味かも)ですが、どうやらもう一人の妹も登場するみたいですよ?





[007] ”姉妹語”

 

 

 

「お兄ちゃん、それはきっと……ううん。間違いなく”恋”だよ」

 

4月29日土曜日午前9時ちょっとすぎ……僕の膝の上に跨り、浴衣の帯を解いてトロンと酔った様な、あるいは濁った目で僕を見つめる、愛らしい半裸のちっちゃい方の妹はそう告げた。

 

「それはどういう経緯で、そう帰結したんだ?」

 

月火ちゃんは僕の手を取ると、

 

”ぺにょ”

 

再び自分のささやかな膨らみの胸に押し付けた。

 

「今度は先っちょを摘んだらメッ!だよ? 今度されたら、わたしイッちゃうと思うから。お兄ちゃんの膝の上で盛大にお漏らししちゃうかもしれないよ? そうしたらお兄ちゃんが掃除&お母さんへの言い訳だからね?」

 

「わ、わかった。気をつけるよ」

 

うん。確かに月火ちゃんと遊んでてお漏らしさせちゃいましたと母さんに告げるのは、色々と怖いな。

気をつけるとしよう。

 

だから僕はマッサージするようになるべく優しく月火ちゃんの胸を揉む。

手を離すという選択肢もあるのだけど、僕の手の上から月火ちゃんの手が押さえ込むように添えられてるので、振り払うという動作が必要になってしまう。

相談に乗ってもらってる手前もあるし、月火ちゃんにそんな失礼なことはするべきではないと思うのは当然だよな?

 

そう言えば、僕は何で敏感な先端を摘み捻ったりしたのだろう?

無意識の行動だったけど、一連の動きがまるでプログラムされていたように自然な流れだった。

 

「いいよぉ。お兄ちゃん続けて」

 

うっとりした表情で月火ちゃんは告げる。

気持ちよさそうで何よりだ。どうやら今度は正解だったらしい。

下着を内側から濡らして透かした液体はとっくにパンツという堤防を決壊させて僕のズボンまで濡らしているけど、今更どうということもない。

月火ちゃんがベッドにもぐりこんできた翌朝のシーツは、大体こんなシミができてるのだから。

多分、月火ちゃんは兄である僕に甘えたい盛りなのだろう。

いつかはこれも無くなるかと思うと、少し寂しい。

 

「僕はいつまでたっても妹離れできない駄目な兄なのかもな」

 

「お兄ちゃんはそんなこと考えなくていいんだよ♪」

 

「そっか? まあ、月火ちゃんがそういうなら」

 

それよりも話を元に戻そう。

 

「え~っとさ、月火ちゃんは何を根拠に僕が羽川に恋してるって思ったんだい?」

 

「お兄ちゃん、わたしのおっぱい触ってて気持ちいい?」

 

「ああ、うん。もちろん」

 

「お兄ちゃんは私が好き。私の小さな胸が好き。平たい胸が好き。ここまではいい?」

 

「ああ。何一つ間違って無いな」

 

あれ?

なんかこのフレーズ、いつかどこかで……というか毎日聞いてる気がするな……

どんな時に聞いてるか不思議と思い出せないけど。

 

「でも、羽川さんの胸は大きいよね?」

 

「ああ。それも間違いなく」

 

春休みのとき、()()()()()確かめたから間違いない。

あの大きな胸に比例した大きな勇気を羽川がくれたから、僕は今でもこうして生きていられると信じている。

 

「でもお兄ちゃんの好みからすれば、本来なら大きなおっぱいは外れてるはずなんだよ」

 

「そ、そうなのか? でも火憐ちゃんのおっぱいは年齢から考えれば大きいと思うけど……」

 

「火憐ちゃんは私と同じく”妹”枠だからだよ。それに身長もあるから胸が目立つわけじゃないし」

 

「それもそっか」

 

そういえば火憐ちゃん、もう僕より身長あるもんな……

確かに身長との対比で言えばそれほど大きいとは言えないかもしれない。

 

「わたしの分析だと、羽川さんにも同じことが言えるはずなんだよ」

 

「どういうこと?」

 

「お兄ちゃんは大きなおっぱいに惹かれたんじゃなくて、()()()()()()()()()()()のおっぱいだから惹かれた、だから揉みたいって考えてるんじゃないかな?」

 

……

………

…………なるほど!

 

「それは盲点だった! さすが月火ちゃん! ファイアーシスターズの参謀担当! 見事な分析だっ!」

 

「もっと誉めてよいのだぞ♪」

 

「お兄ちゃん、出来のいい妹がいて幸せだよ!」

 

「う・ふ・ふ~。こう見えて、お兄ちゃんプロファイリングの第一人者を自負してるからね☆」

 

すると月火ちゃんは僕がソファの端に立てかけていたロッドケースを見ると、

 

「もしかしてお兄ちゃん、フライフィッシングに行くつもりだったの?」

 

「うん。特にやること無いし、取り合えず管理釣り場にでも行こうかと」

 

マウンテンバイクで二時間も走れば、馴染みの釣り場に着くし。

 

「駄目駄目だよ、お兄ちゃん!」

 

「えっ? なんで?」

 

「お兄ちゃんは羽川さんに恋してます! はい、これ決定! わたしが決めました!」

 

「そっか。月火ちゃんに決められたら仕方ないな」

 

「そうそう。だからね、お兄ちゃん……せっかくのゴールデンウィークの初日、羽川さんを誘ってデートでもするべきだって思わない?」

 

「で、デート!?」

 

月火ちゃんはいきなり何を言い出すんだっ!?

 

「そんな……女の子をいきなりデートにさそうなんて、僕にはハードルが高すぎるクエストだ……」

 

「あ~、もう! お兄ちゃんは初心(うぶ)で可愛いなぁ~♪ 本当に食べちゃいたいくらいだよぉ」

 

”CHU”

 

月火ちゃんの唇の感触がすっごく暖かい……

 

「でもね、そんな可愛いお兄ちゃんだからこそ、わたしは心を鬼にしてミッションを言い渡します! お兄ちゃん、羽川さんとデートしてきなさい!」

 

「ええっ!?」

 

「これはね、一種の”DATE OR ALIVE”なんだよ? 羽川さんとデートしてくるまで、わたしはお兄ちゃんを家に入れてあげません」

 

「それは困るな……」

 

すると月火ちゃんはクスッと笑って、

 

「大丈夫だよ、お兄ちゃん。デートに失敗したって、羽川さんと恋人同士になれないとしたって……わたしはこの家にいるんだから。恋人は分かれたら友人か他人になるけど、妹はいつまでも妹なんだからね?」

 

「月火ちゃん……」

 

月火ちゃんの優しさが、胸にしみるよ。ホント。

 

「では、お兄ちゃん」

 

月火ちゃんは僕の膝から降りると、

 

「お風呂の支度してくれる?」

 

「ああ! 任せとけ!」

 

「一緒に入って、わたしのこと洗ってくれる?」

 

「相談に乗ってもらったお礼だ! 隅々まで洗っちゃうぜ!!」

 

「うふふ♪ お兄ちゃん、大好きだよ☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**************************************

 

 

 

 

 

さてさて、月火ちゃんとのお風呂タイムも終えて僕は家を出る準備をする。

さっきまで着てた服は、月火ちゃんの匂いが染み込んでいたので少々外出には向かなくなってしまった。というわけで洗濯機送り。

変わって今の服は、お風呂上りの艶々の月火ちゃんに”オサレ服”とやらを選んでもらったものだ。

実の妹にデート服のコーディネイトまでしてもらうなんて我ながら駄目な兄貴だと思うが、どうにも僕はファッション自体に疎くてしかもセンスが無いらしい。

 

実際、僕が服を買うときは月火ちゃんと一緒に出かけて選んでもらってるので、ある意味、これは自然な流れともいえる。

火憐ちゃん?

火憐ちゃんも僕同様にファッションにあまりこだわりも興味もなく、どちらかと言えば機能性重視なのでスポーツ・アイテム&グッズ担当かな?

だから僕が持ってるスポーツウェアは全部、火憐ちゃんが選んでくれたものだ。

 

育にはいつも呆れられていたが、人間には向き不向きというものがあるというものだ。

猫に小判、僕にファッション雑誌だ。

 

あっ、そういえば今でもたまに育とも一緒に買い物いくなぁ。

 

(ゴールデンウィーク中に戻ってきて、時間があるなら誘ってみるかな?)

 

多分、今回の釣行で色々と消耗して買い足すものもあるだろう。

こういう時、同じ趣味だと便利だ。

 

 

 

「あれ? 兄ちゃん、出かけるのか?」

 

噂をすればなんとやら。玄関で今度はおっきい方の妹こと火憐ちゃんとエンカウントだ。

 

「ああ。ちょっとな」

 

すると火憐ちゃん、僕の姿をじぃ~っと見て、

 

「ん? 兄ちゃんがなんとなくお洒落っぽい……月火ちゃんのコーディネイトか?」

 

「御名答」

 

うん。やっぱり僕のセンスじゃないってのが一目でばれた。

 

「兄ちゃんはラフなスタイルが基本だからなー。ワタシはあれはあれで嫌いじゃないゾ♪」

 

「そっかぁ~」

 

本当にいつも適当に着てるだけなんだけどな。

もしかしたら火憐ちゃんと僕は、服の趣味が似ているのかもしれない。

考えてみれば、火憐ちゃんが選んだウェアに外れは無いし。

 

「あっ、そうだ。火憐ちゃん、どんだけ走ってきたのかわからないけど、汗だくじゃん」

 

「おう。42.195km走ってきたぜ! 気分は聖火ランナーだな♪ ゴールデンウィークの初日を飾り、第二次東京五輪記念ってとこだ♪」

 

「フルマラソンっ!? 火憐ちゃん、聖火ランナーは42.195kmは走らないもんだぞ?」

 

「えっ? そうなのかっ!?」

 

「じゃなければ一般市民が参加できないだろ? 皆が皆、火憐ちゃんみたいにタフじゃないんだから」

 

「それもそうだな……兄ちゃんのお陰でまた一つ賢くなれたぜ♪」

 

「そっかそっか」

 

僕は火憐の頭をわしゃわしゃと撫でる。

くすぐったそうな顔をする火憐に、

 

「賢くなったついでにさっぱりしてこい。さっきまで僕と月火ちゃんが入ってたから、まだ風呂は暖かいはずだ」

 

「おおっ! サンキュ!」

 

パァっと顔を輝かせたけど、

 

「ちぇ~。ちょっと残念。もうちょっと早く帰ってくれば、一緒にお風呂に入れたのにさぁ~」

 

そんなに一緒に入りたかったのか?

 

「んー……じゃあ、今度久しぶりに三人一緒に入るか? ちょっと狭苦しくなると思うけど」

 

「うんっ!」

 

大した考えなしに提案してみたが……よくよく考えれば、むしろ狭苦しいというよりギュウギュウ詰めになると思うけど、火憐ちゃんが嬉しそうなのでよしとしよう。

そういえば三人一緒に入らなくなったのって、火憐ちゃんの背が伸びて湯船が狭く感じるようになったからだっけ?

 

「それと一ついいか?」

 

「ん? なんだ?」

 

どうせなら火憐ちゃんにも聞いてみようか?

 

「恋をする気持ちって、火憐ちゃんならどういう風に表現する?」

 

「な~んだ。恋愛相談か」

 

一瞬、つまらなそうな顔をしたけど火憐ちゃんはニカッと笑い、

 

「そいつの顔を見て、そいつのガキを孕みてぇなあーと思ったら恋なんじゃねーのか?」

 

わかっていたことだが……

我が妹(おっきいほう)は、実に男前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
月火ちゃんが原作と異なる結論を出したエピソードはいかがだったでしょうか?

というよりお兄ちゃんの妹達へのスタンスというか接し方が、既に平行世界(げんさく)と違うような?

『お兄ちゃんは羽川さんが好き』

月火ちゃんが出した結論に、はたして暦君はどんな行動をとるのか?
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!


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