風の激しい夜。
荒れる海、黒く辛い液体。
波しぶきが体を濡らした。
冷たい、冷たい、命の源。
私たちの源。
敵が見える。
波の向こうからやって来る。
私だったモノたちのよすが。
えにしを切った後の敵対者。
私は境界線上の存在。
司令官が私のくびき。
司令官あっての私だ。
さてと、奴らを殲滅せしめようか。
夜戦の時間だ。
私たち、駆逐艦の本領発揮の時間。
私は、厳密には駆逐艦じゃない。
外装は駆逐艦だけど、中身は別物。
故に、この程度の敵は鎧柚一触だ。
あの正規空母の口癖を思い出した。
嗚呼、あの空母は豊かな胸をしばしば司令官に押し付けている。
何気なく。
恰好いいことをよく言うけど、それは司令官に近づく為の方策。
わかっているんだから!
元教官だからって、負けないから!
後、あの戦艦と重巡洋艦も油断出来ない。
前者は正々堂々とタカラヅカみたいに司令官へ突撃しているし、後者はさりげなく良妻風に振る舞っている。
あの軽空母と給糧艦も司令官の胃袋を掴むべく、私の司令官にちょくちょく差し入れをしている。
他にも沢山の狩人が存在している。
油断大敵、慢心禁物。
李さんは…………ま、それはないか。
みんな、ギラギラしている。
えーい、この気持ちを敵にぶつけてやる!
担いだ長物を背負い直す。
遭遇した偵察隊らしき艦艇群に、突撃を敢行した。
僚艦の島風が、敵駆逐艦の顎に鋭い蹴りを入れる。
呆気なく宙に浮いたそれの腹に、彼女は容赦なく追撃の戦矛を叩きつけ轟沈させた。
私は無傷の駆逐艦に飛びかかって激しく手刀で突き、そ奴の生命活動を停止させる。
どちらも、一発も撃たない。
だって、この程度の連中に弾を使うだなんて勿体なさ過ぎるもの。
ヤるなら人の姿をした連中。
小口径の弾だって、当たりどころによっては中身へと入り込める。
弾頭が装甲の隙間から入り込んで奴らの体内を掻き回すだろうと考えたら、ぞくぞくしちゃう。
早く会えないかな?
みんな、私がヤっちゃうんだから。
よーし、残敵掃討開始します!
現在の津軽海峡周辺は平和そのもので、私たちはオホーツク海方面での哨戒活動に励(はげ)む。
たまにキリル文字やら漢字やらの描かれた金属や樹脂などの破片が浮かんでいたり、ぷかぷか浮かんだ蛋白質を鳥が突っついている場面に出くわしたりした。
証拠としての撮影だけを行い、それらは放置の方向にしておく。
下手に突っつけば私の司令官が国際的な騒動に巻き込まれてしまう危険性を孕(はら)んでいるし、邪魔者をすべて排除すればいいとは思うけど、それらは司令官の望むところの行為ではない。
夫を悲しませるのは、妻としてよくない。
今のところは認知されていないんだけど。
早く名実共に女房として活動したいなあ。
見るだけじゃ、ちょっとモヤモヤするよ。
艦種関係なくみんなガン見しているけど。
たぶん、みんなムラムラしていると思う。
恥じらう司令官の初々しさがたまらない。
あの全てを蹂躙出来る日が待ち遠しいわ。
まだ『安全装置』の解除は出来ていない。
お触り厳禁はキツい。
頬っぺにチューもダメだなんて。
舐めることも出来ないだなんて。
チュートリアルで足踏み状態だ。
司令官が童貞を失った時点から、側室戦争が始まる。
次の戦争のための準備を怠らないようにしなくちゃ。
島風は元々男性だ。
『彼女』は志願して艦娘になり、南方での激戦を生き残った。
そして、今も函館鎮守府に所属しながら戦い続けている戦士。
まさに歴戦の戦鬼。
函館最強級駆逐艦として、私の僚艦をよく務めてくれている。
『彼女』は司令官の話をよくしてくる。
あくまでも男同士の友情と言い張って。
私の司令官にべたべたしているのを見ると複雑な気持ちになるけど。
男同士だからって、なにをしてもいい理由にはならないと思うけど。
今は男じゃなくなっているんだから、きちんと自覚して貰わないと。
まあ、アンドロギュヌス的存在なのは、島風自身がもやっとする部分なのだろうけどね。
入浴時にその島風の下腹部をじっとり見つめる艦娘が複数いて、業の深さを感じさせる。
司令官は一見、冴えないおっさんにしか見えない。
だが、そこがいい。
まー、つまんない上役だったら、即座に(自粛)して(自粛)でギュッポンギュッポンのウィンウィンさせちゃうなあ。
で、その後は(自粛)。
そして座薬とイチジク浣腸を突っ込んでアヘアヘさせるつもりだったけど、意外と好みだったからヤらないで正解だった。
大本営を潰そうかとも思ったけど、大淀がたまに暴れているし、彼女に随伴して(自粛)をやっているからまあいいかな。
あ、また敵が現れた。
よーし、大湊(おおみなと)から預かった試製ハルコンネンをぶっぱなしまくっちゃうんだから!
吹雪、ヤります!