この素晴らしい世界に魔法を!   作:フレイム

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二章 五話 裁判後。

誤字脱字お気を付け下さい。


この魔法使いに財力を!

「おかしいだろおおおおおおお!いや待て、待ってくれ!何だよこの適当な裁判は!さっきまでの流れだったら俺もユウキと一緒に無罪だろ!もっとこう、皆が納得する証拠を持ってこい!」

「被告人!被告人はもっと言葉を慎むように!」

裁判長はそう言いながら、机を木槌で叩く。

「もういいです、それほどカズマをテロリスト呼ばわりすると言うのなら。この私が、本当のテロリストとはどういう物なのかを……ってちょっと!離して下さい!」

杖と紅い瞳が輝きだしためぐみんを見た警備員達が、慌てて取り押さえる。

「なあアクア、これどうすればいいんだ。俺には無罪が言い渡されたけど、このままじゃ納得いかないぞ」

カズマとめぐみんは警備員から取り押さえられている為、相談相手と言えばアクアしかいない。

結局ダクネスも、あのまま領主の方をジッと見つめているだけだ。

「おかしいわ!おかしいでしょうユウキ!全てを見通す私の瞳には、この裁判所に漂う邪悪な空気が見えるのよ!きっとカズマの判決も、その邪悪な力の所為に違いないわ!」

アクアは尚もそんな事を大声で言うが、先ほどの魔道具の反応で誰も耳を貸さない。

「ええい、その二人を別室に連れて行け!」

セナも立ち上がり、カズマとめぐみんをどこかに連れ出す様に指示を出す。

「静粛に!静粛に!………静粛にって言ってんだろうが!」

裁判長がとうとうキレて、怒鳴りながら木槌を投げる。

警備員がカズマとめぐみんを連れて行こうとした、その時だった。

 

「――裁判長。これを」

 

これまで、ずっと喋る事もなく黙っていたダクネスが、胸元から何かを取り出す。

それは、紋章のみたいな物が付いたペンダント。

俺にはそれが何か分からなかったが、裁判長や領主にはそれが何か分かったらしい。

「そ、それは……!あ、あなたは……」

驚きで立ちあがった裁判長が、目を見開いてペンダントを見る。

法廷内の者からの注目を浴びるダクネスが静かに言った。

「この裁判は、申し訳ないが私に預からせてくれないだろうか。裁判自体を白紙にしろと言っているのではない。時間を貰えれば、この男が魔王軍の者ではないという事を証明してみせる。そして、あなたの屋敷も弁償させよう」

ダクネスが見せる紋章を凝視したまま、固まっている裁判長とセナ。

ちょっと待て、この状況が読み込めていないのは俺だけか。

そんな中、領主だけは幾分怯みながらも抗議の声を上げてきた。

「し、しかし……!いくら、あなたの頼みでも……!」

「アルダープ。被害者であるあなたに借りを作る事になるな。私にできる事なら何でも一つ、言う事を聞こう。訴えを取り下げてくれと言う訳ではない。ただ、待ってほしい」

ダクネスがそうに告げると、その場に立ち上がっていた領主はゴクリと唾を飲み込んだ。

「何でも……!なな、何でも………!」

「そう、何でもだ」

その言葉に、領主は目をギラつかせてダクネスの肢体を舐める様に見た。

そして、領主は再び椅子に腰掛けると。

「いいでしょう、他ならぬあなたの頼みだ。その男の猶予を与えましょう」

 

――裁判所から解放されたカズマが、後をついて来るダクネスに尋ねた。

 

「何だったんだ?ていうか、あのアルダープっておっさんと知り合いだったのか?」

「……まあな。私がまだ子供の頃から、私に対して偏執的な執着を見せる男だ。妻を亡くしてからは、何度も婚姻を申し込まれたものだ。私の父が、歳の差を理由に毎回断っているのだが」

…ん?子供の頃から偏執的な執着を、って。なにそれ怖い。

「……ってダクネス。そんな奴に何でも言う事を聞くって約束して大丈夫なのか!?あの領主、ダクネスを見る目が色々とヤバかったぞ。何か凄い事を要求されちゃうんじゃないのか……?」

「……。ふふ…す、凄い事か……!」

「ダ、ダクネス……。俺の心配を返せよ……」

頬を火照らせハアハア言い出した変態に引きながら、俺は数日ぶりの帰路に着いた。

 

 

――ダクネスの交渉の結果、俺達に命じられた課題は二つ。

一つは、カズマと俺が、魔王軍の者ではないと証明する事。

裁判では無罪を言い渡された俺だが、疑惑の一つでも消しておいた方がいいだろう。

そして二つ目の課題は、領主の屋敷の弁償だ。

まずはどうにか屋敷の弁償代を作らなければならない。

俺達が屋敷に戻った翌朝に。カズマはアクアと共に、いい商売を思いついたと言って屋敷を飛び出し、ウィズの店に向かった。

もちろん俺には商売などカズマの様な器用な事が出来ない為、朝一番にクエストに出発した。

 

スノウグリフォン討伐。

 

以前、雪精討伐に向かったあの雪原近くの雪山でのクエストだ。

季節もほぼ春に移り始め、雪山の雪も少なくなっていたのが好都合だが、相手は上級職の冒険者でも手を焼くほどだと聞いたが……。

本音を言ってしまえば、報酬の良さばかりに目が行ってしまい、詳細をよく見ずに引き受けてしまったのだが。

雪山の少し奥に入った所で。

「……ん?あれが目標か…?」

吹雪で視界が封じられている訳ではないので、遮蔽物の少ない雪山では動いている物をすぐに捉えやすい。

足場の不安定な雪の坂に、今回のクエストの目標がいた。

「早く終わらせて帰りたい!『ライトニング』っ!!!」

俺の杖から放たれたそれは、目標を一撃で仕留めた。

そして俺の冒険者カードには、≪スノウグリフォン/1≫の数字が。

「なんだ、意外とあっさり終わって拍子抜けだな。なんかこう、乱入とか、群れとの遭遇とか……」

そう言いながら俺は、スノウグリフォンの毛皮等を袋に詰める。

厳しい環境下で活動するスノウグリフォンのその毛皮は、耐寒性能が高く、王都の貴族や王族が愛用しているというのも少なくないそうな。

そのため、傷がつかない様にして持ち帰れば、報酬とは別に金になるという訳だ。

一粒で二度おいしい、そんな相手。いや。それが育つ環境を完全に舐めていた。

スノウグリフォンのいた雪の坂から。

ゴロゴロゴロゴロ………

雪の勢いは、堰を切った様な速さで。

「やっぱり雪崩か!どこかでフラグが立ったと思ったよ!」

俺が叫び終わる前に、雪崩は襲いかかって来た!




次回は長くします……。

誤字脱字修正していきます。

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