死にたくない私の悪あがき   作:淵深 真夜

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127:世界に満ち溢れているもの

 ソラは両目に“凝”を施して、改めてジャンヌを見てみる。

 しかし何度見ても、導き出される結果は同じ。

 

 ジャンヌはオルタやリリィと違って、()()()()()()()()()()

 

 生成され、わずかに開く精孔から垂れ流されるオーラは、一般人の平均程度。

 ただ彼女の両目だけが妙にオーラが多く、常時軽い“凝”状態になっているが、これはおそらく生まれつき。いわゆる「霊感持ち」なだけで、これくらいならそれこそ珍しいとは言えない。

 

 だからこそ、今が異常極まりない。

 

 全く見えていないのなら、何も聞こえていないのなら、まだ説明がついた。

 ただ単に鈍感さとポジティブさが相乗して、影響が最低限で済んだだけの話で終わった。

 

 だが、ジャンヌは自分の影から這い上がるものを、自分に寄生しているものを、自分を呪うものを見えているし、おそらくは呪詛も聞こえている。

 それでも、彼女はどこまでも穏やかに、優しく、柔らかく、それでも揺るぎなく微笑んでいた。

 

 明らかに筋など通っていない、一部の理さえもない妬み嫉みの呪詛を喚く、「悪意」そのものすら救われることを信じるように、ジャンヌは笑っていた。

 

 * * *

 

「ソラさん、今更訊くのもなんですけど……、『これ』はいったい何なんでしょう?」

 

 彼女の在り様にどこか幼馴染の父親……、誰も傷つけない穏やかで、どこまでも普通な日常を象徴するような人だからこそ、何よりも誰よりも異常だった人をソラが思い出していたら、ジャンヌが少し困ったようにはにかんで尋ねる。

 やはり現状を日常の延長線としか思っていない言動に、ソラは眩いものを見るように少し目を細めながら、彼女の疑問に答えた。

 

「……『それ』は、『悪意』そのものですよ。

 自分を棚上げして誰かを妬む気持ち、自分が努力しない言い訳、自分が不幸である理由の擦り付け、誰かの価値を落とすことで自分の価値を上げようとする醜さ、他人の不幸を娯楽と考える悪意……。

 

 ただ、それは特定の個人一人のものではないし、本来ならここまで増幅して、膨れ上がりはしなかったもの」

 

 説明しながら、この現状は運がいいと言うべきか悪いと言うべきかで、ソラは悩む。

 きっかけを語れば、間違いなく不運だろう。

 ジャンヌの影から這い出てくるものが喚き散らす呪詛と、数時間ほどで見て知った彼女の人格からして、彼女自身に何らかの非があって憑けられたものとは考えられない。

 

 間違いなく理不尽な逆恨みで呪われている時点で、ジャンヌはこの上なく不幸で不運だ。

 それに加えて最悪だったのが、おそらくこの能力は特質系由来、「周囲の悪意を吸収して増幅してゆく」という特性を持っていること。

 

 そうとしか思えなかった。

 ジャンヌの影に寄生して、ジャンヌに絡み付き、縋りつき、呪詛をひたすら吐き散らす「それ」は、ジャックと同じくらい数え切れない複数人のオーラの集合体でありながら、かろうじて「悪意」という方向性に定められているから、何とか一つに固まっている存在。

 天空闘技場でキルアを狙った、「混沌(カオス)」となった死者の念に近い存在だ。

 

 ……だから、本来ならとうの昔に悲劇が訪れ、崩壊して、絶望という結末を迎えていたはず。

 絶望と最悪に満ちたものだが、終わりを迎えていたはずだった。

 

「まったく、本当に何でジャンヌさん未だに平気なの? というか、あなた自分が怪我して、危害が妹たちにも向かうかもしれないって思わなかったら、このままずっとほっとく気だったでしょ」

 

 ソラの呆れきった調子で言ったセリフに、ジャンヌは気まずげに笑う。

 その困ったような苦笑だけで十分、何よりも雄弁にソラの言葉を肯定しているのに、ジャンヌは苦笑しながら律儀にソラへ返答する。

 

「さすがに平気……ではないですよ。けれど……なんというか言っていることが見当はずれですから、怖さとかより困惑がいつも先立ってしまってましたね」

 

 その答えに、ソラの笑みが引き攣った。

 

 影から這い上がる、枯れ木のような手についた無数の口は、ひたすらジャンヌを呪っている。

 死ねだのブスだのといった暴言は、まだマシな方だ。

 美人で調子に乗っているだの、笑顔の裏でこちらを見下しているだの、親が死んでも平然としている冷血女だの、確かによくぞここまで見当違いな恨み言を言えるなと、感心してしまいそうなことばかりだが、意味のない雑音でも四六時中耳元で流れていたら、数日で発狂ものだというのに、自分に対するネチネチとした悪意を最低でも3カ月、ぶっ続けに聞き続けてこの反応は、さすがのソラでもドン引くしかない。

 

 ドン引いているが、この反応はソラの想定内だったりする。だからこそソラはオルタのように、問答無用で出会い頭いきなり、この影に寄生するものを殺しはしなかった。

 ジャンヌが現れて目を丸くしていたのは、レオリオと同じく妹二人とそっくりすぎたことに驚いていただけではなく、この影から這い上がるものにも気付いていたから、そしてそれがどれだけヤバいものかも気付いていたからこそ、ケロッとしているジャンヌが信じられずに唖然としていたが真実。

 

 そしてあまりにも平気そうだったので、オルタやリリィの前で殺して不安や恐怖を煽ったりするのも悪く思ったのと、ジャンヌ自身もこんなものが自分に憑いていることを妹たちやアストルフォに知られ、心配させたくないから黙っていたことくらい察しがついていたので、ソラも黙って後回しにして今に至り、改めてドン引いている。

 

 しかしジャンヌは、ソラに引かれていることに気付かず、気付いていてもその理由には察していないのか、頬に右手を当てて小首を傾げる。

 

「……ジャンヌさんのメンタル、マジで鋼どころじゃなくてオリハルコン製だな。

 まぁ、今回の件でジャンヌさんの所為と言えるのは、そこだけだね。ジャンヌさんが異様というか異常なぐらい我慢強かった所為で、本来ならジャンヌさんにしか影響がなかったはずなのに、周囲の悪意を吸収して増幅しすぎた結果、『それ』があなたの周囲にまで影響を与えたってのが、今回の顛末だから。

 

 けど、同時に『この程度』で済んだのも、ジャンヌさんのオリハルコンメンタルのおかげ。

『それ』は、あなたが自分と同じ『悪意』を懐くこと、『悪意』に呑まれて『悪意』に染まることを望んで憑いているからこそ、あなたが『悪意』に染まらないと消えない。

 ……でも、あなたはどれほど呪われても、染まらなかった。どれほどの『悪意』も『呪詛』も耐えきり、けれどあなたは『妹には手出しさせない』という絶対のルールを持っていたからこそ、更に我慢を重ねることがなかったからこそ、私が今ここにいる」

 

 ジャンヌが自身の異様さ、異端である部分に関して完全無自覚であることにソラは戦慄しつつ、さらに語る。

 ジャンヌに憑く「悪意」の目的を語り、訪れなかった悲劇に安堵して、引き攣っていた笑みが穏やかに緩む。

 

 ジャンヌ以外の人間なら、とっくの昔に正気など失っている。ソラでさえも、10日も耐えられる自信はない。

 

 これはただひたすらに足元から這い上がって絡み付き、縋り付いて、相手に見当違いの逆恨みとはいえ悪意満載の言葉を吐き続けるだけのもの。

 ひたすらに一方通行に悪意を注ぎ込みながらも、直接的な危害をくわえはしないからこそ、ソラの直死以外では対処不可能である可能性が高い。

 だからこそ、普通なら精神がすぐにやられる。

 

 精神が崩壊し、影から喚き散らされる悪意に壊れた心が染め上げられた時、その「悪意」が向かう先は取り憑かれている本人でも、どこの誰かもわからない取り憑けた犯人でもなく、たまたま傍にいただけの誰か。

 ジャンヌの家族や友人に、あのどこまでも身勝手で筋など何も通っていない、独りよがりな悪意をぶつけていた可能性が高い。

 

 あの呪いの目的は、それ。

 自分たちの手で取り憑いた対象を傷つけるのでも、不幸にするのでもなく、取り憑いた側の善性を犯し穢し壊しきって、その人の手でその人にとって大切な人を、同じように壊して何もかもを破滅させることを望んだ「悪意」だった。

 

 それさえ済めば、自然と消滅していた。

 

 だけどジャンヌは悪意がどれほど膨れ上がっても、彼女はそれをただ一人で抱え込み続けた。

 誰にも相談することもなく、強がりでもなく、彼女はいつも穏やかに微笑んで、耳元で喚きたてる「悪意」を無視するでもなく、きちんと聞いて認識していながらも、自分を曲げなかった。

 

「悪意」による言葉を真に受けて卑屈になるでもなく、見当違いの誹謗中傷に憤怒してストレスを溜め込むでもなく、彼女は「それは違う」と否定しながらも、「けどそう思われるには、きっと何か事情や誤解、擦れ違いでもあるのでしょう」と思って、くそまじめに向き合い続けた。

 

 だからこそ、現状が「この程度」だ。

 

 ジャンヌ本人が悪意に染まることはおろか、増幅しすぎた悪意がジャンヌだけではなく、彼女の家にあった本来なら「ちょっと気分が盛り下る」程度の効果があったのかも怪しい形代や、オルタやリリィの開きかけた精孔に影響を与えたが、それだってジャンヌが無視するのではなく反応していたからこそだ。

 

 ジャンヌが「悪意」に反応していたからこそ、「悪意」はジャンヌを堕とせるとでも思ったからこそ、離れなかった。

 無視していたら、完全な無反応だったのなら逆に、「悪意」はジャンヌに対して「面白くない」とでも思って、彼女から離れる代わりに他の者、ジャンヌの身近な誰かに憑いた可能性が極めて高い。

 

「だから、ジャンヌさんのしてきたことに間違いなんかないよ。それは全部、ベストだったって私が保証する。

 だから……妹やアストルフォに相談しなかった自分の所為だなんて、思わないでね。相談して、他の人の不安を煽っていたら、『それ』はあなたよりその人を、獲物認定して可能性の方が高い。

 

 ……あなたの行動が全部正しいんだよ」

 

 ジャンヌに歩み寄り、ソラが微笑みながら断言すると、ジャンヌも嬉しげに笑って、「ありがとうございます」と礼を口にする。

 その笑みは彼女の影から這い上がるものも、彼女の耳元で喚きたてる呪詛も想像できぬほど清らかなものなので、ソラはやはり不運だったのはジャンヌではなく、彼女に憑いた呪いそのものだったなという結論を出す。

 

 彼女は言ってみれば、天空闘技場で複数人の死者の念をその身に収めながらも、精神が崩壊することなく、自分の体を檻にして閉じ込めたゴンの上位互換。この手の呪いの天敵だった。

 その証拠に、これだけの悪意の籠ったオーラに晒されていながら、彼女の精孔はほとんど開いていない。

 

 精孔が開く原理は、極論で言えば自己防衛反応。オーラを増幅して、放出しなければ危険だと判断したからこそ開くものだからこそ、一番手っ取り早い方法が「オーラを直接ぶつける」であり、ストレスも精孔を開く手段としては有効なのだ。

 

 だが、ジャンヌは精神面がソラ曰くオリハルコン製。だから、物理的な危害をくわえることができないこの呪いでは、ジャンヌを妹たちのように半覚醒状態にすることも出来なかったのだろう。

 その癖、ジャンヌは自分に憑いた悪意の呪詛を、決して無視せずに斜め上の生真面目さを見せて向き合うから、呪いはたぶん自分の意思だけではなく、ジャンヌに掴まれて離してもらえないという状態だったのではないかとさえ、ソラは思っている。

 

 そんな風に思ってはいるが、もちろん同情などしない。

 

「さて、じゃあ今度こそ片付けましょうか」

 

 言いながら、ソラはコートのポケットから喫茶店で持ち帰った、使い捨てのマドラーを取り出し、ペンのようにクルクル回す。

 しかし、それを無造作にジャンヌの影に突き刺す前に、ジャンヌは申し訳なさそうに眉をハの字にしつつも、ソラの手にそっと自分の手を添えて言う。

 

「待ってください。……『これ』は、どうしても殺さねばならないものなんでしょうか?」

 

 * * *

 

 ジャンヌの言葉に、ソラは特に反応しない。

「この人は何を言っているんだ?」と言わんばかりに、目を丸くすることもなかったが、無視して影にマドラーを突き刺すこともなかった。

 ただ、ジャンヌを蒼天の目でじっと見つめて、何も言わない。

 

 ジャンヌの言葉の続きを、ただ待っていた。

 

「……すみません。私の言っていることが、図々しいことはわかっています。

 けれど……ソラさんは何度も、『自分は除霊をしているのではない、祓っているのではなく、殺している』と言っておられたので……、それは本当に言葉通りなのだと思ったら、私は…………」

「私の手が汚れるのを、嫌ってくれているのかな?」

 

 ジャンヌもソラの目を、蒼天にして虚空の目を、深淵に繋がる眼を真っ直ぐに見返して語る。

 自分の言葉がワガママであることを認めながら、ソラが何度も忠告した言葉を彼女は覚えていたからこそ、ソラを止める。

 そして、ソラが笑って……皮肉げではなく眩いものを見るような笑顔で尋ねた問いに対しても、彼女は真っ直ぐに見据えて答えた。

 

「もちろん、それが第一です。ですが……私は出来れば『これ』も……、正確に言えばこの悪意を私に取り憑けたであろう人が、亡くなられるのも嫌なんです。

 少なくとも、『これ』を意図的につけたのではなく、オルタやリリィのように、本人も知らぬうちに暴走してしまったものなら……、リリィのように本音で本心であっても、本意でないのなら……、その方は決して悪人ではない。罪人であっても悪人でないのならば……、本人も知らぬうちに、問答無用で殺されてしまうことを私は看過できません。

 

 私自身はこの通り、平気です。何を言われても気にしない訳ではありませんが、腹はほとんど立ちませんから、……だから、だからどうか……、妹や他の人たちに影響を与えないようにするだけというのは、無理なのでしょうか?」

 

 さすがにこの答えには、ソラも目を丸くした。

 非常に申し訳なさそうな顔からして、脳内お花畑の綺麗事ごり押しではなく、自分の言っていることの身勝手さを理解している。

 けれど、そのソラ以上に真っ直ぐな眼は、何も諦めていない。

 陽だまりのように穏やかな雰囲気を持ちながら、彼女の気性は苛烈な炎だと思い知る眼だった。

 

「……本当に、ゴンの上位互換な人だな。ジンよりは萌えるだけマシだけど」

「?」

 

 思わず彼女と同じく悪意の天敵であり、どこまでも清廉潔白純粋無垢だからこその、ワガママ暴走機関車な少年とその父親を引き合いに出してソラは吹き出し、ジャンヌを少し困惑させる。

 しかしジャンヌの困惑を気にした様子もなくソラは、笑いながら答えた。

 

 ジャンヌの望みは叶わないと、否定する。

 

「ジャンヌさんをワガママだとは思わないよ。あなたの望みは正しい。

 でも、無理だ。『これ』は初期段階ならまだしも、ここまで膨れ上がったのは、もう私しか対処のしようがないだろうし、私も『殺す』以外の手段はない。

 あなたを他者から隔離すれば、周囲の人に影響は出ないだろうけど、一時的な隔離ならともかく、下手しなくても生涯隔離される可能性が高いのを、オルタちゃんやリリィちゃん、そしてアストルフォが黙っていられると思う? あなたがそんな理由で消えたら、それこそこの3人が一生、幸せになんかなれないよ」

 

 ソラの答えにジャンヌは唇を噛みしめて黙り込み、両手を力いっぱい握り合わせる。

 正論で応じたソラに、逆恨みする様子は一切ない。ただ、わかっていたがそれでも、図々しく望んだ自分の浅はかさと傲慢さを恥じているようだった。

 

 しかしそれでも、その目に灯る炎は消えない。

 

 ソラに頼りきった願いを恥じても、彼女はソラに人殺しの咎を背負わす気はない。

 自分を呪った誰かが、何も知らないまま、知らぬ間に犯してしまった罪を償う機会を失わせることが、「死」が罰になるとは思っていない。

 彼女は被害者として、相手を許してなどいない。だからこそ、諦めてなどいない。

 救われることを、己の非や罪を認め、償うことで救われることを信じているし、諦めない。

 

 そして、それはソラも同じだった。

 

「第一、『それ』を殺すことで、『それ』の元凶である人間が連鎖的に死にはしないよ。いや、しようと思えばできるけど、する気はない。

 言ったでしょ? それは、『悪意』そのものなんだ」

「……え?」

 

 今度はジャンヌの方が、ポカンと目を丸くする。

 そのまん丸い目に、ソラは悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべて語る。

 彼女に憑いていたものの正体を、語る。

 

「『それ』をあなたに憑けた人間、あなたに悪意を懐いた人間は確かに存在するだろうけど、ジャンヌさんの言う通り十中八九それは、オルタちゃんやリリィちゃんと同じような状態の人間によるもの。

 それは当の本人から切り離された、心の醜い部分。本音で本心だろうけど、本意じゃないかもしれない一欠片の集合体。

 

 ジャンヌさん、その能力の持ち主を救いたいと思うのは間違いではないけど、『それ』自体を救おうなんて思うな。『それ』は本当に、『悪意』そのものだ。そこに救いの余地も、能力者本人が持っている善性や良心はない」

 

 ジャンヌの影に寄生し、這い上がって呪詛を唱え続けるそれは、複数人が「悪意」が一体化しているが、死者の念ではない。

 オルタとリリィは増幅しすぎたこの「悪意」に誘引されて、精孔が開きかけた半覚醒なので、必然よりの半覚醒だったが、おそらくはこのジャンヌに憑いた「悪意そのもの」こそが、「200人に一人くらいはいる半覚醒の能力者」による、偶然の産物。

 

 根拠はない。ただ「周囲の悪意を吸収する」という特性からして特質寄りのはずが、放出系の能力のように完全に能力者から切り離され、単独で起動し続けていることからして、狙って憑けたものではないと思っただけ。

 

 意図して付けたのなら、系統からしても、こんな「悪意」からしても、能力者本人から能力を単独で完全に切り離すメリットはない。

 どれほどか細くともコードのようなパスを繋げ、自分からオーラを供給し、取り憑いているジャンヌの様子をある程度でも探るぐらいするだろう。

 切り離されている時点で、ジャンヌを不幸にしたいと思っている割には、その経緯や結末に興味を懐いていないという矛盾が生じている。

 

 しかしその矛盾も、元凶の人物はオルタやリリィと同じような状態だったと考えれば、簡単に説明がつく。

 わざとではないのだ。本意ではなかったのだろう。

 ただ精孔が緩むほど、半覚醒状態になってしまう程のストレスに苛まれており、心に余裕がなくて卑屈に、攻撃的になっていたからから、気の迷いや一時的な感情の昂ぶりで、ジャンヌに悪意を懐いた。不幸を望んだ。

 

 もしかしたら、相手はジャンヌ個人に対して悪意を懐いた訳でもないかもしれない。

 それこそ「誰もかれも皆不幸になってしまえ!」という、やけっぱちなことを考えていた人とジャンヌがたまたますれ違い、そのすれ違いざまに、ジャンヌにとっても相手にとっても運悪く、たまたま彼女にその「悪意」がくっついてしまっただけなのかもしれない。

 

「……考えようによっては、『周囲の悪意を吸収する』なんて、永久機関じみた特性も、その人にとっては不運かもね。

 ジャンヌさんの行動は何も間違えていなかったけど、増幅していく特性さえなければ、『これ』から受ける影響だってそこまで酷いものじゃなかったのかも。たぶんせいぜい、家族や友達に八つ当たりをして、喧嘩になる程度で済んだんじゃない?」

 

 そう言いつつも、実は増幅してゆく特性があっても、最初期段階でこの「悪意」の影響を受けていたのなら、その程度の被害で済んで消えるものだとソラは思っているが、さすがにそれはジャンヌの今までを否定しかねないので言わないでおいた。

 そしてその憶測は、おそらくさほど外れていない。

 

 ジャンヌでなければとっくの昔に最悪の事態に陥っていたという仮定は、あくまでジャンヌに取り憑いている「悪意」が、現在のレベルにまで膨れ上がっているからこその仮定だ。

 そしてジャンヌの家で不審なことが起こるようになったのは、憑かれているジャンヌ本人だけではなく、周囲にも影響を与えるようになってきたのが3か月前からならば、むしろこの「周囲の悪意を吸収して増幅する」という特性は、あまり効率的ではない。

 3か月前で周囲に影響を及ぼすようなものになっていたのなら、もっと効率が良ければジャンヌはともかく、オルタとリリィの精神がやられているはずだから、間違いなくこの特性の効率は良くなどない。

 

 つまりは、このソラでも十日も耐えられないという「悪意」は、ジャンヌの異様な我慢強さの産物であり、正直言ってこれを憑けた側の非とも言えなかったりする。

 しかしそう考えると、一体ジャンヌはいつからこんなものを憑けられたのかが、本気で謎である。下手すれば、憑けた側のストレス源がとっくの昔になくなって、精孔も閉じて無自覚のまま普通の人間に戻っている可能性も高いぐらいだ。

 

 だからやはりこれは、ジャンヌも彼女に取り憑いた「悪意」自身にとっても、不運だった話。

 悪意を吸収するという特性で不得意な放出系を補っているが、修行して意図的に身につけた能力ではないからこそ、暴走して周囲にこの悪意をばらまいていても、その影響は早い段階ならばそこまで酷いものではない。

 影響を受けて周囲と諍いを起こしてしまっても、「虫の居所が悪かった」程度にしか本人も周りも思わず、大概が「あの時はごめんね」の一言で終わる程度の諍いなのだろう。

 

 まぁ、所詮これはさほど根拠のないソラの憶測であり、当たっていたとしてもその程度とはいえ、理不尽な悪意で誰かを傷つけないと消えないものであることに間違いはない。

 なので、いっそのことジャンヌが早い段階でこの悪意に染まっていた方が、面倒が少なくて良かったという発想などソラにはない。

 

 が、ジャンヌの方は自分だってそんなことはしたくないが、結果としては妹たちだけではなく友人や、本来無関係の他人であるソラに、わざわざ足労してもらう迷惑を掛けたことを申し訳なく思っているのか、ものすごくいたたまれなさそうな顔をしていた。

 そんな先ほどまでの苛烈な炎から一転して、ごく普通の女性らしい狼狽えぶりに、ソラはまた吹き出す。

 

 吹き出して笑いながら、語る。

 

「だから、ジャンヌさんは気にしなくていいんだよ。

『それ』は悪意そのものだから、贖罪とか救済なんて考えなくていい。そして、『それ』をあなたに取り憑けた相手のことだって、気を病まなくていい。

 あなたにとっても相手にとっても、『悪意を吸収して増幅していく』っていう特性が、不運だったのは確かだけど……、いちいちこんな『呪い』を掛けた奴を罰して地獄に落としていたら、地獄はいくつあっても足りやしない。

 

 だって、この世は『呪い』で溢れているのだから」

 

 あまりにも晴れやかに笑って、ソラは言い切った。

 

 冗談でも比喩でもなく、それは事実。

 ストレスにより半覚醒の一時的な能力者は、200人に一人程度。その割り合いは、学校なら学年に一人くらいだ。

 決して多くはないが、少なくもない。

 

 ソラの世界では世界の裏側に渡った幻想種の類が、この世界では普通の動物よりは珍しいか、下手すればさほど変わらない扱いでゴロゴロと実存しているので、おそらくはソラの世界よりもこちらの世界の大気に含まれる魔力(マナ)は多いのだろう。

 半端で一時的とはいえ異能力者がそれなりにいるのも、きっとそこらが関係している。

 

 オルタやリリィほど顕著な能力でなければ、ジャンヌに取り憑いた「呪い」の下位互換程度ならば、そしてそれが一過性によるものならば誰にも、プロハンターにさえも気付かれないまま暴走が見逃され、そしてやはり本人も周りも気付かないまま、ありふれた人間に戻っている人間などきっと珍しくない。

 

 人間だれしも人生で一度くらいは、科学的に説明できない、不思議な出来事に遭遇したことはあるだろう。

 もちろんそれらのほとんどが、勘違いや思い違い、古い記憶だから忘れていた部分を補完して改竄している、自分がその原理を知らないだけといったところ。

 

 けれど、その中のいくつかは本人や周囲の誰かが一時的な、瞬間的な能力者だったからこそ起こった出来事かもしれない。

 それが否定できないほどの割り合いなのだ。

 

 そして、精孔が開く原理からしてそれらが、「悪意」に偏るのは仕方がないこと。

 それらの大半が、傷つけられたことで自己防衛の敷居が異様に低くなってしまったからこそ起こった反撃であり、理不尽に対して「どうして?」と泣き叫ぶ癇癪なのだから。

 どのような事情があっても、それは「傷ついてしまえ」という悪意であることに変わりはない。

 

 だからこそ、世界は呪いで溢れている。

 

 本意でなくても、それでも世界は誰かの不幸を望む悪意に溢れている。

 そしてそれを実現させてしまう、「念能力(きせき)」も。

 

 珍しくなどない。

 誰かの不幸を願う悪意も、それを実現する呪いも世界に溢れている。

 

 そんな残酷な事実を、あまりにも内容と見合わない笑顔で言い放ったソラに、ジャンヌはまた目を丸くする。

 そして、その丸くした目を徐々に細めて、彼女は言った。

 

「――――そう……ですね」

 

 ジャンヌも、「聖女」という言葉が何の比喩でも皮肉でもなく、体現するような彼女でさえ、ソラの言葉を認める。

 彼女だって、知っている。

 世界に溢れている「呪い」の事くらい。

 

 両親を失ってからも、失う前からも、他者の「悪意」で嫌な思いなど、何度だってしてきている。

 自分に非があるのはもちろん、今も這い上がって縋り付きながらも喚き散らす呪詛と同じく、何の身に覚えもない見当違いな恨み言、理不尽や不条理そのものの悪意に晒されてきた。

 

 知っている。

 世界も、人も、自分が夢見るほど美しくも清らかでもないことくらい、ジャンヌは知っている。

 

 だからこそ彼女も、ソラと同じく晴れ晴れしく笑って言った。

 

「えぇ、そうです。世界には悪意と呪いが溢れています。けれど……同じくらい世界を満たすものがあります。

 だからこそ……私たちは生きてゆける」

「そう。というか、天秤が悪意に傾いているのなら、とっくの昔に世界なんて滅びてるよ」

 

 ジャンヌの言葉に、穏やかな笑顔でありながら苛烈な炎の瞳……、諦観を燃やし尽くす火を灯した瞳で答えた言葉に、ソラも同意する。

 蒼天の眼に、同じ光を灯して。

 

「世界は悪意で、呪いで溢れてる。

 けれど同じくらい、世界は善意と祝福で満ちてるよ。ただ単に精孔の開く理屈の原理上、目に見える形ではどうしても『呪い』が目立って、多く感じるだけ。

 ……でも、どんなに多く感じても世界がこうやって動いて生きて続いてゆくってことは、天秤のバランスは取れてるって事。

 

 ……目には見えない形でも、悪意を懐いた人、悪意を向けられた人を救わなくても、それでも世界には善意と祝福が満ちている。

 不公平で、理不尽で、残酷だけど……それでも確かにあるから……、そしてそれは目覚めていれば、手に入る可能性は決して失われないものだから――――だから、あなた一人が全部背負いこんで悩むのはバカらしい」

 

 世界は自分が夢見るほど、美しくも清らかでもない。

 けれど決して、穢れきった醜いものではない。

 例え女性としての尊厳を穢されても、人間としての誇りを踏みにじられても、地獄めいた業火に焼かれても、それでも生き抜いて走り抜けた先に見た、輝けるものを、美しいものを知っている。

 

 悪意に傷ついた自分に、手を差し伸べてくれた人を知っている。

 悪意に傷ついた人へ、差し伸べた手を取ってくれた喜びを知っている。

 

 どれほどの悪意に晒されても、人生は目覚めているだけで幸福であることを、ジャンヌは知っているから。

 だからソラの言葉の真意に気付き、笑った。

 

「その通りですね」

 

 救いたいが故の視野狭窄、救いたい人からも切り離された「悪意」そのもの、救済の余地などないものを救おうとして、自分の大切な人達を、自分に祝福を与えてくれる人達を蔑ろにすることが、どれほど愚かなことかを理解したジャンヌは、自分の馬鹿さ加減に苦笑しながらもすっきりとした顔で、ソラの言葉に同意する。

 

 そして、真っ直ぐにソラを見てから丁寧に頭を下げて、頼み込む。

 

「わがままばかりですみません。そして、お願いします。

 どうか『これ』を、もう二度と帰ってこれない場所にまで突き落としてください」

 

 ただ単に善良さ故に「殺す」という単語を使いたくなかっただけだろうが、ソラの眼の本質を理解しているような言い草で懇願するジャンヌに、ソラはマドラーをクルクル回しながら、最後に尋ねた。

 

「……ねぇ、ジャンヌさん。妹さんたちの事、好き?」

「? はい、もちろん」

「何で?」

 

 ソラの問いに、ジャンヌは頭を上げて小首を傾げながらもほぼ反射で肯定すれば、ソラはまた即座に尋ね返す。

 唐突かつかなり失礼に思える質問だったが、ジャンヌのお人好し加減を抜いても、別に腹は立たなかった。

 尋ねるソラの顔が、妙に幼く見えたから。

 下手すればリリィよりも幼げな面差しで、心の底から不思議そうに、答えを切望する顔でソラは訊いた。

 

 けれど、ジャンヌはソラが望んでいる答えは何であるかはわからなかった。

 それを考える前に、ソラの幼い面差しに気付き、戸惑うと同時にやはり彼女は、最初の問いと同じように、反射で即答したから。

 

「? あの子たちが妹で、私が姉だからですよ」

 

 考えても無駄だった。ジャンヌの答えは、何故妹たちが好きなのか、何故妹たちを愛しているのか、妹たちに心配を掛けない為に、あの呪詛をいくら耳元で喚きたてられても穏やかに笑い続けられたかの理由なんて、それしかない。

 

 彼女たちが妹じゃなかったら好きじゃないのか? という仮定は、あまりに愚かだ。

 そんなIFも想像できない当たり前だから、ジャンヌがジャンヌであらしめる一部が、オルタとリリィという妹の存在だからこそ、そんな仮定に意味はなく、だからこそジャンヌの答えは絶対。

 彼女にとってソラの問いは、「何で息するの?」という問いとほぼ同等だ。

 極論で言えば「何で息するの?」という問いと同じ答え、「生きているから」と答えても良かったぐらいに、ジャンヌにとっては当たり前すぎて、質問の意図がさっぱりわからないものだった。

 

「……うん、そうだね。そうだよね、普通。兄弟とか姉妹なんて、よっぽどお互いの関係に確執がなけりゃ、そんなもんだよね」

 

 ジャンヌの困惑をよそに、ソラは腕を組んで納得するので、ジャンヌは更に意味がわからず困り果てる。

 ジャンヌにとってはあれ以外に答えようがなかったので、納得してもらえたのは幸いだが、これで納得するのなら何故訊いた? という疑問が浮かび、そして同時に現在のソラの表情も、なかなか謎だった。

 

 何故かソラは、納得しつつも苦い顔をしていた。

 

「そんなもんだけど……あのアホはアホで普通じゃねぇからな。っていうか、確執はあるのか? 一応私たち姉妹には。

 いや、確執できるほど私のこと、見ても相手にもしてなかっただろ……」

「……あ、あの、ソラさん?」

 

 苦手な相手と鉢合わせしたような顔をして何やらブツブツ呟くソラに、その呟きは聞き取れないが何やらネガティブスパイラルに陥りそうな空気を感じ取り、躊躇いつつもジャンヌはソラに呼びかける。

 

「あ、ごめんごめん。ちょっと亡霊がウザかったから」

「ぼ、亡霊?」

 

 ジャンヌの呼びかけで戻ってきたのは良いが、変なトリップしていた理由に、かなり不穏なことを言い出すので、さらにジャンヌを狼狽させる。

 そんな狼狽えるジャンヌを見ながら、ソラは脳裏の亡霊を心の奥底に閉じ込める。

 

 似てなどいない。

 容姿がこの上なく整っているところぐらいしか共通点はないし、そしてその容姿自体も同じくらい整ってはいるが、似ていない。

 享年で言えばリリィの方が近いくらいだし、何より性格が、纏う空気が、双眸に宿る光の温度が対極だ。

 

 ジャンヌが苛烈な炎なら、彼女は玲瓏な氷だった。

 

 それでも、ソラはジャンヌに彼女の面影を見た。

 答えは得たはずなのに、悪あがきでまた探してしまった。

 けれど結局、面影を持つ人がくれた答えは、自分が見つけた答えと同じで、その答えを心の奥底から脳内にまで浮かび上がってきた亡霊に見せてみれば、亡霊は目を軽く細めて脳裏で「バカじゃないの?」と言い放つ。

 

(バカだから、わからないから何度だって探して見つけては訊いてるんだよ。

 ……そんなのもわかんないのかよ、アホ姉)

 

 全然似ていないのに、それなのに最期の泣き笑いだけは妙にジャンヌと似ているように感じる姉に、何度尋ねても「そんなこともわからないの?」と言って答えてくれない姉に言い返して、ソラは自分の心に住まう姉の亡霊を奥底に仕舞いなおして、再び笑う。

 

「ありがとう、ジャンヌさん。答えてくれて。

 それじゃあ、終わらせようか。これ以上、オルタちゃんやリリィちゃんに心配をかけるのも、隠し事をするのも」

 

 笑って、ソラはジャンヌの答えも待たずにその場にしゃがみ込み、、無造作にジャンヌの影に使い捨てのマドラーを突き刺し、そのまま切り裂く。

 自分たちが死んでいくことにすら気に掛けず、消えていく瞬間まで呪詛を喚き続けた「それ」は間違いなく、生きた人間になど繋がっていない、切り離された、純粋だからこそ中身もない「悪意」そのものだった。

 

 

 

 * * *

 

 

「家の中に残ってたのは片付けたから、あとはもう心配することはないかな?

 お化け屋敷になった原因のおばさんが嵌ってる宗教に関しては、悪徳詐欺宗教法人専門のハンターの知り合いがいるから、その人と協力して何とかするから、おばさんが来ても無視でOKだよ」

 

 本日の総括を行って、コーヒーを優雅に飲むソラに、向かいに座っているジャンヌは深々と頭を下げる。

 

「本当にありがとうございます。何から何まで。

 ……でも、あの、本当に良いんですか? あんなにお世話になったのに、お渡しするのが旅費やこの食事代だけなんて……」

「いや、むしろ私あんまり働いてないから、お礼もらうのも申し訳ないぐらい。詐欺宗教の後始末に関しても、私はもちろん知り合いにとっても趣味の一環みたいなもんだから気にしないで」

 

 近場のファミリーレストランで夕食を終え、少し休憩がてらの雑談の席でジャンヌが、非常に申し訳なさそうにソラに尋ねると、ソラの方もやや気まずげにジャンヌの気遣いは必要ないと答える。

 ひとまず家のこと、三姉妹のことが全部片付き、さすがに夕飯の支度をする時間も気力もジャンヌ達にはなかったので、ソラたちへのお礼を兼ねてここで食事を取ったのだが、ジャンヌはもちろん子供のリリィや素直ではないオルタでも、自分たちの問題解決の礼が旅費とファミレスでの食事程度というのは、逆に申し訳なくて気にしているようだ。

 

 しかし実際の所、この件に関してソラは自分が働いたつもりはほとんどないので、ソラからしたらハンター証でかなり安く済んだ飛行船の料金とファミレス代でも、もらい過ぎという感覚だ。

 ソラにとって自分がしたこと、自分が必要だったことはジャンヌに憑いていた「呪い」を殺したくらいで、後のことは元凶さえなくなれば、おそらくは自然と解決していたと確信している。

 

 オルタやリリィに関しては、彼女たちが抱える「真のストレス源」について指摘しただけ。

 それもソラと同じタイミングでジャンヌが気づいていた節が強かったので、ソラがいなくても解決しただろう。

 

 霊のたまり場となった元凶の依り代も、あれはジャンヌの「呪い」の影響を受けていただけだ。

 あれも意図的にオーラが込められて能力が発動するようにしているものではなく、ジャンヌに憑いていた呪いの下位互換が正確。

 ジャンヌの呪いと相乗効果を起こして厄介なものになっていたが、本来なら下手に指摘して見つけて恐怖や不安を煽るくらいなら、放っておいた方が良いくらいのもの。

 

 だからジャンヌがどんなに気にしても、ソラはこれ以上の金銭や礼の物品を受け取る気はなく、レオリオの方からも「俺らは普通に暮らしてりゃ金に困るようなことはないから、気にしないでください」と言われ、さすがに強情なジャンヌも礼を押し売りしては本末転倒の迷惑だとわかっているので、渋々納得する。

 

「ソラさん、泊まるホテルとか決まってないのなら、うちに泊まって行ってください!

 私、ソラさんのお仕事やソラさんの、お友達の私とそう変わらない歳の子の話が聞きたいです!」

 

 ジャンヌとソラの話が途切れたのを見計らって、リリィは無邪気に提案する。

 せめて宿代わりに自宅を提供したいという気持ちもあるが、子供らしく彼女は既に「お礼が出来ない申し訳なさ」よりも、「ソラの話が聞きたい」に天秤が傾いているのがよくわかる様子だった。

 

 それを長女はおっとりと、次女はぶっきらぼうに「無理言ってはいけない」と窘めるが、どちらも末妹を見る目は優しい。

 リリィの眼にはもう、「早く大人にならなくちゃ」という焦りはない。

 2年前の海を見て帰って来た日と同じく、キラキラとした期待と希望に満ち溢れた目をしていることに、姉二人は安堵しているようだった。

 

 同じようにリリィがしなくていい我慢をして、夢を諦めていないことをニコニコしながら見ていたアストルフォが、ふと思い出して尋ねる。

 

「そういえば、リリィは結局『念能力』っていうのどうするの? ソラちゃんかレオリオに教えてもらうの?」

「あー……。冷静になって考えれば、私はハンターになりたいって夢も、ハンターへの憧れも嘘ではないんですけど、ハンターになって具体的に何がしたいかとかが全然ないから……だから修行もひとまず保留にしようかと思ってます」

「それが良いよ。念能力は君の心をそのまま力にするようなものだから、君がしたいこと、なりたい自分が不確かなまま能力を決めちゃったら、君の首を絞めかねない。

 君が胸を張って、何になりたいか、何をしたいかをはっきりと決めてから修業を始めても遅くはないのだから……、リリィちゃんはゆっくりと大人になりなさい」

 

 アストルフォの問いに、冷静になったリリィが恥ずかしそうに俯いて、ジュースをちびちび飲みながら答える。

 そしてその答えに、ソラも同意する。

 リリィの夢を本気だと思ったから、反対する気などなかったから、少しだけ正確に教えてやった「念能力」について、リリィは正しく理解していたことを褒めるように、子供であることを決して悪くないと言い聞かせるように、彼女の頭を撫でながら。

 

 妹の夢を否定しないまま、ジャンヌやオルタが望んでいる、「私たちに気なんか使わないで、甘えて欲しい。子供らしく好きに生きて欲しい」という願いも肯定して叶えるソラに、オルタは上目づかいで睨みつつ、食後のコーヒーを啜りながら消え入りそうな声で「……ありがとう」と呟いた。

 

 消え入りそうだったが、その声はしっかりソラの耳に届いていたから、だから彼女はにっこり微笑んでオルタに言う。

 

「いいよ、気にしないでオルタちゃん。

 あとオルタちゃんに忠告しておきたいんだけど、あの家が霊のたまり場になってた元凶の依り代も、まだ居残ってた奴も全部排除しておいたけど、霊が多く長期間溜まりすぎたせいか、何かあの家は浮遊霊の通り道になってるから、あんまり常日頃から怖がっちゃダメだよ。

 怖いのならとりあえずファブっとけ。君ほどの美人に臭いもの扱いされたら、9割方は凹んで去るから。……去らないドMがいたら……そん時はビックリするほどユートピアでドン引かせろ!!」

「あんたは私にアドバイスしてるのかトドメ刺してるのかどっち!? そんでユートピアはそれしか方法がなくてもやんないわよ!!」

 

 本気なのかからかっているだけなのか不明なアドバイスをソラが言って、オルタにキレられる。

 やっぱり歪みなく空気を読まない女に、レオリオは思わず両手で頭を抱えて、ジャンヌに「本当、こんなバカ連れて来てすみません」と謝った。

 

「え? あ、いえ! 大丈夫ですよ、ソラさんが私たちを励ますために、暗い気持ちにさせない為に言ってくれているのはわかってますから!」

「本当にすみません! このバカ連れて来て本当にマジでごめんなさい!!」

 

 しかしレオリオの謝罪に、ジャンヌが本心から信じてるフォローをすれば、なおさらレオリオは申し訳なくなって、テーブルに手を突き土下座のように頭を下げる。

 その反応で余計に狼狽するジャンヌは、「え? え? あ、あの、頭を上げてください!!」とレオリオに頼み込みながらも、優しげに笑った。

 

「……レオリオさんが何に謝っているのかよくわかりませんが、本当に謝る必要なんて何もありませんよ。

 本当に、ありがとうございます。ソラさんはもちろん、レオリオさんも、アストルフォも。

 私たち家族や家の話を馬鹿にせず聞いてくれたことも、他人である私たちのトラブルを解決できる人に連絡を取って、私たちの代わりに頼んでくださったことも、私たちにとってはいくら感謝してもし足りません。

 本当に、ありがとうございます」

 

 スタイル抜群で絶世の美女から、優しげな微笑みを浮かべられ告げられた礼に、レオリオから妹で遊び出すエアブレイカーを連れてきた罪悪感は吹き飛び、でれっと鼻の下を伸ばして「いやー、当然のことをしたまでですよー!」と、調子のいいことをほざき出す。

 

 横で、ジャンヌ以外の全員から「こいつは……」と白い眼で見られていることに、気付きもせず。

 

「あの、ジャンヌさん。もし良ければ、ケー番とメアドを教えてもらえませんか?

 いやっ! 変な気持ちは全然ないっすよ! ただ三姉妹なら男手が必要な時とかってあるじゃないですか! そん時にお手伝いでもできればと……「レオリオ。ジャンヌ、彼氏いるよ。結婚前提の」思いまして………………は?」

 

 横からの白い眼、特にソラとオルタの絶対零度の視線に気づかぬまま、変な気持ちは実際にないだろうが、下心は満載な頼みごと言い出すレオリオに、アストルフォが彼の発言に被せて言い放つ。

 先輩から何を言われたのかを理解出来ぬまま勢いでそのまま続けて数秒後、アストルフォのセリフがようやく脳に情報として届いたのか、レオリオは石化したように固まった。

 

 そしてレオリオと同じく、しばしアストルフォの発言を理解出来なかったジャンヌが、レオリオと同じタイミングで理解して、顔を真っ赤にさせてからアストルフォに向かって怒鳴る。

 

「………………!? ~~~~~っっあ、あああああアストルフォ! い、いきなり何を言ってるんですか!?」

「いや、見ても無駄な夢は、さっさと覚ましてやるのが優しさかと思って」

「意味がわかりません! というか、わ、私とジーク君はそ、そんな結婚前提とか恋人とか、そんなのでは……」

「告白すっ飛ばして『共に生きて欲しい』って言われて『はいっ!!』って即答したのは、どこのどいつだよ?

 っていうか、まだ認めないなんて、それは僕にもまだチャンスがあるって思っていいの? 僕だってジークが大好きでずっとずっと一緒にいたいのに、そんなヘタレたことばっかり言ってると本気で怒るよ!!」

「ちょっと待て! ジャンヌさんの彼氏以上に聞き捨てない発言が聞こえたぞ! そのジークって男だよな!? そしてお前も男だよなぁっ!?」

 

 ジャンヌの照れ隠しの虚勢にアストルフォが本気で怒りだすが、そのアストルフォのこれまた衝撃発言にフリーズしていたレオリオが再起動を果たして突っ込みを入れる。

 ソラもだいぶアストルフォの発言が気になったが、オタク趣味だが腐ってはいないソラはひとまずそちらをスルーして、珍しく彼女は女性らしく「恋バナ」に目を輝かせて食いついた。

 

「え? どういう事? そのジークさんって誰? どんな人? っていうか、告白すっ飛ばしてプロポーズってどんな状況?」

 

 本質で言えば恋に恋す(夢見)る乙女なソラにとって、ただでさえ恋バナは実は食いつきの良い話題なのだが、言っちゃなんだがジャンヌは美人だがその信仰心からして、妹がいなければ修道女になってそうな人の為、恋愛には縁がなさそうとソラは思っていたのもあって、「結婚前提の恋人」が相当意外らしく、ジャンヌが「ちょっ!? ソラさん!?」と泣きそうな顔で叫んでも、すっぽんのごとく食いついて離さず質問攻め。

 

 ジャンヌはソラの意外な食いつきに、真っ赤な顔で狼狽しながら妹たちに助けを求めるが、こういう時の妹たちは無情だった。

 

「ジークさんは、私がハンターに憧れるきっかけのアマチュアハンターさんですよ。今年受験予定なので、もしかしたらソラさんたちの後輩さんになってるかもしれませんね」

「ぶっちゃけ私らは良く知らないわ。何か3年前にそこのピンク頭が犬猫みたいに拾ってきて、いつの間にかそういう事になってたらしいわよ。……まったく、私たちの事なんか気にせず、嫁の貰い手があるうちにさっさともらわれてしまえばいいのに」

「そうですよねー。私、早くジークさんを『お義兄さん』って呼びたいです」

「オルタ! リリィ!!」

 

 オルタもリリィも「あーもう、うるさいしウザいなぁ」と言いたげな顔して、ジャンヌの代わりにソラの問いに答えて、ジャンヌを助けてはくれなかった。

 というか、二人からしたらもう3年ほど前から周知の事実、亡くなった親も公認の事なのに、ジャンヌの未だに初心すぎる反応は本気でウザいのか、二人とも飲んでいるジュースやコーヒーが練乳になったような顔をしている。

 

「犬猫みたいに拾ってきたって……おめーはペットといいそいつといい、どんな拾い癖だよ?」

「拾ったんじゃないよ! 運命の出会いだよ!!」

 

 そしてオルタの説明の中で見つけた突っ込み所にレオリオが、もはやどんな反応したらいいかわからないと言わんばかりの顔で突っ込むと、アストルフォは胸を張ってドヤ顔で言い切る。

 そんなアストルフォにソラは、「どんな経緯で拾って、その人はジャンヌさんにプロポーズしたの?」と訊きだす。オルタやアストルフォの発言からして、彼が当事者二人の次くらいに、彼らの恋愛事情を知っていると判断したのだろう。

 

「えーとね、あれは確か3年前、僕がペットの散歩をしてた時に、瀕死のジークを見つけて……」

「アストルフォ!」

「痛い痛い! やめて、ほおを、引っ張らないでぇー!」

 

 そしてアストルフォもドリンクバーのジュースを全混ぜという悪ノリの産物を、自己責任でぐびぐび飲みながら、酔ってもいないのに調子に乗って朗々と語りだしたので、さすがの聖女もキレて物理的にアストルフォを黙らしにかかってきた。

 そしてアストルフォの餅のように伸びる頬を引っぱりながら、ジャンヌは真っ赤な顔でこの話題を終わらすために、ソラに向かって無理やり唐突かつ今更なことを言い出した。

 

「そ、そういえばソラさんって、眼の色が変わるんですね!」

「あぁ、うん。ちょっとした特異体質でね」

 

 さすがにここまで恥ずかしがって嫌がっている相手の話を、根掘り葉掘り聞く気にはなれなかったのか、ソラは申し訳なさそうな苦笑をしつつ、ジャンヌの無理やり極まりない話題転換に乗った。

 そしてその話題転換には、惚気でしかないジャンヌの反応に見飽きている妹たちや、失恋以前の問題だったレオリオも乗って、「そういえばそうですね」「あ、説明し忘れてたわ」とそれぞれ反応するが、一番反応したのはジャンヌ弄りで調子に乗っていたアストルフォだった。

 

「!! あ、そーだ! 思い出した! ソラちゃんに訊きたいことがあったんだった!!」

「!? どうした急に? 何? 何を訊きたいの?」

 

 話題転換に成功して緩んでいたジャンヌの両手を自分の頬から引きはがし、テーブルに両手をついて前のめりでアストルフォは言い出した。

 その突然の剣幕にソラはもちろん、ジャンヌやレオリオ達も唖然としながら、ソラが話しを先に促す。

 

 アストルフォはジャンヌの所為か言うべきか、自業自得と言うべき、気が抜けて笑ってしまいそうになる真っ赤になった両頬の真顔で言った。

 

 

 

「ソラちゃんって、『クルタ族』と何か関係ある?」

 

 

 

 ピクリと一瞬、ソラの眉が跳ね上がり、レオリオも目を見開いた。

 しかし、二人が「何でここで『クルタ族』の名前が上がる?」と訊く前に、アストルフォがマシンガントークをぶっ放す。

 

「あのね、君の眼の色が変わるって知った時から僕、クルタ族みたいだなーって思ってたんだ!

 僕、クルタ族なんて5年前のニュースで初めてそんな民族のことを知ったんだけど、そのニュースが虐殺されて滅びたっていうニュースだったから、あまりにもひどくて泣いちゃって、しかも虐殺された理由がソラちゃんみたいに眼の色が変わる一族で、その目が目当てだったってのを知ってまた泣いて、しかもしかもその目って怒ったり悲しんだりしたら、より色鮮やかになるんでしょ!?

 だから酷い拷問の末に虐殺されたって知って大泣きしたから、ソラちゃんの眼を見て心配だったんだよ!」

『泣きすぎ』

 

 アストルフォがいきなり「クルタ族」を話題に上げた理由に対して、ソラとレオリオはもちろん無関係である三姉妹も揃ってまずは突っ込んだ。

 突っ込みつつも、ソラから警戒心の類が消え去っているのを見て、レオリオは安堵する。

 

 ソラ自身も、別にアストルフォがクルタ族に関して無神経な興味を懐いたり、侮辱するような話題を上げるとは思ってなかっただろうが、それでも彼女にとってその民族の話題は、地雷に近い。

 たとえクラピカ自身に知る由がなくても、彼の家族を、誇りを踏みにじるような真似をする者は許さないことを知っているので、有り得ないと思いつつもアストルフォから「クルタ族」の名が出た瞬間は、レオリオに生きた心地がしなかった。

 

「えーと、とりあえず私の心配と、そこまで泣くほどクルタ族を悼んでくれてありがとう。

 私の眼がクルタ族と同じ理由で狙われやすいことはわかってる。自覚した上で対策とかしてるから、心配しないで。

 あと、私とクルタ族は眼の特徴が似てるだけで、無関係だよ。私の眼は後天性だし」

 

 突っ込みを入れたが、自分の心配よりもクルタ族が虐殺されたという事実に悲しんで悼んで泣いたことを喜ぶようにソラは笑って、アストルフォに「心配ない」と答える。

 その「心配ない」や「対策をしてる」という発言には、去年のヨークシンでの出来事をよく知るレオリオからしたら突っ込みどころ満載なのだが、無関係のアストルフォはもちろん、ジャンヌ達に心配を掛ける訳にもいかないので、「どこがだ! おめーのやること成すこと全部自殺志願手前だろうが!」という突っ込みは、お冷と一緒に飲み込んだ。

 

「え? ソラちゃん、クルタ族と全く無関係なの?」

 

 ソラの返答に、きょとんとアストルフォが尋ね返す。どうも彼はクルタ族の眼の色が変化することは知っていても、何色に変化するまでは知らないようだ。

 何故そこまで知っていて、「緋の眼」を知らないと思いつつ、そこに全く興味を懐かず、ただひたすらに縁もゆかりもない民族の滅亡を泣いて悼んだ彼に敬意を懐きながら、ソラは答える。

 

「血縁的な関係は皆無だよ」

 

 アストルフォの事は信頼しているが、それでも何かの間違いで悪気なく、彼の口から「クルタ族の生き残り」であるクラピカの情報が、彼の事を生きた人間ではなく、コレクション棚に収めて眺めて愛でていたいとしか思わぬ輩の耳に入らぬよう、ソラは精一杯の誠実さで「全くの無関係」を否定してるようにも取れる言い方で答える。

 その誠意が伝わったのかどうかは不明だが、アストルフォは「そっか」と納得してから着席。

 

 席に着くと同時に、彼としては誰に聞かせるでもない独り言のつもりで呟いた。

 

 

 

「じゃ、あれも関係ないか。

 クルタ族の生き残りがいるって、電脳ネットで上がった話題も――――」

「――――アストルフォ!!」

 

 

 

 今度はソラがテーブルをひっくり返しかねない勢いで立ち上がり、斜め向かいの彼に腕を伸ばして肩を掴み、訊いた。

 

「……それ、どこでどんな話題だったの? 君が知ってるってことは、一般人でも見られるサイトで出回ってるって事?

 教えて、アストルフォ! お願い!!」

 

 今日一番深く鮮やかな青い瞳をして、ソラはアストルフォに懇願する。

 

 助けを求めるように、縋りつくように、迷子の幼子のように、今にも泣き出しそうな顔でソラは、「クルタ族の生き残り」の情報を求めた。





今回でオリジ回終了。
次回はこれより少し前の話であるハメ組爆殺直前のアベンガネ視点と、この話の少しあとであるキルア視点のハンター試験の話(多分1話内に二つとも入れます)の幕間を入れてから、映画第一弾の「緋色の幻影(ファントムルージュ)編」に入ります。

映画は映画館で観ましたがDVDは持っておらず、代わりに小説を持っているので小説版を基にした話になります。
なので映画と若干違った展開になっているシーンがありますが……オリ主をぶっこんでいる時点でそこは気にしても仕方ないですね。

とにかく、映画を見た方も未視聴の方も楽しんでいただけたら幸いです。



……あと前書きに注意書きしようかどうか悩みましたが、あんまり強調したら余計に不快かなと思って何も書きませんでしたが、アストルフォ→ジーク的なBL描写が不快だったら方がいらしたらごめんなさい。

でも、これだけは言わせてください。
これ、私の趣味じゃなくて公式です。公式で、ジャンヌの恋のライバルは他の女キャラではなくアストルフォだったんです……。
もうアストルフォの設定の時点でだいぶヤバいのに、型月が本当に公式が病気&最大手すぎる……。


そして今回もあった本編で入れる隙間を見失った設定。

・ソラが言ってる「悪徳詐欺宗教法人専門のハンター」は鉄拳聖裁のマルタ姐さん。前章で登場した詐欺師の一件で知り合った。
一応分野はクライムハンターで、本業はシスターさん。別にキリスト教以外を否定する気はなく、純粋に信仰を隠れ蓑にした犯罪が許せない人。

ちなみにタラスクはいます。しかもマルタさんはゴッリゴリの強化系なので、具現化した念獣じゃなくてガチで生物。
そんな生物をどうやって使役してるか? もちろん、拳です。



アストルフォ・ジャンヌ・ジークの出会いとジークとジャンヌの馴れ初めは、本編で書く機会があるのかどうか不明だし、あってもかなり最低限にサラっと流すと思いますので、今のところ決めている設定(プロット?)を活報に載せておきますので、気になる方はそちらをどうぞ。

ただし、ジークは今後ある程度物語の深部に関わる形で登場する予定ですが、その関わっている部分のネタバレがありますので、閲覧される方は自己責任でお願いします。

また上記の理由から、活報で書いた内容の感想は本編の感想欄ではなく活報のコメントでお願いします。
非ログインユーザーの方はコメントできませんが、ネタバレを嫌う方は必ずいますから、皆さまそれぞれ配慮をお願いします。

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