こないだまでさー、ケンカばっかりやってたんだよね。
ガッコーもさ、つまんねーことばっかり言ってるしよ。
舎弟どもを引き連れ、汚物を消毒しながら一応ガッコーへ行く毎日。
あー、カノジョほしいよー。
あ?
親?
親父はアホな世紀末連中に正面きって覚悟完了して突撃し、英雄になって死んだ。
アホじゃ、アホ。
ケーサツがアホだから仕方ないのかね?
お袋はいつの間にか蒸発していた。
浮気していたあのおっさんと駆け落ちしたらしい。
これで四人目。
よくある話だ。
しんかいせーかん、っての?
そいつらが攻めてくる前から、そんな話はいっぱいあった。
暴力とエロいことしか頭にないアホウどものドタマをかち割って、鉄のにおいが混じった血にまみれる日々。
そんなヒャッハー生活は、唐突に終わりを告げた。
ちびこいぬいぐるみみたいなガキどもに囲まれた俺はスーツ姿のおっさんたちに捕まり、横須賀へ連行されたのだ。
なんだよ、那珂ちゃんのサインでもくれるのかよ?
違った。
提督だ。
俺はいきなり契約書を書かされ、拇印を捺した。
そんなことより、きれーなねーちゃんたちがうろうろしているから、むらむらしてたまんねえや。
どっかそういう店に行きたいなあって思ったら、とりあえず童貞のまま提督になってくれと言われた。
ど、童貞ちゃう……ええ、童貞ですよ、俺は童貞! なにがあかんねんな!
なんかさー、いきなり提督ってのにさせられたんだけどさ。
俺、頭悪いよ。はっきり言うけど。
軍人さんってさ、英語とかなんか外国語しゃべれてとにかくかしけーんだよな?
俺、ぜんぜんそんなんじゃねーぞ。
あっ、そうだ。
軍人さんって言っちゃいけないんだった。
軍属だっけ?
よくわかんねーよなー。
で、大本営ってなによ?
自衛隊の人が作ったってのは聞いたけど。
けんぽーいはんじゃねえの、それ?
ちょーほーきてきそちって、なんじゃい?
千葉の山奥でおっさんたちと修行みたいなことして、昔の映画に出てくる人みたいなかっこーしてんだけどさ。
似合わねー。
マジ、似合わねー。
妖精ってのはファンタジーの定番だからさ、うん、わからねえでもないんだ。
艦娘ってなんだよ?
うわ、マジ、あの子たちが戦ってんのかよ?
俺たち、なんで戦わねえの?
俺たちだと、あっさりヤられる?
人間だと勝てねえから、彼女たちが戦うって理屈。
なんかブラックっぽいにおいがする。
鎮守府ってのもわかんねえ。
ま、俺はエリート様じゃねえから、海沿いのなんかそれなりに固そうなとこに基地を築いている。
エリート様だと、煉瓦造りの明治維新みたいな建物でゆーがにやってんのさ。
こっちは気の荒い漁師のあんちゃんやおっちゃんたちと話をしたり一緒に酒を呑んだり、地元のにいちゃんたちの愚痴を聞いたり一緒に酒を呑んだり、この辺のおばちゃんたちの溜まり場にされたりミカンとかまんじゅうとかを貰ったりとなんかメチャクチャだ。
人間って、案外したたかだと思う。
で、謎だらけの妖精や艦娘たちとの鎮守府暮らしは、基本的に早朝からの書類作業に始まり夜半前の書類作業に終わる。
四名の駆逐艦に二名の軽巡洋艦。
六名で一艦隊。
かなり恵まれていると言われた。
よそでは駆逐艦一名とか二名とかが当たり前だとか。
眼帯をしている軽巡洋艦とは初対面で意気投合した。
こいつ、バカだわ。それも剣術の。
俺もバカだが、刀の話は大好きだ。
他の艦娘たちが呆れて俺たちを見つめていたが、気にしない気にしない。
俺の刀?
さ、鞘なんか付けてないわい!
常に抜き身よ、抜き身。
斬ったことくらい……ないわ!
大淀って書類作業がメチャクチャ上手い艦娘や明石って工作がムチャクチャ得意な艦娘がいたら、鎮守府暮らしは格段に楽になるらしい。
同期のバカヤローが、なんかその件でえんえん愚痴を言った。
受話器を置いてもいいよな。
そいつのとこは駆逐艦二名と軽空母一名だけなのと、意外と近場なので助け合っている。
奴んとこの軽空母が作るメシはそりゃあもう、うんまーい! のだ。
うちの連中も習わせてはいるが、腕前はまだまだぜんぜん及ばない。
ちくせう。
ちくわ大明神の力さえ及ばないとはな。
私室でボーッとしながらエロいことを考えていたら、眼帯艦娘がよおっ、って言いながら人の部屋へずかずか入り込んできた。
「オマエなー。」
「へっへー、いいじゃねーかよ。俺とお前の仲だろ。」
「まー、いいけどよー。」
「なんだ、隠しもしねえのか。」
「お前相手に隠してもしょうがないだろ。それにとっくに知ってんだろ。」
「まあな。で、誰を想像してた?」
「オマエ。」
「俺?」
「そう。」
「マジ?」
「マジ。」
「へえ。」
「キミワリーとか、キモチワリーとか、そういうことは言わねえのか?」
「別に。男ってみんなそうなるんだろ? 前の鎮守府はこんなもんじゃなかったしなあ。あそこに比べたら、ここは天国さ。」
「そっか。」
「そうだ。」
「ま、飲めよ。」
「ジュースか。」
「天然果汁まじりけなしの高級品だぞ。今じゃ稀少品のひとつだ。」
「ん、確かに味が違うな。」
「だろ。」
「みんなにやらないのか?」
「この場にいたらやるよ。」
「なら話が早い。おーい。」
五名の艦娘が突如乱入した。
全員から揉みまくられる俺。
そこはらめえええええええ!
そんなことしちゃらめええ!
……あふん。
くっ、殺せ。
喧嘩まみれの日々がなんか遠いぜ。
あのギラギラした日々が懐かしい。
ま、彼女たちとの日々も悪くない。
【ほんのり黒いオマケ】
「艦これって、なんで設定があやふやなんですかね?」
「製作する人たちがあんまり考えていないからです。」
「真顔でなんてことを言うんですか、愉悦神父さん!」