この素晴らしい世界に魔法を!   作:フレイム

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デストロイヤー戦、中編です。

安定の次回予告詐欺。

誤字脱字お気を付け下さい。


この魔法使いが爆裂魔法を!

「店主さんだ!」

「貧乏店主さんが来た!」

「店主さん、いつもあの店の夢でお世話になってます!」

「店主さんが来た!勝てる!これで勝てる!」

ウィズの姿を見た冒険者達は、次々と歓喜の声を上げた。

俺達はウィズがリッチーである事を知っているが、他の冒険者達はこの事を知っているとは思えないのだが…。

冒険者達の歓喜の声に、少し違和感を覚えたのか、カズマがダストに。

「なあ、なんでウィズってこんなに有名なんだ?人気ありそうだが、どうなってるんだ一体?ていうか、可哀想だから貧乏店主はやめてやれよ。儲かっていないのか、あの店は?」

「知らなかったのか?ウィズさんは、元は有名な魔法使いだったんだ。凄腕アークウィザードとして名を馳せたんだが、やがて引退して、行方が分からなくなったと思ったら、突然この街で店を開いたんだ。その店が流行らないのは、駆け出しが多いこの街の冒険者は高価なマジックアイテムを必要としないからな。皆、美人店主さんを見に、店をこっそり覗きには行ってるんだよ、買わないだけで」

いや、買ってやれよ、覗きに行くなら。

「ど、どうも、店主です、ウィズ魔道具店をよろしく……。店主です、ありがとうございます、店をよろしくお願いします、お店がまた赤字になりそうなんです……!」

そう言って、ウィズは歓声を上げる冒険者達にぺこぺこと頭を下げている。

こ、今度予備の杖とか買って行こうかな。

「ウィズ魔道具店の店主さん、これはどうもお久しぶりです!ギルド職員一同、歓迎致します!さあ、こちらにどうぞ!」

職員に促されるまま、ウィズは周りにぺこぺこ頭を下げながら、中央のテーブルの席に座らされた。

 

ウィズが席に着くと、冒険者達は期待を込めた目で、進行役の職員を見る。

 

職員はそれに応える様に。

「では、店主さんにお越し頂いた所で、改めて作戦を!ええと、店主さんが来たのでもう一度まとめます。……まず、アークプリーストのアクアさんが、デストロイヤーの結界を解除。そして、アークウィザードのユウキさんとめぐみんさんが、結界の消えたデストロイヤーに爆裂魔法を撃ち込む、という話になっておりました」

それを聞いたウィズが、口に手を当て考え込む。

「……爆裂魔法で、脚を破壊した方が良さそうですね。デストロイヤーの脚は本体の左右に四本ずつ。これを、めぐみんさんとユウキさんと私で、脚を全て破壊するのは如何でしょう。機動要塞の脚さえなんとかしてしまえば、後は何とでもなると思いますが……」

ウィズの提案に、職員もコクコクと頷いた。

確かに、脚を破壊してしまえば、後は俺達二人の魔法の練習台にして、ゆっくりと本体を破壊すればいい。

その後、ウィズの提案を元に作戦が組まれた。

万が一を考え、駄目元で、街の前に罠を張る、バリケードを造る等、色々な案が出され。

「では、結界解除後、爆裂魔法により脚を攻撃。万が一脚を破壊し尽くさなかった事を考え、前衛職の冒険者各員はハンマー等を装備し、デストロイヤー通過予想地点を囲むように待機。魔法で破壊し損なった脚を攻撃し、これを破壊。破壊後には、万が一を考え、本体内に突入もできる様にロープつきの矢を配備し、アーチャーの方はこれを装備。身軽な装備の人は、要塞への突入準備を整えておいて下さい!」

 

進行役のギルド職員が、作戦をまとめ、全員に指示を出した。

 

街の前には冒険者達だけではなく、街の住民達も集まって、突貫作業で即席のバリケードが組み上げられていた。

バリケード作成に協力してくれた勇気ある住民は、およそ二百人ほど。

冒険者達と合わせてざっと三百人ほどだろうか。

その作業は着々と進み、迎撃態勢に入る。

デストロイヤーを迎え撃つ場所は、街の正門前に広がる平原だ。

俺は街を囲む外壁の上の見晴らしが良い場所で、その作業が進んでいくのを見る。

この外壁の上には、アクアにウィズ、そして隣には、緊張気味で俺の服の袖を掴んでくるめぐみんの四人。

本作戦の重要人物は、デストロイヤーを発見次第、魔法を放つ準備が出来る様にと、ギルドの職員がこの様な配置にしたのだ。

「や、やらなきゃ!わ、わわ私が、絶対やらなきゃ……!」

「お、おい落ち着けめぐみん……。一応、俺とウィズもいるんだし、そんなに緊張することもないだろうに」

異常に緊張しているめぐみんに、俺は声を掛ける。

「そ、そそ、そうですね……ところで、ユウキは爆裂魔法の詠唱はできるのですか?確か、今日が初めてでは…」

めぐみんは、俺に首を傾げながら問いかける。

「はは、魔王軍の城にちょっかい掛けた時に覚えたよ、多分問題はない筈だ」

俺がそう言うと、めぐみんは笑みを浮かべながら、杖を構える。

地上にいる冒険者のほとんどが武器を構え、完全な迎撃態勢が整っていた。

その時。

――魔法で拡大されたギルド職員の声が、広い平原に響き渡った。

『冒険者の皆さん、そろそろ機動要塞デストロイヤーが見えてきます!街の住民の皆さんは、直ちに街の外に遠く離れていて下さい!それでは、冒険者の各員は、戦闘準備をお願いします!』

その声と同時に、遠く離れた丘の向こうから、最初にその頭が見えてきた。

感じるのは軽い振動。

前衛で待機していたクリエイター達が、デストロイヤーの姿を見たと同時に、地面の土でゴーレムを作り出す。

この街のクリエイターも駆け出しばかりだ。

かなりの数のクリエイター達が頑張ってくれているが、流石にそれだけでは時間稼ぎにしかならない。

「ちょっとウィズ!大丈夫なんでしょうね!大丈夫なんでしょうね!?」

俺とめぐみんが待機している場所から大きく離れた場所で、アクアが隣に佇むウィズに、何度も何度も確認していた。

「大丈夫です、任せて下さいアクア様。これでもリッチー、最上位のアンデッドの一人ですから。アクア様が魔力結界を打ち破ってくれれば、後はお任せを!……もし失敗したら、皆で仲良く土に還りましょう」

「冗談じゃないわよ!冗談じゃないわよ!」

会話はよく聞こえないが、アクアがウィズに何かを大声で叫んでいる。

あのアクアの事だ、どうせこの期に及んでウィズに突っかかっているのだろう。

アクアが魔法を放つタイミングの指示や現場の指揮は、この作戦の原案を作ったカズマに一任されている。

カズマはギルドの職員から渡された拡声器の様な物を片手に、魔法を放つタイミングを窺っている。

――機動要塞デストロイヤー。

 

その巨体は、仕掛けられた数々の罠を物ともせずに、地面を踏みしだく轟音を響かせながら。

『アクア!今だ、やれっ!』

俺達の住む街を蹂躙すべく、迎撃地点へと突っ込んできた!

「『セイクリッド・スペルブレイク』ッ!」

カズマの指示で、アクアが魔法を放つ。

アクアの周囲に複雑な魔法陣が浮かび上がったかと思うと、その手には白い光の玉が浮かんでいた。

アクアはそれを前に向けると、デストロイヤーに向かって撃ち出した。

撃ち出された光の玉がデストロイヤーに触れると同時に、一瞬デストロイヤーの巨体に薄い膜の様な物が張られて抵抗したが、それがガラスが割れる様に粉々に弾け散る。

多分弾け飛んだあの膜が、魔力結界とかいう物なのだろう。

『ウィズ、めぐみん、ユウキ、頼む!奴の脚を吹っ飛ばしてくれ!』

拡声器を通したカズマの声は、外壁の上の俺達にもしっかりと聞こえた。

「よしめぐみん!あの機動要塞に俺達の爆裂魔法をぶっ放してやろうぜ!」

「ぶっ放してやりましょう!ええ!二度と動けなくなる位に!」

俺達三人は、力強い詠唱を始める。

「黒より黒く、闇より暗き漆黒に、我が深紅の金光を望みたもう」

 

「覚醒の時来たれり」

 

「無謬の境界に落ちし理」

 

「無業の歪みとなりて顕出せよ!」

 

 

「「「『エクスプロージョン』ッッッ!!!」」」

 

――全く同じタイミングで放った俺達の爆裂魔法は、機動要塞の脚を一つ残らず粉砕した!

 

 

 

 

 

 




じ、次回、デストロイヤー戦後編。

(時間が足りない)

誤字脱字修正していきます。

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