茨城県産のロメインレタスを入手したので、李さん特製の焼き豚を使った炒めものを試しに作ってみた。
中華鍋でレタスを炒め、焼き豚を投入して味を絡め、とどめに溶き卵を混ぜる。
卵がふわとろの時に皿へと移して出来上がり。
瞬く間に四方八方から箸が伸びて、あっという間に皿は空になった。
大分県大分市の『吉野鶏めし普及会』の人と長崎県島原市の菓子店の人とが、なんだか感心した面持ちで私を見つめている。
照れくさいがね。
函館市内の百貨店で開催されている『九州うまいもの展』に併せて、二人の料理上手が鎮守府を訪れた。
牛蒡(ごぼう)と鶏を使った家庭料理で郷土料理の『吉野鶏めし』を保存・普及させようと、地域の人々と共に奮闘している大分市の若い女性が一人。
もう一人は、島原市で旨いカステラを長年作り続けている壮年の男性で老舗の職人。
別府辺りで食べられているとり天、つまり鶏の天麩羅を作ってもらっての試食会は艦娘が殺到する事態にまでなり、何故か他鎮守府の艦娘まで食べたい食べたいと言っている。
ポン酢をかけて食べるのが大分流らしい。
間宮鳳翔と豊後の女性が共同作業で料理を作り、貪欲な料理人たちがそれを柔軟に吸収してゆく。
お土産のボンタンアメや兵六餅を皆で分けあって食べながら、カステラ作りを男性の職人から説明される。
長崎市で作られるカステラは確かに圧倒的な人気だが、他の市で作られるカステラもおいしいのだと熱弁している姿に好ましいものを覚える。
彼は変わった菓子を見せて勧めてきた。
その名はカスドース。
長崎県平戸市の老舗で作られるカスドースは、精選された卵黄に上質なカステラをまぶして砂糖蜜で揚げた南蛮菓子だ。
ポルトガル伝来の菓子だとかで、異国に渡来した方が昔の姿そのままに生き残る典型的な例だと考える。
旨かった。
その日の夕食は吉野鶏めしにとり天、それに加えて大分県の郷土料理のだんご汁だ。
大分祭りだな。
私の作るロメインレタスの炒めものと、デザートのカステラを追加したら完成ナリ。
通常よりも珍しいものが食べられるとあってか、食堂は大盛況でごった返している。
大湊(おおみなと)からもかなりの艦娘が来ている。
今も逗留している大和二名と武蔵二名も喜んでいた。
「明日はこの佐世保の武蔵が、うまか長崎ちゃんぽんと皿うどんを馳走してやろう。」
「舞鶴の武蔵も、同姿艦を助けることにやぶさかではない。」
「ホテルではありませんが、横須賀の大和も姉妹艦たちの為に腕を振るいましょう。」
「呉の大和も料理上手の名に恥じぬものを提供しましょう。」
やる気満々の佐世保の武蔵と同姿艦姉妹艦たちが皆の前でそう発言し、食堂は歓声に包まれた。
どこかの重巡洋艦たちがそれをせっせと撮影している。
香りのやわらかい八女紅茶を飲みながら、私は皆の笑顔を再確認した。
熊本産の干し椎茸を購入したから、今晩水で戻して明日は筑前煮を作ろうかな?
宮崎県産の鶏肉は日本酒と塩で揉んで、一晩寝かせようか。
筍は……明け方にでも掘りに行けばいいかなかな?
筑前煮の話を間宮と鳳翔にしたら、駆逐艦の有志が明け方掘りに行くことになった。
さあ、後片付けをしよう。
率先して片付けものだべ。
いつの間にか隣にいた春日丸が、なんだか嬉しそうに言った。
「明日もおいしくなりそうですね。負けてはいられません。」
どさくさに紛れて胸を押しつけないでください、お嬢さん。
他の子たちが剣呑な目付きで私を見つめているのですから。
その後、無茶苦茶揉みくちゃにされた。
【没ネタ各種】
「俺の嫁艦書いてけよ! 艦これ二次だろ、これ。なあ、嫁艦書いてけ!」
「あれは……廃棄処分予定だった扶桑型艤装! 回収していたジャンクの山城型艤装を使って、改修したのねっ! 止めなさい、夕張に清霜! 貴女たちでは『ソレ』を制御出来ない! 主回線と副回線で分担したとしても、すぐに『焼き切れる』わよ!」
「無理無茶無謀はとっくに承知!」
「ここは我らの見せ場にして晴れ舞台!」
「「私たちを一体、誰だと思っているんですか!?」」
「備蓄のための遠征はすませましたか? 運命の神様へのお祈りは? エラー娘に震えて、命乞いする準備は万端ですか?」
「なんで俺が間宮と結婚出来ねえんだよ! なんとかしろよ、お前ら!」