愛する弟に反抗期がやってきました(T . T)   作:Cr.M=かにかま

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これ、まだ四話目なんだ(^^;;
十話くらい書いた気持ちでいたなんてとても言えない!!


四ページ目:台本のない狂奏劇!

 

検問を通り抜けて、ドラゴンの出現により混乱したガルシア王国内に簡単に侵入したサリナ達はとりあえず上空を飛び交うドラゴンはスルーして宿のチェックインを済ませた。何やら空飛ぶ船も見えた気がするが、多分気のせいだろう。

 

「あれ、ゼストってこの国在住じゃなかったの?」

 

「ここ在住だぞ。王宮に住み込みだから自宅はないんだ、全員で戻るわけにもいかないからな」

 

「なるほどね」

 

たしかに今回ガルシア王国までの旅路で当初サリナとギルディアだけだったはずなのに随分大所帯となった。ゼストに宇宙人、さらにはゼストが俵持ちしているカグヤに自称魔神の鬼族のギドの計六人。この場に何故いるのかわからないメンバーが二人ほどいるが宿代が少し高くなっただけでそこまで支障はない。何故ならゼストの奢りだからである。

 

「とりあえずカグヤは目覚ましたら面倒だからここに放置だ」

 

「それって監禁!!ぜ、是非私でやるときは薄暗くてじめじめした床の冷たい地下し−−−」

 

「はいはい、考えとくよ」

 

鼻息を荒くするサリナを宥めるように適当に返事をする。ほんと、こいつに一目惚れなんかしなかったらここまで頑張らなかったのに、もゼストは心の中で溜息をつく。ゼストは慣れた手つきでカグヤを衣装棚の中に放り込み、ガムテープで何重にもぐるぐる巻きにした上にどこからか鎖を取り出し南京錠で厳重にロックする。彼女の得物である七宝願ノ短剣はゼストの手元に仕舞われる。破壊してもよいのだが、高くつくため売る方が効果(高価)的である。

 

「それで、この女のことは誰が見ておくんだよ?留守は必要だろォ」

 

「お前に決まってんだろ」

 

「ハァ!?」

 

いつの間にか馴染んでたギドがゼストに反抗する。

 

「だって、お前以外誰がいるんだよ?俺はサリナちゃんを連れて王宮に...ギルディアと宇宙人も用事なかったな、留守番で」

 

「おいこら!こいつはともかく俺はサリナのお供として来てるんだぞ!?音ゲーできるからいいけど!」

 

「こんな奴と同じ空間にいるなんて無理無理無理!俺は耐えられないよ、ノーサンキュー!」

 

「そりゃどういう意味だ、ゴラァ!?」

 

一触即発!だが、ギドに勝ち目がないことは目に見えている。仕方ない皆ギドが大嫌いなんだから。メンバーは決まり、結局サリナとゼストが王宮に向かうことになり、留守番及びカグヤの見張りはギルディア(音ゲーピコピコ)と宇宙人(ベッドの上で睡眠)とギド(唸り声上げるが全身雁字搦めで動けない)ということになった。

 

「行こう」

 

「うん」

 

二人が街に出て見たのは上空でドラゴンと空飛ぶ船が激突する、まさにその瞬間であった。

 

「..............」

 

「.....あそこに挟まりたい」

 

「阿呆なこと言ってないで行くぞ、俺たちはあれに関わる必要はない」

 

スルーして王宮に向かった。一人名残惜しそうに涙を流しながら上空を見ていたとかなかったとか。

 

 

 

空賊、リビア・フルムーンは戦っていた。目の前に突如現れた黒竜から仲間と船を護るために、幼馴染と会うためにこの船は絶対に破壊されるわけにはいかない。長い年月を共にしてきた仲間たちを失うとか論外である。

リビアはエルフ族であるが、生まれ持って魔力が少ないという理由から一族の里からハブられシーフになった。そこから空賊になったには色々と経緯があるのだが、尺の都合で省かせていただく。エルフでありながら筋力に優れ魔法に頼らないエルフらしからぬエルフとして名を馳せてきた青年リビアだが、ドラゴンと正面切って激突するのは生まれて初めての経験である。

しかも、相手は伝説の黒竜。陸海空において食物連鎖の頂点に立ち厄災とまで例えられるまでの存在。相手は生物でないと考えなければ勝てる見込みはないだろう。

 

「頭を援護しろ!」

 

「おぉ!」

 

「トカゲ相手に怯むリビアスター空賊団じゃねぇぞ、舐めるなぁ!」

 

リビアの右腕、ジャックの呼びかけでクルー達は戦意を取り戻すが、リビアは彼らの援護を必要としなかった。

 

「リビィ!?」

 

「相手はドラゴン、多数で挑んでも勝ち目はない。ジャック、フローラ、ヤスヒト、オルビア、はのC陣を組む。カフ、ダラスは下の街に被害が及ばないように、ビルスは他の奴ら率いて船の操縦と安全確保のための避難。ラウェイは、何もするな!」

 

「いや、それどゆこと頭!?」

 

「いくぞお前ら、戦だ!!」

 

「任せなリビィ」

 

「まったく、ホントあんたは無茶ばっかりして。そゆとこ好きだけど」

 

「一番槍は僕がやるぞリビィ」

 

「背中は預けましたわよ」

 

リビアが短刀を二本構え、ジャックが白銀に輝くフランベルジュを、フローラは身の丈にもなるくらいの大きさを誇る大戦斧を二本それぞれ片手に、拳を鳴らすヤスヒト、オルビアは全身を銃火器に変形させる。

リビア達の敵意に気がついた黒竜がぴぃぃぃぃ!!と威嚇の咆哮を上げる。

 

「ちょ、俺はホントに何もしちゃだめなのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?そこんとこハッキリしてから行ってよ、頭ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

−−−一人、何の役割も与えられなかったラウェイの叫び声でリビア達は動いた。開戦だ。

そして、冒頭に戻る。

 

黒竜は巨大な体躯に似合うほどスピードがなかった。ていうかめちゃくちゃ遅かった。飛ぶ速度は速いのだが、それ以外の反応速度や攻撃速度が類を見ないほど遅い。まさに生態系の頂点、対立したり命を狙われる危機がなければノロマになるのは当然のことだった。

 

「リビィ!いけるぞ!」

 

「油断するなジャック!あと、フローラ!どさくさに紛れて抱きつこうとしてんじゃねぇ!」

 

「そ、そんなことしてねーし!」

 

リビアの短刀とフローラの大戦斧が交差するようにして黒竜の鱗を斬る。だが、鱗には傷一つつかなかった。リビア達の武器の方が逆に刃こぼれを起こしてしまうほどだ。

持久戦はマズイ、オルビアの砲撃も限界はある。サイボーグのオルビアの動力源は単四電池三本、最後に交換したのが昨年の夏だったのでそろそろ電池切れが起こってもおかしくない頃でもあった。その頃、ヤスヒトはドラゴンのある場所にまで移動していた。もしかしたら、ここに一撃ぶち込めば勝てるんじゃないか?という曖昧な勝算の元の行動だ。なので成功するかなんてわからない。その前にドラゴンはその間も動き回るわけだから、目的の位置にまで移動するのが一苦労だった。

 

「くそ、キリがねぇ!」

 

「一旦退こうリビィ!被害が少ないうちに」

 

「だが、そんなことすりゃ街が!」

 

街は関係ない。これはあくまでもこちらの問題と意地を張るリビア。だが、これ以上続けて船へのダメージが心配なのも事実。

 

「ワ、ワタシも、そろそろ動力が」

 

「オルビア...!」

 

「こんなとこで意地張ってる場合じゃねぇだろ!俺たちの目的はこいつを倒すことじゃねぇんだ!!」

 

オルビアは限界、ジャックもこれ以上は無理だと判断していた。悔しそうに歯を噛み締めながらリビアは信号弾を天に向ける。白い信号弾、撤退の合図である。

 

「総員、撤た−−−」

 

「せいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

−−−響き渡るヤスヒトの掛け声。爆炎を纏わせたパンチが炸裂したのだった。

 

そう、ドラゴンの股間に。

 

「い.....!?」

 

「ヤ、ヤスヒト」

 

ひゅるるるるるる、どーん!と白い信号弾が打ち上がった。ヤスヒトは一仕事した〜と言いたげな涼しそうなドヤ顔を浮かべている。ドラゴンは目尻に涙を浮かべ始めた。

 

「.............」

 

「.............」

 

「.............」

 

「.............」

 

「.............お?」

 

ぴ、ひょぉろぉるこむやねのえとまはねほはひりなかたやはとほりふそのめやのねはとはやはゆたはやかはなそけうたいくへろあののほれぬち!!!?とドラゴンはもはや解読不能な叫び声を上げながら街へと落下して行ったのだった。

 

「−−−ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

ドラゴンにしがみついたままのヤスヒトと一緒に。

リビア達はこの時だけは勝鬨を上げる気にはなれなかった。

 

とりあえずあの馬鹿はしっかり回収しないとな、うん。リビアスター空賊団の意思がシンクロし、近くに船を下すことにした。船に数人を置いてガルシア王国へと向かった。その間、彼らは言葉を一切交わすことがなかったとか。

 

 

 

ガルシア十三人衆の一人、メルククゥは宝くじの列に並びながら打ち上がった白い信号弾に反応した。ごくり、と息を呑み尋常ではないほどの汗が流れ始めた。

ガルシア王国で使われる信号弾は様々な用途がある。主に色と回数によって使い分けられており、白い信号弾が一度だけ打ち上がるなんてことは半年前に一度上がって以来一度も発射されることはなかった。

 

白い信号弾が一回、それは王の身に何か起こったということ。誘拐、危篤、暗殺、様々な可能性が考えられるが緊急事態であることに変わりはない。

メルククゥは宝くじの番号選びを済ませ一等を引き当て大金を持ち銀行に振り込み王宮へと急いで向かった。ここまで王宮へ向かうまでに費やした時間一時間半。もう一度言おう、白い信号弾が一回打ち上がったことは王の身に何か起こったということ、つまりは緊急事態、そして彼女はガルシア十三人衆が一人。本来ならばこの後賭博場かカジノ、競馬場へと向かいたかったのだが、急ぎ王宮に向かうことにした。

しかし、道を巨大なドラゴンがいて回り道をする羽目になり、時間はさらに四十分が経過していた。

彼女は時計を持たない、時間を気にしない悠々な生活を送りたいというどうでもいい理由があるからである。実際時間には超がつくほどルーズである。

 

そこに二週間ほど行方をくらましていた同僚であるゼスト・シュナイダーと鉢合わせした。彼に付き添う少女もいた気がするが、メルククゥの目には入らなかった。ゼストもどこか焦っている様子だった。

 

「ゼスト!久しぶり!」

 

「あぁ、だが、再会を喜んでる暇はなさそうだ」

 

どうやらゼストも信号弾に気がついたみたいだな、とメルククゥは心の中で納得する。やはり彼もガルシア十三人衆が一人、普段ぶらぶらしてる男だがシオン王を思う気持ちは本物のようだ。

 

「急ごうメル、ここで合流できてよかった」

 

「そうだな、一人よりも二人だ」

 

ガシ、と握手を超スピードでかわして王宮内へと入る。兵士達の数が普段よりも少ない。まさか、警備に人を回せないくらいの大事なのか!?メルククゥは悔やんでいた。何故あのとき信号弾を見たにも関わらず宝くじ一等を当てたことに浮かれてしまったのか。金はかけがえのない存在、メルククゥにとってはもう金なしでは生きていけない体になってしまっている。

 

−−−そんな金にしか興味のないメルククゥに道を示してくれたシオン王のことよりも目先の欲に心奪われてしまったことが悔しくて堪らなかった。銀行の通帳を見るたびにニヤけてしまう自分が今回ばかりは腹立たしい。

こんなことを聞かれればゼストはおろかシオン様も軽蔑するだろう。

なら、失った信頼は取り戻す!時間は戻らない!さっきゼストと再会できたことに感謝し、メルククゥはシオンの部屋へと急いだのだった。

 

 

 

ゼストは焦っていた。まさか王宮を前にしてメルククゥと再会することになるとは!?サリナは死守しなければならない。彼女の謎の耐久力があれば問題はないだろうが、それとこれとは話が別である。

 

「ゼスト!久しぶり!」

 

「あぁ、だが、再会を喜んでる暇はなさそうだ」

 

−−−つーか喜べねーよ!何でこのタイミングでコイツが出てくるんだ!

ゼストは戦闘面においてはメルククゥのことが苦手だった。光の反射を自在に操るメルククゥの特異な能力は影を操ることを得意とするゼストにとっては天敵そのものだった。

もし、彼女がサリナを殺しに来たのならここで戦闘になる。実力は拮抗しているが、能力面では彼女が上。

しかし、ここでメルククゥは予想外の返答をした。

 

「お前もあの信号弾を見て?」

 

.....何のことかよくわからんが話を合わせておこう。

 

「あ、あぁ、とにかく急ごうメル!ここで合流できてよかった!」

 

「そうだな、一人よりも二人だ!」

 

−−−何で俺はここでコイツと握手しなくちゃいけないんだ!?

メルククゥは先陣きって王宮の中に走って行った。とにかく追いかけた方がよさそうだ。

 

「行くぞサリナちゃん、ゴールはもうすぐだ」

 

「−−−シオーーーーーン!お姉ちゃん来たよーーーーー!」

 

「俺よりも先に行くんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ゼストはありえないくらいの速度で走るサリナのことを追いかけた。サリナとメルククゥが先陣きって行ってしまったことに嫌な予感しかしなかったのだ。それにしても、警備が少ないな。さっきドラゴンが落ちてきたみたいだけど、それと関係あるのかな?とか思いながらゼストは二人を見失わないように全速力で走る。既にメルククゥのことは見失いかけているが、サリナさえ視界に入ってればいいだろう。

キキィ、とサリナが急に止まった。

 

「−−−こっちからシオンの匂いがする!」

 

謎の嗅覚を働かせたサリナはさっきの十倍の速度で走り始めた。もちろんゼストは追付けるはずもなく見失ってしまった。

 

「−−−ま、それはそれでよかったかもな。ここでお前らと会うとはな」

 

背後、二つの人影に向かってゼストは振り返ることなく話しかけた。

 

「ぜすとぜすと」

 

「うらぎりうらぎり、しおんさまうらぎったうらぎった」

 

「しけいしけい」

 

「くびきりくびきり」

 

「.....相変わらずおっかないなぁ、オイ」

 

ガルシア十三人衆、双子の姉妹のフー(姉)とムー(妹)が紫色の髪と真っ赤な瞳を輝かせていた。

 

 

 

その頃、身の危険を感じ取ったシオンはセラフィールとリグロを連れて城の中の緊急脱出のために作られた抜け穴を全力で使って逃走ルートを計画しながら全力で移動していたとか。




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