GIRLS und PANZER〜少年は戦車道になにを望むか〜   作:紅葉久

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11.つんつん作戦開始です!

 

 

 

 大洗の住宅街に向けて、五両の戦車が走る。

 戦車道の試合では、試合中の決められたフィールド内では試合参加者及び審判のみしか立ち入れないようにしている。

 そのため今回の大洗対聖グロリアーナの試合では、大洗の人間が全て一時的に試合区間内から退去させられていた。

 国が試合の管理をしているからこそできる荒技である。今回の試合中、大洗の試合区間では完全に住宅街は無人の町となっていた。

 

  待ち伏せ作戦が失敗した大洗は、次の作戦の為に住宅街へ移動していた。

 

 大洗の次の作戦は、住宅街を使用した奇襲にも近い作戦だった。

 土地勘のない聖グロリアーナを住宅街に誘い込み、住居入り組んだ町の中で不意打ちをする。

 大洗の町を知り、小回りの利く操縦を必要とする作戦となる。それがみほが命名した『もっとこそこそ作戦』だった。

 

 本来の予定では待ち伏せ作戦をして、少しでも聖グロリアーナを翻弄してから移動する予定だったのだが、予定と大幅にズレてしまったことから劣勢のまま移動を強いられていた。

 

 Ⅳ号戦車が先陣を切り、残りの四両の戦車が追うよう走る。

 大洗では今回、聖グロリアーナのチャーチルとマチルダでは、不整地での速度が遅いことから追いつかれることはほぼないと読んでいた。

 

 しかしその想定は大きく裏切られ、大洗の五両の戦車を追う車両が一両現れた。

 その音を五両の中で一番後ろを走っていたⅢ号突撃戦車のキューポラから身を出していたエルヴィンが気づいた。

 エルヴィンが後方からエンジンの駆動音が響いたのを聞いて振り向く。そして視界に“その戦車”を取られた瞬間、彼女は慌てて通信機でみほに連絡していた。

 

 

『隊長! マズイぞ! アレが来たッ‼︎』

 

 

 後方を走るⅢ号突撃砲F型からの通信を聞いて、みほはすぐにキューポラから身を出して確認した。

 大洗五両の後方から、連絡通り聖グロリアーナの四両の戦車を置き去りにして、一両の戦車がこちらに向かっていた。

 

 遂に出してきた。みほの背筋が凍った瞬間だった。

 

 一番出されて欲しくないタイミング。Ⅳ号戦車が一両で逃げている時ならともかく、五両で逃げている状態でアレが追ってくるこの状況を危惧していたというのに。

 

 白銀の戦車。クルセイダー巡航戦車Mk.Ⅲ。

 全長約六メートル。重量は二十トン。六ポンド砲のL/43戦車砲Mk.IIIを搭載。そして一番着目するのはナッフィールド・リバティというエンジンを搭載して時速四十三キロメートルという速度を叩き出す戦車だ。

 更に加えるなら、この戦車にある調速機というリミッターを解除すれば戦車には、エンジントラブルという代償を払うことで本来戦車には出すことのできない時速六十キロメートルを超える破格の速度を叩き出す。

 

 大洗の戦車では、クルセイダー巡航戦車から逃げ切ることがほぼ出来ない。

 そしてその操縦している人間――みほから見る限り奇妙な操縦をする危険な人間が乗っている。

 本来、チャーチルもマチルダに速度を合わせて隊列を組んで走ることなど難しいはずなのに、それを平然と行なっている。

 戦車の中身を弄っているとは思えない。それなら他の戦車を使えば良いだけだ。それをしてまでクルセイダー巡航戦車を使う利点がない。

 ならば操縦手が精密な操縦をしている。そう考えるのが普通である。しかし本当にそれを実現しているのなら、みほからすればその操縦手は異端としか思えなかった。

 

 仮に百式流が操縦しているなら理解はできる。精密な操縦を得意とする百式流ならば、実現は可能だろう。

 

 ということなら、話は簡単だ。

 

 今、みほ達を追っている戦車。その中にいる操縦手は紛れもなく百式流を知り、そしてその技術を使っている人だと。

 和麻が以前に話していたことをみほは思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 久々の操縦と言えど、長年の経験はなくならない。それを改めてアッサムは実感していた。

 去年のあの日から砲撃手としてしか乗っていなかったが、やはり操縦手席の視界は悪くない。自分の思う通りに戦車が自在に動いてくれる感覚がたまらなく好きだったことをアッサムは再確認していた。

 

 

「アッサム様! アッサム様! あの五両の戦車を倒せばお兄様に会えるんですの⁉︎」

 

 

 そんな心地良い気分を邪魔する大きな声がアッサムの耳に入った。

 操縦手席の後ろから大声をあげる赤髪の少女――ローズヒップにアッサムは溜息を吐くのを堪えながら彼女を窘めた。

 

 

「声が大きいわ。静かにしなさい、ローズヒップ」

「うぅ、ごめんなさいですの。でも私……! 待ちきれないでございますのよ! 本当にお兄様があっちの学校にいるんでしたらお会いしなくてはなりませんわ!」

 

 

 落ち込んだと思えばすぐに元気に騒ぎ出す。相変わらず落ち着きがない子だと、アッサムは操縦手席で呆れてまう。

 聖グロリアーナでは珍しい気品が足りてない生徒である。しかしそれでもこの学校で数少ない自分の名前に“紅茶の名を冠した”生徒でもある。

 それならもっと落ち着きのあるお淑やかな振る舞いをしてほしいと思うアッサムだったが、今時点でもかなり“まともになった”方と思っている時点で当初のローズヒップのやんちゃ振りが伺える。

 

 

「この試合を申し込んできた大洗の話していたことが本当なら、あの学校に和麻様はいるはずよ。私達が勝てたら会わせるなんて言ってくるぐらいなのだからどれほど強いのかと期待してみたけど……大したこと無さそうね」

 

 

 アッサムが先程のローズヒップの質問に答えながら、落胆の表情を見せた。

 先程の待ち伏せ作戦を見た時点で、アッサムもダージリンと同様に大洗の実力をある程度理解していた。

 ダージリンと考えは同じく、あの“ドライブアクション”をしたⅣ号戦車以外は今のところ戦力として見なくて良いだろうと。

 

 

「でも妙ね。あの方なら……一両だけ教えるなんてことをしないはずだわ」

 

 

 アッサムが知る限り、百式和麻はそんなことをしないと知っていた。

 それもそのはず、和麻は過去に聖グロリアーナに入学後、クルセイダーチームの一年生の育成をした時のことだ。

 和麻はたったの二ヶ月程度で、育成した一年生のみのクルセイダーチームで二年生と三年生のクルセイダーチームを試合で下した。

 元々、一年チームが実力がある生徒が多いこともあったが、それを飛躍的に伸ばした百式流の実力を聖グロリアーナに知らしめた出来事だ。

 その中で、アッサムも当時二年生でありながらも和麻から教えを受けた。そしてその練習を間近で見ていた彼女は、和麻という人間は人一倍厳しいがやる気のある人を誰一人として見捨てるようなことをしないと分かっていた。

 

 だからこそ、考えられるのは二つ。

 ひとつはⅣ号戦車に乗っている以外の生徒はやる気がなく、和麻が育成をしなかった。

 もうひとつは和麻は既に途中と言えど全員を育成していて、先程の待ち伏せ作戦は何かのアクシデントが起きて失敗したと。

 

 前者ならあの拙い作戦も理解でき、そして後者も一応無理矢理だが理由にはなる。

 更に前者の理由なら何も考えずに全車両を撃破すれば良いだけ。しかし後者だというのなら、話は変わってくる。

 

 アッサムはそう考えて、和麻ならはどうするかを予想した。

 

 

「そうなら操縦手はある程度育ててるはず、それに自分達が勝てると自信があるなら隊長も実力者がいると考えるのも当然」

 

 

 仮に後者の理由なら、先を走る五両全車両が百式流の教えを受けている操縦手が乗っている。

 更にそれを生かせる指示を出せる隊長がいるのなら、聖グロリアーナは負けるとは言わないが苦戦を強いられる。

 仮にも“疾風迅雷”も謳われた操縦手の百式和麻がゼロから育てた操縦手がいるチームを、彼を知る者なら油断して見れるわけがなかった。

 

 

「あまり甘く見ない方が良いかもしれないわね」

 

 

 アッサムがそう呟いて、ハンドルレバーを少しだけ強く握り締める。

 

 気合いを入れ直そう。一度だけ、深く深呼吸。

 そしてゆっくりと目を閉じて、開く。

 

 そうすれば、自分は久々に本気になれる。

 そう思って目を開けたアッサムの瞳が、鋭くなっていた。

 普段から見せる優しい瞳ではなく、そこにあるのは砲撃手として見せる瞳でもなく、操縦手として本気で戦うと決めた瞳だった。

 

 

「ローズヒップ、和麻様に会うならちゃんとしなさい。勝ちに行くわ」

 

 

 そしてその声に、ローズヒップも気付いた。

 アッサムのこの声を久々に聞いたと、過去に操縦手として本気で戦った時にしか出ない頼りになる威圧のある声色だと。

 一瞬呆けた顔をしたローズヒップだったが、アッサムの言葉を理解すると嬉しそうに笑っていた。

 

 

「まっかせてくださいまし! あの五両を倒しますでございますわ! お兄様が待っていますもの!」

「ギアを上げるわ、指示任せたわよ」

「了解でございますわ!」

 

 

 クルセイダー巡航戦車の速度が上がる。

 まずは後方にいるⅢ号突撃戦車から、白旗を上げさせよう。

 

 

 

 

「マズイ、やっぱり私達のところに来たぞ!」

「一直線にこっちに向かって来てるな……」

「砲塔が回らないのがやはり痛手……!」

 

 

 Ⅲ号突撃砲F型の中にいたエルヴィン、カエサル、左衛門座の三人が顔を強張らせた。

 一番後方を走っていたⅢ号突撃戦車。この戦車は方法が回らない固定砲台、よって後ろから狙っても撃ち返されることはない。一番に狙われることは読めていた。

 

 

「戦うにしても私達に分が悪過ぎる……どうするべきか」

 

 

 エルヴィンが考える。しかしこの状況を打破できる作戦などを考えられるわけもなく、エルヴィンは素直にみほに連絡を取ろうとした。

 

 

「私は戦ってみたいぜよ。あのクルセイダーと」

 

 

 しかしそこで、おりょうが告げた言葉にエルヴィンは目を大きくした。

 まさかおりょうがそんなことを言うとは思わなかったと。

 

 

「流石にそれはキツイだろう?」

「あのクルセイダー、確か百式が言っていた車両だ。操縦手の人が相当ヤバイって言ってたぞ。私達には無理だろう?」

 

 

 カエサルとエルヴィンがそれぞれおりょうの提案に異を唱える。

 しかしおりょうは、そんな二人に首を横に振っていた。

 

 

「一度だけ、戦わせてほしいぜよ。百式に教わって、百式と二回戦ったからわかる。私には“まだ”勝てないくらいわかるぜよ」

 

 

 普段のおりょうが話す声色とは違う声に、エルヴィンが「じゃあなぜだ?」と訊き返す。

 その言葉に、おりょうは悔しそうに答えた。

 強くハンドルレバーを握り締めて、おりょうが心から思ったことを。

 

 

「今の私がどこまで戦えるか知りたいぜよ。百式に届かなくても、私ができる全部を出し切ってみたい」

 

 

 そう言われて、三人は顔を合わせた。

 おりょうが今日までどれほど努力してきたか三人は知っていた。

 たまたま始めた戦車道で、Ⅲ号突撃砲F型に乗る四人の中で一番辛い練習を続けてきたおりょうの努力。

 和麻に嫌になる程に戦車に乗せられ、学校の授業と家で好きな坂本龍馬の本を読む時間を削ってまで戦車の知識を勉強していた日々を見ていた。

 弱音を吐いたこともあったが、辞めるという選択をしなかったおりょうがここまで強く自分の意思を示したことに、三人は困ったような顔をしたが……どこか納得した顔を見合わせていた。

 おりょうの言葉を聞いたエルヴィンは通信機を取ると、みほに向けて告げていた。

 

 

「隊長、こちらエルヴィン。後ろのクルセイダーを足止めしても良いか?」

 

 

 エルヴィンの言葉に、おりょうは思わず操縦手席から振り向いた。

 反対されると思っていた。しかしエルヴィンはそんなおりょうに「危ないから前を向いていろ」と笑って答えた。

 

 

『一両だけであの戦車と戦うのは不利です。やめた方が良いかと』

 

 

 しかしみほは一両でも聖グロリアーナに対して不利になることを危惧してやめるようにと言っていた。

 しかしここまで言われたとなれば、折れるわけにもいかない。

 

 

「すまない。うちの操縦手が珍しくやる気を出してな、それに応えるのも車長の務めだ。それに誰かが足止めしないと、あのクルセイダーに全車両がやられる」

 

 

 確かにこのままだとエルヴィンの言う通りの結果が訪れる。

 ならば一両が足止めをして、残りの四両が逃げ切ることを優先するべきだと。

 みほもエルヴィンの言いたいことを理解した。

 しかし、それをしてしまうと――唯一の聖グロリアーナとまともに撃ち合える攻撃力のあるⅢ号突撃砲F型を失ってしまう。

 この試合に勝てる道筋が、更に狭くなる。

 

 

 

 

 

 

 耳から聞こえたエルヴィンの提案に、みほは悩んだ。

 そんなみほの顔を不安に思った優花里が、彼女に訊いていた。

 

 

「どうしたんです? 西住殿?」

「それが……エルヴィンさん達がクルセイダーの足止めをするって」

「えぇぇ‼︎ それ本当ですか⁉︎」

 

 

 みほの話を聞いた瞬間、優花里は目を大きくして驚いた。

 沙織も華も、みほが言ったエルヴィン達の選択がどういう意味があるかを理解した。

 

 

「所謂、撃破覚悟の捨て身ですか?」

「ううん、優花里さんの言い方とは少し違うみたい。おりょうさんがやる気あるって」

「みぽりん、それどういう意味?」

 

 

 優花里の話をみほが首を振って答え、そしてその言葉に沙織が首を傾ける。

 

 

「……わからない」

 

 

 みほ自身も、おりょうの意図が分からずにいた。

 そしてこのままエルヴィン達を行かせてしまうと、大事な戦力を失ってしまう。それは良くない、更にみほはそれよりも容認できない理由があった。

 

 

「だけど私は、仲間を切り捨ててまで勝ちたいって思いたくない。だからエルヴィンさん達に行かせるわけには……」

 

 

 みほは過去に一度、仲間を見捨てるか助けるかの二択を迫られたことがあった。

 去年の戦車道全国大会。そこで起きた事故のことを。

 仲間を見捨てれば、全国優勝。仲間を助ければ、負ける。

 その二択で、みほは迷うことなく後者を選んだ。

 間違えた選択と思っていない。それをしてしまうと自分の筋が通らない、みほはそれを強く心に刻んでいた。

 しかしこのままだと、全車両が撃破されてもおかしくない。それも十分にみほは理解していた。

 

 

「一両だけじゃ無理だ。あの戦車は止められない」

 

 

 そこで今まで話していなかった麻子が、淡白に告げていた。

 

 

「後ろの戦車。なんとなくだが、あの男と同じ感じがする。一両で戦っても時間稼ぎにならない」

「ならどうするって話してるの! 麻子は良い案あるの⁉︎」

 

 

 淡白に話す麻子に思わず沙織が声を大きくする。

 このままだと状況が変わらないのだからどうするべきかを話しているのに、事実を突きつけても仕方ないと。

 麻子は沙織を一瞥して、自分の握っているハンドルレバーを見つめた。

 そして面倒そうに溜息を吐くと、麻子はみほに提案していた。

 

 

「私達も行こう。二両で行けばなんとかなるかもしれない」

 

 

 その提案に、麻子以外の全員が目を大きくした。

 

 

「私達も倒されちゃうかもしれないじゃん!」

「そうですよ! 西住殿が倒されたら試合そのものが終わりますよ⁉︎」

 

 

 沙織と優花里が反対するが、麻子はまっすぐに前を向きながら答えた。

 

 

「どの道、このままだとやられる。なら賭けに出るしかない。私とおりょうさんで後ろのクルセイダーと戦う。撃破できれば良いが、クルセイダーの後ろにいる他の戦車が来るまでの時間しかないから撃破は無理だろう。できても履帯を壊して時間稼ぎくらいだ」

 

 

 麻子がそこまで話したところで、みほも麻子の提案を理解した。

 そしてそれがどれほど難しいか、みほは麻子の提案の難易度に眉を寄せてしまった。

 

 

「麻子さん、できると思いますか?」

 

 

 思わず、みほが訊いていた。

 そんなみほの質問に、麻子は即答していた。

 

 

「決めるのは私じゃない。西住さんが決めることだ。西住さんのしたいようにすれば良い。私は、西住さんの行く道を走るだけだ」

 

 

 そう言われて、みほは麻子の背中が頼もしく見えた。

 自分のより小さな背中が、この時は大きく見えてしまう。

 みほがどうするべきかを悩む。そんな彼女に、優花里は楽しそうに微笑んでいた。

 

 

「西住殿! 命令してください!」

 

 

 その言葉をキッカケに、華と沙織も続いて微笑んだ。

 

 

「隊長は西住さんですよ」

「私達、みほの言う通りにする!」

「どこへだって走ってやる」

 

 

 そして最後に麻子がそう告げて、みほは一拍だけ間を開けて頷いた。

 そうだ。自分の好きなようにすれば良いんだと。

 和麻が前に言ってくれたように、自分が後悔しない道を選べば良い。

 

 

「わかりました! では私達Ⅳ号はエルヴィンさん達とクルセイダーの足止めを始めます!」

 

 

 みほがそう言って、首の通信機から全車両に通信した。

 

 

「全車両、このまま住宅街へ行ってください。私達Ⅳ号とⅢ突は今からクルセイダーの足止めをします」

『隊長⁉︎ それは流石に⁉︎』

 

 

 エルヴィンから非難の声が返ってくる。

 しかしみほはその言葉に、すぐに答えた。

 

 

「負けるつもりはありません。私達とエルヴィンさん達、誰も欠けずに住宅街へ行きます」

 

 

 ハッキリと、みほが言い放った。

 その自信のある声にエルヴィンが息を飲む。

 そしてしばらくして、エルヴィンから『了解した!』と返答を受けていた。

 

 

『西住ちゃーん? 大丈夫?』

「会長、大丈夫です。なのでそちらの三両の指揮を任せます。当初決めたポイントで合流しましょう」

『了解〜!』

 

 

 そこまでの指示を出して、みほは深く息を吐いた。

 これから神経を使う指示をしなくてはならない。気合いを入れなくてはと。

 

 

「西住さん。私の付けてる通信機、使っても良いか?」

 

 

 麻子が首に付けている通信機を指差して、指示を仰ぐ。

 和麻がいざと言う時の為に操縦手に付けさせた通信機、まさかこんなに早く使うとは思ってもなかった。

 みほは麻子に頷くと、通信機のエルヴィンに向けて指示を出した。

 

 

「エルヴィンさん、おりょうさんに通信機を使うように言ってください」

 

 

 みほの指示を受けて、おりょうが通信機を使ったのだろう。

 麻子の耳に、通信の音が聞こえた。

 

 

『冷泉、聞こえるぜよ?』

「あぁ、聞こえ……ます」

『別に無理に敬語は使わなくて良い。やりやすいようにしていいぜよ』

「……わかった」

 

 

 操縦手同士の通信機が良好なのを確認する。

 

 

「通信、大丈夫そうですね。なら行きましょう」

 

 

 勿論、操縦手の通信は回線が一緒の車長にも聞こえていた。

 みほが指示を飛ばす。後ろのクルセイダーじゅに向けて、二両の戦車がUターンした。

 前方にクルセイダーが一両。遥か後方に四両の聖グロリアーナ陣の戦車が視認出来る。

 

 

「――つんつん作戦開始です!」

 

 

 みほは意を決して、咄嗟に浮かんだ作戦名を告げた。

 

 

 

 

 

 




読了、お疲れ様です。
全く終わる気がしない聖グロ戦、まだまだ続く。

今回の話、アッサムの戦闘ギアが上がる。
そしておりょうの出番、麻子とおりょうの共闘、そんな話。
次、三両の戦車の戦いだけで終わる話になりそうです。

アンケートに答えてくださり、ありがとうございます。
今のままで良い人がかなりいて驚きました。
むしろ多くして欲しいなんて、活字好きな人!(褒め言葉)
紅葉、頑張って書いちゃいます!

感想、評価、批評はお気軽に!
頂ければ、まだまだ頑張れます!

P.S.
まだ未定ですが、今後のどこかで
アニメでいう1.5話みたいな本編になかった裏の話を出すか検討してます。
案は色々ありますが……例えば、朝練が始まった麻子を和麻が起こしに行く話とかですかね?
需要があれば、今後書こうかと思います。アンケートでお答えいただいても、感想でも構いませんのでご意見待ってます。

今後の間章について

  • 書くなら見る
  • どっちでもいい
  • 要らない

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