はこちん!   作:輪音

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ある日、自由な気風を尊ぶ天之川鎮守府通称あまちんに一名の艦娘が転属してきた。
彼女の名は如月。
色気に溢れた駆逐艦。
彼女は宣言する。

「私はこの鎮守府の提督を落としてみせるわ。」

そんな中、謎の深海棲艦たちが現れてあまちんを攻撃する。
この緊急事態に卯月文月のプップクプーでムーンプリンセスなメタモルパワーによって改二の力へ覚醒した如月睦月皐月は、宇宙キタキタ親爺から神秘のセブンセンシズな小宇宙(コスモ)を内包した筋肉ドライバーを貸与されて装着するのだった。

弱味につけこんで堕落させた提督と共に、彼女たちは悪に敢然と立ち向かう!
暁の水平線に勝利を刻むまで!
世に文月のあらんことを!

「『任務は遂行する』、『部下も守る』、と『両方』やんなくちゃなんないのが提督の辛いところだな。覚悟はいいか? 俺は出来ている。」

「なにっ! 艤装が勝手に解除されるだとっ! あり得ん!」
「それが、『彼女』の意思なのよ。今ならまだ間に合うわ。アストロ球団を手放してちょうだい。」

「あれが、あれこそがレンゲルとG3による合体攻撃よ。あの二人の努力の成果を見て欲しいわ。」

「「ぬうっ! あれはホーロドニー・スメルチ!」」
「知っているの、雷に電?」
「知っているわ。あれは白銀聖闘士をも一撃で倒すアッパーカットよ。」
「知っているのです。あれは幹部級怪人をも倒してしまう技なのです。」

「あそこにいるのは函館の提督! まだ変身形態を残しているとでもいうの?」
「さっき『剛力招来』と『超力招来』を使っていたのに、まだ余力があるの?」
「おのれ、ディケイド! セカイの破壊者めっ!」
「あれは……いかん! ファイナルストライクサイクロンハレーションが来る! 全員耐閃光防御! 光の渦に巻き込まれるな!」


※続きません。




CⅩⅩⅩⅢ:イツワリノチトチヨ

 

 

 

佐世保鎮守府から、フォッカー少将の右腕として知られる巨漢の柿谷提督が来函した。

陽気な大食漢として知られる彼だが、提督になる以前は航空自衛隊のファントムライダーとして名を馳せた飛行機野郎だ。

佐世保鎮守府が航空機使役系艦娘の運用に長けているのは、柿谷提督と元米軍パイロットのフォッカー少将に依るところが大きい。

 

彼は千歳と千代田を連れていた。

共に航改二で、既にケッコンカッコカリ済みという。

最早、軽空母という名のナニカになっているらしい。

先の要塞攻略戦時、彼女たちには大変世話になった。

 

龍驤雲龍春日丸の面々で、千歳千代田組と模擬戦な演習を行う。

イタリアから訪れた少女たちと担当官たちも興味深く見ている。

彼らはまるで観戦武官みたいだ。

 

龍驤の動きはなかなかいいが、雲龍と春日丸との連携が今一つだ。

千歳千代田姉妹は息の合った動きを見せ、三名の艦娘を翻弄する。

素人目にも、二名の航空隊の錬度は高い。

私の隣で興奮した空母の赤城が是非自分も戦いたいと言い出した。

流石、戦闘機械と謳われる正規空母だ。

無意識なのかなんなのか、自身の巨乳を私の体に押し当ててくる。

これ、たぶん、本人分かっていないな。

……あれ?

どちらの赤城さんでしょうか?

少し焦った感じの加賀教官がやって来て、赤城を私から引き剥がそうとする。

青い正規空母は珍しく汗をかいていた。

瑞鶴に熱烈に抱きつかれても平然としているのになあ。

ブーたれる赤い正規空母と必死で宥める青い正規空母。

 

「ええ、ちょっとくらいいいじゃないですかあ。」

「あの、赤城さん。ここは大湊(おおみなと)ではありませんので。」

「次、私が死合いたいです。いいですよね、提督?」

「ええと、彼女たちにも確認を取りましてですね、それからお返事させていただきます。」

「大丈夫ですよ、演習で轟沈はさせませんから。ちょっと殺り合うだけですよ、ふふふ。」

 

なんだか不安になる子だ。

 

 

赤城対千歳千代田姉妹の演習が始まった。

イタリア勢の男衆は自分たちでトトカルチョを始めてしまう。

少女たちは呆れているようだ。

えらいフリーダムだな、あんたら。

 

「どっちが勝つと思う?」

 

引率者の大尉が少し苦笑いしながら、私に言った。

堅物だと思っていたが、存外柔軟性もあるようだ。

 

「赤城でしょう、たぶん。」

「あの赤い方か?」

「ええ、そうです。ところで、トトカルチョなんてしてもいいんですか?」

「少しは気晴らしがないとな。」

「けっこうなお考えで。」

 

そこへ柿谷提督がやって来た。

 

「いやいや、大湊の赤城さんと演習が出来るとは、うちの千歳と千代田は運がいいですね。」

「どっちが勝つと思います?」

「そりゃあ、うちの艦娘ですよ。」

「随分と信頼しておられるんですね。」

「それが私たち提督の責務でしょう。」

「確かに。」

 

大尉が杖で海の方を指す。

 

「あのアカギというカンムスはかなり強いな。」

 

赤城が笑いながら、二名の軽空母を牽制している。

彼女の航空隊は相当優秀なようだ。

揺れる揺れる、三名のたわわな果実が揺れまくる。

アタッ!

いつの間にか現れた、龍驤と雲龍と春日丸の三名からはたかれた。

 

「ホンマに、男っちゅうのはっ!」

「いつでも好きにしていいから。」

「男の人だから仕方ないですね。」

「すみません。」

「ハハハ、提督も大変ですねえ。」

 

柿谷提督がやさしい目付きで我々を見つめていた。

 

 

演習は僅差で赤城が勝利を得た。

勝ちました勝ちましたと無邪気に喜ぶ彼女が戦場ではおそるべき戦闘機械になるのだから、艦娘は実に奥深い。

ほんの少しの小遣い銭を、私は得た。

 

 

 

提督と千代田と共に函館へ来たけど、なんとも個性的な鎮守府だわ。

函館の提督は日本酒をそれなりに知っているみたいで、北海道と青森と山形のお酒を教えてくれた。

これは是非とも提督に呑んでもらわなくっちゃ!

ちなみに九州も鹿児島以外は日本酒を醸造しているのよ。

夜は飲み会になり、イタリアから来た男性陣とも交流会を兼ねて酒杯を重ねる。

分厚いステーキに満足した提督へどんどんお酒を勧めた。

千代田が時々止めようとするけど、そんなんじゃ無理よ。

函館の提督を酔い潰そうとしたんだけど、周囲が鉄壁過ぎて上手くいかなかった。

ま、今回はいいか。

機会は何度でも作ればいいわ。

提督と千代田がいれば、私はそれでいいんだし。

大本営や官僚や財界やいろんなところが入り乱れて混線しながら混戦しているけど、大局的見地から行動出来ている組織なんて皆無だし。

みんな、行き当たりばったり。

だから自由にやれているけど。

あの元艦娘も函館に取り込まれちゃったし、あの子たちも同様。

私たちじゃ、どうにもならないわ。

一応、報告だけはしておくけどね。

府奥参謀の後釜だけど、どうするつもりかしら?

理論倒れの巣盾参謀は、先日失脚しちゃったし。

まあ、なんとかなるでしょ。

提督。

貴方は必ず守りますからね。

 

 

 





「柿崎ィィ!」的な展開は無い予定です。

最初、赤城は出す予定が無かったのですけれども、何故かこんな展開になりました。
おそるべし、赤い正規空母。

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