北郷一刀の腕っぷしについてである。
幼少の頃より祖父に剣道の手ほどきを受けた一刀は、地元では剣道少年として知られていた。とは言うものの突出した才能があった訳ではない。その腕はかけた時間相応で、天性の輝きはないものの実直な剣を持つ努力家というのが一刀の評価だった。
だがその評価が活きるのも、この世界に来るまでの話だ。あくまでスポーツである剣道と、有事の際には相手を殺すことまで前提となる剣術では、根本の心構えからして大きく異なっており、さらに言えばその資本となる体力についても要求の度合がまるで違った。
試合でガス欠になっても精々黒星がつく程度であるが、有事の際にガス欠になることは自身だけでなく仲間や雇用主の危険を意味する。荀家に限らず、剣を持って戦う職業の人間に体力がないなんてことはあってはならぬことであり、持久力のある身体を作ることは仕事の大前提だった。
故に訓練と言えども、武装して行うのが常である。それはド新人であろうと客分であろうと変わらない。ド素人でかつ客分だった一刀はまず具足を付けることにも苦労したが、護衛部隊の人間は誰も手を貸さなかった。
珍妙な付け方をして不格好になったド新人を笑うのが、彼らの通過儀礼であるからだ。
何とか一人で具足を付け終えた一刀を全員で大笑いした後、さて仕事だと言わんばかりに懇切丁寧につけ方を指導していく。道具というのは正しく使ってこそ十全な機能を発揮するもので、具足の付け方一つでも、緩みがあってはいけないのである。
さて、具足をつけての訓練のその一日目。護衛部隊の面々と同じメニューをこなした一刀は、訓練が終了すると同時にぶっ倒れた。決してひ弱な方ではないはずの一刀だが、慣れない具足を着用しての訓練であること。そも一緒に訓練をしているのは体力が資本である本職の護衛要員であることが災いした。
彼ら彼女らにすれば新人がぶっ倒れるなどいつものことである。あぁ新人が倒れてるなぁと笑いながら井戸の水をぶっかけて元気づけたりもしたのだが、これに激怒したのが荀彧だ。その日はたまたま訓練の後に講義を入れていたのだが、体力の尽きた一刀はまともに勉強のできる状態ではなかったのだ。
ふらふらした様子の一刀に、それでも容赦のない罵倒を浴びせる荀彧は鬼気迫る程だったが、歯牙にもかけないような相手であればそも声もかけない。婿殿であるという噂は街の中からすら払拭されつつあったが、その見込みのある男性であるという認識は、荀彧を知る人間に共通のものだった。
普通であれば一生立ち直れないような罵倒であるが、足腰が立たないような状態であっても一刀は一々頷いて聞いている。この時点で普通の精神性ではない。荀彧と番になるような男性はどういう人間なのだろうと、彼女を知る人間であれば一度は考えるものだが、その二人のやり取りは彼らを非常に満足させるものだった。
そして荀彧からの物言いによって、その翌日から講義がある日は講義を先にするというスケジュールの変更が一刀の知らないところで決められた。
一刀が訓練をしている間、現状、彼に講義をすることが唯一の仕事である荀彧は自分の時間を持てる訳だが、その時間を荀彧は当たり前のように講義の準備に費やした。一刀に教えるレベルの話で今さら荀彧が学ぶことなどない。片手間にでも教えられるようなことばかりだったが、やると決めた以上誰が相手でも手を抜かないのが荀彧である。
一刀でも解るように黙々と難解な話をかみ砕いて編集していく荀彧に、功淑はそっと苦笑を浮かべた。これも仕事の内だと荀彧は言うのだろう。事実、仕事については完璧主義の荀彧だから、相手が一刀でなくても同じくらいの手間はかけるに違いない。
翌日の分の編集を終えた荀彧は今、功淑の淹れたお茶を飲みながら護衛部隊の長からの報告書を読んでいる。既に荀昆も目を通したもので、屋敷の主だったものは目を通しておくようにという通達も成されたものだ。
男の情報など頭に入れておきたくないのだが、家長の命令では仕方がない……という体で、苦々しい表情で報告書に目を通す荀彧を、功淑は微笑ましそうに眺めている。
その報告書によれば、一刀の評価はそう悪いものではない。
筋肉は薄いが、これは時間をかけて鍛錬をすれば解決するとのこと。剣の腕は、どこかで学んだことがあるらしく、悪くはないが微妙に癖があり、特に疲れてくると左の手首を狙いたがるという。筋が良いと言えなくもないが、特筆する程ではない。このまま訓練をすればそれなりのものにはなるだろうが、武人として光るものはない、というのが責任者の結論だった。
「何も取柄のない人間ってみじめよね……」
くくく、と邪悪な笑みを浮かべ荀彧は報告書を放り投げる。近頃は不機嫌な表情が定番である彼女にしては珍しい機嫌の良さそうな表情に、功淑は済まし顔で椀にお茶を足した。
「北郷様にも取柄はあるかと存じますよ。お優しいところとか」
「ああいうのは、八方美人とか優柔不断って言うのよ」
一転、今度は不機嫌な表情でお茶を啜る。この荀彧という少女は基本的に、他人が一刀を褒めるところを聞くのが嫌いなのだ。かと言って、自分が褒める訳でもない。まるで、北郷一刀の評価が常に最低でないと気が済まないと言わんばかりに、本人の前は元より他人の前でもこき下ろすのである。
そんな辛口評価の荀彧であるが、護衛部隊の長が一刀の武術の腕前について論じたように、彼の学識について同様の報告書を荀昆に提出していた。末尾に署名の入った、正式なものだ。
荀彧の一刀に対する評価は、それはもう酷いものだった。広く家人のために記載した報告書は、そのほとんどが一刀への罵詈雑言で埋まっていた。これでは公平も公正もあったものではない。これでも、彼女が直接一刀に並べる罵詈雑言に比べれば大分控えめに表現されているのだが、初めて読む人間はそのインパクトに圧倒され、そこまで配慮が回らないだろう。
普通の人間は、この報告書を書いた人間はよほど調査対象のことが嫌いだったのだろうと、苦笑して報告書を閉じるのだろうが、普段から一刀と荀彧のやり取りを見ている人間はまた別の感想を持つことになる。その原因は、罵詈雑言で埋め尽くされた報告書の最後を結ぶ言葉にある。
努めて難しい言葉で装飾され若干意味の取りにくい文章になっているが、要約するとこういうことだ。
『こんな奴を外に出したら荀家の恥だ。こんな奴は精々私の目の届く所に置いておいて、一生奴隷のようにこき使ってやるのが妥当である』
家人たちの間に、生暖かい微笑みが広がったのは言うまでもない。いっそ、仕官の際に傍仕えとして連れていく可能性もあるのでは、という期待すら持ちあがっていた。
出自について全く不明という不安な所はあるにはあるが、家人が知る限り、あれだけ荀彧と接していて音を上げないどころか好んで近くにいようとする奇矯な精神を持った男性は、今のところ一刀だけだ。血を残すためにも、荀彧には適当なところで子を成してもらいたいというのが荀昆を含めた家人全員の願いであるのだが、今までは男の影すら全くなかったのである。
北郷一刀は荀彧の前に舞い降りた最初の可能性だ。たかがこれだけでと他人は思うかもしれないが、彼女の性格を考えたらこれが最初で最後ということも大いにありうる。家人が一刀にかける期待は計り知れない。
これで少しでも、荀彧の方に少女らしい反応でもあれば勢いに任せて押し切るという選択肢もないではなかったのだが、こういう文章や行動の端々にたまに見せる態度以外は、相手を嫌っているとしか思えない発言を連発している。祝言を勧めるにも口実というものが必要なのだ。
他の男性と比べて、特に甘い態度を取っている訳でもない。むしろより気合を入れて罵倒している節すらある程だ。これでは勧めようにも勧められない。
結果として、北郷一刀は荀彧に他の男性よりも相対的に近づくことのできる稀有な男性である、という資質以外には、特に見るべくところはないと結論づけられた。
こと、人材に関する育成、取集を主にしている荀家としては、この時点で見るべきところはほとんどなくなっているが、荀彧を助けたという功績そのものは消えることはない。
家としては別にいつまでもいてくれて良かったのだが、勉強が進むにつれ、警備の訓練に慣れてくるにつれ、一刀の内面にはそろそろ旅立たなくてはという気持ちが強くなってきた。
その気持ちが言葉として表面に出てきたのは、荀彧の元に曹操から直筆の文が届いた時である。月日にして二十五日。この日、北郷一刀は荀家を出ようと心に決めた。
「そろそろ旅に出ようと思うんだ」
「別に良いんじゃない?」
会話はそれで終わってしまった。まさかあの荀彧が引き留めてくれると思っていた訳ではないが、ここまで無味乾燥だと流石に肩すかしである。それなりに意を決していた手前、受けるダメージもそれなりだ。思いつめた顔で口を開いたと思ったら、どんよりした顔になってお茶を啜る一刀に、苦笑を漏らしたのは功淑だった。
「どこか、行く宛はおありなのですか?」
「黄巾との決戦が北部で行われる見通しって話だから、それを避けて進もうかと。行けるなら一度洛陽に行って、それから南に行ってみようと思うんだけど」
「洛陽までなら出入りの商人に着いて行けば問題ないでしょう。あちらも護衛を雇っていますから、お一人よりは安心です。ですが南に行くとなると、誰か旅の人でも捕まえるのが心強いかと存じますが……」
心当たりはおありですか? と功淑が視線で問うてくるが、無論のこと一刀にそんなものがあるはずもない。こちらにきてできた知り合いは、荀家の人間とその関係者のみだ。街にもほとんど出ていないから、交友関係は全くと言って良い程広がっていない。それに加えて、
「あんた、路銀はどうするの?」
荀彧の発言に、一刀は言葉を失った。全く考えていなかった、と顔に出してしまった一刀に、荀彧は心底失望したという様子で深々と溜息を吐く。荀彧がぐさぐさと一刀の心を容赦なく刺していくのはいつものことだったが、功淑の目から見ても、今日の荀彧は当たりが強いような気がする。
念願叶って曹操の処に仕官が決まった。それで浮かれているというのもあるのだろうが、一刀が一人で何処ぞに旅立ってしまうという事実が、彼女の心を波立てているのだと双方の関係者としては思いたいところである。もしかしたらという期待も込めて、家人は荀彧に内緒で彼が傍仕えになっても良いように準備も進めていたのだが、結局、荀彧の方からはその申し出はなかった。相も変わらず、一刀との距離感の掴めない少女だ。
「……仕事をしながらってことになるかな」
「普通は路銀を作ってからそういうことを言うべきだと思うんだけど?」
荀彧にちくちくと文句を言われながらも、一刀は一言も彼女に路銀を出してくれとは言わなかった。立場を考えればどういう形にしても、荀家が金を出してくれるというのは一刀も理解している。それでもそれを口にしないのは、義理堅いというべきか世渡りが下手というべきか。
それを好意的に解釈した功淑は前者として捉え、それを欠点として見た荀彧は後者として捉える。
「これは内緒のお話なのですが、こちらを立たれる際にはいくらかお渡しするように奥様から言付かっておりますよ」
「準備の段階からそれをアテにするのもな……自分で言いだして置いて何だけど」
北郷一刀の現代人的な小さなプライドを満たすのを目的とするのであれば、どういう形であれ金を作ってから旅立ちの話を切り出すべきだったのだろう。だが、荀彧の就職が決まり彼女が近い内にこの家を出ていくという。いつまでも世話になる訳にはいかないのだ。このタイミングを逃してしまったら、この居心地の良い場所にいつまでもいたくなってしまうだろう。出ていくとしたら今しかないのだ。
「そういう無計画なところ、あんたらしくて良いんじゃない? 私は支持するわよ。私がいない時に私の実家に、あんたがいるっていうのも嫌だし」
一刀にとっては無計画でも、荀彧にとっては渡りに船だった。自分で言った通り、実家に一刀が居続けるというのは彼女にとってあまり気持ちの良いことではなかったし、一刀は金の問題を気にしているようだが、こういう時にいくらか金を包んでやるのは、荀家の経済力を考えれば普通のことだった。
型どおりのことを拒否されて、一刀の旅立ちが遅れるのもそれはそれで困る。荀彧が支持したことによって、一刀にとっては些か不本意な形ではあるものの、旅立ちは確定となった。
そして同時に、荀彧よりも早く出立することも確定となる。袁紹のところから出戻ったとは言え、将来を嘱望されている人間が有力者の元に仕官するのである。この時代だ。全国に散っている親類を集めるのは骨だが、地元の有力者を集めてのパーティーくらいは開かれる。
荀彧はそれの後に出発する。先方の曹操をあまり待たせる訳にもいかないから、彼女が旅立つのはおよそ一週間の後ということになる。しかも、その間は本人は元より家人も忙しくなる。自分がいない家に滞在するのはムカつくという荀彧の要望を叶えるのであれば、旅立ちはすぐにでもしなければならない。
「明後日に旅立つってのは可能かな?」
「急な話ですが、ちょうど洛陽に向けて旅立つ商隊がございます。その馬車に乗せてもらえるよう、手配をしておきましょう」
「ありがとう功淑。助かるよ」
「とんでもございません。ですが、北郷様がいなくなられると、寂しくなりますわね」
「私は清々するけどね」
二人の少女の反応は対象的である。この期に及んでもツンケンした態度の荀彧に寂しさを憶えなくもないが、これこそが荀彧と思い直すことにした。出立が決まれば、後は挨拶回りである。功淑を伴って荀昆に会いに行き、できるだけ早く出立するという旨を伝えに行く。
当然、荀昆は引き留めたが、これから仕官する荀彧のためという建前を持ち出されると、それに乗らざるを得なかった。へそ曲がりの荀彧の内心など解る訳もないが、本人は一貫してさっさと叩きだせという趣旨の発言を続けている。余計な気を回して余計にへそを曲げられたら、目も当てられない。
それに今ならば本格的に忙しくなる前に、一刀の出立に荀彧を立ち会わせることができる。流石に命の恩人である。その出立に立ち会うのまで嫌だとは言わないだろう。
良くも悪くも苛烈な性格をしている娘に心中で溜息を吐きながら、荀昆は一刀の旅立ちを認めることにした。
家主に挨拶が済めば後は早い。翌日に小さな酒宴が開催され、さらに翌日に出立である。ほとんど屋敷から出なかったから、挨拶に行かなければならないような人はなく、元より身体一つでこちらに来たから整理しなければならない荷物はほとんどない。
身の回りの物は餞別としてもらった。服がいくつかと、荷物を入れるための大きな鞄。今は着なくなった制服もここに詰められている。功淑が教えてくれた通り、荀昆は路銀を持たせてくれた。しばらくは遊んで暮らせるだけの額であるが、これが正真正銘の生命線である。これがなくなれば素寒貧になるのだ。その前にどうにかして暮らせるだけの手段を見出さなければならない。
ついで、荀昆は紹介状を二通書いてくれた。
一つは商隊宛てのもの。この人間は我が家の関係者だから、荷台に空きがあるようだったら混ぜてやってくれという趣旨の言葉が書かれている。これを見せれば荀家と取引のあるところならしばらくは一緒に旅をしてくれるだろうと保証してくれた。
もう一通は、洛陽に住んでいる彼女の孫宛てのものだ。『さる高貴なお方』の家庭教師をしているとかで、荀彧を除けば現状、一族の出世頭であるという。そんな偉い人に仕えているなら時間は取れないのでは、と疑問に思った一刀が問うてみると、彼女もその孫に会えるかまでは保証しかねると答えた。
ただ、屋敷には家人がいるはずだから、滞在の間の宿くらいは貸してくれるだろうと、こちらは保証してくれた。結局荀さんちにお世話になるのか、と旅立つ前から微妙に情けない気持ちになりつつも、好意はありがたく頂いて置くことにした。
警備隊の面々は、一刀のために具足を一式プレゼントしてくれた。訓練で使っていたものなので武将が身に着けるような本格的な物と比べるといくらか格が落ちるが、防具としての性能は悪いものではない。あるのとないのでは大きな違いがあると、一刀は木剣で撃たれながら学んだ。
それから同じく訓練で使っていた剣が一本である。これも別に良い剣ではないが、武装しているという事実は良くも悪くも相手にプレッシャーを与える。1の危険を対価に3の安全を買った、とでも表現すれば良いのか。武装していたところで襲われる時は襲われるし、運が悪ければ殺されて死ぬ。それが世の摂理というものである。
どれだけの猛者であっても、死の危険を完全に排除することはできない。一刀のような中途半端な実力であるなら尚更だ。護衛部隊の面々から口を酸っぱくして言われたのは、危険と思われる者、物にはなるべく近づかないことと、なるべく集団で旅をすることだ。
元気でな、という励ましてくれる彼ら一人一人と握手して、最後に残ったのは二人だ。その片割れである功淑が一歩前に出る。
「どうか健やかに。北郷様のご健康を、心から祈っております」
「俺なんかに良くしてくれてありがとう。功淑も元気で」
「…………本音を申し上げますと、こんなに早くお別れするのはとても残念です。少しですけど、私、北郷様のこと良いなと思っていたんですよ?」
「嘘でも冗談でも、功淑みたいな子にそう言われると嬉しいよ」
「ありがとうございます。お世辞でも冗談でも北郷様のような殿方に、そういってもらえると嬉しいです」
次いで、一刀の前に立ったのは荀彧である。仏頂面だ。ここにいるのも嫌だというくらい不機嫌な顔に、一刀は逆に安心した。にこやかな顔だったり、泣き顔なんて浮かべられたら、それはそれで落ち着かない。不機嫌な仏頂面でこそ、荀彧だ。
「私には大きいから、あんたにあげるわ」
荀彧は無造作に、袱紗を差し出す。受け取るとずしりと重たい感触があった。紐を解いて中を見ると、それが剣だと分かる。鍛練で使っていた剣よりも少しだけ短い。取り回し易さを重視したのだろう。装飾などは一切なく実用一点張りの剣だった。有事の際、小柄な女性でも取り回せそうなサイズである。
「こんなもの、もらって良いのか?」
「私が良いって言ってるんだから、良いのよ。私は別に、あんたと違ってバカなことに首を突っ込んだりはしないもの」
「……解った。ありがたくもらっておくよ」
一刀は、それで折れることにした。荀彧からの贈り物である。来歴は気になるが、その希少さに負けてしまった。口にすれば荀彧は気持ち悪いとでも言うのだろうか。言わない気もする。きっとゴミでも見るような目で見つめてくるだけだ。
その光景を少しだけ想像すると、目の前にそれと同じ顔をした荀彧がいた。想像が現実になったのかと軽く目を見開く一刀に、荀彧が実に冷たい声で告げた。
「そんな気持ち悪い笑顔を見なくても良いんだって思うと、清々するわ。あんたのことだからロクな一生は歩まないんでしょうけど、私に迷惑かけることなく精々平穏無事に暮らしなさい」
「栄達を祈ってるよ」
「言われなくても。その内、私の名前はあんたの耳にだって届くでしょう。曹操様の名前と一緒にね」
「ああ。凄く、楽しみにしてる」
村に行く前に寄り道をします。
これによりある人とある人の出番がかなり早まります。