今回のエピソードは……ちょっとブラックコーヒーを用意した方がいいかもしれません(えっ?
羽川さんのヒロイン力が「マジぱないのぅ」なことになってます。
阿良々木君がきっちり男の子してます。
ぶっちゃけラブコメ臭が濃いです(^^
それとついに、この回でこのシリーズも二桁突入しました♪
これまでたくさんの応援、本当にありがとうございます。
話はまだまだ続きますが、これからも楽しんでいただけたらと思っています。
僕こと阿良々木暦は、羽川の頭を撫でていた手をそっと放す……
「あっ……」
名残惜しそうに聞こえたのは、きっと僕の自惚れだろう。
おっと忘れるとこだった。
「羽川」
「ん?」
「嫌じゃなかったら、ちょっとそこの茂みにまで付き合ってもらえないか? ちょっと人目につくところではしたくない行動をしたい」
「いいよ。どこへでもついて行くよ?」
あれ?
羽川の目の色が、どことなく変わったように見えるのは気のせいかな?
***
それはともかく……
(羽川を茂みに連れ込んだ、羽川を茂みに連れ込んだ、羽川を茂みに連れ込んだ……)
なんだろう?
この背徳感溢れる甘美な響きは!
そして言葉通り、僕は羽川に茂みに同行してもらう。
そして所定……ではないな。適当な場所に立ち止まる。
すると羽川、ほんのり顔を赤らめて僕と視線を合わせようとせず、妙にもじもじしだした……
あの、物凄く萌えるんですけど?
「あの、ここで脱げばいいの……かな? それとも着たままの方がいい? えっと無理やり押し倒したいっていうのなら、が、頑張って対応するよ! うん! 阿良々木君なら、そういうのも全然嫌じゃないし! ……ちょっとだけ、興味もあるし」
最後のほうは小声過ぎて上手く聞き取れなかったけど、
「あ、あの、HANEKAWAさん、一体これから僕が何をすると思ってらっしゃるんでしょう……?」
「えと……”春休みの続き”じゃ……ないの?」
へっ?
”春休みの続き”? ああ、
えっ、まて落ち着け。
素数を数えるんだ……じゃなくて!
僕だって馬鹿じゃない。伝説の吸血鬼もバンパイア・ハンターズもいないのに、ここでバトルステージが再開されるとはおもってない。
だけど、それ以外に羽川が「春休みに僕と関わったイベント」と言えば……
(なぁ~んだ。凄く着やせする羽川の『立派なお胸様揉み放題イベント』のことかぁ~……ってヲイ!)
詳しくはここでは言わない。
だけど僕は羽川の胸を揉んだ。あの癖になるような柔らかさと大きさを存分に堪能した……というより乱暴とも言えるくらい揉みしだいた気がするけど……
と、ともかく、大きなおっぱいに比例した大きな勇気を羽川から貰って、戦いの場に立つことができたんだ。
蛇足ながら……春休み開けの一時期、僕の家には羽川の下着が上下一揃えあったことを明記しておくべきだろう。
「いや、僕はただ羽川が傷を負ったままっていうのが嫌だったから、その、なんとかしようとしただけで」
「にゃっ!?!」
よほど恥ずかしかったのだろう。
思わず猫っぽい悲鳴を上げる羽川が妙に、いやいやとても可愛かった。
***
”CHU”
ガーゼを外した傷口に僕はそっと口付けして、
”ぺろっ”
と舐める。
なんだか今度は、僕が猫になった気分だ。
一応言っておくけど、やましい行為じゃないぞ?
吸血鬼化の残留能力というか……「吸血鬼でも人間でも無い中途半端な存在」になった僕には、上位吸血鬼並みの再生力と不死性と同時に、唾液や血液なんかの体液に高い
多分、白くて濁った物もだ。
僕が唇を離すと、
「阿良々木君……」
「ん?」
「まだ、お父さんに殴られた跡が痛いの……もっと舐めて」
「いいよ。他にリクエストはある?」
「……抱きしめて欲しい、かも」
「わかった」
僕は羽川の肩に置いてた手を離して、細い腰に回した。
「もっと……ギュッってして」
羽川はもっと密着を要求した。
傷はもう治ってると思う。
痛いのは頬じゃなくて、きっと心だ……
妹たち(特にちっちゃいほう)から朴念仁だの鈍感だのと言われる……しかもそれがどういうわけか欠点でなく、「そこがお兄ちゃんのいいところなんだよ♪」と肯定されてしまう駄目な僕だけど、それくらいはわかる。
「羽川はけっこう甘えん坊だな?」
このくらいの仕返しはいいよね?
「……駄目?」
先生、上目遣いは反則だと思います。
ああ、羽川のカウンターが可愛すぎて生きてるのが辛い。
「全然、かまわない。むしろ全力全開で甘えてくれ。もともと、羽川は何事に対しても積極的なくせに遠慮がちなんだよ?」
「そう……かな?」
「ああ。羽川の普通は「正しさを基準とした普通」だから。それは僕のようなちゃらんぽらんな人間から言わせれば、ひどく窮屈に見える」
「阿良々木君は決してちゃらんぽらんなんかじゃ……!」
「そういうとこだよ、羽川」
「えっ?」
「”
「でも、私は阿良々木君がちゃらんぽらんだって認めたく無いもん……」
「僕を”ちゃらんぽらんな
「……阿良々木君は、本当に私を過大評価するよ」
「むしろ過小評価だとおもってるけどね。なあ、羽川……」
僕はほんの少しだけ抱きしめる腕に力を込める。
体温に柔らかい感触……それに呼吸の音に体臭……『生々しいまでの羽川翼』がそこにいた。
「お前ってこんなに小さかったんだな……」
「阿良々木君ってこんなに大きくて暖かかったんだね……」
「お前は十分に頑張ってきたよ。だから、そろそろ自分を甘やかせてもいいんじゃないか? もう、駄目な自分を許してやってもいいんじゃないか……?」
「駄目だよ……そんなことをしたらきっと、私は私を維持できなくなる」
「重傷だな……」
「重傷だよ……」
なら、今は少しだけ妥協しよう。
「羽川、自分を甘やかせられないなら、先ずは甘えたい気持ちを他人に託す……僕に甘えることから始めよう」
「……えっ?」
「簡単だろ? 今こうしてるんだから」
僕は羽川を離さない。
「だ、駄目だよ……私はきっと甘えるの上手くないから、加減がわからないから、きっと阿良々木君に凄く迷惑をかけると思うもん!」
「かまわない。羽川にかけられる迷惑ならむしろご褒美だ」
「きっと私、阿良々木君に依存しちゃうよ?」
「かまわない。羽川に依存されるほどなら、僕の人間強度もそう悪くない証明にもなる」
「もしかしたら、甘えるのをこじらせて……ずっと阿良々木君に付きまとっちゃうかもしれないよ?」
「かまわない。付きまといたくなったら、遠慮しないで傍にいればいい。後ろや物陰からこっそり見るんじゃなくて、堂々と隣に来ればいい」
「馬鹿だよ……阿良々木君は、本当に馬鹿だ。前代未聞の大馬鹿だよ……」
「知らないのか? 僕の馬鹿は筋金入りさ。一度死んで吸血鬼に生まれ変わったって治らなかったくらいだからな」
羽川は、僕の肩に顔を埋めた。
本当は胸板で顔を隠してやれたらよかったのだけど、残念ながら僕と羽川にはそこまでの身長差はない。
羽川は声を殺して泣いていたのかもしれないし、泣いてなかったのかもしれない。
もっとも、それはどうだっていいことだ。
僕はただ、この思っていたよりもずっと華奢だった女の子の髪を再び顔を上げられるその時まで撫でていたかっただけなのだから。
***********************************
さて、今回のオチというかその後……
「羽川、その、大変言いにくいことなんだが……」
「なに?」
羽川が顔を上げたのがどれほどの時間が経ってからなのか、僕にはよくわからなかった。
ただ、再び顔を上げた羽川は一見するといつもの羽川に戻ったようにも見える。
確かに一見すると全ては元通りになったように見えたけど、
「頬のガーゼを戻した方が、羽川のためかもしれない」
「いきなり傷が治って不審がられるってこと? 心配要らないよ。そういう人たちじゃないから……きっと私がばっさり髪を切っても気付かないよ。私の顔を覚えてるかも怪しいもん」
「ああ、そっか。そこには考えが及ばなかった……だけど僕が言ってるのは、こうもっと直線的な意味」
「直線的?」
「え~とだな」
確かに傷は綺麗に消えたけど、
「頬にキスマークが残ってる……それもかなりくっきり」
羽川は一瞬、鳩が豆鉄砲食らったような顔をしたけど、
「ふ~ん」
「すまない羽川! 調子に乗りすぎた!」
僕はどんだけ強力に羽川の頬に吸い付いていたんだっ!?
「ううん。阿良々木君は何も謝る必要はないよ」
なぜか羽川は妙に凄味というものを感じる笑みを浮かべて、
「でも、絶対ガーゼとかつけないから♪ 何があってもキスマークをつけたまま今日は一日過ごすからね?」
「OUCH!!」
ああ、やっぱり羽川だ。
カウンターが強力すぎるよ。
ホントに、もう……
「羽川にはかなわない」
皆様、ご愛読ありがとうございます。
もしかしたら羽川さんが”甘えられるようになるかもしれない”エピソードは如何だったでしょうか?
羽川さんはまだ
これで
というか、ここまでやっておいてひたぎん(笑)とこよみんをくっつけたら、作者が”この世界”のバサ姉に「報復絶刀!」で串刺しにされた上に、エナジードレイン(魂消滅レベル)を喰らいそうです(^^
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!