この素晴らしい世界に魔法を!   作:フレイム

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前回の後書きで一巻と二巻の間と言ったが…あれは嘘だ。

クエスト編、雪精と冬将軍

誤字脱字お気を付けください。


この魔法使いに雪精を!

カン!キン!ザッ!カン!カン!

「ハァ…ハァ…。うむ…ユウキ、随分と上達したな」

「はぁ…はぁ…。まだまだ!」

療養期間中、ダクネスと俺はまともに体を動かしていなかったため、ダクネスとリハビリも兼ねて木刀での打ち合いが最近の日課だ。

ダクネスは意外と物を教えるのが上手く、俺はすぐに上達し、中級冒険者級の剣術をスキル無しで習得することが出来た。

生前は特にスポーツをしていた訳ではなく、むしろ面倒だとも思っていたが、多くの者が運動に熱中する理由が何となく分かった気がする。

「…ッ!甘い!」

「…ぐっ!」

ダクネスが俺の脇腹に重い一撃を入れ、俺は片膝を着く。

「…!すまない…!どこか怪我はしていないか?」

慌ててダクネスが俺の顔を覗き込む。

「ああ…大丈夫だ…ッ!」

木刀で打ちこみ、こちらは防具を着ているというのに、重い。

ダクネスの力と防御力はアクセルの一番と言っても過言ではないだろう。

この力がモンスターに当たってくれれば幾分か楽だとは思うのだが…

「大丈夫ならいいのだが…なに、もう始めてから三時間になるぞ、飯にしよう…よっと」

俺はダクネスの肩を借り、昼食を取るためギルドへ向かう。

「悪いなダクネス…はぁ…自分が情けなく思う…」

「別に構わん、それに…こうして歩いてると…なんかこう、じわじわと肩の疲れが痛みに変わって…んっ…!」

「やっぱ自分で歩くわ」

ギルドに着くと、カズマ達がクエスト掲示板の前で募集の紙を見ている。

「お、ユウキにダクネス、ちょうどいい、この後予定あるか?」

俺はカズマから手渡されたクエスト用紙に目を通す。

 

 

雪精討伐。

 

「って、雪精って何だ?俺、寒い所苦手なんだけど」

雪精と言うぐらいなのであれば、雪山でのクエストだろう。

生憎俺は生まれつき寒い所は苦手だ。

「案外ユウキはそういう所は子供っぽいんですね…説明すると、雪精というのはとても弱いモンスターです。雪深い雪原に多くいると言われ、剣で斬れば簡単に四散させる事ができます。」

…!?

「…なあ、雑魚モンスターになんで一体10万エリスの値が掛けられているんだ」

雪精50匹倒してしまえばデュラハン撃退の報酬金同額になるじゃんよ…

「雪精か…」

一撃が重いモンスターの方が好きそうなドMクルセイダーが一番反対すると思っていたのだが、何故か雪精の名前に顔を赤らめている。

ダクネスの反応に違和感を感じつつも、俺達は雪精討伐に出発した。

 

「うう…やっぱり寒い…」

俺達は、雪精がいるという平原地帯に来ると、街には全く降っていない雪で覆われていた。

そして、落ちることなくふわふわと飛んでいる白い塊が漂っていた。

こいつを一体倒す毎に春に半日近づくと言われているので、春が待ち遠しい人々が賞金をかけているのだろうか。

「くっ!チョロチョロと動くな!」

ダクネスが剣を振るっているが、大型のモンスターにも当たらない剣が、こんな手の平サイズの敵にはあたらんだろうと言いたかったが、早速皆は雪精の討伐を始めていた。

カズマも剣を振るっているが、剣を振った後の風圧だけで飛んで行ってしまうほどの雪精には中々当たらない。

ここは、広範囲に攻撃できる俺とめぐみんが活躍できる場であろう。

「よし、めぐみん、爆裂魔法の準備はいいか?」

「ええ、準備バッチリです」

俺達二人は、ダクネス達がいない方向に魔法を放つ構えをする。

俺達が放つ先には、雪精が二、三十匹ほど、単純計算で200万は超える。

200万が飛んでいる。

そう考えると冷静では居られず、めぐみんに爆裂魔法を放つように促す。

「ふ、我が力、再び此処で現出せよ!『エクスプロージョン』っ!」

日に一度しか使えない、爆裂魔法が周りの雪を溶かし、以前のカエルの時よりも大きいクレーターが雪原に造られた。

「くっ…!22匹です…後は任せました…」

「めぐみんご苦労様、ほら、掴まれ」

俺はめぐみんを背負い、片手で魔法を放つ。

『インフェルノ!』

俺は炎属性の上級魔法で残りの雪精を一掃し、冒険者カードに雪精十匹討伐と表示されており、レベルも7→13に上がっていた。

「お…レベル上がったな、おいめぐみん、雪精って結構経験値おいしい系か?ちょっと冒険者カード見てみてくれ」

「あ…私も16になってます」

これだけで320万だ、それに経験値もおいしい。

全員で割っても、俺達が討伐した分だけで64万エリス。

一時間所か、始めてまだ30分も経っていない。

いや…これってどうも話が上手くいきすぎている気が…。

 

そんな俺のフラグっぽい事に応えるかの様に、それは、俺達の前に現れた。

「……ん、出たな!」

ダクネスが目の前の敵を見て、大剣を構えて嬉しそうにほくそ笑む。

で、デカい…

俺はめぐみんを背負っているということもあり、ダクネスを盾にし、後ろに下がる。

「……カズマ、ユウキ。なぜ冬になると、冒険者達がクエストを受けなくなるのか。その理由を教えてあげるわ」

アクアが一歩後ずさり、それに合わせているのかという風に、

俺達が視線を集めるそれは、ズシャリと一歩、前に出た。

「あなた達も日本に住んでいたんだし、昔から、この時期になると天気予報やニュースで名前ぐらいは聞いたでしょう?」

全身を白く染め上げた重厚な鎧姿のそれは、俺達に途方もない殺気を浴びせつけていた。

まるで将軍のような…って、あぁ…

「雪精達の主にして、冬の風物詩とも言われている…」

アクアが説明している間にも、白い鎧を纏ったそれは、白い冷気を放つ刀を握り…

----アクアが、真面目な顔で呟いた。

「そう。冬将軍の到来よ」

「バカッ!このクソッタレな世界の連中は、人もモンスターも、皆揃って大バカだ!!」

今回ばかりは、カズマの叫びに同意せざるを得なかった。

恐ろしく斬れそうな抜き身の刀を煌めかせ、冬将軍が襲いかかってきた!

 

 

 

白一色の鎧を纏った冬将軍。

 

それは味気ない色と思いきや、太陽の光を集めているのかのように、眩しい。

冬将軍は刀に手をかけ、構えを取る。

冬将軍の視線の先には…目の前のそれにも全く憶していない、ダクネスの姿があった。

マズい…いくらクルセイダーとはいえ、冬将軍の刀をまともに喰らえは、死は免れない。

「ダクネス!避け…」

俺が言い終わる前に、冬将軍はダクネスに斬りかかった!

「くっ!?」

ダクネスは、それを大剣で受けようとするが--------

キンッと澄んだ音を立て、ダクネスの大剣が、あっさりと真ん中で叩き割られた。

「ああっ!?わ、私の剣がっ……!?」

はっきり言って、目の前のモンスターに勝てる気が全くしない。

めぐみんの爆裂魔法も、今日はもう使えない。

ダクネスの防御さえも貫通する攻撃力。

いや…?俺は一つの考えが浮かんだ。

「なあアクア!冬将軍に魔法は効くのか!?」

俺は大声でアクアに疑問をぶつける。

もし効くのであれば…爆裂魔法に並ぶ攻撃魔法、爆発魔法か炸裂魔法でこの場はなんとかなるかもしれない。

「効かないわ!だって冬将軍は精霊よ!そんな相手に効くわけ…!」

冬将軍は、俺達の話がうるさいとでも警告するように、口から白い冷気を吐く。

はぁ…ここで終わりか…

そう考えていると、俺の考えを払拭するように、アクアが叫ぶ。

「カズマ、ユウキ、聞きなさい!冬将軍は寛大よ!きちんと礼を尽くして謝れば、見逃してくれるわ!」

アクアは言って、白い雪が積もる雪原に、そのまま素早くひれ伏した。

「DOGEZAよ!DOGEZAをするの!ほら、皆も武器を捨てて早くして!謝って!」

アクアはそう俺達に言い放った後、頭を地に付け、見事な土下座をする。

「おいおい…そんな土下座ぐらいで…!」

確かに冬将軍は、土下座をしているアクアには目もくれない。

「よ、よし…めぐみん、俺達も…」

俺とめぐみんも頭を地に付け、深く土下座をする。

その分冬将軍は、まだ土下座をしていないダクネスとカズマに視線が向けられる。

冬将軍の視線を受け、カズマはすぐに土下座をするが…

カズマの隣にいるダクネスは、未だに悔しそうに冬将軍を睨みつけながら、突っ立ったままだった。

「おい何やってんだ!早くお前も頭を下げろ!」

カズマもダクネスの様子に気づいたのか、そう叫ぶ。

「くっ……!私にだって、聖騎士であるプライドがある!誰も見ていないとはいえ、騎士たる私が、怖いからといって頭を下げる訳には……!」

カズマはダクネスの言い分など全く気にせず、ダクネスの頭を引っ掴み、そのまま無理やり下げさせた。

「や、やめろぉ!くっ…下げたくも無い頭を無理やり下げさせられ、地に額をつけられるとかどんなご褒美だ!ハアハア…。」

ダクネスの頭を下げさせると、先程まで抜刀していた冬将軍は、その刀を収めていた。

ここにいる全員が頭を下げ、ようやく見逃してもらえるかと思ったその瞬間。

アクアがカズマに、鋭く叫んだ。

「カズマ!武器武器!早く持ってる剣を捨てて!」

その言葉を受け、カズマは慌てて剣を捨てる、が…

剣を捨てようとしたカズマの頭が一瞬上がり、その瞬間……

 

 

 

……カズマの首は、冬将軍の刀によって、斬り落とされた。

「…ッッ!」

首は雪原に埋まり、カズマの周りには赤い液体が飛び散る。

その惨劇を見ていたのは、チラ見だけでの判断だが恐らく俺一人…だけではなく、アクアも見ていた。

アクアは死者を導く女神、こういうのには耐性があるだろうが、ダクネスやめぐみんには見せてはいけない。そう瞬間的に思った。

冬将軍はカズマを切り捨てた後、吹雪を起こし一瞬で姿を消した。

俺はダクネスとめぐみんが頭を上げる前に、二人に、

「…『スリープ』」

すぐ二人を眠らせ、アクアに涙目で問いかける。

「…なぁ、もうこれってどうすりゃ…」

俺はショックを隠しきれず、雪が積もった雪原にペタリと膝から落ちる。

目の前で、始めて人が死んだのを見た。

意識が吹き飛びそうだ。今の俺達からカズマが欠けて、何が残ると言うのだ。

「ユウキ、落ちつきなさい、まだカズマは死んでないわ」

…は?

ちょっと、というか大分頭がおかしい女神だと思っていたが、いくらアクアでも…!

「ここをこうして…うん」

カズマの頭だった物を、カズマの首が繋がってた所に置き、アクアは何かを唱えながらカズマの身体をペタペタと触る。

すると、カズマの首と胴体に間が光り、その部分がみるみる補修されていく。

一分も経たずに、カズマの首と胴体は繋がり、アクアはカズマの心臓部分に手を置く。

アクアが手を当てた途端、カズマの全身が光り…。

「……ん?お、俺は一体…?」

カズマはムクリと起き上がり、腕が動くかどうかの確認をしている。

「ん、戻って来れたわね、おかえり、カズマ」

アクアは平然と話掛けているが、俺は未だに状況が読み込めていない。

しかし、現にカズマが生き返っている。

だが、一瞬とはいえ、俺も仲間の死の辛さを経験した。

……俺はめぐみんにこの思いを何日もさせていたのか…。

「あ…二人を起こさないと…」

俺は二人に駆け寄り、二人に俺の肩を貸す。

「ぐっ!?」

こ、こういうのは失礼だと思うのだが…ダクネスは鎧を着込んでいる所為で普通の成人男性よりも重い気がする。あぁ、あくまで鎧を着込んでいるから…だ。

「か、カズマ…アクア…悪いがダクネスを頼む…」

俺の言葉に、慌てて駆け寄り、ダクネスはカズマ達に任せて、俺はめぐみんを背負い、俺達は無事にアクセルに帰った。

 

「…なぁカズマ、こんなことを聞くのも凄い失礼なんだが…」

「ん…?どうしたユウキ」

雪山から帰っている道中、俺はカズマに疑問をぶつける。

「二人で雪精、何匹倒した…?」

「そうそうそれよ!私は5匹しか倒せなかったけど、カズマは結構倒してたわよ?」

「ああ、俺は15匹倒した…ってことは?今回の報酬いくらになるんだ?」

320万+200万=520万…

520万÷5=104万!?

「…520万、五人で割っても一人104万だ…」

俺達は、一気に成金みたくなった。




カズマの首が斬られた時の所書いてたら、大化の改新の風刺画?思い出しました。

次回、冬将軍戦闘後日談編

誤字脱字修正していきます。

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