今回のエピソードは……閑話休題的な日常パートと見せかけて、実は伏線回なのでは?と作者的には思っています(^^
そして羽川さんは、今回も原作よりぐいぐい押してるような?
こんにちわ。阿良々木暦です。
もう過ぎ去ってしまったかもしれませんがゴールデンウィークの初日、皆様はどう過ごされたでしょうか?
僕、こと阿良々木暦はお昼に差し掛かったこの時、
ちょっ!?
爆発しろとか言わないで!?
モニターに物を投げないで!
いや、文字面に出るほど僕はリア充じゃないから!!
誰に弁明あるいは釈明しているのか我ながら謎だけど、とりあえず事情を説明したい。
僕は羽川を茂みに連れ込んで、父親に殴られたという傷を治した。
いいか? あくまで治療だぞ。
大事なことなので二度言うが治療がメインなんだ。
メインが治療ならサブはなんだと聞かれても困るけど……僕も高校三年生の健全な男子だ。色々あるとだけ言っておこう。
ともかく羽川の左頬にあった殴打痕は綺麗に消えたのはいいんだけど……
「ふふふ♪」
その代わりと言ってはなんだけど、羽川の頬には僕が付けたキスマークがあったりして。
いや、
すいません!
羽川の頬があんまりにも柔らかかったから、つい調子に乗ってしまいました!
どういうわけかこんなくっきりはっきりしたキスマークをつけてしまったにも関わらず、羽川は僕に怒る事もなく……というか不思議と上機嫌だった。
さて傷も治ったし、いつまでも茂みにいると自制心がどこまで保っていられるか自信の無かった僕は羽川を連れ立って遊歩道に出る。
「なあ、羽川……これから予定とかある?」
何を話していいかわからない……育や火憐ちゃんや月火ちゃんなら、話題はそれこそいくらでもある。
育はマウンテンバイクやフライフィッシングなんかの趣味が一緒だから話題には事欠かないし、火憐ちゃんなら「
だから対して考えもせずに話題を振ってみたんだけど、
「ないよ。ただ家に居たく無いだけだし。普段は図書館とかで時間潰すけど、図書館が空いてないときは特に目的地を決めず散歩するだけだから」
そして目からハイライトを消して、
「だって一日家に居るなんてゾッとする」
(こりゃいかん)
羽川には悪いけど、ハイライトを消して笑いと呼ぶには冷たすぎるそれを浮かべた羽川に、僕はゾッとしそうになった。
うん、こんな表情は断じて羽川が浮かべていいものでも、浮かべるべきものでもない。
僕がそう決めた。
「ということは暇って解釈でいいんだな?」
「そうだね。その解釈で間違ってないよ」
「おっけー。じゃあ……その、一緒に遊ばないか?」
「……えっ?」
いや、そこでそんなに驚いた顔をしなくても。
「だって……私、だよ?」
「わかってるよ。だから、羽川と遊びたい」
「『羽川
ナニソレ? 聞きようによってはえっらく意味がエロくなってしまうんですが……
「羽川……確かに僕は危険人物かもしれないが、流石に羽川に率先して嫌われようとする趣味は無いぞ?」
「そのくらいのことで阿良々木君を嫌いになったりすることなんて、間違ってもありえないけど……」
あれ?
なんだか僕、とても嬉しい言葉を聞いたような気がするんだけど……
いやいやいや! それは流石に都合よすぎだぞ、僕の耳。
「本当に私でいいの? だって私、きっと阿良々木君みたいなアクティブな人間にとっては私はとても退屈な人間だと思うよ? 趣味も読書とか極めて普通でしかもインドアだし。せっかくのゴールデンウィークなんだから、もっと有意義に過ごせる人と一緒の方が……」
「羽川がいいんだ。羽川と一緒に遊びたい。せっかくのゴールデンウィークだからこそ、羽川と有意義なひと時を過ごしたい」
「うぐぅ……」
僕は羽川の謙遜……というより、不当なまでに低い自己評価を断ち切って言い切った。
それにしても羽川……
(ぐう音のもで無い声まで可愛いとか、本気で反則だろ?)
***
さて、でも困ったことがあった。
「なあ羽川、自分で誘っておいてとても恥ずかしい次第なんだが……」
「なに?」
「ぶっちゃけ、どこに連れて行ったら女の子が喜ぶのかよくわからないんだ」
「えっ? 阿良々木君って女の子とよく遊んでるかと思ってた」
「もしかして僕が街中でナンパしてるようなキャラだと? 無理だって。僕はそんな器用にはできてない」
というより生まれてこの方ナンパなんてした事ないんだけど?
「そういうんじゃなくて……阿良々木君っていっつも女の子が傍にいるって印象……なのかな?」
「そりゃ誤解だよ羽川。クラスで喋ってる女子って、大体は育だし。羽川もよく俺に喋りかけてくれるよな? だからこの二人以外、女子とはあんま一緒にいないと思うぞ?」
「う~ん……」
「他にって言ったら……火憐ちゃんや月火ちゃんとかは確かに一緒に出かけたりするけど。あと他に強いて言うなら千石かな?」
「千石?」
不思議そうな顔をする羽川。
そう言えば、千石のことは話したことなかったっけ?
「ああ。小学校時代からの幼馴染ってとこ。昔からよく一緒に遊んでいて、今でもたまに街中でエンカウント・バトルになる」
「そ、それは一体どんなリレーションシップなのかな?」
おおっ!
羽川の困惑顔なんてレアだ。
「そうだな……もしかしたら千石にとって、僕は”超えるべき壁”のような存在かもしれないな」
うん。
多分、きっとそうなんだろう。
「その千石さんはあまり参考にならないみたいだけど……老倉さんや妹さん達とはどこに出かけてるのかな?」
「育の場合は趣味が同じだから、フィッシングショップやサイクリングショップに行くことが多いかな?」
「釣具店と自転車屋さん?」
「ああ、それで正解。だけどその言い方だと、昔ながらのこじんまりした商店街の店って感じだろ? 僕や育が行くとこってちょっと雰囲気が違うかも」
これは偏見かもしれないけど、釣具店とか自転車屋と書くと、商店街にある昔ながらのこじんまりした店を僕は思い浮かべる。
あまり照明が明るくなく、というよりなんとなく薄暗く昔
対してだけど僕や育がよく行くのは、”プロショップ”なんて名乗ってることもあるそこそこの大型店舗だ。
一般にディスプレイはそれなりに見栄え良く飾ってあって、天井が高くて照明も明るいって感じかな?
単純にターゲットとしてる購買層が違うからそうなるんだろうけど……悪く言えば大量消費社会に迎合した売り上げ最重視の店舗というところだろうか?
例えば全国展開してるチェーン系の釣具店とかにもよく行くし、後は中古専門店で掘り出し物を物色することもある。
「通好みの知る人ぞ知るって感じのこじんまりした釣具店とか、地元の人に愛される街の自転車屋さんとかは女の子や一見さんは入りにくかったりするからさ。それに僕や育は割とあんま一般的でない部品や釣具を買うこともあるから、品揃えの揃った大型店舗の方が都合がいいんだ」
「ふ~ん。そういうものなんだ」
「まあね。あと火憐ちゃんとは大体スポーツ関係。あっ、火憐ちゃんていうのは……」
「上の妹さんでしょ? ”栂の木二中のファイヤーシスターズ”の実戦担当の?」
「羽川は、本当に何でも知ってるな」
「何でもは知らないわよ。知ってることだけ」
よっしゃ!
ノルマ達成! なんのノルマかは知らないけど。
「というより、この街の学生で”ファイヤーシスターズ”を知らない人の方が珍しいんじゃない? 社会人にだって相応の知名度はあると思うわよ?」
「……我が妹のことながらお恥ずかしい」
止めない僕にも責任のある話だね。
「知ってるなら話が早いということにして……取り合えず火憐ちゃんとはスポーツショップ行ったり、あるいは色んなスポーツ試したりかな? そういえばあいつの通ってる道場にも何度か行ったっけ……」
きっと僕は今、遠い目をしてることだろう。
火憐ちゃんのお願いだったから断るって選択肢はなかったようなものだけど、さすがにここで道場破りの真似事をさせられたとか、今となってはたまに「無手による対刀剣戦術訓練の理想的教材」として呼ばれるというのは羽川に話すべきじゃない。
「月火ちゃんとは……色々かな? 基本的に行く場所は月火ちゃんが決めて、僕はそれに付き添うって感じ」
火憐ちゃんのことを知ってるなら、別に月火ちゃんの説明は不要だろう。
あと僕が出かけようとすると、行く場所を聞いた月火ちゃんがついて来るっていうこともたまにある。
「……仲、いいんだね?」
「羽川にとって嫌味に聞こえるかもしれないし、無神経な言い方だとも思うけど……大切な家族だからとしか言いようが無いよ」
育は今となっては家族のようなものだし、火憐ちゃんと月火ちゃんはなんだかんだで可愛い妹だし。
これに関しては嘘はつけないし、つきたくない。
「ううん。別に気にしなくていいよ」
ほんの少しだけ、羽川は寂しそうに笑った。
「ただちょっと……羨ましく思うくらいはいいよね?」
***
「じゃあ、今日は”老倉さんコース”でいってみよう♪」
羽川は勤めて明るくそう言った。
「それってフィッシングショップとサイクリングショップ巡りだぞ?」
「うん♪ 私も阿良々木君の好きなものが知りたい」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、興味ない人には本当につまらないかもだぞ?」
「いいよ。私の知らない阿良々木君が見れると思うだけで嬉しいし♪」
そういうもんなのかな?
「わかった」
確か徒歩で行ける場所にもいくつか贔屓にしてる店はあるし。
「ただ、その前に……」
僕は腕時計を見やり、
「予定が決まったところで昼にしないか?」
ちょうど文字盤は昼飯の頃合であることを告げていた。
この時の僕はまだ何も知らなかった。
日常に空いた非日常のエアポケット……
この数時間後に、
皆様、ご愛読ありがとうございました。
阿良々木君と羽川さんのデート回(導入部だけですが)はいかがだったでしょうか?
ちなみに「うぐぅ」は中の人つながりです(^^
それにしてもほっぺにキスマークつけたまま手を繋いでデートとは羽川さんもいい度胸をしてるといいますか(笑)
きっと周囲からの心の声は「爆発しろっ!」の大合唱でしょう。
そして撫子ちゃんは”この世界”でも、考えようによっては
どうやら次から話が大きく動きそうな気もしますが……
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!