許嫁拾いました   作:彰吏

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今までの中で最大の文量になってしまいました
読みずらいと思いますがすいません




第5話

 俺の通っていた小学校は、3年生から4年生に進級する時にクラス替えが行われる。3年間作り上げた人間関係を1度リセットして、新たな人間関係を作るのである。

 俺はというと今でこそボッチであるが、小学生の頃はグループを作るとかグループに属するとかはなかったものの、それなりに話す人などがいたりした。わかりやすく言うと親友はいないが誰とでもそれなりに仲良くできる、そういうやつだったのだ。

 だから俺はクラス替えがあったところで特に支障などなく、今までと変わらずやっていこうと思っていた。

 初めて今井のことを知ったのは、そんなクラス替えをしてから初めての登校日のことだった。

 その当時から彼女は可愛い女の子だった。

 3年生まで他のクラスだった俺でも、彼女の噂を耳にするぐらいには知られていた。綺麗な黒髪をゴムで結ぶことをせずに、その当時はストレートだったがそれがまた良かった。

 余り言いたくないし、特に本人には絶対に言いたくないことだが、その当時の俺は一目惚れをしたのだろう。

 1年生の時から本を読んでいたせいか、この頃からそれなりに頭が良かった、教養がそれなりにあった俺はなんとなくわかっていた。あれだけ可愛い子なのだから俺なんて見向きもされないだろうということを。

 俺の通っていた小学校では4月の中旬にオリエンテーションがあった。オリエンテーション自体は新たなクラスメイト同士で仲良くなるためのもので、なんら不思議なところはないものだろう。

 

 

 話題が変わるが今井の父親は外務官をやっているらしい。らしいと言うのは俺自身が今井や今井の父親から聞いた訳では無いからなのだが。外務官の仕事をよく知らないが、今井の父親は海外赴任をすることが多くあるらしい。

そして今井の母親も父親が海外に慣れるまで一緒について行くことがあったらしい。娘である今井を祖父母に預けて。

 

 

 話を戻そう。オリエンテーションなのだが、子供だけでなくその親同士の仲も良くなればと親子で参加するものであった。

 この当時、運悪く今井の父親が4月の頭から海外赴任が決まり、今井は祖父母の家に預けられていた。そうすると今井はオリエンテーションの時どうなるだろうか?

 

『あいつ両親が来てないぜ』

 

『もしかして両親がいないのかしら』

 

 このような会話が学生の間で行われていたのは想像に難しくないだろう。実際、俺も初めはなんで1人でいるのだろうとは思った。だが、その当時の俺は深く考えることもせずにオリエンテーションを単純に楽しんだ。

 その後、俺はクラスメイトと深く関わらずにいたので全く気づかなかったが、どうやら今井はクラスメイトの中からハブられていたらしい。そのことに俺が気づいたのは5月に入ってからのことだった。

 

 

 その日の俺は日直だったのでめんどくさいと思いながらも、日直の仕事である花の水やりと学級日誌を職員室に取りに行くためいつもより早めに学校に来ていた。

 俺が教室に一番乗りだろうなとか考えながら教室のドアを開けると、1人の女の子がちょこんと座っていた。この頃の俺は今と違ってそれなりに人と付き合っていたから、キョドることなく普通に挨拶をしていた。

 

『おはよう』

 

『グス……、おはよぅ』

 

 教室にいたのは今井だった。今井がいた事にも驚いたが、それよりも泣いてることに心底驚いた。

 

『おい、どうした?なんで泣いてるんだ?』

 

『なんでもない』

 

 そう言いながらも彼女は、目にいっぱいの涙をためていた。

 

『なんでもなくはないだろ。どうしたんだよ、俺でよかったらなんでも聞くよ』

 

 俺は好きな女の子が泣いていたからきっと必死だったんだろう。俺は無謀にも彼女を助けようと思ってしまった。

 

『ダメだよ、私に話しかけたら比企谷くんまで無視されちゃうよ』

 

『どうゆうことだ?』

 

『私みんなから無視されるし話しかけてもらえなくて、それでさっきまでいたクラスメイトにどうして?って聞いたらそれでも無視されて』

 

 その時俺は初めて自分のアホさ加減にイラついた。なぜ俺は好きな子がいじめられてるのに気づくことができなかったのか。この時ほど後悔したことはたぶん今までないと思う。

 

『あら、比企谷くんおはよう。なにしてるの1人で』

 

 あぁ、そういうことか。この一言とこの女の子の表情で俺は全てを理解した。こいつが元凶なのだろう、と。そして今井が言っていた無視する理由を聞いたのもこいつなのだろう、と。それと同時にこいつは遠くない未来にまた同じことを繰り返すのだろうとも思ってもいた。

 俺は小学3年生のときにもいじめを見つけて、その元凶となっていたやつに止めるよう説得しようとしたが、まるで意味がなかった。そいつは俺の言葉など忘れたかのようにその後もいじめを続けていたのだ。

 同じことを繰り返すわけにはいかないけど、今井も助けてあげたいと思い必死に考えた。

 そしてこの時からだろう。雪ノ下や由比ヶ浜や高校で知り合ったやつがやめるように言ってきたやり方をするようになったのは。

 

『比企谷くんいる?あ、いるじゃない。日誌取りにこないから先生持ってきたよ』

 

 偶然先生が今井をいじめていた女の子、めんどくさいからA子でいいか、A子がきてすぐに教室に現れたのだ。

 

『どうしたの?今井さん、泣いてるようだけど』

 

『俺が今井をいじめて泣かせました』

 

 俺は先生が今井が泣いてることに気づいた時、咄嗟にそう言った。なぜならA子ならば、

 

『私は庇おうとしたんですけど……』

 

 このように保身のために今井を擁護するはずだと思ったからだ。

 そこからは運も良かった。クラスメイトがどんどんやってきて、みんながみんな今井を擁護した。そして、俺のように今井がいじめられていたのを知らないやつも擁護し始めていた。

 今井は必死に俺ではなくA子が悪いと言っていたが、誰も耳を貸してくれなかった。

 結果だけ言うと俺がすべて悪いことになった。

 

『それで八幡、なんでそんな事したんだ』

 

 親父と俺と担任による三者面談の帰り道で親父が聞いてきた。この当時、親父は俺のことだから理由があってこうしたんだろうと思ってたらしい。本当かどうかわからんが。俺は親父なら言ってもいいだろうと思ったのだろう。

すべて言ってしまった。

 

『そうか。そのやり方は間違っている。間違ってはいるがお前にしては頑張ったな』

 

 そう言って親父は俺の頭を撫でてくれた。

 

 

 その後、俺の最も恐れていた今井本人からの訴えや俺に話しかけてくることなどなく、むしろA子以外の女の子と仲良くしているようで安心した。

 

『なぜ君は1人でいるのかな?みんなと一緒に遊ばないのかい?』

 

 その年の7月のことである。俺はあの一件以来ボッチなので、昼休み1人で校庭の木陰で読書をしていた時に突然知らない人に話しかけられたのだ。

 

『そんなあやしい人を見る目で見ないでくれよ。ほら、来客用のカードを下げているだろ』

 

 そんなことを言いながら首から下げていたカードを見せてきた。確かに来客用のカードらしかった。

 

『おじさんこそなにしてる人なの?』

 

『俺は外務官をしているんだが、言ってもわからないかな?そんな事よりおじさんの質問にも答えてくれないかい?』

 

 外務官をしていると言ったおじさんは、スーツ姿だったが話しやすい優しそうな笑顔をしていた。俺は知らない人だしいいだろうと思い、なんとなしに喋ってしまった。

 

『そうなのか。自分を犠牲にまでしてその女の子を助けたのはなぜだったんだい?』

 

『その子が好きだったのもあるけど、ただ見過ごせなかったんだ』

 

『そうかそうか。話してくれてありがとう』

 

 そう言っておじさんは優しそうにニコニコしながら俺の頭を撫でてから俺の元から去っていった。

 さっきの親父との電話でわかったことだが、この時のおじさんが今井の父親だったらしい。俺とあった時は帽子をしていて目元が見えなかったから気づかなかったらしい。そしてこの会話のおかげで、今井の許嫁の話を了承してくれて俺の両親にも頼んでくれたらしい。全然知らなかったし気づかなかったわ。

 それからすぐあとのことである。クラス中に今井の転校が知らされたのは。

 朝のHRで先生が今井の転校を知らせた瞬間、クラス中がすごい騒がしくなった。それもそうだろ。この頃には今井はクラスの中心と言っても過言ではなかったのだから。

 俺も表情は変えなかったが、頭の中ではすごいことになっていた。

 転校の理由は、父親の海外赴任がこれまでだと長くても半年だったらしいが今度は8年もの長期になってしまい、いっそのこと家族全員で海外に行こうとなったらしい。

 そして今井が登校する最後の日に、クラスでは放課後を使いお別れ会が行われた。俺は当然のように呼ばれるはずもなく、また自分から行くと邪魔をしてしまうと思い、帰ってしまおうと思っていた。しかし、お別れ会が終わったあとの片付けは手伝えと言われてしまったので、それでも参加するわけにもいかないので、屋上で暇を潰していた。

 

『比企谷くんいる?』

 

 突然屋上に繋がるドアが開いたと思ったら、お別れ会の真っ最中のはずの今井がいた。

 

『何やってるんだよ、おま『名前で呼んで』……今井』

『なにってずっと言いたかったことを言いに来たに決まってるじゃん。それにクラスのみんなも大事だけど、それよりも1番大事なのは比企谷くんだけだから。比企谷くんがいないお別れ会なんて居ても楽しくないよ』

 

 当時の慌てようを思い出したけどほんとにやばいかった。好きだった子に遠まわしに好きとか言われたらそれはね。

 

『それでなんだよ、言いたいことって?』

『まず比企谷くんのことハチ君って呼んでいいかな?』

『まぁ、それぐらいならいいけど』

 

 すごい勢いで言われたせいで了承しちゃったんだよな。

 

『ありがとう。私はハチ君のこと大好きなんだ。だけど、海外に行かなくちゃいけないからさ、ハチ君が良ければ私と許嫁になってくれないかな?』

 

 この時の俺の気持ちは今でも覚えてる。いや、思い出した。信じられない、その一言だった。てか、こんな重要なこと忘れる俺の記憶力やばいね。

 

『ほんとに?』

『ハチ君に嘘なんてつかないよ。それで返事は?』

『これだけ言われたら俺もちゃんと言わなくちゃな。俺も今井のことが好きだ。俺でよければ、その、許嫁になってくれ』

 

 

 その後家に帰ったら珍しく両親がいて、何事かと思っていたがすぐあと今井と今井の両親が訪ねてきた。

 そこからは怒涛の展開だった。今井の父親と親父が旧知のなかだったらしく、そしてどうやら親父から今井の父親に俺のことを話したらしく、転校の話を学校側にする時にたまたま俺と会って話したらしい。

 

 

 回想終了っと。にしてもこのサンドイッチ美味すぎる。このまま店に出しても売れるだろ。

 

 

 

 




補足説明

八幡は小学校前半までは正義マンです。ですが特定の仲いい子がいません。

圭萌を助ける時の自己犠牲っぽいのは完ぺきに運が良かっただけです。もっと考えたかったのですがいまいち思いつかなかったのでこうさせてもらいました。

圭萌が八幡に転校する直前まで喋りかけませんがそれは圭萌の父親が八幡の父親にいじめの理由を聞いてそれを圭萌も聞いていたからです。

圭萌がクラスの中心に慣れたのは彼女のカリスマ性の賜物です。

八幡は圭萌が転校した後も小学校ではボッチ、中学校でも色々ありボッチでなおかついじめられてそのこともあり圭萌のことを忘れてしまったことにします。

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