この素晴らしい世界に魔法を!   作:フレイム

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二章 四話 裁判終結編。

誤字脱字お気を付け下さい。


この裁判に終結を!

これは、大変マズい状況なのかもしれない。

いや、俺は全く関係ないと思うのだが。

「という事でクリスさんは、サトウカズマ被告に、公衆の面前でスティールを使われ、下着を剥がれたと、この事に、間違いはないですね?」

「えーっと、ま、間違いではないんだけども!でも、あれは事故だったっていうかね!?」

「事実だったという確認が取れただけで結構です。ありがとうございました」

「ええっ!いやちょっと待って!あたしは別に、もう気にしてないんだけど……!」

セナが手早く質問を打ち切り、銀髪の……クリスは法廷から追い出される。

クリスが退廷させられた後には、なぜ証人として呼ばれているのか、そこにはダストが立っていた。

カズマがダストに対して嫌がらせをしていたとは思えないのだが。

ダストが、俺達二人に向けてようと気さくに挨拶する中、

「この男は、次に控える裁判の被告人です。裁判長もよくご存知かと思いますが、しょっちゅう問題を起こして裁判沙汰になっているチンピラです」

「おうこら、裁判を待ってる最中にいきなり呼ばれて来てみれば、また随分な挨拶じゃねーか!そのでけえ乳揉まれてーのかおい!」

セナの言葉に、沸点の低いダストが即座にキレた。

裁判長がダストのゲスい発言に顔をしかめる中、セナは俺達の方を指し示すと。

「ダストさん。あなたは、あそこにいる被告人らと仲が良いと聞きました。間違いはありませんか?」

「間違いなんてある訳ねーだろ。ダチだよダチ、男として同じ秘密を共有する、親友だ。特にカズマとは、一緒に酒飲んだりした仲だ」

セナはそれを聞き、俺達に向き直ると。

「サトウカズマさん、エンドウユウキさん、あなた達は、この素行の悪いチンピラと親友なのですね?」

「知り合いです」

カズマが、セナの質問に即答し、質問をしてきたセナも少し怯む。

「おおい!カズマ!」

ダストがカズマに向けて叫ぶが、裁判長やセナが見守るベルは鳴らなかった。

「俺も彼とは知り合いです。というか、彼とはまだ数回しか顔を合わせていません」

セナは俺の声を聞きながらベルを凝視するが、もちろん鳴らない。

「な、なるほど。これは失礼しました。付き合っている友人は、素行の悪い人間ばかりだと主張したかったのですが……」

「いいんですよ、まあ知り合いなのは事実ですしね」

俺はカズマの言葉を聞きながら、深く頷く。

「カズマー!ユウキー!俺達の中ってそんなに浅いもんだったのかよー!」

喚くチンピラが騎士に引かれ退廷させられていく中、セナは裁判長に向き直った。

「先程の者は証人として不十分でしたが、被告人、サトウカズマの人間性を証明してくれたと思います。残念ながら、被告人エンドウユウキには……これといった悪行が見つからず、むしろこの街では優しい青年だという風に定着しております……」

セナが残念そうに俯き、声を落とした。

「しかし、まだ完全に被告人が犯行を行った、または魔王軍の者という証拠が見つかっていません。検察官、証拠の提出等はありますか?」

裁判長が、毅然とした態度でセナに問いかける。

「……一つ、一つあります!被告人、サトウカズマには、アンデッドにしか使えないスキル、ドレインタッチを使ったという目撃情報があります。あなたが魔王軍の関係者ではないというのなら、なぜドレインタッチを使えるのか説明を――耳を塞いでも無意味ですよ!」

カズマは黙秘権でも主張しているつもりなのか、俺の隣で耳を塞ぎ、聞かなかった事にしようとセナに対抗する。

「そして、最も大きな根拠として……。署内での取り調べの時に、あなた達二人に魔王軍の者や知性を持ったモンスターと交流はないのかと尋ねました。その際、交流などないと言った時に魔道具が嘘を感知したのです。これこそが証拠ではないでしょうか!?」

マズいマズいマズい――!

折角上手くいっていた裁判が、ここでひっくり返されそうだ……!

 

 

「もういいだろう!そいつは間違いなく魔王軍の関係者だ!手先だ!このワイの屋敷に爆発物を送りつけたのだぞ!殺せ!死刑にしろ!」

今までずっと黙っていた被害者、領主のアルダープが突然立ち上がり、返答に困っていた俺達の方を指差し怒鳴りつけた。

その領主の声に、ここぞとばかりにカズマが反応した。

「違う、俺達は魔王軍の関係者なんかじゃない!テロリストでもない!牢屋にぶち込まれた事は頭にきたし恨みにも思ったが、それでも、コロナタイトをワザと送りつけた訳じゃない!言うぞ!俺は、魔王軍の手先でもなんでもない!」

カズマが発したその言葉にベルは鳴らず、それを見た領主が言葉に詰まる。

セナもそれを見て、眉根を寄せて唇を噛んだ。

魔道具での取り調べ結果を証拠とするのなら、今こうして、カズマの言葉が魔道具に反応していないのもまた証拠となる。

裁判長が、ゆっくりと首を振り。

「魔道具による嘘の判別は、この様に曖昧なものなのです。これでは、魔道具の反応を理由とする検察官の主張は、証拠として認める訳にはいきませんね。流石に根拠が薄すぎる。よって。被告人、サトウカズマ、エンドウユウキ。あなた方への嫌疑は不十分とみなし――」

判決を下そうとした、その時。

「もう一度言う。そいつらは、魔王軍の関係者であり魔王の手先だ。さあ、その男を死刑にするのだ」

立ちあがったままの領主は、尚もそんな事を言ってくる。

それに対して、今度はセナが。

「いえ、今回の事例では怪我人も死者もなく、流石に死刑を求刑する程の事では……」

そう領主に告げると、領主はセナの方をジッと見つめた。

「………いえ、そうですね。確かに死刑が妥当だと思われます……ね?」

――えっ。

「い、いやちょっと待て!おかしいだろ!」

「そうです、何ですか今のは!検察官がコロコロ言う事を変えてどうするのですか!」

俺とめぐみんが食って掛かると、当のセナはなぜか困惑顔で首を傾げている。

と、その時。なにを思ったのかアクアが突然。

「今何か、邪な力を感じたわ!どうやらこの中に、悪しき力を使って事実を捻じ曲げようとした人がいるわね!」

突拍子もないアクアの言葉に法廷内が静まり返る。

その場にいる者全員が、魔道具のベルに視線を集めるが、ベルは鳴らずに、その場の空気が変わった。

一応、聖職者であるアークプリーストのアクアの言葉だ。

信憑性があると判断したのか、裁判長の顔色がサッと変わった。

「悪しき力……。神聖な裁判で、何か不正をしている者がいる、と?」

「ええそうよ。この私の目は、そこの魔道具なんかより精度が高いわよ!何を隠そうこの私は、この世界に一千万の信者を有するアクシズ教の女神!女神アクアなのだから!」

――チリーン。

そのアクアの宣言に、静まり返った法廷内に涼しげなベルの音が響き渡った。

「なんでよー!ちょっと待ってよ、嘘じゃないわよー!」

「被告人。弁護人の選定はちゃんとする様に」

「すいません、超反省してます」

カズマがそう言いながら、ペコペコと裁判長に頭を下げる。

裁判長は、一つ咳払いをすると。

「……被告人。エンドウユウキ。あなたに掛けられている嫌疑は、不十分とみなし、よって、無罪とする。」

先程までの判決文とは違い、何故か、俺だけに無罪が言い渡された。

その裁判長の言葉は、一気に法廷内の空気を変えた。

俺の頭の中に、変な考えが過る。

「……被告人。サトウカズマ。あなたの行ってきた度重なる非人道的な問題行動、及び、街の治安を著しく乱してきた反社会的行為などを鑑みるに……」

その裁判長の言葉は、先ほど俺に向けられていた言葉とは大きく違っていた。

「検察官の訴えは妥当と判断。被告人は有罪、よって――」

えっ。

「――判決は、死刑とする」

 

 

 




次回、裁判後日談。

誤字脱字修正していきます。

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