はこちん!   作:輪音

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今回は『不健全鎮守府』の犬魚様のご好意により、九州にある某鎮守府の執務室を舞台にしてお話を紡ぎたいと思います。
ちょっとエッチにしてみましたが、本家のアレにはとてもかないそうにありません。
尚、この話は『はこちん!』版になっているため、『不健全鎮守府』の設定と異なる点が複数存在します。
予めご了承ください。
今話は四〇〇〇文字程あります。

【今回の元ネタ(順不同)】
◎ドーベルマン刑事
◎聖闘士星矢
◎ジョジョの奇妙な冒険
◎SHADOW SKILL
◎GetBackers-奪還屋-
◎シグルイ
◎遊戯王(予告)
◎化物語(オマケ)
◎銀河英雄伝説(オマケ)
◎重戦機エルガイム
◎ダイの大冒険
◎キン肉マン
◎BLEACH
◎機動戦士ガンダム
◎けっこう仮面



やめて!
明石さん特製の特殊秘薬で、魔宮薔薇(デモンローズ)を使えなくなったら、闇の鎮守府で鹿取先生と夜戦で繋がっている提督の精神まで燃え尽きちゃう!
まあ、ホントはどうでもいいですけど。
お願い、死なないで提督!
提督が今ここで倒れたら、筆頭秘書艦の私の約束された退職金はどうなっちゃうの?
その時は保険金で賄いますけど。
提督の貯金残高はまだ残ってる。
ここを耐えれば、たぶん艦娘ハーレムが出来るんだから!
私は絶対入りませんけど。
生きて!
生きて!
提督!
みんなの退役後のために!

『提督、執務室に散る!』
デュエルスタンバイ!





CCⅤ:提督、執務室に散る!

 

 

たまりにたまった有給休暇の消化と珈琲文化の吸収のため、筆頭秘書艦の五月雨(さみだれ)がここ九州から函館鎮守府へ出掛けて早数日。

なんだか、古女房がいなくなってしまった気さえしていた。

気のせいじゃ、気のせい。

窓の外では雪が吹雪いている。

九州の地も雪国になっていた。

函館も雪が降っているかのう。

五月雨……ワシは……。

 

「珈琲をどうぞ、提督。」

「すみませんな、香取先生。」

「いえいえ、お安いご用です。」

「ほう、これはまっこと旨い。」

「函館鎮守府からシヴェリア鉄道経由でキリマンジャロを入手しましたが、お口に合ったようでなによりです。」

「お手間をおかけしました。」

「ふふふ、提督のためでしたら例え火の中水の中ですわ。」

「恐れ入ります。」

 

執務室の中には、香取先生と秘書艦候補の鈴谷と夕張。

香取先生はわかる。

とてもとても頼りになる方じゃ。

だが、なんでこいつらまでおる?

 

「その、先生。」

「はい、なんでしょう?」

「何故にこやつらがここにおるんです?」

「五月雨さんと話をしまして、秘書艦強化策を打ち出してみました。」

 

香取先生が眼鏡を光らせながら言った。

 

「秘書艦強化策?」

「ええ。今回のように五月雨さんが休暇でいなくなり、私も作戦や出張などでいなくなった場合、秘書艦業務を行える艦娘が現状では他におりません。」

「なに、ワシ一人でもなんとかします。」

「鹿島にも話してみましたが何故か脅えるばかりで話にならず、そこで候補を募りました。」

 

ああ、鹿島先生はことあるごとに転属願を持ってくるからのう。

しかし、よりにもよってこいつらとは。

気分を落ち着けるため、かぐわしい香りの珈琲へと口をつける。

旨い。

痺れるような旨みじゃの。

深みとコクが、アフリカの大地を伝ってワシの元へと届けられてゆく。

褐色の液体を飲み干した。

なんで五月雨はあそこまで凝りまくって、あげに不味い泥水ばかり量産するんじゃ?

ワシの目の前には香取先生。

にこにこ笑ってワシを見つめる、安心のお方じゃ。

いかん、なんだかぼおっとしてくる。

 

「珈琲をもう一杯如何でしょうか?」

「先生の淹れる珈琲なら何杯でも。」

「ふふふ、本気にしちゃいますよ。」

 

先生が給湯室へと去っていった。

少し調子が悪くなってきた。

おかしいのう。

 

「提督、ここわかんないんだけど。」

「私もちょっと聞きたいんですが。」

 

右後方から鈴谷、左後方から夕張が書類を持って机までやって来た。

そして、ぴたりと密着してくる。

なんのつもりじゃ?

 

「お前ら、なにを企んどるんじゃ?」

「提督の役に立ちたいと思ってさ。」

「そうですよ、我らの提督の為に。」

「嘘こけ。」

 

書類はケッコンカッコカリのものだ。

ワシが署名すれば、効力を発揮する。

 

「ふざけんなよ、お前ら。……なにをしとる?」

「スーパーブラックホークのお手入れに決まっているじゃない。」

「黒光りする提督のスタームルガーをよく磨いておきませんと。」

「耳を噛むな、舐めるな、息をかけるな、ふざけるんじゃない。」

「そろそろさ、進展があってもいいんじゃないかなって夕張さんと話したんだ。」

「提督は誰ともケッコンしていないですから、既成事実を作ろうと思いまして。」

 

なにぃ……体が……ゆうことを聞かん?

小宇宙(コスモ)が高まらないだと?

火事場の馬鹿力も発動せんし、なんじゃこら?

一服盛られた?

どこで?

まさか?

カップに無味無臭の薬品を塗っとった?

それとも……まさか彼女が?

そんな……そんな筈はない!

 

「お前ら、今ならまだ悪ふざけということにしちゃるからその手をそこから離せ。」

「もうね、散々待っていたんだよ。」

「私も、待ち続けていたんですよ。」

「正気に戻れ、お前ら。お前らがワシのことを好いとう筈など無かろうが。」

「「問答無用!」

 

荒馬な黒馬がホルスターから勢いよく飛び出る。

 

「ぐあっ! やめんか! こうなれば仕方ない! スネークバイト!」

「おっぱいがくすぐったいわ、私の提督さん。」

「その程度じゃ効きませんよ、私の提督さん。」

「……なん……じゃと?」

「「ツイン桃色タイフーン! エッチな気持ち、高めてみせましょう!」」

「ぐはぁ!」

 

 

「提督、珈琲をお持ちしました。」

「え、ええ、す、すみませんな。」

「いえいえ、どうぞお召し上がりください。」

 

優雅な雰囲気と共に香取先生が入室し、机に珈琲を置く。

ワシの背後でにこにこと笑う鈴谷と夕張。

一時休戦となったが、油断はできんのう。

ちょっと首をかしげながら席に着く先生。

珈琲の芳香を体内に取り込み、心の中で咆哮する。今のうちに回復じゃ!

高まれ、ワシの小宇宙!

この事態を打破せねばならぬ!

この程度の麻痺毒など効かぬわ!

ギリシアのあの日々を思い出せ!

 

「提督、一体誰とケッコンするの?」

「提督、どなたとケッコンします?」

 

先生の目を盗みながら、両者がワシを責め立てる。

そんなところを揉むな!

そんなところを咬むな!

負けぬ!

負けぬ!

ワシは負けぬ!

燃えろ、火事場の馬鹿力!

高まれ、ワシの眠れる力!

うおおおおおおおおおっ!

燃えるほど、ヒート!

弾けるほど、ビート!

 

「そうだ、香取先生。」

「はい、なんでしょう、鈴谷さん?」

「そろそろお昼だからさ、食事に行かれたらいいんじゃない?」

「そうですよ、先生が休まれないと提督も休憩出来ませんし。」

「いいんですか、提督?」

「ええ、どうぞ、先生。」

「あの……お顔の色があまりよくないみたいですが……。」

「お気になさらず、どうぞ食事に行かれてください。こちらは少々取り込んでいますので。」

「はい、わかりました。」

 

一瞬油断した隙に、冷え始めた珈琲を口に注がれる。

ぐはぁ!

即座に吐こうとしたが鼻をつままれ口を塞がれ、あちこち舐められたりしている内に飲み込んでしもうた。

不覚。

ワシ、一世一代の不覚じゃ。

悔しいのう、口惜しいのう。

痺れが一層酷くなってきた。

どんどん体が熱くなってくる。

一部が、ギンギラギンにさりげなく危険領域に突入しとる。

ヤバい!

ヤバい!

ヤバい!

獣欲が理性で制御出来なくなってきとる。

しかし、香取先生までが……ワシの香取先生までがグルとはな!

信じたくない!

信じたくない!

信じたくない!

……ワシは……ワシは……ふっ、ふはは!

ふはは、つるんでやがる! ふはは! みんなつるんでやがる!

くっ、殺せ!

 

「お、お前ら……い、いっ……たい、なにを……しとる?」

「いいじゃん、ほら、ここもあそこもとっくに見慣れているんだしさ。」

「そうですよ、ほらこんなところまでこんなになっちゃっていますし。」

「ワシは……ワシは……負けんぞ! 燃え……上が…………れ、ワシの……セブ……ンセンシズ!」

「あのさ、提督。香取先生がなにも気づかなかったなんてあり得ると思う?」

「……なん……だと?」

「提督って、非情に振る舞っているつもりでもけっこう脇が甘いですよね。」

「ふざ……ける……な。」

「明石さん特製だからね。青銅聖闘士だったらとっくにダメになっている筈なのに、流石は提督。さすていだね。じゃあ、ご褒美に直接媚薬を飲ませてあげるね。」

「ん……ん……ぷはぁ、鈴……谷、お前……許さ……ん……ぞ。」

「姫級深海棲艦用の秘薬ですからね、如何に黄金に近い提督でもそろそろ効くでしょう。」

「早霜や春雨から何回も相談受けてんだよね。提督の真意が……っていうよりさ、とっとと諦めて観念しちゃおうよ。最近、香取先生とよく夜一緒だよね? 提督もさ、過去に囚われてばかりじゃ、どこにも行けないよ。ね、一緒に逝こう。どこまでも一緒だよ。大丈夫、全部受け止めてみせるから。あたしは提督のことをいつも思っているから。」

「……お……お前……に……な……にが……わかる!」

「この頃、明石さんのお店でワセリンとティッシュを大量購入しているそうじゃないですか、提督。あんなに毎月何枚も買っていた桃色円盤を全然買わなくなったと聞きましたよ。『巨乳超作戦』や『喪服巨乳女将の献身』や『欧州巨乳百科』や『巨乳制服系機内食』や『巨乳の檻』どころじゃないことをしているとかいないとか、さすていですね。」

「デ……魔宮薔薇(デモンローズ)ッ!」

 

最後の力を振り絞り、魔の薔薇を撒いた。

だが。

身を守る筈の薔薇は、あっけなく散った。

鍛え抜いた我が小宇宙が発動しないだと?

 

「ムダムダムダ! じゃ、始めよっか。」

「そうですね、皆さんお入りください。」

 

勢いよく、残りの布が宙を飛んでゆく。

最後の防衛線があっさり崩壊してゆく。

ガチャリ。

執務室の鋼鉄の扉が開いた。

段々霞んでゆく意識の中、扉の施錠される音が遠くから聞こえてくる。

複数の足音がした。

伸ばした手を掴まれる。

やわらかい感触がした。

 

「もう我慢しなくていいんですよ、提督。」

 

耳元でやさしいやさしい声が囁かれた。

やわらかく冷たいモノたちに包まれる。

だが!

「わ……我は……無……敵なり! 我が……光速……拳に……か、かなう……ものなし! わ、我が……一撃……は無敵……なり!」

「武技言語? まさか、こんな隠し玉まで持っているだなんて!」

「でも、判断が少々遅かったようですね。お稲荷さんアタック!」

「ぐはぁ!」

「そろそろ、終わりにしましょう。」

「そうよ、クロコダイン。」

「そうだよ、くっ殺大尉。」

「ま、まだじゃ! や……ヤらせはせん! や……ヤらせは……せんぞっ! お前らごときにヤられはせん! この……ワ……ワシの誇り! ヤらせはせん! や……ヤらせは…………せんぞっ! ヤら……せは……も……燃えろ、ワシの……小宇宙! ビッグバンを……ワシは……流星……拳!」

「そよ風みたいね。」

「……な……ん、だと!?」

「極太魚雷!」

「ぐはあっ!」

「MAN解! 喰らえっ! 今! 必殺の! おっぴろげジャンプ! これが真のフィニッシュホールド!」

「ぐはああっ! ……い、犬魚先生、ごめんなさい……。」

 

 

そして、執務室は桃色に包まれた。

 

 





【オマケ】

「サミダリューン、話がある。」
「五月雨です。なんですか、ジゴロリコンの眼鏡親爺大尉。」
「卿(けい)の口の悪さにはほとほと感心するよ。」
「それはお互い様でしょう。それでどうしました?」
「艦娘たちと……その……なんだ、こういうことになったが、浜風ちゃんとだな、ワシは……その……。」
「示談金でも請求されましたか?」
「バッカ、そんなんじゃねえよ!」
「じゃあなんです、浜風ちゃんは止めといた方がいいですよ。彼女、堅気ですし。確実な子を狙った方がいいですって。一番好きな子と結ばれない方が幸せになれますよ。ところで、陛下にあんなことやこんなことをしてみたいと思いませんか? 風呂場で散々見ましたし揉みましたが、けっこう大きいですよ、彼女。大きいのがお好きでしょう? あの女、案外簡単に落とせそうですよ。」
「お、おま、国際問題になるようなことをしれっと言うな!」
「大尉は陛下って言ってますけど、彼女、ただの女ですよ。」
「や、やめんか! やめんか! それは不敬に当たるぞっ!」
「そうそう、大尉の大切な大切なその陛下からのお手紙を預かっています。」
「そういうことはすぐに言え! なんじゃ、全文英語でちっともわからん!」
「こちらが日本語版です。」
「そっちを先に出せよな!」
「雰囲気を重視しました。」
「お前、絶対わざとだろ!」
「噛みました。」
「噛んだろか!」
「神はいた。」
「神は死んだ。とっくの前にな。」
「はい、これ。」
「なんじゃ、これ?」
「それ、あの女からの茶会への招待状ですから、これが例の強力媚薬でこっちが先日大尉を行動不能にした対姫級秘薬です。効果はよくご存じでしょう、大尉? よく効きますよ。」
「おま、なんでこがあな危険物な劇物をさらりと簡単にワシへ渡すんじゃ?」
「知らなかったんですか? あの女、大尉にかなり好感を抱いていますよ。」
「なら、余計にそげえなことはしちゃいかん!」
「なーに、黙ってやったら簡単にヤれますよ。」
「そ、そんなことは……。」
「いいじゃないですか。何名ヤるのもおんなじでしょう? ねえ、大尉? 艦娘たちと関係した提督はですね、二度と人間の女を抱けなくなるって話ですよ。余程気持ちよくなれるんでしょうね。あっ、大尉は既にご存じでしたね。くくく。」
「そ、それは、あ、悪魔の計略ぞ、司馬懿よ。」
「なんで私が司馬懿なんですか、五月雨です。」
「と、兎も角、ワシは普通に茶会へ参加する。」
「じゃあ、こちらが『普通の焼菓子』ですね。」
「手土産用か?」
「はい。」
「ようやった。」
「どうも。」
「こういう風に普通でええんじゃ。ええと、茶会の日付は……げえっ! 今日これからかっ? 今すぐ行かんと間に合わん! 謀ったな、シャア!?」
「貴方のおにんにんがいけないのですよ、大尉。……そんなことより、早く行かれた方がいいんじゃないですか?」
「お、おう!」


「地獄をたっぷり味わってくださいね、大尉。折角、『おいしいクッキー』を用意したんですから。ふふふ。」


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