この素晴らしい世界に魔法を!   作:フレイム

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今回は長編

カズマ一行との合流(後編)

誤字脱字お気をつけください。


この魔法使いに仲間を!

「な、何をしてるんですかアクア様…!どうしてこんな所に…!」

俺は息を切らしながら、生涯、忘れる事はない女神。アクアの顔を見ながら言う。

「え?え?なんなの?カズマ、今私はどういう状況なのか詳しく説明して頂戴!」

アクアはオロオロとしながら、三人組の一人の、俺とそこまで年齢が変わらなさそうな『カズマ』という男に話を振る。

「いや…俺も混乱してるんだが、ところでアンタは…」

『誰?』と言いかけた所で、地面から、

ボコッ!ボコッ!ボコッ!

地面から、三匹の新しいカエルが現れた。

「ちょ…この距離マズいんじゃ…」

カズマが言い終わる前に、カエルは一歩ずつ近づいてくる。

「いや、距離をとってさっきの魔法使いの子に魔法を撃ってもらえば…」

俺は、魔法使いの方を振り向くと同時、そのまま動きを止める。

そこには魔法使いの少女が倒れていた。

「ふ……。我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえに、消費魔力もまた絶大。……要約すると、最大魔力容量を超えた魔力を消費したので、身動き一つ取れません。近くからカエルが湧き出すとか予想外です。やばい食われます。すいません、ちょ、助け……ひゃう!?」

えぇー…。

あっさり食われた魔法使いちゃんを尻目に考えた。

いや、ここにはアクアがいるじゃないか。

女神なら、勿論かなりの戦闘能力があるだろう。

ここは、俺の魔法で巻き添えを食らわせるよりも、アクア頼みがいいだろう。

そんな期待を裏切るように、俺はアクアの方を振り向くと、絶句した。

三匹の内の二匹の口から、人の足が見えている。

くそ…ここはカズマという男と、連携して三匹を倒さないと…

 

まてよ…?ここで俺が攻撃する必要はない。

カズマの装備を見ると、ショートソードを腰に差している。

相手の動きを止める魔法が一つだけあった…!

「カズマさんといったっけな!目を閉じててくれ!カエルの動きを止めるからその剣で三匹を頼む!」

カズマは俺の命令通り、すぐに目を閉じ、剣を構える。

「いくぞ…『フラッシュ!』」

凄まじい閃光が辺りを包み、カエルの視力を一時的に奪う。

 

 

「うっ……うぐっ……。ぐすっ……。生臭いよう……。生臭いよう…………」

 一匹は魔法使いの少女の魔法で消滅した為、俺が倒した一体と、カズマが倒した三体のカエルをギルドの職員に引きずってもらいながら、粘液まみれのアクアがめそめそと泣いている。

「カエルの体内って、臭いけどいい感じに温かいんですね……。知りたくもない知識が増えました……」

同じく粘液まみれでそんなことを言っている魔法使いちゃんは、何故か俺の背中におぶさっていた。

しかし、魔力を使い過ぎると、生命力までも削る事になるというのは危険だな…倒れるぐらいならまだマシだとは思うのだが、やりすぎると命に関わる事もありそうだ。

 

「えっと…魔法使いちゃん?今後はあの魔法は使わない方がいいんじゃないか…?」

俺の言葉に、背中におぶさった魔法使いちゃんが、俺に掴まっている手に力を込めた。

 

「…………使えません、それと、私はめぐみんです。魔法使いちゃんじゃないです。」

「……あだ名か?」

「いいえ?本名ですよ?」

また俺は絶句しかけたが、めぐみんが言ったことがどうも引っかかる。

「ん…?何が使えないんだ?」

めぐみんはまた俺に掴まる手に力を込め、さらにひっついてきた。

「………私は、爆裂魔法しか使えません。他は、一切の魔法が使えません」

「……マジか」

「……マジです」

俺とめぐみんが静まり返る中、今まで鼻をぐずぐず鳴らしていたアクアが、ようやく会話に参加する。

「爆裂魔法以外使えないってどういう事?爆裂魔法を習得できる程のスキルポイントがあるなら、他の魔法を習得していない訳がないでしょう?」

スキルポイント…?

そういえば、ギルドのお姉さんがスキル習得がどうとか言っていたな。

そんな俺の顔を見て、アクアが説明してくれる。

 

「スキルポイントってのは、クラスに就いた時に貰える、クラススキルを習得する為のポイントよ。優秀な者ほど初期スキルポイントは多くて、このポイントを振り分けて様々なスキルや魔法を習得するわけ。例えば、超優秀な私なんかは、まず宴会芸スキルを全部習得し、それからアークプリーストの全魔法を習得して、更にポイントが余ったから近接格闘スキルまで取ったわ」

「……宴会芸スキルって何に使うものなんだ?」

カズマがツッコミを入れるが、無視して先を続ける。

 

「クラススキルは、個人によって習得できるスキルが限られてくるわ。例えば水が苦手な人は氷結や水属性のスキルを習得する際、普通の人よりも大量のポイントが必要だったり、最悪、習得自体ができなかったりね。……で、爆発系の魔法は複合属性って言って、いくつもの属性の魔法が複雑に絡み合っている系統の魔法。つまり、爆発系の魔法を習得できるくらいの者なら、他の属性の魔法なんて簡単に習得できるはずなのよ」

「爆裂魔法なんて上位のものが使えるなら、下位の他の魔法が使えないわけが無いって事か。……で、宴会芸スキルってのはいつどうやって使うものなんだ」

 俺の背中で、めぐみんがぽつりと言った。

「……私は爆裂魔法をこよなく愛するアークウィザード。爆発系統の魔法が好きなんじゃないんです。爆裂魔法だけが好きなのです!」

その意味は俺には分からないが、アクアは真剣な面持ちでめぐみんの独白に耳を傾けている。

 いや、そんな事よりも、俺もカズマと同じように宴会芸スキルとやらの方が気になっているんだが。

 

 

「もちろん他のスキルを取れば楽に冒険ができるのでしょう。火、水、土、風。この基本属性のスキルを取っておくだけでも違うでしょう。……でも、ダメ。私は爆裂魔法しか愛せない。例え今の私の魔力容量では一日一発が限界でも。例え魔法を使った後は倒れるとしても。それでも私は、爆裂魔法しか愛せない! だって、私は爆裂魔法を使う為だけに、アークウィザードの道を選んだのだから!」

「素晴らしい! 素晴らしいわ! その、非効率ながらもロマンを追い求めるその姿に、私は感動したわ!」

 

……まずい、どうもこの魔法使いはダメな系だ。

 

そう思っていると、カズマが口を開き、

 

「そっか。多分茨の道だろうけど頑張れよ。お、そろそろ街が見えてきたな。それじゃあ、ギルドに着いたら今回の報酬を山分けさせて貰おう。うん、まあ、また機会があればどこかで会う事もあるだろ。では、ギルドに着いたら解散、という事で、報酬はちゃんと四等分だから安心してくれ」

 

「ふ……。我が望みは、爆裂魔法を放つ事。報酬などあくまでおまけに過ぎず、何なら山分けでなく、食事とお風呂とその他雑費を出して貰えるなら、無報酬でもいいと考えている。そう、上級職であるアークウィザードである我が絶大な力が今なら食費と諸々のみ! これはもう、長期契約を交わしてもいいのではないだろうか!」

 

めぐみんが盛り上がっている所に、俺が口を開く。

「あれ?俺も爆裂魔法使えるぞ?」

その言葉を聞いためぐみんは、手を首に回して、首を絞めてくる。

「ちょ…ぐ、ぐるじい…か、カズマ…たずけで…」

カズマは俺の首を絞めていためぐみんの腕を解き、話を続ける。

「ってことは…えっと」

「あぁ、俺の名前はエンドウユウキ、ユウキで頼む。」

「えっと…じゃあユウキ、ユウキは他の魔法を使えるのか?」

「あぁ、一応初級、中級、上級魔法はすべて使えるぞ?」

それを聞いたカズマは、無言で。

(´・ω・`)b

それを見ていためぐみんは、急に大声を上げ、

「見捨てないで! もうどこのパーティも拾ってくれないの! ダンジョン探索の際には、荷物持ちでも何でもします、お、お願い、私を捨てないでー!」

 

俺の背中から離れようとしないめぐみんが、捨てないでだのと大声で叫ぶ為か、あらぬ誤解をしている通行人達がこちらを見てひそひそと噂していた。

「やだ……。あの男、あの女の子を捨てようとしてる……」

「隣には、なんか粘液まみれの女の人に、あんな巨大なカエル運ばせてるわよ」

「あんな女の子を弄んで捨てるなんて、とんだクズね。見て? 女の子二人は粘液でぬるぬるよ? 一体どんなプレイしたのよあの変態」

 ……間違いなくあらぬ誤解を受けている。

 アクアがそれを聞いてニヤニヤしているのが憎たらしい。

 そして、めぐみんにもそれが聞こえた様で。

 めぐみんは口元をにやりと歪め……

 

「どんなプレイでも大丈夫ですから! 先程の、カエルを使ったヌルヌルプレイだって耐えてみせま「よーし分かった! これからよろしくなめぐみん!」

カズマはめぐみんの声に被せ、大声で約束した。

 

「はい、確かに。ジャイアントトードを三日以内に五体討伐。討伐を確認いたしました。ご苦労様でした」

 冒険者ギルドに報告を終え、規定の報酬を貰う。

 

粘液にまみれたアクアとめぐみんは、大衆浴場で追いやり、俺とカズマはギルドの一角で座っていた。

 

「えっと…カズマも日本人…だよな?」

「あ、あぁ…俺はサトウカズマ、神々からの贈り物やなんやらでアクアをこの世界に引きずり込んだんだ。」

「じゃあ…俺はエンドウユウキ、神々からの贈り物で魔法使いの能力を貰ったんだ。」

 

改めて自分のカードを見ると、そこには冒険者レベル6とある。

一応あのカエルは中級の冒険者が狩る相手らしい。

その為、4匹狩っただけで一気にレベル6にまで上がったのだろう。

ステータス欄の数値が多少は上がっているが、あまり強くなった実感は無い。

 

「……しかし、本当にモンスター倒すだけで、強くなるもんなんだなぁ……」

 

 カズマはそう呟いた。

 

「え…俺はレベル3なんだが…あぁ…カエルにとどめを刺したのはカズマだからか。」

 

そんなことを話していると、ギルドの職員が俺達のテーブルに今回の報酬を渡しにくる。

 

「はい、ではジャイアントトード四匹の買い取りとクエスト報酬を合わせまして、十二万エリスとなります。ご確認くださいね」

 十二万か。

 あの巨大なカエルが一匹五千円程での買い取り。

 そして、カエル五匹を倒して十万円。

 

十二万を四等分すれば一人三万、日当三万か。

最近まで土木工事現場で働いていた俺からすれば、申し分ない収入なのだが、命を懸けている仕事な以上、割に合っていない気がする。

 

しかし、ようやくこの世界で冒険者らしい、そんな経験ができたので、正直金にはそれほど気にしてはいない。

パーティも組める可能性がある以上、収入も安定するだろう。

俺は、めぐみん達が帰ってきた後、カズマと大衆浴場でクエストの疲れを癒し、馬小屋へ戻った。

明日は、カズマ達とギルドに待ち合わせる予定なので、今日の疲れを完全に取っておきたい。

うん、明日から頑張ろう。そしてまずはこの馬小屋生活をなんとかしたい…。

俺はそう心の中で誓い、ゆっくりと眠りに落ちた。




次回、ダクネス登場かも?

ちょっと前回の後書きと内容が違う気もするけど大丈夫だよね(震え)

誤字脱字修正していきます。

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