この素晴らしい世界に魔法を!   作:フレイム

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久しぶりのクエスト編

まさか原作一巻分のストーリー消化に12話以上かかるとは思わなんだ

誤字脱字お気を付けください。


この魔法使いに幽霊を!

500万の報酬金を受け取った翌日、ダクネスも何事もなかったので、カズマ達とクエストに行く事になった。

ゾンビメーカー一体の討伐。

普通の初心者冒険者では有効打が少なく、取り巻きのアンデッドに苦戦するらしいのだが、こちらにはアークプリーストのアクアがいるので心配はないだろう。

ゾンビメーカーは深夜に発生するため、俺は夕方に一旦眠り、クエストの準備を整えていた。

他の冒険者が少なり始めた頃、カズマ達と合流し、目的地に向かう。

「…冷えてきたわね。ねえカズマ、引き受けたクエストってゾンビメーカー討伐よね?私、そんな小物じゃなくて大物のアンデッドが出そうな予感がするんですけど」

月が昇り、そろそろ日付が変わった頃。

アクアがそんな事をポツリと言った。

「おいアクア…そんなフラグになること言うなよ…まあ、大物のやつでも倒してくれるのだろう?」

「いやユウキ…お前までそんなフラグを建てるなよ…」

墓地に着いた俺達は敵感知スキル持ちのカズマを先頭に、墓地の奥深くまで進む。

「何だろう、ピリピリ感じる。敵感知に引っかかったな。いるぞ、一体、二体、三体…四体…?」

カズマが敵感知の反応を報告していく。

……?ゾンビメーカーの取り巻きのゾンビは精々二体ぐらいだと聞いていたのだが。

まあ、二体増えた所でアクアの苦戦する相手ではないだろう。

すると突然、墓地では普通起こり得ない、青い光が遠くに走る。

「…?あれは…魔方陣ですかね…?」

めぐみんが自信無げに呟いた。

「妙だな…普通ゾンビメーカーが魔方陣など張れる訳がないのだが…」

ダクネスはそう言った後、剣を構え、光の方向に少しずつ歩みを進める。

近づくにつれ、魔方陣の隣には、黒いローブの人影が見えた。

その黒いローブを囲むように、数体のアンデッドが蠢く。

「突っ込むか?ゾンビメーカーじゃなかったとしても、こんな時間に墓場にいる以上、アンデッドに違いないだろう。なに、アクアがいれば大丈夫だ。」

ダクネスはそう言いながらソワソワしている。

ちょっとは落ちつけ…まあ魔王の幹部に突っ込んだ俺が言えたことじゃないが…

その時、アクアが突然大声を上げた。

「あーーーーーーーっ!!」

突如叫んだアクアは、何を思ったのか、黒いローブの元へと走り出した。

「お、おい!」

「ちょ、ちょっと待て!」

俺とカズマがほぼ同時に声を上げるが、アクアはそれを振り切って駆け出す。

黒いローブの人影の元へ駆け寄ったアクアは、ビシッと人影を指差して、

「リッチーがノコノコこんな所に現れるとは不届きなっ!成敗してやるっ!」

 

 

リッチー。

 

 

それは、メジャーアンデッドモンスター、ヴァンパイアと並ぶ、アンデッドの最高峰、魔法を極めた大魔法使いが、魔道の奥義により人の身体を捨て去った、ノーライフキングと呼ばれるアンデッドの王。

その、ラスボスに近い超大物モンスターが…

「や、やめやめ、やめてええええええ!誰なの!?いきなり現れて、なぜ私の魔方陣を壊そうとするの!?やめて!やめてください!」

「うっさい、黙りなさいアンデッド!どうせこの妖しげな魔方陣でロクでもない事企んでるんでしょ、なによ、こんな物!こんな物!!」

超大物モンスターは、ぐりぐりと魔方陣を踏みにじるアクアの腰に、泣きながらしがみつき、くい止めていた。

…ってあれ?

俺はアクアとリッチーの元に近づき、リッチーに声を掛ける。

「あのー…ちょっとそのフードを取ってもらっていいですか?」

泣きながらアクアにしがみつくそのリッチーは、俺の言葉を聞いてフードを取る。

「ウィズさんじゃないですか、こんな所で何やってるんですか?というかリッチーって?」

アクアは、俺の振る舞いに目を大きくして見つめてくる。

「ちょっとユウキ!そんな腐ったミカンのような奴と話してたらあんたまでアンデッドになっちゃうわよ!ちょっとそいつに、早く浄化魔法を掛けさせなさい!」

俺の言葉にアクアいきり立ち、ウィズに浄化魔法を掛けようとする。

そのアクアの姿を見たウィズは、慌てて俺の背後に隠れて、アクアの様子を見ている。

「い、いや、この人はただの魔道具店の店主だぞ?別に俺達に危害を与えようって訳でもなさそうだし、見逃してやってもいいんじゃないのか?」

それを聞いたアクアは、頬をむう、と膨らませ、杖を降ろす。

「あ、あの!ありがとうございます…確か以前、そちらの紅魔族の方とお店に来てくださった方ですよね?」

「あぁ、覚えててくれたのなら話は早い、一応、ここで何をしていたのか教えてくれないか?」

俺の問いかけに、ウィズは一瞬アクアの方を向き、話を始める。

「実は…この共同墓地の魂の多くはお金が無いためロクに葬式すらしてもらえず、天に還る事なく毎晩墓場を彷徨っています。それで、一応はアンデッドの王な私としては、定期的にここを訪れ、天に還りたがっている子達を送ってあげているのです」

…ほろりときた。

いい人だ。

いや、人間ではないのだが。

「確かにいい行いだとは思うのだが…そういうことは態々リッチーの貴方がしなくても、この街のプリーストに任せておけばいいんじゃないのか?」

カズマの疑問に、ウィズが言いにくそうに憮然とした態度としたアクアをチラチラと気にしながら。

「そ、その……。この街のプリーストさん達は、拝金主義……いえその、お金がない人達は後回し……と言いますか、その……、あの……」

目の前にアークプリーストのアクアがいるので言いにくいのだろう。

ウィズの代弁をするように、カズマが口を開く。

「つまり、この街のプリーストは金儲け優先の奴がほとんどで、こんな金の無い連中が埋葬されてる共同墓地なんて、供養どころか寄りつきもしないって事か?」

「え……えと、そうです…」

その場にいる全員の無言の視線がアクアに集まる中、当の本人はばつが悪そうにそっと目を逸らす。

「ま、まあ皆…ここはウィズを見逃すという事に賛成してくれるか…?」

俺がそう言うと、アクア以外の皆は頷いてくれた。

「ね、ねえ?私、プリーストとしてリッチーを浄化しようとしただけで、皆から変な目で見られてるんですけど、な、なんで私が悪いようになってるの?ねえってば!」

アクアはカズマにしがみついて、そう叫んでいた。

 

 

墓場からの帰り道。

 

 

今回の件は、アクアがその墓場に定期的に浄化しに行くという事で折り合いがついた。

睡眠時間が減るとか駄々をこねていたが。

 

俺は、ウィズからもらった店の住所が書かれた紙を見ながら呟く。

「今度は皆さんで来てくださいね」と言われ、受け取ったはいいものの、店に行けばアクアが暴れそうな気もするので、まためぐみんと二人で行こうか。

「しかし、アンデッドの王が駆け出し冒険者の街で商売やってるって色々と大丈夫なのかこの街は…」

「でも、穏便に済んでよかったです。いくらアクアがいると言っても、相手はリッチー。もし戦闘になっていたら魔法を撃つ暇なく私とユウキとカズマは殺されてましたよ」

何気なく言うめぐみんの言葉に俺とカズマはぎょっとする。

「げ、リッチーってそんなに危険なモンスターだったのか?ひょっとしてヤバかった?」

そう言うカズマの額には、冷や汗をかいていた。

「ヤバいなんてものじゃないです。リッチーは強力な魔法防御、そして魔法の掛かった武器以外の攻撃の無効化。相手に触れるだけで様々な状態異常を引き起こし、その魔力や生命力を吸収する伝説級のアンデットモンスター。むしろ、なぜあんな大物がアクアを恐れていたのかが分からないぐらいです」

「ってことは…そんな危険なモンスターがさっきまで俺の背後にいたって事か…」

軽く腰を抜かしそうになる。

「ユウキ、その住所が書かれた紙、渡しなさいよ。ちょっとあの女より先に家に行って、家の周りに神聖な結界張って涙目にしてくるから」

「「や、やめてやれよ…」」

やっぱりアクアは連れて行かない方がいいな…

俺がそんなことを考えていると、ダクネスがぽつりと言った。

「そういえば、ゾンビメーカー討伐のクエストはどうなるのだ?」

「「「「あっ」」」」

 

 

俺の、復帰一発目のクエストは予期せぬ失敗に終わった。




そういえば、感想機能というのを始めて知りました。

見てみると二件の感想があったので、返信出来ずに申し訳ないという気持ちでいっぱいです。

次回、原作二巻目と一巻目の間?的な話、日常編になりそうです。

誤字脱字修正していきます。

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