この素晴らしい世界に魔法を! 作:フレイム
今回はかなり短めです。
「おーし、ご苦労さーん! 今日はこれで上がっていいぞ! ほら、今日の日当だ」
「どうもです。お疲れ様でしたー!」
親方の仕事の終了の合図で、俺は日当を受け取ると挨拶とともに頭を下げる。
「では皆さんお疲れ様でーす!」
「おーう、お疲れさん!また明日も頼むぞ!」
俺は先輩方にも挨拶をすませ、現場を後にした。
ところで、何故俺はこんな事をしているのか、
それは数時間前の出来事…
俺は無事に異世界に転生し、初心者冒険者の町、アクセルに転送された。
その世界には車や高層ビルなどはもちろん存在しない為、目の前の景色、空がとても広く感じた。
その町は中世ヨーロッパの様な街並みが広がっており、俺の子供の頃の、探究心の様なものが歓喜の声を上げるほどであった。
俺は街並みをじっくりと観察しながら、ギルドを探していたが、近くにはそのような物は見当たらない。
というか、街ですれ違う人々からジロジロと見られている気がする。
やはり、俺の格好はこの世界では珍しい物なのか。
俺はなんとか街の住民にギルドの場所を教えてもらい、冒険者になろうとしたのだが…。
やはり現実はそう甘くない、
ギルドの職員は、登録手数料が必要だと言ってきた。
確かに、正体も分からない奴を冒険者にするわけにはいかないとは思うが、今の俺にとっては最悪な状況だ。
当然、俺はこの世界の通貨なんか持っていない。
ズボンのポケットに入っていた財布を見ても、日本の通貨……いわゆる円の小銭と、数枚の千円札だけだ。
俺はなんとかギルドの受付から紹介された、町の城壁を補強、強化する仕事にありつける事になった。
俺は特別運動が苦手な訳ではないが、周りはゴツい連中ばかりだ。初日はついていくのがやっとだったが、日を増すごとにだんだんと仕事をすることの楽しさを身につけていき、仕事仲間ともすぐに打ち解け、一緒に飯を食う友人になれた。
生前はコミュ障だった筈なのだが、異世界の自由さが俺には最適という事なのかもしれない。
冒険者登録手数料は千エリス、
エリスというのはこの世界の通貨であり、日本でいう円と同じだ。
扱いとしては一エリス=一円らしい。
俺は仕事仲間と別れた後、日当が入った袋を開け、ちゃっかり時給の計算を始めた。
朝9時から17時までの労働、休憩もあり、昼飯付きで5000エリス。
休憩は一日の労働でおよそ合計一時間、労働時間は7時間か…
大体時給は700エリス弱…
飯付きなのはありがたいが、肉体労働の分コンビニのバイトとかの方がマシな気がする。
俺はそうブツブツ呟きながら、仕事終わりに街の大衆浴場に向かう。
入浴料は600エリスと、日本に比べれば割高であるが、風呂好きな日本人の俺にとっては、労働後の風呂は高くてもやめられない。
「ふぅー…生き返るわー…」
熱い湯船に肩まで浸かり、一日の疲れが取れていく感覚を楽しむ。
異世界に風呂など高級品だと思っていたが、俺の仕事現場にいた仕事仲間もチラホラ見える。
ゆっくり疲れを取り、夜にはまた、酒場になるギルドに仕事仲間と一緒に向かう。
この世界では、酒に対する法律はないらしい。
自称、健全な高校生な俺は、二十歳になる前に飲むとは思わなかった酒をふっきれた様に飲みながら、ギルド自慢のカエルの定食を晩飯として食べていた。
この世界ではカエルやトカゲを食べるという文化があるので、聞いた時は正直ドン引きしていたが、こんなに酒と合い旨いのであれば、カエルだろうが関係ない。
あっという間に晩飯を食べ終えた俺は、財布の中身を確認しながら、駆け出し冒険者御用達の馬小屋に寝泊まりすることになった。
財布の中身は、風呂に600エリス、晩飯に1000エリス使い、残金は3400エリスか…朝食に600エリス使っているため、一日の収入は2800エリス…!
なんという貧乏魔法使い。
だが、これも冒険者になる為の訓練と思えばいい。
恐らく冒険者になるための基礎体力もこの仕事で大分付いているだろう。
財布の中身はこの一週間、贅沢せずに一万9000エリスほど手元に残っている。
一万エリスぐらいあれば、基本装備ぐらいは揃うはずだ。
明日は仕事が休みという事で、朝一番でギルドに向かい、登録を済ませるつもりだ。
ついに魔法が使えるという嬉しさに、俺は遠足の前の日の小学生の様に気分が高揚していた!
次回から冒険者の様な展開になると思います()
というか主人公が全く喋っていない件
誤字脱字等修正していきます