抜歯した痕が疼いて眠れない作者です(^^
というわけで本日は深夜アップ。
今回のエピソードは……相変わらずのバトルステージです。
もう全編チャンバラです。でも、何時間も戦ってるのに、なんか二人とも凄く楽しそうです。
やっぱりこれってデート?
5月2日から3日に日付が変わろうとする頃、直江津市の一角……結界の張られた学習塾跡の廃ビルで、
「報復絶刀!」
「なんのっ!」
”ギィン!”
僕と羽川は刃を重ね合わせていた。
斉藤一の看板技、”
『右手で繰り出される片手突き』という基本は同じだけど、突きを避けても横薙ぎに変化する平突きの”壱の型”、突進だけでなく時には跳躍まで交えて打ち下ろしで狙ってくる”弐の型”、そして上方から攻撃に対応するアッパーカットのような突き上げの”参の型”……
そしてまだ見せてないけど、
(おそらくはあるだろう”零の型”……)
羽川の事だ。あの凶悪な”零距離打突”を習得して自分の物にしていないとは思えない。
だが、吐息がかかるようなほぼ密着状態から発せられる技は、その射程の短さから考えて使いどころは難しいはずだ。
(だけど楽天的な予想は禁物だ)
忍野が羽川を警戒していたのは、そのポテンシャルの高さ故に『必ず正解を導き出してしまう』ことにあるようだ。
(でも、今ならその意味がわかる)
羽川は、必ずここしかないというような攻撃ポイントを、文字通り的確に
つまり羽川は”障り猫”の各種能力を使いこなし、戦闘においてさえ『
例えば……単発技としても恐ろしい威力を持つ報復絶刀だけど、本当に恐ろしいのは技の威力より、『打突からの多彩の展開』という戦術をそつなくこなす羽川自身だ。
だから、単発技だけを警戒するわけにはいかずその後の連携や外れた場合のフォローも警戒しないとならない。
(おそらく……羽川は、報復絶刀を起点に『命中した場合』と『外した場合』の戦術を事前に構築し、僕の起こすであろう行動をシミュレートした結果と組み合わせて対応してるってところか?)
かつて明治時代まで生きた
(羽川も同じってことか)
実のところ、報復絶刀を単体技として見るなら大して怖くは無い。
怖いのは、「僕に対する戦術の
***
(
だけど応用力もずば抜けてる羽川だ。
生半可な手では対応されてしまうだろう。
さっきも
(対空防御も隙が無い)
壁にスレイブ刀を突き刺し、それを足場にして三角跳びの要領で上空から”飯綱”を放ったが、それすらも”報復絶刀・参の型”の合わされ相殺された。
身体能力はほぼ互角。斬撃の数も負けてはいないし、力で押されていないけど……
「くっ!」
”ヒュオン!”
時折、間隙と死角を突くように飛んでくる手刀や足刀がひどく厄介だ。
羽川は牽制のつもりだろうけど、相手は接触するだけで相手の成体エネルギーを奪うエナジードレイン持ちだ。触っても触られでも”障られる”。
下手に喰らえば一発で勝負が付きかねない比喩ではない
「阿良々木君、もう飽きてきちゃった?」
「まさか。せっかくの羽川とのデートだ。まだまだ楽しみ足りないさ」
「そう、よかった♪ 私も同じだから、ね?」
羽川は強引に体を滑り込ませるような動きで距離を詰め、一気にラッシュをかけてきた!
「随分、強引じゃないか?」
よかった。まだ『軽口を叩ける程度の強がり』はできるみたいだ。
「強引な女の子は嫌い?」
「いいや。嫌いじゃないし、むしろ慣れてる」
あれ?
羽川の攻撃力が心なし上がってるような気が……
「むぅ~。もしかして老倉さんのこと?」
「? なんでそこで育が出てくるんだよ?」
「ニャ!? えっと、それは……」
僕は何故かうろたえた羽川の隙を突いて両手で握っていた刀の右手を離し、爪先で跳ね上げたスレイブ刀を空いたその手で握り……
「セイッ!」
「ひゃっ!?」
急な方手持ちと脱力で僅かに姿勢を崩した羽川に二刀流で仕掛けるが、バックステップ……いや、バックジャンプで間合いを開けられ、射程外に逃げられてしまう。
「それに育は、言われるほど強引じゃないと思うぞ? っと!」
右手に握るスレイブ刀を最小限のモーションで投擲、同時に足元に刺さるスレイブ刀を蹴り飛ばして時間差攻撃をかけるけど、
「にゃおん♪」
本物の猫を思わせるしなやかなモーションで身を捩じらせて、羽川はあっさり投剣を避ける。
怪異化してるとはいえ、本当にジオンの驚異のメカニズムならぬ羽川の驚愕の身体能力だよ。
「強引なのは火憐ちゃんに月火ちゃん、僕の妹達だ。そんな強引なところも可愛いんだけどさ」
うん。しょっちゅう布団に潜り込んだり、圧し掛かかられたり、お風呂をせがまれたり、キスを要求されたり、他にも色々ねだられたりするけど……あれもチャームポイントだ。
***
それにしても……
(こりゃ本当に崩しにくいな……)
『どんなものでも答えを出す羽川』は、今や『最適解を出し続ける高性能戦術コンピューター』の如く趣だ。
しかも、取り込んだ人外のフィジカル・スペックは、単純性能だけじゃなくて疲れ知らずのハイスタミナのようだ。
これで持久戦に持ち込み、疲労による集中力の欠如を狙うって手段は消えた。
(羽川の戦術予想を上回る奇策……か)
それはよほど考え抜かないと難しそうだ。
羽川が知らない戦術……羽川が急には対処できない戦い方……
(試してみるか!)
”ババッ!”
折られても砕かれても自動補填される999本の
微妙に僕と羽川の間に突き立てた本数が多くなるように調整しているが。
「ふ~ん……”刀の結界”?」
周囲を床に突き刺さる刀……刃に囲まれながら、羽川はむしろ興味深そうに呟いた。
「そんな上等なものじゃないよ」
はっきり言えば、この程度の数の刃で羽川を止められるとは思ってない。
だけど……
「こんなのはどうかな? ”
”ズヴァァン!!”
野球で言えば
この”纏飯綱”は指向性の
例えば周囲を刃に囲まれた羽川は、上に跳んで避けるのが常識的判断だろう。
そして合理的な羽川の事だ。
きっと、
『”刀の結界”で動きを封じ、纏飯綱で止めを刺すつもり。私が跳んで逃げた場合も何らかの対空技で狙ってくる筈』
と考えるだろう。ならば……
『先手必勝!』
迫り来る衝撃波を避けると同時に刀を飛び越え、僕に報復絶刀・弐の型あたりをを叩き込もうとする。
その戦術的判断が、”もっとも合理的で
「Jack Pot !!」
”ヴァアン!”
だが、僕が狙ったのは羽川じゃなくて『地面に突き刺さった
「ニャニャッ!?」
そして、纏飯綱の衝撃波に飲み込まれ無数の刀は空中を舞った。
すでに跳躍した羽川のいる空中へ……
***
「嘘だろ……おい」
「ニャハハハッ♪ まさか阿良々木君が、刀を鉄球代わりにした”
気が付けば、僕の一足一刀の間合いに『
結果だけを言えば、僕の作戦は不発と言っていい。
「あれだけの散弾ならぬ”散刀”の一斉射を浴びてノーダメージかよ……」
「まさか。ちゃんとあちこちに傷は負ってるでしょ? ただ、大きなダメージを受けそうな刀を優先的に”鉋”で払い落として、大してダメージ無さそうなのは無視して受けただけだよ」
「ヲイヲイ……そりゃ頭ではそれが最小のダメージで済む方法だってわかっていても、恐怖心が先に立って
例えば、顔に飛んで来る石礫と胸を狙う槍。
どちらかを受けないと片方は避けきれないって情況で、石礫が当たったところで死なないとわかっていても、槍が刺されば死ぬとわかっていても、顔に当たる石礫を無視して槍を避けるのは難しい。
恐怖心で反射的に顔を庇うのが通常の反応だろう。
「羽川……お前、ホントどこまで底知れないんだよ?」
「それはむしろ私の台詞かな? 阿良々木君こそ、どれだけ技の引き出しがあるのよ?」
「いや、正直もう種切れだよ。お前に通じそうな戦術は、そう多くはないさ」
「阿良々木君は正直だね?
見透かされてるなぁ……
僕が取れる戦術オプションも技も、今の羽川に通じそうなのは辛うじて両手の指の数になるかどうかだ。
「まあ、その解釈で合ってるよ」
「まだまだ付き合ってもらうよ? 私、まだ全然満足してないんだからね♪」
ペロッと猫っぽい仕草で手の甲についた傷を舐め、微笑む羽川……
浅いとはいえ傷だらけの羽川……
その姿はなんだかとても綺麗に見えた。
「全ては羽川の御心のままに」
そして再び僕達は、互いに刀を構えなおす。
まだデートは終わらない、終わらせたくないというように……
「また仕切りなおしか」
「そうなるね」
羽川、とことん付き合ってやるよ。
お前の気が済むまで、どこまでも。
「じゃあ、いざ尋常に……」
「勝負!」
皆様、ご愛読ありがとうございました。
羽川さんも阿良々木君も、洒落にならない戦闘力なことが判明したエピソードは如何だったでしょうか?
今回で決着と言ったが、ありゃ嘘だ(笑
実際、この二人には書きたいバトルシーンが多すぎて中々終わりそうもありません(^^
でも、本当にそろそろ終わりにしないといけませんね。
なんせ、化物語のヒロインたちも書きたいですし(えっ?
それにしても……この戦いに普通の人間が巻き込まれたら、何回死ねるんでしょうか?(汗
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!
もしご感想をいただければ、とても嬉しいです。