IS<インフィニット・ストラトス> IS学園の異分子君   作:テクニクティクス

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第21話

 

学園祭の舞台の秘密の景品。二人の男子との同居権である王冠を楯無がゲット。

そして猛を倒した者にも同じ権利が与えられるはずだったが、該当者は無いはず。

だが、一応更衣室での一幕で猛を縫いとめたということで、箒がなし崩しで一緒に居たのが

正式に同居人として認められることになった。

 

投票は生徒会の演劇が一位となり(まぁ結果は楯無の手のひらの上だった)一夏は生徒会所属となり

元々ここを希望部活として挙げた猛も生徒会の役員となった。

最初はブーイングの嵐であったのだが、適宜各部活に貸出要員として東奔西走させると宣伝したところ

呼び込みのアピール合戦に成り代わり、人の津波が起こりかけこの学園の女の子のバイタリティにおののく男子二人。

 

 

 

「織斑一夏くん、塚本猛くん、生徒会副会長及び庶務着任おめでとう!」

 

楯無、本音、虚の三人に歓迎される。クラッカーが軽快な音を立てて紙吹雪が飛び出す。

生徒会室で着任祝いとして、軽いお茶会を開いている。

皆の前には猛が自作して持ってきたベイクドチーズケーキに淹れたての紅茶が置かれ

うまうまと顔をほころばせながら、パクパクケーキを食べる本音、感心した表情の虚。心から美味しいと思ってくれている歓喜の顔の楯無。

これだけ喜んでもらえるのなら作ってきた甲斐があるというものだ。

 

「ふむ、お嬢様から聞いてはいましたが、これはなかなか出せる味ではないです」

「でしょでしょ。猛くんのお菓子ってほんと美味しくて、時折体重計乗るの怖いときがあるのよ」

「たけち~、今度おっきなケーキ作って私に頂戴? 1組の皆と一緒に食べたい~」

「了解。今度はチーズスフレとかも作ってみるよ」

「……時折、何か男としてもいろいろ負けたような気がするんだよな」

 

終始なごやかなムードで、これから生徒会での役割を三人から聞かされた猛と一夏だった。

 

 

 

 

 

 

一番の景品を手に入れた箒はここしばらく、ずっと機嫌がよく心なしかポニーテールも弾んでいる。

その反対として、むすっとした表情の鈴。クラスが違うため、合同授業が無ければ休み時間くらいにしか合うことが出来ず

尚且つ恋敵が同居しているという現状に、どうにかしたいと躍起になって隙を見つけては傍にいる。

そんな中、おこぼれでもいいやと達観しているのに、おいしいところは意外にとっていっているシャルロット。

今日も専用機持ちで集まって夕食をとり、猛の隣には箒と鈴、正面にシャル、一夏の両脇にはセシリア、ラウラが座る。

 

「そういえば、そろそろキャノンボール・ファストの時期になるのよね」

 

談笑中、ふと思い出したように鈴がそう切り出す。本来は国際大会として行われるISを使ったレースだが

学園外での実習の意味を持たせて、市のISアリーナを借りて大々的なイベントとして開催される。

それに合わせて皆は高機動用パッケージへの調整、換装を始めていくそうだ。

 

「白式に狭霧神は追加パッケージは無いのだろう? 駆動エネルギーの分配、各スラスターの出力調整がメインになるな」

「うぇぇ……またいろいろややこしいことやらないといけないのか」

「ふむ、なら調整の仕方を教えるついでに、久しぶりの全力演習でもするか。いいな」

「了解しました少佐殿」

 

一夏とラウラの演習取り付けの話題から、生徒会はどうなのかというところから所属した部活のことなどを話し

食事も終わって各々席を立ち始める。皆が部屋に戻っていくなか、猛は鈴を呼び止めた。

 

「ん? なにか用?」

「次の日曜日空いてる? どこか出かけないか?」

「んん……? へ、ふぇぇっ!?」

「キャノンファスト・ボールが近づいたら忙しくなっちゃいそうだし、鈴ともあまり遊べてないし。

 都合が悪いなら諦めるけど」

「ままっ、ちょっと待ちなさいよっ! ……えーと、うん、特に用事ないし平気よ」

「じゃあ駅前で待ち合わせして、遊びに行こう。それじゃ」

 

去っていく猛の姿が見えなくなった後、だらしなく頬が緩んでしまうのを感じる。

 

(えへ、えへへ……♪ 久しぶりのデートじゃない! 学園祭は休憩が合わなくて一緒に回れなかったし

 それ以降も都合が悪くていまいち遊びに行けなかったのがちょっと腹立たしかったけど

 今度の日曜は本気で遊び倒すわ!)

 

明るい鼻歌を奏でながら、自室に戻っていく鈴だった。

 

 

 

 

 

駅前で待ち合わせをして、近くの大型アミューズメント施設に遊びに来た二人。

猛はバスケットコートの一つを借りて、動きやすいTシャツにハーフパンツに着替えて軽く柔軟をしていると

脇にボールを抱えて鈴がやってきた。

タンクトップの上に淡いピンクのシャツ、黒いスパッツと彼女によく似合った恰好がよく映える。

 

「お待たせ。ボール持ってきたわ」

「ああ、ありがとう」

「けれど、遊ぶって言うからデートっぽいのを期待してたんだけどな」

「一緒にショッピングに行くのも悪くないけど、夏休みプールに行った時が楽しかったし

 学園で実戦訓練で鈴とやりあうのは心地いいしね。

 鈴だって、身体を思い切り動かすのは嫌いじゃないだろ?

 訓練とは違うけどスポーツで鈴と競うのも俺は楽しいよ」

「ふふーん。そんなこと言っていいのかしら? あたしが本気出したら勝ち目無くなるわよ?」

「望むところ。さぁ、勝負だ」

 

軽いウォーミングアップをこなしてから、1on1で試合を始める。

鈴が小柄な体格を生かして、素早くそして力強いプレーを見せるなら

猛の方はテクニックを駆使してレイアップ、3ポイントシュートなどで点を稼ぐ。

そして1、2ポイント差を奪いあいながら互いに譲らず、最後は鈴が10ポイントを先に取って勝ちを得た。

傍にあるベンチに腰を降ろし、息を整えながら汗を拭いていると鈴が自販機からスポーツドリンクを買ってきて猛に投げ渡す。

頬や首に汗が流れて、一気に水分を飲み干していく際に喉が蠢きどこか健康的な色気を鈴は持っている。

ぷはぁ、と一息ついた鈴はおもむろに口を開いた。

 

「そういや、今月は一夏の誕生日があるんだったわね」

「あー、そういえばそうだったな。中学の時からの誕生会みたいなのは続いてるから今年もやるんだろうな。

 ……あいつは来いって言うだろうが、馬に蹴られたくはないからプレゼントだけ渡すか」

「あのどうしようもないにぶちんささえ治せばねぇ……。

 そうだ、この後レゾナンスで一夏にあげるプレゼント一緒に探してよ。男の意見聞きたいし」

 

そうして、午後は鈴と一緒にレゾナンスに向かうことになった。

 

 

 

「……どうしてこうなんのよ」

 

レゾナンスにやってきたはいいのだが、最初の店で箒とシャルロットに鉢合わせしたのだ。

箒たちも一夏への誕生日プレゼントを買うために来ていたのだが、やはり同性の意見を聞きたいと

なし崩し的に一緒に買い物をすることに。

 

「というか、何自然な感じで隣に陣取ってるのよ! 離れなさいよ」

「別に私がどこにいようが構わないではないか。いちいち目くじらを立てるな」

「じゃあ、手を繋ぐのはやめなさい!」

「その言葉、鈴にそのまま返そう」

 

両手をがっちりと箒、鈴に握られ、ぎりぎりと力を込められてかなり手が痛い。

助けてください、シャルロットさんと目線を合わせても何とか耐えてね? と困ったように微笑んで流されてしまう。

 

「そういえば、猛の誕生日は2月だったな」

「そうだね。あ、ごめん。箒には今年誕生日プレゼント渡してなかったね」

「い、いや……別に気にしなくてもいいぞ。……プレゼント貰うよりいい状況に今居るしな」

「……そうだ! 来年なんて待たなくても今ここでプレゼントあげてもいいんじゃない!? 再会できたのもIS学園に入ってからだしね!」

 

待ってなさい! 猛に何か似合うもの見つけてくるからと走り去ってしまった鈴音を追うように

箒も負けじと別方向に行ってしまった。

今日は一夏のための誕生日プレゼント買いに来たはずなんだけどね……と少し呆れ気味で佇んでいると

優しく手を握られる感触に、横を見ると少し頬を赤く染めたシャルロットが居た。

 

「えへへ、やっと猛と手が繋げたね」

「えーとシャルロットさん。このまま待ちぼうけしてるのも暇なので一緒に買い物に行きませんか?」

「もちろん」

 

基本的に鈴音、箒と猛が行動すると彼女らに振り回されつつ、追従する事が多いに対し

シャルロットはそこまで自己主張も強くない。

しかし、互いに相手を立てるタイプ同士のため、二人きりの場合シャルは意外な押しを見せるのだが

彼女に頼られるのはそんなに悪い気はしない、むしろ嬉しいと感じることもある。

ウィンドウショッピングをしながら不意に猛に問いかける。

 

「男の子ってどんなプレゼントを貰ったら嬉しいのかな?」

「そうだな……。おしゃれにセンスがある奴なら香水とかだけど、そういうものは好みがあるからね。

 ぶっちゃけると、タオル、ハンカチみたいな消耗品、気軽に使えるものとか

 食べられるものの方がありがたいな。まぁこれは俺の意見であって参考程度に」

「ふぅん……。あ、ならさ、腕時計とかどうかな?」

 

ちょうど時計を取り扱っている店舗が傍にあったため、中のショーケースを見て回る。

やはり有名ブランドを数多く置いているだけはあり、見栄えがよく、それでいて日常でも使いやすい設計をされている。

とりあえず、派手過ぎず且つ地味でもないものを選んでプレゼント用ラッピングをしてもらう。

 

「ところで、猛は時計とかしないの?」

「一応しているけど、有名ブランドとかじゃない普通の時計だよ。こんな感じの」

「うーん、悪くはないけれど一つくらいちゃんとしたブランドものを持つのも大事だよ?

 代表候補生になると、メディアや取材とかに顔を出すことが増えるから。あ、そうだ」

 

シャルロットはおもむろに自分の嵌めている腕時計を外すと猛の腕にあてがう。

女性ものとはいえ、シックで大人しめのデザインで機能美を感じられるその時計は猛の好みだ。

 

「これ、男性用もあってね、あ、そこのショーケースに飾られてるよ。多分猛も気に入るんじゃないかな?」

「うん、これはいいね。あー……けれど今日そんなにお金持ってきてないよ」

「大丈夫、僕が払うから。これは僕からの猛への誕生日プレゼントだと思ってくれていいよ」

 

その場でサイズの調整をしてもらい、腕に装着する。

腕を寄り合わせると、ペアウォッチとなっていて少しだけ気恥ずかしさが両者を包む。

 

「ありがとう、シャル。大事に使わせてもらうよ」

「そう言ってくれると僕もプレゼントした甲斐があるよ。……ん? どうしたの」

「いや……デザインは違うけど、シャルとはお揃いが多いなって」

 

言われてみれば、ISの待機状態は同じペンダント風のアクセサリで腕にはお揃いの時計。

それに気づいたシャルロットはポポポっと頬を赤らめてしまう。

 

「う……言われてみるとそうだね。な、何かちょっと恥ずかしくなって……あわわ」

「ふ~~~ん? そうなんだぁ……」

 

地獄の底から響くような低い二つの声にゆっくりと振り向くとジト目で二人を見ている鈴音と箒。

 

「私たちがプレゼント探している間に、ちゃっかりイチャついてるとか許せないわ」

「シャルとはお揃いのものを買ってもらったみたいだな……。ならば今度は私とお揃いのものをプレゼントしてやろう。

 さぁ、いくぞ!」

「え、あ、ちょっと箒。そんな引っ張らなくてもちゃんとついていくから……あいたたたっ!?

 何故にそんなぎゅっと手を握るのさっ!?」

「次は私の番だからね! 覚悟しなさいよっ!」

「何の覚悟をするべきなのかなぁ!?」

「あ、ちょっと待ってよぉ」

 

その日は遅くまで箒と鈴音に連れ回されて、箒からは寝間着用の浴衣、鈴からはお揃いのスポーツタオルを貰ったのだった。




シャルロットさんはあざと可愛い(策士かわいい)

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