はこちん!   作:輪音

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新たなる潮流
新たなる巨乳
豊かな双丘が
函館を揺らす
揺れるは艦娘
新規の魅力的な参入者は
既存の戦士たちを悩ませ
提督の貞操を心配させる

Not even justice,I hope to get to big boobs.
真実の乳はどこにあるのか






ⅩLⅤ:ヲ級改旗艦級、ショウカクにならんとす

 

 

 

函館独特の七月盆も終わり、冷たい雨の止んだ朝、私は戦艦棲姫に手を引かれて鎮守府近くの砂浜へ出掛けた。

雨上がりの浜辺にひとりの娘が佇(たたず)んでいる。

右肩に飛行甲板を装着していた。

銀色の髪に弓道着っぽい服に杖。

その姿は、まごうことなき……。

 

「なあ、戦艦棲姫さんや。」

「なにかしら、私の提督。」

「あの子は……。」

 

ヲ級だ。

胸当てにも『ヲ』とある。『シ』ではない。

 

「改で旗艦級の装甲空母よ。私の随伴艦だったの。」

「先輩の随伴艦をしていた、ゴコーセンのショウカクです! ヨークタウンも撃沈出来ます!」

「うちに所属している子を爆撃する気?」

「呼んだ?」

「なんで服を着ていないんですか、ヨークタウンさん!?」

「女はマッパで勝負よ!」

「私の正気度の理性値のSAN値を削って楽しいですか?」

「提督を誘惑するのも悪くないわ。火遊びしましょうか。」

「何故貴女まで脱ぐんですか、戦艦棲姫さん?」

「あの、ゴコーセン、ショウカク、脱ぎます!」

「君まで脱ぐんじゃない!」

「これだから、五航戦は。」

「加賀教官、いいところに! みんなに言ってください!」

「脱ぎました。」

「なんで貴女まで脱ぐんですかっ!?」

「やりました。」

「雪屋博士と神屋博士に改装してもらいましょう。」

「服を脱ぎながら言わないでください、大淀さん。」

「提督の為なら、服を着なくても大丈夫ですから。」

「私が大丈夫ではありませんっ!」

「両博士とも秘密結社を潰滅させた実績がありますし、怪人や戦闘員の再改造手術を何度もされていてお手の物ですから、深海棲艦の一隻や二隻くらい、どうにでもなります。彼女をここの尖兵にしちゃいましょう。」

「ちょっと待って、不穏な表現が幾つもあるんですけど。」

「髪を長くして、眼の色を誤魔化して色白だと言い張れば……肌をロシア風に染めて……北方海域で海域回収(ドロップ)した量産型じゃないかと言い張れば……。」

「なんか大淀さんから黒いオーラがっ! 憎しみの心に囚われちゃいけないんだ! 何故それがわからない、ガラリア!」

「任せてください、マスター。貴方の運命は私と共にあります。」

「えっ?」

「間違えました、提督。気にしないでください。彼女の艤装を新たに作ってもらって、肌の色なども擬装しておきます。では皆さんこちらへ。」

 

ぞろぞろ工廠へ向かってゆく全裸の娘たちをホッとしながら見送っていると、後ろからポンと肩を叩かれた。

 

振り向く。

ジャーン、ジャーン、ジャーン!

銅鑼を叩く音が脳内に聞こえた。

げえっ!

義母(かあ)さん!

 

満面の笑顔の義母(はは)がいた。

私の娘のようにも見える、アイヒホルンの森から来た美しい義母。

無邪気さは時として残酷な刃となる。

 

「トトちゃん、今のはなにかしら?」

「あ、あのですね……。」

「お母さん、ハレムはよくないと思うの。」

「痛い、痛い、義母さん、この間ドラマを見て覚えたアームロックは止めてください!」

「知らない間に、何十人もの子を侍らせるなんて。昨日まで目を瞑っていたけど、あんなことをさせているようじゃちょっとこれはお説教対象ね。」

「ちょ、ちょっと義母さん! 誤解です!」

「あと、トトちゃんの部屋に女物の下着や服が散乱していたんだけど、あれはなにかしら?」

「なにもしていません! 私は潔白です!」

「それに何人もの子を毎晩取っ替え引っ替えベッドに誘うなんて、どうしてこうなっちゃったのかしら? こっちへいらっしゃい。」

「なにもしていません! 私は童貞です!」

「問答無用!」

 

あーれー。

 

 

夕方まで正座して、足が痛くなった。

執務中も、義母から監視されたのだ。

なんちゃってだけど、軍事施設なのに大丈夫なのかな?

義母が鎮守府にいるのは、問題なのではないだろうか?

大淀に聞いたら、満面の笑顔で大丈夫だと答えられた。

ホンマかいな、そうかいな。

お陰で本日、連日行われてきた性的悪戯が皆無だった。

しかしながら、何故あんなにも私が怒られるのだろう。

解せぬ。

童貞なのに。

童貞なのに。

大事なことなので、二回言ってみた。

あと、私もいい歳なのだから、トトちゃんなどと昔の呼び名で呼ばないで欲しい。

もう、あの頃の私ではないのだから。

童貞だけど。

 

 

その夜は戦艦棲姫とヲ級に挟まれ、いろいろと大変だった。

やらせはせぬぞ!

やらせは!

 

 

 

数日後。

 

「加賀さーん、遊びに来たわよ。」

「はて、どちら様かしら?」

「横須賀第二の瑞鶴よ。もう、わざとらしいんだから。はい、お土産の鳩サブレ。」

「やりました。」

「鳩サブレは神奈川県で万能よ。ご贈答に使えるし、一個の満足感が高いし、日持ちするので遠征にも持ってこいの素晴らしい品だわ。」

「なんだか説明的な台詞ね。ところで、毎回持ってくるのが同じものでは芸がなくてよ。」

「はい、豊島屋本店限定の落雁。」

「流石に気分が高揚してきます。」

「へへへ、どうよ。」

「そうそう、貴女に紹介したい人がいるのよ。」

「お見合いはもう当分したくないわ。」

「ドーモ、はじめまして、ズイカクさん。ゴコーセンのショウカクです!」

「え……ええと……その……貴女は……お姉? えっ?」

「北方海域で海域回収(ドロップ)された子なの。」

「そ、そうなんだ。あの、ずいぶん肌が白い翔鶴姉だね。」

「量産型じゃないかって、こちらでは推測されているわ。」

「あれ、量産型艦娘って、殆どが駆逐艦で、まあまあの軽巡洋艦とそこそこの軽空母、そしてごく少数の重巡洋艦じゃなかったっけ。加賀さんの教官時代にそう聞いたわ。」

「今はこの子が函館の五航戦よ。」

「ゴコーセンのショウカクです!」

「なんだかヲ級に似ているような……。」

「気の所為よ。」

「そうなかあ?」

「ところで貴女、大湊(おおみなと)の翔鶴には会ってきたの?」

「うん、あっちの翔鶴姉は元気だったよ。相変わらず、台湾の私を心配していたけどね。」

「あの子は心配症だから。」

「こっちに翔鶴姉がいるんだったらさあ、これからちょっとお出掛けしない?」

「えっ?」

「ヲッ?」

「ん? なにか不味かった?」

「いえ、別段私たちに問題は無いわよ。ただ、提督から今すぐ許可を得られるかどうか少し考えただけ。」

「珍しいわね、加賀さんがそんなことを言うなんて。ここの提督さんなら、すぐに許可をくれるでしょ。」

「そうね、その、どこか行きたいところはあるのかしら?」

「函館要塞跡に行ってみたいわ。」

「またマニアックな場所ね。」

「お姉もそこでいい?」

「ヲッ、ワタシもそこでいいです。」

「うーん、海域回収艦ってかなり癖があるんだね。うちにはいないからよくわかんないけど。」

「小笠原の如月が海域回収艦よ。」

「ふーん、じゃ、行こっか。」

 

 

戻ってきた加賀の背中は汗びっしょりだったと、後の史書には記されている。

 

 

 

 


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