許嫁拾いました   作:彰吏

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評価がとうとうオレンジになりました。
読んでくれてる皆さんありがとうございます。


今回は前回の裏話的なやつです。



第12話

「いってらしゃい」

 

「いってくる」

 

 

そう言ってハチ君は玄関をあとにした。このあと私も用意して家をでなくちゃ。

今日はハチ君もバイトの先輩とご飯を食べに行くらしいし、久しぶりにハチ君以外の人と夕ご飯で嬉しいような寂しいような。

ハチ君と一緒にいれないのはしょうがないし、これから大学が始まったらもっと一緒にいられる時間が減ってくんだよね。そう考えるとこの長期休暇が一生続けばいいのにと思ってしまう。いけないことだとわかっていても。

今回の夕ご飯を機会にハチ君と一緒じゃなくても寂しくないように慣れなくちゃ。

 

 

「しんみりしててもしょうがないから準備しよ」

 

 

私はマイナスな考えをやめてこれからの友達との夕ご飯のことを考えながら準備をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、待たせちゃった?」

 

「大丈夫よ、私たちも今来たところだから。それよりも良かったのかしら、姉さんも一緒なんて」

 

「もうひどいなぁ、雪乃ちゃんは。圭萌ちゃんがいいって言ってくれたんだからいいじゃない。それとも私が一緒なのは嫌なの?」

 

「そんなことないけど、今井さんと姉さんって初対面でしょ?」

 

「気を遣わせちゃったみたいだね。だけど大丈夫だよ、この前陽乃さんに助けてもらったから」

 

「そうなんだよ。あの時は助けられて良かったよ」

 

「その節はありがとうございました」

 

「いいんだよ」

 

「へぇあの姉さんがねぇ」

 

「雪乃ちゃんそれはどういうことかな」

 

「いえ別に何も無いわ。ただ比企谷が不甲斐ないと思っただけよ」

 

「雪乃ちゃんは比企谷君には厳しいね」

 

「そんなことないと思うのだけれど」

 

「ひとまずご飯食べに行きましょ」

 

「そうね」

 

「立ち話もなんだしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのあと話し合った結果、陽乃さんの行きつけのイタリアンレストランに行くことになった。

食事も終わり、今は食後のデザートと紅茶を頂いているところだ。ミルクティーとシフォンケーキのコンビは絶品だね。パスタも美味しかったし今度ハチ君と来ようかな。

 

 

「それで相談があったんじゃないのかしら?」

 

「そうなの?それならお姉さんも相談に乗ってあげよっかな」

 

 

そうなのである。今日のこの食事会は私の相談があって行われているのです。

話は昨日の昼頃、今日の夕ご飯のお誘いをした時のことまで遡り、

 

 

『もしもし、雪乃ちゃん。今電話大丈夫かな?』

 

『えぇ、大丈夫よ』

 

『少し後から声が聞こえてくるけど...』

 

『気にしないで。それで何の用かしら』

 

『明日の夕ご飯どうかなって』

 

『別にいいけど、比企谷君はいいの?』

 

『そのハチ君とのことで相談があるんだ』

 

『そうなの......ちょっと姉さん待って...』

 

『大丈夫雪乃ちゃん』

 

『ひゃっはろー、圭萌ちゃん』

 

『こんにちはです、陽乃さん。なんで陽乃さんと雪乃ちゃんが一緒にいるんですか?』

 

 

一緒にご飯とか食べてたのかな。よく一緒にご飯食べるって雪乃ちゃんも言ってたからな。

 

 

『今日は雪乃ちゃんと一緒に買い物来てるんだ』

 

『それは邪魔してすいません』

 

『別にいいよ、雪乃ちゃんの大切な友達だしね。それで明日2人でご飯食べに行くんでしょ?私も行っていいかな?』

 

 

それは願ってもない申し出だよ。相談する相手は多い方がいいしね。それに雪乃ちゃんよりも陽乃さんのほうがいいかも知れないしね。

 

 

『はい、こちらこそよろしくお願いしたいぐらいですよ』

 

『そうなの。そんな事言われるとお姉さん嬉しいよ。じゃあ行く場所はこっちで決めとくね』

 

『よろしくおねがいします』

 

『それじゃあね』

 

『はい、雪乃ちゃんにもよろしく伝えてください』

 

 

電話を切る瞬間に雪乃ちゃんの声が聞こえたような気がしたけど、あんまり姉妹の時間を邪魔しちゃ悪いもんね。

 

 

 

 

 

とまぁこんなことがあったんだよ。

 

 

「それで相談なんですけどハチ君の事でして...」

 

「なになに、もしかして同棲してることをいい事に毎晩襲ってくるとか?」

 

「ちょっと姉さん、流石にそれは酷すぎるわよ。幾ら比企谷君でもないわよ」

 

「そうなんです、それなんです」

 

「「??」」

 

 

ありゃ?2人とも何のことだかわかってない様子だね。言葉そのまま今のことなんだけどな。

 

 

「えっと本当に比企谷君が毎晩襲ってくるの?それなら元部長であり友達でもある私が彼を懲らしめるけど」

 

「違う違う。そっちじゃないよ」

 

「えっとそれじゃあどっちなの?」

 

「全然ハチ君がしてくれないです」

 

 

そうなのである。頑張って2人で寝るようにはしたけれど、そこから全くと言っていいほど進展がなく困っているのである。

 

 

「なるほどねぇ」

 

「私に魅力がないからなんですかね?」

 

「そんな事ないわよ、ねぇ姉さん」

 

「そうだね。圭萌ちゃんは可愛いし比企谷君だって大好きみたいだったしね」

 

「それならなんでなんですかね?」

 

 

ここで雪乃ちゃんは顎に手をあてて、さながら名探偵が難事件の推理をしているような感じになって黙ってしまった。

 

 

「まぁ比企谷君の気持ちもわからなくないけどね」

 

「本当ですか、陽乃さん」

 

「たぶんだけど責任取れないからとかそんな事考えてるんじゃないのかな」

 

「そうね。あの男だとそれが1番思ってそうなことよね」

 

「確かにそうですね」

 

 

ハチ君のことだから本当にそんな事考えてるんだろうな。私を大事に思ってくれてるってことなんだけど。

 

 

「それでもやっぱり不安なんです...」

 

「この前から思ってたけど圭萌ちゃん可愛いな」

 

「ちょっと待って......」

 

 

突然陽乃さんが私に抱き着いてそんなことを言った。ちなみに隣に座ってたから机の上には被害がない。

 

 

「姉さん。ここはお店の中だし自重してちょうだい。確かに私も今井さんは可愛いと思うけれど」

 

「雪乃ちゃんまでやめてよ」

 

「よし、じゃあ比企谷君をその気にさせる方法を雪乃ちゃんと私で考えてあげよっか」

 

「そうね、姉さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではレッツラゴー」

 

「ちょっと待って、陽乃さん。なんでここなのか説明して下さい」

 

 

夕ご飯を食べたイタリアンレストランから出て、雪ノ下姉妹に連れてこられたのはランジェリーショップだった。もう8時になるのにまだやってるんだな、とか思いながらすぐさま入店しようとした陽乃さんを呼び止めた。

 

 

「それは、やっぱり比企谷君を篭絡するにはまずランジェリーからだと思ったからよ」

 

 

陽乃さんではなく、雪乃ちゃんが先に答えてくれて、それを聞いて陽乃さんが頷いている。

あれ?おかしいな、私の耳には篭絡って聞こえたんだけど...

 

 

「さぁ行くよ、2人とも」

 

 

この人たちに相談して良かったんだろうかと後悔してきたのは内緒です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局そこで私は、雪ノ下姉妹の言われるままにランジェリーを買い、その場で着けて帰ることになった。

 

 

「今日は何かとありがとう」

 

「いえ、いいのよ。これからも困った事があったら私に言ってね」

 

「陽乃さんもありがとうございました」

 

「そのことは気にしなくていいけどさ圭萌ちゃん、あれって比企谷君じゃない?」

 

「あぁ、確かにハチ君も今日はバイト先の先輩とご飯食べ.........」

 

 

そんなことを言いながら陽乃さんが指さした方を見ると、ハチ君と知らない女の人がいた。

 

 

「ちょっと待って今井さん」

 

 

雪乃ちゃんが走りだそうとした私の腕を掴んでそう言った。

 

 

「離してよ、早くしないと見失っちゃう」

 

「そうは言われても無理よ。それに遠目でわかりづらいけどあれは比企谷君のバイト先の先輩よ。今井さんも聞いてるでしょ?」

 

「そんなの知らないよ、聞いてない。本当にバイト先の先輩なの?」

 

 

少し大きな声になってしまって雪乃ちゃんが驚いた顔をした。

 

 

「今井さん少し落ち着いて。確かにあれは彼のバイト先の先輩よ。少し前に友達と比企谷君のバイト姿を見に行った時に見たもの」

 

 

雪乃ちゃんは嘘をつかないから本当なんだろう。だけどそれならなんで、ハチ君は私には言ってくれなかったんだろう。

 

 

「本当に聞いてないのね?」

 

 

そう聞かれて、私は無言で頷いた。

 

 

「はぁ、それでは彼のミスね。それにしてもめずらしいわね、彼が大事な所を失念するなんて」

 

「人は誰でもミスはするし、ましてや比企谷君だからね。それに初めて好きな人ができたからってのもあると思うよ」

 

 

今まで黙っていた陽乃さんがそんなことを口にした。一応陽乃さんなりにハチ君をフォローしてるみたいだ。

 

 

「それに圭萌ちゃん、これはチャンスかもしれないよ」

 

「なんのですか?」

 

「この事をネタに比企谷君に迫ればいいんだよ」

 

「へっ?」

 

「確かにそれぐらいした方が彼のためかもしれないわね」

 

 

雪乃ちゃんまで何言ってるのよ。だけどよく考えたらいいかも知れない。

 

 

「わかりました、やってみます」

 

「うん、頑張ってね」

 

「そうね、頑張りなさい。それから結果も教えてね」

 

 

サラッと見返りを求める雪乃ちゃん流石です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡side

 

 

 

 

「なるほどな」

 

 

なんで昨日、俺が一緒に食事した先輩が女性だったのを気づいたのか聞いたら単純な話で見たのね。

それにしてもまさか俺が我慢してたせいで逆に圭萌を不安にさせてたなんてな。

 

 

「本当にごめんな」

 

「何が?」

 

「いや、不安にさせてたんだなって思って」

 

「別に大丈夫だよ。それに昨日今までの分まで甘やかしてくれたから...」

 

 

昨日のことを思い出してまだ圭萌の顔が赤くなった。俺もだけどね。

起きてからずっとこれの繰り返しである。どんな会話しても結局2人して赤面してしまう。

たぶん布団にずっといるからいけないんだろうなぁ。

 

 

「そういえば下着どうだった?」

 

 

この子本当に天然だよね。自分からまた突っ込まなくていいところに突っ込んでったよ。

話によると俺のために買ってきてくれたんだっけ。それだけで嬉しいんだけどね。

正直に答えた方がいいかな。

 

 

「いや、あのな...」

 

「もしかして似合ってなかった?」

 

「圭萌が良すぎて全然見れる余裕がなかったんだ」

 

 

だから言っただろ、結局2人して赤面するんだよ。圭萌は背を向けちゃったけど、耳まで真っ赤だから意味無いのにな。

 

 

 






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