この素晴らしい世界に魔法を!   作:フレイム

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二章八話

最近3000字越えが書けないのが厳しい所。

誤字脱字お気を付け下さい。


この魔法使いに元の平和を!

デュラハンから捜索を頼まれた魔王軍幹部――めいめいの最終確認先。『キールのダンジョン』は、アクセルから徒歩で半日ほどの場所に位置する、今では駆け出し冒険者の練習場所の様な扱いを受けているダンジョンだ。

この世界に存在する全てのダンジョンは、基本俺の様な魔法使いが攻略するのは非常に難しい。

なぜなら、ダンジョン内に蔓延るモンスターを始末する為に使用したつもりの魔法が、ダンジョンそのものを破壊してしまう事がありうるからだという。

そのため、カズマの様な盗賊スキル持ち、または職業が盗賊の者が活躍出来る数少ない機会なのだ。

勿論、カズマ達を連れて捜索に向かいたい所なのだが、いくつか問題が発生してしまうのが目に見えている。

正直に『魔王軍から頼まれた仕事』と言った方が楽だと思っているのだが、それだけでカズマ達に付いてきてもらえるのか。と聞かれれば返答に困る。

そんな面倒な事よりも先に、めぐみんにここ数日何をしていたのか、と聞かれた時の言い訳を考えていた方が良い気がしてきた。

 

時刻はまだ昼前だが、魔王城内では仕事に追われている様子の者が多く見受けられる。

両手に数十枚の書類を持ち、足元をふらつかせながら何処かに向かっている者。上司に朝から叱られたのか、俯きながら廊下を歩く者。数人の仲間と共に、木刀で剣の修練に励む者……。

魔王城内での自由行動はデュラハンから許しを得たのだが、万が一の為にと護衛の騎士が俺の背後に二人付いてくる形となった。

都合の良い二次元世界なら、魔族、または悪魔族の大人の雰囲気を漂わせる女性が魔王城内を案内してくれるものなのだが。

その両名が武装した状態で俺を警戒してくるので、普通に廊下を歩くのもままならない。

一応俺は魔王軍から、『客人』という扱いを受けているのだが、外では彼らと敵対する冒険者。しっかり警戒する彼らはそれほど優秀と言えよう。

明日まで時間はたっぷりとあるため、どうしても暇が俺を襲ってきてしまう。

俺の護衛に就いている二人の騎士も、俺から話掛ければ会話は成立する。

といっても、話しかけて得られた情報は魔王城内の巨大図書館の場所だけだが、本でも読めば少しは早く時間が経つだろう。

俺は早速、護衛二人を引き連れ、教えてもらった魔王城内の巨大図書館に向かった。

そういえば、廊下もそうだが、魔王城内の内装はほとんどが漆黒色で統一されている。

廊下の壁には一定間隔で夜に光を灯すためのランタンがぶら下がっており、いかにも魔王城内といった感じだ。

 

――先程から、すれ違う騎士達からの好奇の視線が集まっているのは気のせいだろうか。

確かこの世界では、黒髪黒眼の者は珍しいらしい。

古くからこの世界に伝わる説では、この様な者には大抵、常人を遥かに超える能力を備わっている物だというのがこの世界での有名な話らしいのだが、心当たりがありすぎるのが辛い。恐らく大昔に転生された者の影響だろう。

クエスト中に俺が着ていた服が湖に落ちた時に濡れてしまったため、一応魔王城に備え付けられていた(俺が寝ていた部屋にあった物)紅色と黒色が入り混じったローブを借りているのだが、周りは全身鎧を纏った者ばかりな為、極端に目立ってしまうので、黒髪黒眼の俺が好奇の目で見られているのだろう。

めぐみんの様な紅魔族が好んで使いそうな配色だが、日本で売っても若者に人気が出そうなデザインだ。何着か貰って帰ろう。

周りの騎士達の視線がそろそろ鬱陶しくなったので、俺はその場から逃げる様に、巨大図書館へ向かった。

 

――そこに広がっていたのは、最早図書館という概念を超えているのではないかと思う程の空間だった。

十メートルは超えると思われる本棚は俺の前に何重にも聳え立ち、まるで俺を威圧してくる様にも感じた。

広すぎるその図書館は、天井は微かに見える程度で、照明は天窓から注がれる日の光のみなのだが、読書をするには明るすぎず暗すぎず。書物を読むには最適な場所のようだ。

俺が天井を見上げている間に、天窓から注がれる光の影になる様に飛び回っている、人型の何かを発見した。

その影は、本棚に近づくのと地上に降りるのを機械的に行っている。この巨大図書館の司書達だろうか。

丁度こちらに近づいて来た影をよく見ると、サキュバスのお姉さん達によく似ている。いや、黒髪なのを除けばその姿は瓜二つだ。きっと、飛行可能な彼女らがこの縦にも広い図書館を管理しているのだろう。

十メートル近くあるその本棚の上の方に保存されている本はどうやって取りに行くのかという野暮な考えは異世界物には付き物だと思うが、この図書館では彼女らがそれを行っているらしい。木製の脚立にまたがって本を取るケースもあるが、俺は高所恐怖症を発症している為もちろん取れない。そこは今回安心してもいいだろう。

騎士達が慌ただしく働いている時間帯に図書館にいる者は少ないと思っていたのだが、魔法使いらしき服装をしている者がチラホラ見られる。

俺は入り口近くにあった本棚から適当に一冊の本を取り出し、魔王城を囲む森林を一望出来る窓際の席に腰掛ける。

俺が日本時代に小説を手に取り読む機会があったのは、小中学生時代の読書感想文の時ぐらいだった。

ネットが普及し始めてからネット小説は頻繁に読む様になったが、こうして図書館で読書、というのは俺にとって初めての事なのかもしれない。

小学生の頃に無理やり読まされていたと本とは違い、自ら選んで手に取った本は、最初の数行を読んでやめる。といった衝動に駆られにくい。

――時間を忘れる。この世界で、久々に経験した現象だった。

俺がその本を読み始めたのは昼前だった筈なのだが、今はすでに、窓から見える森林に隠れる様に、日が落ち始めていた。

そういえばこの時間まで何も口にしてないが、不思議と読んでいる間には体中の器官が麻痺しているようだった。空腹も喉の渇きもそれほど感じない。

小説、というよりは、この世界に流通している魔道具の発案者の考えが記された、伝記の様な物だった。

この世界の発展にもやはり、日本からの転生者が関わっている可能性がある。

伝記には、ほとんどが黒髪黒眼の者が発案、製作を担っていたと書かれていた。

過去の転生者に、“何かを創る”、そのようなチート能力を習得した者でもいるのか、日本の電化製品に類似した魔道具が現在のこの世界でも存在している。

今までにこの世界に転生した者が何人存在しているかは定かではないが、転生者の中には冒険者になる為のチートアイテムを持ち込んでいる者だけではないという事だ。

俺は読み終わった本を元の本棚に戻しに行っていると、体を急に動かした所為なのか、抑えられていた空腹感が一気に襲ってきた。

読み始めの頃にはいた魔法使いらしき者達も、既に図書館を後にしていた。皆、今頃は飯を食べている頃だろうか。

―――俺は、何だかんだ長時間俺の横で監視をしてくれていた騎士達を連れ、晩飯を胃に収めるべく、足早に自分の部屋に戻った。

 

 

 




誤字脱字修正していきます。

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