なのでいつもより長めです
「お風呂あがったよ」
「わかった」
残念だったな、風呂は別々だぜ。圭萌も冗談だったらしいし、もし一緒にはいったらお風呂場に長時間いることになる可能性が高いしな。
「あれ?ハチ君今日は顔を赤くしないんだね」
「まぁな。俺だって日々進化してるんだよ。それにそんなホイホイテレるわけがないだろうと俺は言いたいね」
「そうなんだ」
なんでそんな残念そうな顔するんですかね?罪悪感が湧いてきちゃうじゃん。だけどお風呂あがりの破壊力は凄いからな。なんでこんなにいい匂いするのかね。それに顔が少し赤いしで、油断したら襲っちまいそうだよ。変な気がおきるまえに(おきてるとか言っちゃダメ)風呂に行くか。
「じゃあ次は俺がはいるな」
「ごゆっくり」
***
その後俺は今日も今日とて、トラップだらけのお風呂タイムを過ごすことになった。脱衣場では昨日も見たけど未だに慣れない圭萌の下着とか、浴室が圭萌と同じいい匂いが充満していたりとか、それらのことでいろんなことを想像してしまうのはしょうがないよな。
これからこの家で生きていけるのか心配になりながらお風呂からあがったら、リビングのソファーで座ってる圭萌の姿が目に入ってきた。
「風呂あがったぞ」
「早かったね」
「そうか?いつもこんなもんだけどな」
「結構早いと思うけど」
言えねぇ。まさか長くあそこ(風呂場+脱衣場)にいると圭萌のいろんなところを想像しそうになるからすぐに出てきたなんて言えね。
「あ、そうだハチ君。寝室にあったドライヤー、勝手に使っちゃった」
「別にそれぐらい俺に許可とる必要ないぞ」
「いちおうね。それでさ、もしハチ君が良ければなんだけど私に髪乾かさせてくれないかな」
「それぐらい良いけど。むしろこっちこそ、そんな事させてもいいのかよ」
「私がやりたくてやるんだからいいんだよ」
ドライヤーで乾かすのめんどくさくて、やらないことが多いからな。自然乾燥とかざらである。流石に他人にそれも好きな人に髪を乾かして貰うなんて初めてなんだけど。
「それじゃあ始めるから動かないでね。あと痛かったり痒かったりしたら言ってね」
そんな事を言ってからドライヤーの音とともに、圭萌の手が俺の頭にあたった。髪を乾かすのだから手があたるのは当たり前なのだが、なんて言うんだろうなこの感じ。
頭ってか髪の毛の毛先から感じる圭萌の手とか新鮮だな。
新鮮とか言うほど圭萌の手の感触を知ってるかというと、まだ数える程しか手をつないでいないからわからないけど、だけどやっぱりいいよな。
後半になるにつれてなんか頭を撫でられてるように感じて、少し恥ずかしく感じたのは内緒である。
「よし、こんなもんかな。どうかなハチ君」
「お、おう。いいと思うぞ」
「良かったー」
「今度は俺がしてやるよ」
俺でも恥ずかしいと思ったんだから、きっと圭萌にやったら恥ずかしくなると思うんだよね。むしろ毎日やってあげたい。
「ありがとう、じゃあ明日お願いしようかな」
「了解した。それじゃあ髪も乾かし終わったし、同棲するにあたってのルールを決めるか」
「そうだね。それでルールって何を決めるの?」
「まずは家事関連だな」
「ハチ君もやってくれるの」
「そんなの当たり前だろ。全てを任せるなんてするわけないだろ」
俺はもともと専業主夫希望だしな。流石にもうそんな事言わないし言えない。
「そ、そうなんだ」
なぜにテレるんですかね。結構普通なこと言ってると思うんだけどな。
***
「こんな所かな」
「そうだな、料理は俺もできる時はやるから」
「ありがとね。楽しみだな、ハチ君の作ったご飯」
「そんなに期待されても困るんだが…。所謂男の料理だからな、大雑把なもんだぞ。圭萌の作ったご飯の方がずっと旨い」
「それでもやっぱり楽しみだよ」
そんなもんかね。やっぱり俺は圭萌の作ったご飯が一番だと思うんだけどな。
「そうだハチ君、私聞きたいことがあったんだ」
「なんだ」
「雪ノ下さんとはどんな関係だったの?」
真剣な表情でそんな事を言ってきた。だけど確か3人でいた時しっかり説明したよな。
「ただの友達だけど」
「本当に?だって雪ノ下さんが男の人と喋ってるところなんて見たことないし、全くて言っていいほど男の人との関わりがないんだよ」
期せずして雪ノ下の大学生活を知っちまったな。まぁ、予想通りというかなんというか高校の頃とあんまり変わってないみたいだな。心配するのも大きなお世話とか言われそうだけど少し心配だな。
「高校の頃からそんな感じだったと思うぞ」
「だったら尚更怪しいんだけど。本当に何もなかったんだよね」
疑いすぎだろ、そんなに俺って信用ないのかね。うん、ないよな、親父が伝えるのを忘れたからと言って会食に行かなかったからな。
「あいつと付き合ってたってことはない。それに俺とよく喋るのは高校の時に同じ部活だったからだよ」
「へぇー、どんな部活だったの?」
「雪ノ下に聞いてないのか」
「全く知らない」
「奉仕部って部活でな、2年生から俺が強制入部させられてそこでいろいろあったんだ」
「強制入部ってところが気になるけど、それよりも何人ぐらい部員がいたの」
「なんでそんな事知りたいんだよ。まぁいいけど、俺もいれて3人だったな」
「なるほどね。もしかしてさ、その3人で男の人ってハチ君だけだった?」
「よくわかったな、確かにそうだけど」
「やっぱり。ハチ君まだ私に言ってないことがあるよね、雪ノ下さんのことで」
「いや、俺から言えることは結構喋った筈だけど」
「それじゃあハチ君からは言えないのかな、雪ノ下さんに告白されたことがあるってことは」
なんで知ってるんですかね、圭萌さん。もしかして断片的に雪ノ下から話聞いてたのかな。
「すごく驚いてるところ悪いけど、大丈夫だよ怒ってるわけじゃないから。だけど、なんで隠してたのか気になるんだけど教えてくれるよね?」
別にやましいところがある訳じゃないのになんでだろう冷や汗が止まらない。
「それは誰から聞いたんだ」
「雪ノ下さんと恋バナした時にね『私は昔部活仲間に告白したことがあるの』って言ってたんだよ。結果は言ってなかったけど」
おい、雪ノ下なんでそんなこと言っちゃったの。俺には理解出来ないよ。そして雪ノ下も恋バナとかするんだな。少し驚き。
「わかった、言うから。そんなに怖い顔するなって」
「してないよ、そんな顔」
「確かに高校卒業の時に雪ノ下から告白された。俺はあの時、奉仕部での関係が好きだったから断ったんだよ」
「そうなんだ」
ホッとした顔した圭萌がまたこっちを見てきた。
「それじゃあなんで言ってくれなかった」
「それは雪ノ下に悪いと思ったからだよ。だけどもう雪ノ下自身が圭萌に言ってるんなら話は別だからな」
これは本当に思っていたことである。やっぱり告白された相手が勝手に他の人になにか言うのは嫌だろう、ソースは俺。
「そっか、そうだよね」
「わかってくれてなによりだよ」
「だけどハチ君。私はとてもとても不安になったよ」
「そうなのか。それはすまんかった」
「つきましては明日私とデートしなさい。これは命令だからね、拒否権とかないよ」
圭萌は本当に不器用だな。デートに誘いたければいくらでも普通に誘えばいいのに。俺が嫌だとか言うと思っているのだろうか。むしろ俺から誘うべきだな、これは反省しなくては。
「承りました、お嬢様ってな」
「いいね、私がお嬢様でハチ君が執事」
「確かに良いけど俺は圭萌の許嫁だからできないな」
「そうだね」
やっと圭萌も慣れてきたのか。もうちょっとテレる姿も見たかったけどな。それに良かった明日はバイトがなくって。
「それでどこに行くんだ」
「雑貨屋さんに行こうかなって」
「なんでまた」
「折角一緒に住むんだからお揃いのものが欲しいなって思って、だめかな」
俺の許嫁が可愛すぎてやばい。なんでこんなに可愛らしいこと考えつくのかな。そしてこれ以上可愛いところ見せられても困る。
「いや、いいんじゃないか」
「やったー、明日はデートだ」
嬉しいのはわかるけど圭萌さんや、飛び跳ねるのはやめよう。その可愛らしい寝間着のしたにいらっしゃる二つのものが激しく主張してるから。
***
「ふぅ、今日も思ってた以上に疲れた」
あの後、一緒に寝ようと駄々をこねる圭萌をなんとか説得して昨日と同じ場所でそれぞれ寝ることになった。今日のことを思い出すと……………うわぁぁぁぁ!!
やばい、恥ずかしすぎる。何やってんだよ俺は。なんで手を繋いだり抱きしめたりしてんだよ。うわぁぁぁぁ!!
~~10分後~~
ふぅ。やっと落ち着いた。これは圭萌に嫌われてたら黒歴史が一気に増えるところだったな。ほんとに何やってるんだか。
「ハチ君起きてる?」
圭萌が寝てるはずの部屋のドアが開いて、誰かが近づいてきたって圭萌以外にいないんだけどね。どうしたんだろう?ちょっと寝てるフリして驚かせようかな。(さっきまで悶えていたことは忘れた)
「うりうり」
そんな事言いながら頬を指で押してくる圭萌。起きてるか確認するための方法がいちいち可愛いなおい。
「よし寝てるね。ごめんね、本当は昨日みたいに1人で寝られたら良かったんだけどどうしても寂しくて。それに昨日1人で飲んだせいかな、ハチ君が何処かに行っちゃうんじゃないかと思っちゃって…」
圭萌は俺が寝てると思ってるらしく、そんな事をいつもより小さな声で言った。たぶん普段なら聞き逃しているかもしれないが、今は夜中なのでとても静かで物音一つしないから聞き取れたのだろう。
そんな事思ってたのかよ。俺はなんで気づかなかったんだよ。人間観察は得意だったはずなのに、なんで見逃してんだよ。知らず知らずのうちに圭萌と許嫁になれて舞い上がってたのか。それで大好きな人のことを考えてやれなくなるなんて、クソ野郎もいいとこだろう。そんなこと考えてたら勝手に身体動いてしまった。
「ごめんな圭萌、気付いてやれなくて」
俺は抱きしめていた。圭萌は驚いたのだろう肩がビクッてなったあと腕を背中にまわしてきた。
「起きてたんだハチ君。謝らないでよ。こればっかりはしょうがないし」
「それでもやっぱり言いたいんだ。それに寂しかったんだろ」
「そこから聞いてたんだ」
「まぁな」
さて、ここまできたらやらなくちゃな。また今度悶えるはめになるだろうけど、ここまできたら引き返せないし引き返すつもりもない。
「よっと」
「ち、ちょっとハチ君なにしてるの!!」
「お姫様抱っこに決まってんだろ。それにしても顔が真っ赤だな圭萌」
「うるさいな、下ろしてよ重いでしょ」
「いや別に重くないぞ。むしろ心配になるぐらい軽い」
そんなこと言いながら器用に手を使って圭萌が使っていた俺のベットがある寝室のドアを開けた。
「下ろすぞ」
「恥ずかしすぎる」
そんな事を言いながら掛け布団に潜って唸り出した。どれだけ俺を萌えさせれば気が済むんですかねこの子は。
「ほら、寝るぞ」
「えっ。ちょっと待ってまだ心の準備が」
「何もしねぇよ。だけど、確かにこれだけ大きいベットに1人で寝るのは寂しいよな」
「う、うんそうだよ。えっとちょっと待って、まだ冷静にこの状況がわからない」
「わかりやすく言うと俺が添い寝してやるってことだ、言わせんなよ恥ずかしい」
「そうだよね……、ありがとうハチ君」
「こんなことで良ければいつでもやってやるよ」
「本当に?」
「ああ」
「今言ったからね、いつでもって」
やばいやらかしたか。俺も隠してるつもりが緊張のせいでいつもより思考がまわってねぇなこれは。
「じゃあハチ君、腕枕してよ」
「了解しましたよ、お姫様」
それから圭萌は驚くほど早く寝てしまい、本当にさっきまで寂しがってたやつと同一人物か疑うほどだった。
俺は言うと、
「なんでこんなにいい匂いがするんだよ」
簡単に寝れるわけもなく、やっと寝れたのは外が明るくなった頃だった。
山も無ければ谷もないそんな話ですがこれからもよろしくお願いします