皆様、こんばんわ。
今回のエピソードは……阿良々木君vs羽川さんの1stラウンドがついに決着します。
しかし、その顛末は
「なあ、猫……」
「なんにゃ?」
「僕達は似てると思わないか?」
「……かもしれないにゃ」
明らかに「羽川でも”障り猫”でもない存在」と、人間にも怪異にも完了形にもなれない僕、阿良々木暦……
夜の街で互いにエモノを突きつけあいながら対峙するという情況は、皮肉めいていると同時にどこか必然めいたもの、因縁めいたものを僕は感じていた。
それはともかく決着は早々に付けるべきだろう。
大恩ある羽川を物理的に傷つけるのは僕的には精神的御法度だが、だが僕自身が”専門家”でない以上、傷つけずに大人しくさせる方法が思いつかない。
(なら物理的に気絶させるしかないか……)
ただそうなると現状の問題となるのは、今の「異形の羽川」の肉体強度だ。
人間が気絶する程度の打撃力で気を失うのか?
(いや、それは望み薄だろうな……)
これまで数合斬りを結んだし、動きも見たが明らかにノーマルモードの羽川のそれを遥かに上回っているのは間違いない。
羽川は頭脳だけでなく武力も中々に規格外で、春休みにバンパイアハーフが馬鹿力に任せて投擲した重さ数百kgの十字架を、『
同年代なら
(エナジードレインが厄介だ)
”障り猫”の由来にもなってる触っても触られても発動する呪いと同種の”障り”。
これのせいで刀身だけでなく羽川の肉弾にも警戒しつつ、こちらは直接接触する攻撃や防御はできないというかなりの不利さだ。
「それでもやるしかない」
そう、こうしてエンカウントした以上、このまま見過ごすという選択肢をとる気は無かった。
***
贋作【絶刀”鉋”】と贋作【千刀”剱”】の更に
見た目は違うが、互いにおそらくは必殺の威力を出せる切っ先を向けあった僕と”猫”だ。
次の一合のタイミングを見計らっていたんだけど、
「にゃっ!」
”げしっ!”
「なっ!」
猫は完全に僕の予想外の行動に出た!
何の予備動作も躊躇も無く、足元で意識不明で転がっていた男性と女性……「戸籍上の両親」を僕に蹴り飛ばしてきたのだ!
「チッ!」
どんな力の入れ方をしたのか、はたまた魑魅魍魎の技を使ったのか?
身長をフルに生かせる
普通なら簡単に避けれる速度だが……いかんせん
文字通り人外の突進速度を持つ相手を前に、それは悪手だろう。
肉の弾丸を目眩し……いや、化け猫だけに”猫騙し”か? 代わりに間合いを詰められ、体勢を立て直す前にエナジードレインの連打でも喰らえば、それこそガードしきるのは難しい。
そうでなくても強化された報復絶刀は、不十分な体勢で受けるべき技じゃない。
ならば、かかる困難は……
”ビシッ! バスッ!”
***
これだけの重さと速度である以上、全刀化を解いて鞘で受ければ鞘自体がダメージで折れかねない。
僕が
厳密には他にも”錆”には色々特性や特質はあるし、僕が「
故にここで武器を失うわけにはいかない。
だから僕は鞘の全刀化を解かぬまま、”
打った感触から羽川の両親と呼ぶべき男女は骨折くらいはしてるだろうけど、特に同情する気も起きなかった。
ともかく、肉弾を目隠しにして羽川が突っ込んでくると思ったけど……
「ニャハハハハッ! 人間、いい判断だニャ♪」
僕の読みは外れていた。強がった言い方をしても半分までしか当たってはいなかった。
正解だったのは、羽川が羽川夫妻を目隠し代わりに蹴り飛ばしたまでであり、”羽川と障り猫の
(目隠しじゃなくて、差し詰め”忍者の煙幕”代わりだったってことか)
純粋な全刀流の剣技にこだわらなければ、まだこの間合いなら攻撃できる
「でもニャ、人間……俺はちょっとはオマエがそいつらを”
「ぬかせ化け猫。僕が『飛んでくる物体の見切りもしない』と思われること自体が心外だよ」
失礼な奴だ。
「さっきも言ったが、斬りたきゃ自分の手と刃で斬れ。”そいつら”がどれほどお前にとって無価値でも、それがせめてもの『剣士の礼儀』ってもんだ」
「……俺は怪異であって剣士じゃニャイ」
ははっ。面白いことを言うな?
「猫、お前は立派に剣士だよ。刀剣で命のやり取りをするなら、その時点で剣士さ。それが盗賊だろうと怪異だろうとな」
「フン……オマエ、やっぱり面倒臭い奴ニャ」
その言葉とは裏腹に、猫の顔はどこか楽しげだった。
***
屋根の上の猫は踵を返し、夜の帳の漆黒へ純白の身を溶かそうとするけど……
「猫、僕との斬り合いはもういいのか?」
どうやら屋根に飛び移る際に”鉋”を帯剣ベルトの鞘に収めたらしく、両腕はフリー状態……というか、「招き猫のポーズ」をとっていた。
「殺し合うつもりニャったけど、気が変わったニャ。猫は気まぐれだからニャ」
「そう言われれば、確かにそういう生物だったな」
「それにここで”
「あん?」
すると猫はニャハハハ♪と笑い、
「せっかくの機会だ。俺はまだ遊び足りニャいんだよ。人間」
「それだけか?」
「……あとご主人を自由にしてやりたいってのもある」
「どういう意味だ?」
「そのまんまの意味ニャ。お前たちはご主人を縛ることしかしニャい。だから俺が解放してやるのさ♪」
羽川……お前って結構……
「もうご主人には俺がいる。他には何もいらニャいのさ……ご主人自身さえもな!!」
ホント、重傷だよ。
「つまり、お前は羽川を自由にするため、開放するために暴れまわるってわけだな?」
「その通りニャ♪」
馬鹿が……
頭がいいくせに本当に馬鹿だな……
ならば僕が今できる結論は一つしか無いじゃないか。
「行けよ」
「にゃ?」
「いいから行け。今は見逃してやる」
「……随分、ビッグマウスを叩くじゃニャいか?」
”ビュオッ!”
”バツンッ!”
「にゃっ!?」
足元が砕けると同時に、猫は驚異的な反射神経でバックステップで退避する。
「ソニック・ブレード……」
「似たようなもんだ」
正式には”
要するに全身の筋肉を連動させ、最大級に加速した切っ先で
全刀流に限定しないが古式剣術の技として残っていて、明治初期の剣豪が使った記録が残っていた。
「猫、お前が”
俺は転がる羽川夫妻を見やり、
「羽川がしでかしたことでもある。だから喜んでケツは拭いてやる。ああ、羽川のケツならなんだったら拭くどころか舐め回してもいいくらいだ」
「……オマエは限度額の無い変態かにゃ?」
「ふん。この程度で変態呼ばわりなんて、随分と純情じゃないか? 後ろの穴は出すだけじゃなくて、舐めて突っ込んで発射する場所でもあるんだぜ?」
”あの娘”の言わせれば、『女の子に使えない穴は無いにゃん♪』とのこと。
うん。確かにそれは一理ある。
少なくと真ん中と後ろと上と
「フーーーッ!!」
いや、なんでそこで威嚇する?
「ともかく少なくともその肉体が羽川の物である以上、羽川
***
結局、猫……羽川は、何か言いたそうだったが無言で姿を消した。
僕はその後姿が見えなくなるまで見送った後、
「やれやれ……」
幸いというか当然と言うか、地面に転がる羽川夫妻は骨折/打ち身/擦り傷/エナジードレインの心身とものフルコース・ダメージを受けてはいるが、このまま放置しない限り命に別状はないだろう。
まったく本当に厄介なことになった。
でも、
「羽川なら仕方ないか」
もしかしたら、これも……
(”惚れた弱み”ってやつなのかな?)
僕は忍野にどう報告するかを考えながら、徐に救急車呼び出しの電話を入れるのだった。
皆様、ご愛読ありがとうございました。
決着により原作と違う結論が出たような気がするエピソードはいかがだったでしょうか?
それにしても……阿良々木君が色々な意味で強かった(^^
そして、何かこの時点でも彼は何か気付いてるような……?
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!