許嫁拾いました   作:彰吏

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今回はあざといのが登場です




第14話

 

 

2年目の大学生活が始まってはや2週間がたった。

圭萌とは別の大学なので一緒に大学生活が送れなくて残念に思ったこともあった。俺はそれでもすぐに割り切ったけど、圭萌が結構後悔してるんだよな。こんなことなら一緒の大学しとけば良かった、てな。

それでも2人で、できるだけ時間割りを合わせて授業が終わった後に一緒にいられるようにしたんだけどな。

それに授業後にだけ会えるってのもそれはそれでいいと俺は思うんだけどね。放課後デートって男なら憧れの1つのはずだし。少なくても俺はそう思います。

この事を圭萌に伝えたら「そうなの?」という言葉とともに疑いの目をむけられたけどな......なんでさ。

そんな中で火曜日だけは、俺の方が2コマ分早く終わってしまうので暇を持て余してることが多い。

今日はその火曜日にあたるのだが、俺はめずらしく食堂に来ていた。俺の通う大学の食堂は高くもなくかといって美味しいものがあるわけでもないんだが、紅茶がやたら旨いんだよな。

それを知ってからというもの、俺は偶に食堂で紅茶を飲みながら読書をすることにしてる。

今日はどんな本持ってきたっけと思いカバンをガサゴソしていると、

 

 

「せーんぱーい」

 

 

という声が聞こえてきた。

誰だよ全く、せっかく生徒の少ない時間帯で食堂全体が静かなのに。これだからパリピは......

 

 

「先輩ってば、ねぇ」

 

 

誰だよ先輩。早く返答してやれよ。そして早く黙らせて静かな食堂に戻してくれって。っと、あったあった。今日はツンドラなヒロインがでてくる本を持ってきてたのか。

この本読んでると雑談の大切さがわかるよね。個人的にはエロインとの雑談が大好きです。

 

 

「いつまで無視するんですか」

 

「ひっ」

 

 

何この子、俺の陣取っていた机をバンって思いっ切り叩いたよ。やめろよ、驚くから。

この時俺は足下のカバンを見ていたから本当に気づかなかった。だから驚いて変な声が出た。普通だったらこれぐらいじゃ驚かないし、変な声もでないから。本当だからな。

 

 

「久しぶり合ったというのにキモい声をあげないでください」

 

 

いや、ひでぇこと言いやがるなこの人。確かに反応しなかった俺も悪いかもしれないけど、9割方そっちがいけないと思うんですけど......

そろそろ返答しないとさらに罵倒されそうだから返答するとしますか。

 

 

「久しぶりだな、一色。なんでこんな所にいるんだ?」

 

 

この見るからにふんわりした感じの男子受けが良さそうな服に身を包んでる女の子は、皆さんご存じの一色いろはその人だ。

 

 

「決まってんじゃないですか、わたしがここの大学の生徒だからですよ」

 

「いやいや一色さん。冗談はほどほどにしておいた方がいいですよ」

 

「もー、酷くないですか先輩。冗談なわけないじゃないですか。なんなら学生証でもみますか?」

 

 

そう言いながら俺の対面に座り、自分のカバンをあさりだした。

なんで勝手に座ってるのかな?百歩譲って座ることはいいにしても、なんで俺の対面にわざわざ座るのかな。

あとカバンの中を探す時に、垂れてきた髪を耳にかける仕草はあざといからやめた方がいいと思います。

だけど今度圭萌にやってもらおうかな。圭萌がやったらきっと可愛いんだろうな。てか、圭萌だったら素でやりそうだよな。

 

 

「ありましたありましたって、なにぼーっとしてるんですか先輩。あ、もしかして私に見蕩れてたんですか。ごめんなさい、声に出して言ってくれないんで無理です」

 

「見蕩れてねぇし、なんで俺がふられてるんですかね」

 

 

それに今の口ぶりだと俺がここで告白したら了承してくれそうな感じなんだけど......

いいのかよそれで。いや、まぁしないけどね。俺には圭萌がいるしな。

 

 

「そんなことよりこれで認めてくれますよね?」

 

「俺がふられたことをそんなことで片付けるなよ。へぇー、本当にここの学生だったんだな」

 

「わかってくれましたか。それにこの顔写真見てくださいよ。我ながらよく撮れてると思うんですよね」

 

「流石俺の後輩は自分褒めをサラッといれてくるな」

 

「...俺の...後輩......って...」

 

「なんか言ったか?」

 

 

この距離で聞こえないとかどんだけ小さい声で喋るんだよ。

 

 

「何でもないですよ。それにこうでも言わないと先輩褒めてくれなさそうなんですもん」

 

「むしろそれを言うことによって、俺から褒められない可能性をけしてることに気付けよ」

 

 

だけど俺の顔写真と比べたら一色のやつはすごいよく撮れてるな。俺のなんて小町に「手配書みたいだね」とか笑顔で言われてハートブレイクしたんだぞ。自分でも思ったから別にいいんだけどね。

 

 

「それで一色、俺に何か用があるのか?俺はこれからここで読書に勤しむんだが」

 

「用事は今の一緒の大学なんだよっていうサプライズがそうなんですけど。なんか反応がうすくて、わたし悲しいです」

 

 

よよよとか言いながら目元を隠して泣きまねされても困るんだけど。あとそのよよよってところがあざといを通り越して若干ウザいから。

 

 

「悪かったよ。これでも結構驚いてるんだぞ」

 

「本当ですか?」

 

「本当だよ」

 

「よかった~。それじゃあ行きますか」

 

「は?」

 

「ほら、カバンに本をしまって立ち上がってください」

 

「いや、なんでだよ?用事は終わったんじゃなかったのかよ」

 

「せっかく久しぶりに会ったんですし、荷物持...じゃなかったお買い物しましょうよ」

 

「おい、今荷物持ちって言いかけただろ」

 

「そんなわけないじゃないですか」

 

「拒否権を行使したいんだけど...」

 

「あると思ってるんですか」

 

「ですよね~」

 

 

こんな感じのやりとりしてると高校時代を思い出すな。あの頃と変わらないやりとりで俺的には安心しているけど、こいつは俺なんかと一緒に居ていいのかよ。

 

 

「先輩また変なこと考えてますね」

 

「何言ってんだよ」

 

「別に隠さなくてもいいですよ。どうせ俺なんかと居ていいのかとか考えてたんですよね」

 

「そんなわけないだろ」

 

「別にいいんですよ。それに大学では先輩嫌われてないじゃないですか」

 

「は?」

 

 

それこそ何言ってんだよ、この子は。俺が大学では嫌われてないだと。そんなわけないだろ。

そもそも俺は誰ともしゃべらないけど、しゃべりかけられもしないんだぞ。

それになんか女子たちが俺のほうを見て、ヒソヒソしゃべってるのを俺は知ってるんだからな。俺が見るとすぐに目線をそらすし。あれ、本当に俺ってば嫌われすぎじゃね。

 

 

「あー、それは勘違いだと思うんですけど...」

 

「いや、それはないだろ。俺ほど周りのことがみえていて、空気の読めるヤツなんてなかなかいないからね。空気読みすぎてそのままフェードアウトするまである」

 

「まぁ勘違いのままでも敵が減るからこちら的にはいいんですけどね」

 

「なんだよ、敵が減るって」

 

 

一色は大学に進学してとうとうなにかと戦うようになったのか。そんなわけないだろうけど、それにしても何の話だ?

 

 

「気にしないでください。先輩には関係ありますけど、知らなくていいことなので」

 

「なにそれすごく気になるんだけど」

 

「この話はここまでにして、ほら行きますよ」

 

 

言うが早いか一色は俺をおいて食堂の出口に向かってしまった。俺をおいていって良かったのかよ。あいつは俺が逃げるとか考えないのか。

逃げたら逃げたで、今度会った時が恐いから行くけどさ。

それにしてもせっかくの紅茶どうしてくれるんだよ...

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

「おい、待てって。少しは先輩をいたわってゆっくり歩け」

 

「すいません。つい嬉しくて」

 

 

食堂をでてすぐのところで一色をなんとか呼び止めた。どこに行くかすら聞かされてないのに、おいてかれたら流石に困る。

それと今突然デレたけどこれに関してはスルーで良いよな、一色も自分で言ったくせに気づいてないっぽいし。

 

 

「それでどこ行くんだよ」

 

「駅前のららぽーとでいいですか?」

 

「別にいいぞ」

 

 

そこだったら電車で帰ってくる圭萌を、すぐに迎えに行けるから願ったり叶ったりだな。

 

 

「それじゃあ行きますか」

 

 

そう言いながら、一色は校門のほうに向かって歩きだした。俺もそれについて行くように歩きだした。

ちなみに俺が通ってる大学は駅までそれほど離れてるわけではなく、歩くとだいたい20分かかるぐらいの距離である。

そしてもう一つ言うと、1週間のうちに木曜日だけは圭萌のほうが2コマ分早く終わるので、いつも遠慮してるんだが俺の通っている大学まで来ることがある。

 

 

「おーい、ハチくーん」

 

 

わーい、なんで圭萌さんがここにいるのかな?これから起こるであろうことは俺でもわかるよ。修羅場だよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところかわってららぽーとの中にある喫茶店である。

メンバーは俺と一色と圭萌の3人で、俺と圭萌が隣合わせで俺の対面ではなく圭萌の対面に一色が座っている。

なぜそこを選んだんだよ、一色さん。そんなに俺が嫌なのか。

ここまでの道中は俺がいるのになんか2人で喋っていて、俺だけが後ろから黙ってついて行く感じだった。仲良くなるの早くないですかね?俺的には修羅場にならなくて良かったけど。

両方ともコミュ力の塊みたいなもんだから結構早く仲良くなれたのかもな。

 

 

「あ、ハチ君ここまで来てもらって悪いけど席外してもらえないかな?」

 

「いいのかよ?」

 

「大丈夫だよ。もう自己紹介したから」

 

 

確かに仲良さそうだったからいいか。それに女の子だけで話したいことでもあるんだろうな。

 

 

「わかったよ。すぐそこの書店にいるから終わったら連絡してくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

圭萌side

 

 

「先輩にこんなに美人な許嫁がいたなんて知りませんでしたよ」

 

「私こそこんなに可愛い後輩がハチ君にいるなんて知らなかったよ」

 

 

私は今日たまたま授業が休講になったため、ハチ君を驚かせてやろうとハチ君が通っている大学に来てみたら逆に私が驚かされてしまった。またもやハチ君が知らない女の子と一緒にいたからである。

それでも私は流石に学んだので、たぶん今回もただの知り合いだろうと思い、思い切って一緒にいた女の子であるいろはちゃんに聞いた。

そしたら案の定高校の時の後輩で、大学も一緒になったのを今日初めて知ったので、お買い物に誘ったということまで聞き出した。

ここまで聞いた感じだと、なんとなくだけどこの子も雪乃ちゃんと同じでハチ君のことが好きだったのか、今も好きなのかのどっちかなんだよね。

 

 

「わたし、今井先輩にお礼を言いたいんです」

 

「なんでかな?」

 

「たぶんお気付きだと思いますけど、わたしは比企谷先輩のことが好きでした。ですけど、雪ノ下先輩たちがふられたことを聞いて、わたしでは無理だと諦めようと思っていたんです。だけど今日、また比企谷先輩と会ったらその決心も揺らいじゃったんです。ですけどこんなに美人な許嫁がいるならスパッと諦められます。なのでありがとうございました」

 

「本当にいいの?こんなこと言われるのは嫌かもしれないけど後悔すると思うよ」

 

「いいんですよ、本当に。それに今井先輩が来た時、比企谷先輩すごく嬉しそうな顔してました。あんな顔今まで見たことありませんでした。あんな顔見せられたら諦めもつきますよ」

 

 

この子はいい子なんだな。私を素直にそう思った。そして同時に誇らしくも思った。こんなすごい子に好かれるなんてハチ君はすごいなって。

それにこの子となら私も仲良くなれるような気がした。

 

 

「そうだ、今井先輩。今は比企谷先輩を待たせてるのであんまり喋れないですけど、今度また一緒におしゃべりしましょうよ」

 

「そうだね。私も大学でのハチ君のこととか知りたいし、いろはちゃんとも仲良くなりたいから」

 

「それじゃあ連絡先交換しておきましょう」

 

「そうだね」

 

「それと比企谷先輩のことでアドバイスなんですけど...」

 

 

後輩の子からアドバイスもらうのってどうかと思うけど、ハチ君のことならもらっておいて損はないよね。

 

 

「どうしたの?」

 

「比企谷先輩って今井先輩には大学生活のことなんて言ってるんですか?」

 

「ぼっちだとか言ってるけど......もしかして違うの?」

 

「当たらずも遠からずですかね」

 

 

どういうことだろ?当たってるってことはぼっちなんだけど、実は違うってことだよね。よくわからないよ。

 

 

「ですからね、比企谷先輩って結構かっこいいじゃないですか」

 

「そうだね」

 

「それによく人助けもするんですよ」

 

「そうなの?」

 

 

これはなんとなくだけど知っていた。雪乃ちゃんからも同じようなことを聞いたことがあるし、私に対してすごく気遣いができるからそうなんだろうなとは思っていた。

 

 

「その結果どうなると思います?」

 

「モテるだろうね」

 

「そうなんです。早くもわたし達新入生の間でも噂になるぐらい人気なんですよ。そのおかげでわたしも比企谷先輩が同じ大学だって知ることができたんですけど...」

 

「だけど、ハチ君はぼっちだって言ってるんだよ?」

 

 

そこが私からしてみたら謎なのだ。私もよくハチ君のことを目でおっている女子高生とか見るからモテることはわかっていたけど、本人はぼっちだって言っていたからずっとわからなかったのである。

 

 

「比企谷先輩って結構話しかけるなオーラ出してるんでみんな近づけないでいるんです。だから比企谷先輩は気付いてないと思います」

 

「なるほどね」

 

 

たぶんだけど、その話しかけるなオーラってのもハチ君自身は意識してやってるわけじゃないんだろうなと思う。

 

 

「ですけど、安心はしない方がいいですよ。ここからがアドバイスなんですけど、今井先輩のしてるネックレスって確かペアルックがあるやつですよね。それを比企谷先輩にもプレゼントしたほうがいいですよ」

 

「牽制になるってことね」

 

「そうゆうことです。それではわたしはここらへんで」

 

「アドバイスありがとね」

 

「いえいえ。またお話してくださいね」

 

 

そこでいろはちゃんとは別れて、私はハチ君のところに向かう前にネックレスを買いに行くのだった。

 

 




渡すのは次回なのだよ
なぜかって?長くなりそうだったからだよ
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