この素晴らしい世界に魔法を!   作:フレイム

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最近更新が滞っていますが…ちょっとリアルがなんやかんやでして……。

一応ツイッターの方で活動報告行っていきます。

二章 三話 裁判前編。

誤字脱字お気を付け下さい。


この魔法使いに弁護を!

――取り調べ後。釈放寸前だった俺達は、セナの最後の質問によって、再び牢屋に入れられる事となった。

警察側の配慮なのかは分からないが、カズマの所の様な冷たい牢屋ではなく、今までと変わらない部屋。

俺は取り調べの最後の最後で、大変な失敗をやらかしてしまい、それはそれはグッタリと凹んでいた。

「くそ、もう俺自身にランダムテレポート掛けてどっかでやり直してしまおうかな」

俺はそんなことをブツブツと呟きながら、読みかけの聖書を枕元に置き、毛布に包まり眠りについた。

 

この世界の裁判は至ってシンプルだ。検察官が証拠を集め、弁護人がそれに反論する。

裁判官が疑わしいと判断すれば、それで実刑。

この世界には弁護士なんて職はなく、被告人の知人や友人が弁護を請け負う事となる。

建物の造りは日本の裁判所とほとんど違いはなく、俺達はホールの中央に立たされる形となった。

そして現在――

「ユウキ、そんなに緊張する事はありません。大丈夫です、私達がついていますから」

緊張して固まっている俺達を安心させる様にめぐみんが言ってきた。

――そう。

俺達の隣には弁護人こと、俺達のパーティーメンバーが並んでいた。

どうしてこうなってしまったのか。

検察の席には、緊張を滲ませる俺に冷たい視線を送るセナの姿。

「大丈夫です、私に任せて下さい。紅魔族はとても知能が高いのです。あの検察官が涙目になるぐらいに論破してやりますよ」

俺の右隣で頼もしい事を言う、俺の弁護人ことめぐみん。

「安心しろ、本当にどうしようもない事態になったなら、この私がなんとかしてやる。今回の件に関しては、二人は何も悪くない」

カズマの左に立つダクネスも、続いてそんな事を言ってくれる。

頼もしい。とても、頼もしい。……の、だが――

「まあ、この私に任せなさいな!聖職者である私の言葉にはもの凄い説得力があるわけよ!ドンと任せればいいと思うの!」

そう。こいつが問題だ。

一応俺と同等。いや、それ以上の魔力を持つ女神なのには間違いないが、何よりも知力がない。

アクアが弁護人だと勝てる裁判も勝てなくなりそうなのだが……。

――裁判長と思われる中年の男が、木槌でコンと机を叩いた。

「静粛に!これより、国家転覆罪に問われている被告人、サトウカズマ、エンドウユウキの裁判を始める!告発人はアレクセイ・バーネス・アルダープ!」

裁判長の呼び掛けに、太った男が立ち上がった。

背が高く、頭が禿げ上がりてらてらと脂で光っている、大柄で毛深い中年の男。

この人が告発人の領主なのだろう。

領主アルダープは、値踏みするように俺達二人を睨めつけ、そして俺達の弁護を務める三人に、公職そうなネットリとした視線を送った。

領主は、アクアとめぐみんを舐める様に見た後、ダクネスへと視線をやり……。

そして、なぜか驚きの表情を浮かべ固まった。

「ねえねえ、なんか変な大きいおじさんが超こっち見てるんですけど。なんか邪なものを感じるの。あの人に目潰ししに行きたいんですけど」

「おいおい……この大衆の中で変な行動起こしたら相手に有利な状況になっちゃうだろ?頼むからやめてくれ……。というか、さっきからずっとダクネスを見ていないか?」

俺が少し呆れた様に、アクアに言う。

「見てますね。超見てますね。ていうか、屋敷内と薄着でうろつく、ダクネスを見る時のカズマと同じ目つきですよ」

めぐみんの言葉にすぐさまカズマが反応するが、ダクネスはその会話も気にせず、領主の方をジッと見ていた。

「ん……どうしたダクネス。あのおっさんの視線が気になるのか?」

「……いや、そうではない。……まあ、後で話そう」

ダクネスの様子がおかしいが、それを気にする間もなく、机に再び木槌が落とされた。

「静粛に!裁判中は私語を慎む様に。では、検察官は前へ!ここで嘘を吐いてもこの魔道具ですぐに分かる。それを肝に銘じ、発言する様に」

裁判長の宣言と共に、再び木槌が振り下ろされ、それと共にセナが立ち上がった。

「では、起訴状を読ませていただきます。……被告人サトウカズマは、機動要塞デストロイヤー襲来時、これを他の冒険者と共に討伐。その際に、爆発寸前であったコロナタイトをテレポートで転送する様に指示。転送されたコロナタイトは、被害者の屋敷に送られ爆発。被害者、アルダープ殿の屋敷は消滅し、現在、アルダープ殿はこの街の宿に部屋を借りる生活を余儀なくされております」

セナはカズマの起訴状を読み上げた後、裁判長に向けて俺の説明に入る。

「そして、サトウカズマ被告の隣にいるのが、被告人エンドウユウキ。この街で最上位に入るアークウィザードとして、王都でも一部の者は彼の名を知っていると聞きます。デストロイヤー戦では、機動要塞本体に爆裂魔法を二発放ち、破壊させたという功績を持っていますが、その現場にて、故意にテレポートでコロナタイトを転送させたのではないか、という疑いが掛けられております」

セナが読み上げていく間、当の被害者の領主は食い入る様にダクネスを見つめたままだ。

「モンスターや毒物、劇物、爆発物などをテレポートで転送する場合は、ランダムテレポートの使用は法により禁じられております。被告人、サトウカズマが指示した行為は、それらの法に抵触し、そしてまた、領主という地位の人間の命を脅かした事は、国家を揺るがしかねない事件です。よって自分は、被告人に国家転覆罪の適用を求めます。……自分からは以上です」

セナはそう告げると席に着き、それを見届けた裁判長が。

「続いては、被告人と弁護人に発言を許可する。では、陳述を!」

 

 

「――とまあこの様に、ユウキの活躍で魔王の幹部デュラハンを撃退し、俺の指示等があってこそ!デストロイヤーも討伐できた訳ですよ。こんなにもこの街に貢献している俺達が、国家転覆を企んでいるだとか甚だおかしな話という訳です」

裁判長に促されたカズマは、ホールの中央で熱弁を振るっていた。

若干話を盛っている場面もあった気がしたが、嘘を発見する魔道具のベルも鳴らなかったので気にしない。

「も、もういいでしょう。被告人の言い分はよく分かりました。では、検察官。被告人に国家転覆罪が適用されるべきだとの、証拠の提出を」

裁判長がげんなりした顔でセナに証拠を促すと、セナは傍にいた一人の騎士に合図した。

それを受け、騎士が裁判所の待合室へと向かう中、セナが一枚の紙を読み上げ始めた。

「では、これより証拠の提出を行い、被告人が、国家転覆を企むテロリスト、もしくは魔王軍の関係者である事を証明してみせます。さあ、証人をここへ!」

セナの合図で、騎士が十人ほどの、冒険者を連れてきた。

――というか。

「あははは……。なんか、呼び出されちゃった……」

カズマを見て困った様に、頬の刀傷の痕をポリポリと掻く……そういえば名前を知らないが、カズマに盗賊スキルを教えた銀髪の女の子を筆頭に、証人として、カズマの知り合いの連中ばかりが呼ばれていた。

 

 

 

 




次回は長くしないとマズい。

誤字脱字修正していきます。

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