視える少年と新たに輝く少女たち   作:黒ニャンコ先生

7 / 8
※本当は1月上旬に上げる気概だった。

※FGOことFate/Grand Orderのネタなのでプレイヤーにしか分からない内容多々。

※FGOで起きた出来事がモチーフ。中身はだいぶ変えたけど。

※福袋チャレンジ× 善子オーバーキルチャレンジ◎

※なんでこんなずれ込んだのかはあとがきに。


番外編 やっぱりガチャなんて悪い文明なのよ!そんなの破壊してやるわ!

既読 《呼符で武蔵来た》

 

《爆ぜろこの幸運ランクA+!》

 

 新年早々なにしょーもないやりとりやってんだオレたち……。

 ソロンモ……じゃない、ゲーティアを打倒し、人理定礎を復元して新年を迎えることができた年明け。カルデアが新たなサーヴァントを召喚できる可能性を持ってきた。(と言う設定な)

 存在自体は体験クエストが実装されていたから気にしなかったが、まさか溜まっていた呼符(およそ20数個)の消化を目的に回していたら来たよ、宮本武蔵。相変わらず女になっていたけどいつものことですねわかります。

 その事を善子に画像もオマケでラインに送ったら、上記の反応。悔しがっている顔が目に浮かぶなぁ。

 

『――――♪』

「って噂をすれば善子が釣れたな……もしもし」

《あけおめ福袋ガチャやって!》

「新年の挨拶と混ぜるな。っつーかガチャってアレか? あのクラス別のやつ」

《そうよ! 私のガチャをやってよ!》

「なんでひと様のガチャを課金してまでやらなきゃならん」

《そうじゃなくてぇー! 私が課金するから引くのはアンタがやって、って言ってるの!》

 

 はぁ? ならそのまま自分で引けばいいじゃないか。何でわざわざオレにやらせようとするんだよ。

 

《アンタのその強運が頼りなのよ! 今まで星5サーヴァント確定の福袋をやったけど狙ったサーヴァントが出なかったの! こうなったら涼……アンタのその強運で呼び込むしかないのよ! いい加減に目当てのサーヴァントを私のカルデアに迎えたいのよぉ~!!!》

 

 仕舞いには涙声になってるし善子の奴……なりふり構ってられないのかお前。

 

《ふんっ……貴方には分からないでしょうね。持たざる者の悔しさが! 水着サーヴァントは全て網羅して、期間限定サーヴァントもほぼ網羅! 邪ンヌまでいるし極めつけに最新の武蔵まで迎えたとかもう爆ぜなさいよこのバカ!》

「ただの妬みじゃねーか。多いなら多いで育成と素材調達が厳しいんだぞこっちは」

《私から見れば嬉しい悲鳴にしか聞こえないわっ! いい、今からそっちに行くから! バス停で合流!》

 

 一方的に告げて、ブツッと電話を切ってしまう善子にオレははぁ~……と面倒に思いながら溜息をつく。

 せめて元旦くらいはあいつらに振り回されずに静かに過ごしたいんだが、そうは問屋が卸さないらしい。

 

「……はて。そういや何か忘れているような」

 

 初詣……じゃ、ない。なーんかを誰かに言われていた気がするんだが……思い出せないならたいした内容じゃないだろうな。

 どんなに急いだとしても――って言っても移動手段はバスだから急げないだろうけど――30分以上はかかるだろうし、のんびりコーヒー飲んで出かける支度するか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出たわね我が永遠のライバルッ! 持つ者と持たざる者の象徴! うっかりそのiPhone6sを落としてアカウントを焼却しなさいよそれかガチャ運だけでも私に寄越しなさいよぉッ!」

「新年早々欲望ダダ漏れだなおい」

 

 乗ってきたバスから降りてきて早々、ビシッと指を突きつけてきた善子に呆れながら頭に手刀を打って突っ込み、ブレない善子に溜息をついた。

 ……何が悲しくて他人のガチャをわざわざ引かなきゃなんねーんだ。いや、むしろただガチャを引かせるためだけにバスに乗ってやって来るこの行動力は何だ。

 

「決まっているわ――それは執念よっ! 望んだ星5サーヴァントを手に入れるためなら手段は選ばないわっ!」

「呆れるのを通り越してもう感心する。見習おうとは思わねーけどな」

「フンッ。好きなだけ言いなさい……持つ者には所詮分かるはずも無いわ」

 

 さいで。けどそれに巻き込まれるオレに対しては何も無いのかよ。

 

「うっ…………つ、付き合ってくれて、あ…………ありがと」

「よろしい。んじゃ、さっさと片付けんぞ」

「あっ、カード買ってないからコンビニで買ってから――」

「――あーっ! 涼ちゃんと善子ちゃんだー!」

 

 その時、善子の台詞に被せて能天気な明るい声が背後から響く。

 振り返るとバカみかんに梨子、それとねーちゃんの3人がこっちに向かって歩いていた。

 

「なんだお前ら。こんなトコでなにしてんだよ」

「それはこっちの台詞だよ。2人なんて珍しい……ってわけでもないけど、どうしたの?」

「コイツが代わりにガチャ引いてくれ、って頼んできた」

「ガチャ……ってよっちゃんたちがクリスマスにもやっていたあのゲーム?」

「ええ……癪だけど、この男の幸運ランクは認めざるを得ないわ。対する私は幸運ランクE……狙ったものはほぼ引き当てられない。だからこの、無駄に高い幸運で武蔵を呼符単発で引き当てた憎ったらしい男に引いてもらうのよ! 私が真に望んだ英霊をッ!!!!」

「そ……そっか、大変だね……(2人とも色んな意味で)」

 

 おい善子、オレを貶すのは後でやり返すのは良いとして、熱入りすぎて梨子が引いてるのに気づいてないのか。

 

「へぇー。――そうだ、そんな事より2人ともあけおめー!」

「そんな事ってなによぅ!」

「おー、おめっとさん。それでねーちゃんたちは何やってたんだよ」

「私たちは初詣だよ。その帰りに2人を見かけたんだ」

 

 あー、そういや初詣ってまだやってなかったな……別に願掛けとか特に無いし、そもそも住み着いてない社でお参りしたってなぁ。

 

「チカはてっきり、2人がデートするのかって思ってたんだけどなー」

「あっはっは。いいかバカみかん、そんなの絶対ありえねーから」

「そ、そうよ。なんで堕天使である私がこんなのと!」

「やっぱこのまま帰って寝るかなー」

「ごめんなさい私が悪かったです!」

(よっちゃん完全に涼くんに手綱握られちゃってる……)

 

 この状況でどっちの方が上かと言うのは即座に理解したらしいな。いや、普段から俺の方が立場上だけど。年上で先輩だし。

 

「で、えーっと……なんだっけ? 先にコンビニでカードを買うんだったか?」

「う、うん……」

「じゃあ私たちもあったかい飲み物買いにコンビニ行こうか」

「なんでねーちゃんたちまでついてくんだよ……」

「別に私たちは飲み物買うだけだよ? それとも家に行って飲み物用意してもいいの?」

 

 ん……まーそーだけどよ。それに俺んちはねーちゃんちでもあるわけだけどさ。別に面白いことなんて起きないと思うがなぁ。

 結局ねーちゃんたちとコンビニに寄って、善子がiTunesカードを買ってコードを入力して、きちんと課金出来たことを確認すると俺にバトンタッチされてFGOを起動する。

 周りが買い物をしている最中、手持ち無沙汰で気まぐれにTwitterを開いてみたらGoogle Playでは課金ができない不具合が発生して地獄絵図の様相を呈していた……iPhone使っていて良かったな善子。

 

「――ところでどのクラスを引くか聞いていなかったんだが、どれ引けばいいんだ?」

「正直、悩んでいるわ。ダントツなのはオルタニキやヴラドおじさまだけど、それを狙って夏の福袋やったらナイチンゲール出て挫折したし……やっぱりここは原点回帰してモードレッドとアルトリアオルタかしら。だけど術枠は外れが無いし実用性高いし……それとも2分の1の確率でジャック? ねえ涼、ちょっと因果律操って特定のサーヴァントだけ引き当てることってできないの?」

「んなの出来るわけねーだろ。お前は俺を何だと思ってんだ」

「幸運A+でレア鯖ぽんぽん生み出す製造機」

「OK、それは俺に対してケンカ上等かかって来いって意味に捉えて良いんだな?」

「こらこらー、新年早々女の子苛めちゃダメだよ涼。それにあながち間違ってないんでしょ」

 

 こ、の……ねーちゃんまでそんなことを言うか。

 

「ねえねえ梨子ちゃん。善子ちゃんの話、全然分からないんだけど……どういう意味?」

「やってる人にしか分からない話だからね……」

「そっかー。チカには外国語にしか聞こえないなー」

 

 いや、多分それはどのジャンルにおいてもそうだろ。なじみの無い話を熱弁されても相手にはまったく理解できているとは思えねーし。

 辛うじてチカにも理解できる内容だったら……やっぱエクバ辺りになるんだろーな。

 

「……で、結局どのクラスを引くんだ?」

「むむむ…………ここはやっぱり叛逆の騎士モードレッド狙い!」

「要するに剣か。本当にそれでいいんだな?」

「武士に二言は無いわっ!」

 

 お前武士じゃねーだろ。堕天使どこ行った。と言うツッコミは心の中に留め、召喚の画面を開くと剣――いわゆるセイバークラスの福袋召喚を選びタップする。

 最終確認が表示されて善子に目配せすると、こくりと頷いたのでタップした。

 

・1回目

 

「鯖だな」

「え。なんで分かるの?」

「3つの輪っかが囲んでるだろ、それだとサーヴァントなんだよ……カエサルだな」

「プリズム還元ね」

 

・2回目

 

「また鯖か」

「モーさんモーさんモーさんモーさん……!」

「残念剣ジル」

「なんでよぉぉぉぉ!!!」

「よ…よっちゃん、まだ8回あるから、焦らないで!」

 

・3回目

 

「お。今度は礼装だな」

「どうやって見分けるの?」

「輪が1つなら礼装、3つならサーヴァントで見分けられるんだよ。……おお、カレスコじゃないか」

「ちが……嬉しいんだけど、違う……!」

 

・4回目

 

「また礼装だな」

「モーさん……モーさん来て……」

「礼装って言うんだからサーヴァント? じゃないでしょ……あ、短剣みたいなのだね」

「ヒュドラ・ダガー……時にニトクリスとかは?」

「持ってないわよぅ……」

 

・5回目

 

「鯖だな」

「モーさん! 今度こそ! いい加減にぃ……!」

「お、金演出……」

「!? モーさん!? 来るのモーさん!」

「……アルテラ」

「はか、破壊の化身ンンッ!? なんで!? 持ってないけどなんで!? 嬉しいけど違う、あなたじゃないのよ!」

「よっちゃんがついに壊れた!?」

 

・6回目

 

「これは…礼装みたいだな」

「くふっ……落ち着きなさいヨハネ、まだ3回ある……あと3回にモーさんが入る可能性は十分にあるわっ!」

「あ。ライオンのぬいぐるみだね」

「まあプリズム還元だな」

 

・7回目

 

「また礼装か」

「礼装もういいから! サーヴァント! サーヴァント出して! モードレッド来て!」

「ねえ、礼装演出からサーヴァントの演出に変わることってあるの?」

「ない。おっ、聖者の依代じゃないか。良い奴出たぞ」

「違う……効果は嬉しいけど聖者じゃないのよ……」

 

・8回目

 

「あ、礼装だね」

「礼装なんてどうでもいいのよ~!」

「鋼の鍛錬」

「愉悦! マーボー! 神父!」

「よっちゃんがなにを言ってるのか全然分からない……」

 

・9回目

 

「サーヴァントみたいだな」

「モーさん! モーさん来るの!?」

「残念フェルグス」

「」

「よっちゃんがショックのあまり石に!?」

 

・10回目

 

「お……おい、鯖だぞ。しかも金演出」

「っ! モードレッド!? いえこの際アルトリアオルタでもいいわ! どっちでも良いから来て――」

\すまない……俺だ/

「ジ ー ク フ リ ー ト……かふっ」

「よっちゃんがくず折れたー!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 安定のすまないさんオチだったってわけか……いや、トータルで見ると悪くないんじゃないか? サーヴァントにはアルテラにジーク、礼装は依代と鋼の鍛錬に極め付けにはカレスコがあるじゃないか。

 そこまで落ち込むことは無いと思うがな……確かに目当てのサーヴァントは出なかったが。

 

「なんで……なんで来ないのよぉっ! 私じゃ絶対でないから涼に頼ったのに! いや確かに普段の私よりも明らかに引きがいいけども! 求めていたのは反逆の騎士と闇堕ち騎士王なのにぃぃぃぃ!」

「喚くなよ……そもそもセイバークラスは3人いるんだから確率は高くないだろ」

「だとしても涼の幸運なら引き当てられると思ったの~!」

「いやぁ……この場合善子の邪念が邪魔したんじゃないかな」

「あー……すっごい念を送ってたもんね」

 

 それじゃあいくら俺に頼っても当たらないだろ……しかも途中でアルトリアオルタまで追加したら余計出ないし。

 

「涼くんは普段どうやって引いてるの?」

「あ? 別に……ただ引けたらいーなーって程度にしか考えてねーな」

 

 そもそもこのゲームって基本渋いんだからピンポイントで狙って当たる確率なんてタカが知れてるし。なら最初から期待しないで来れば儲け物って考えるべきだろ。

 

「……じゃあ涼、あなたも引いてみて」

「はぁ? なんでオレまで……」

「い・い・か・ら! ヨハネだけなんて不公平じゃない!」

「いいんじゃないの? それにお金だってあるんでしょ?」

 

 そりゃぁあるけどさ……と善子の側についたねーちゃんに渋りながらも同意する。

 んー……まあ、運営へのお布施って考えりゃ良いのか……と仕方なくコンビニでiTunesカードを買って戻り、コードを入力してそのままFGOを起動。

 

「涼ちゃんはどのクラス……? っていうの? を選ぶの?」

「あー……まず外れが無いキャスターじゃねーの? ここは」

「安牌を選ぶ、と言うわけね……ずいぶんと消極的じゃない」

孔明(人権)タマモ(良妻)三蔵(破戒僧)のどれかが手に入るのに消極的か?」

「いいえ。どれ引いても大当たりよ」

「よっちゃん……」

 

 呆れている梨子は置いておいて、んじゃぁオレの10連っと……。

 

・1回目

 

「あ。サーヴァントだね」

「演出に変化は無し……3確定ね」

「え。何コレ? イラストがバチバチって輝いて……」

「嘘! 昇格演出!? 初手からってぅあああああ孔明ぃぃ人権いきなりぃいいいっ!」

「よっちゃんが1発で壊れた!?」

 

・2回目

 

「今度は礼装の演出みたいだね。あ、なんかメガネ掛けた白衣の人が描いてあるよ」

「2030年の欠片……ぐふぅっ!」

「よっちゃん! 気を確かに! まだ2回目だよ!?」

 

・3回目

 

「また礼装だー。……ってこれマーボー豆腐だよね? こんなのもあるの?」

「あーまあな。ただ効果は存外悪くないんだが。けど還元だな」

「今の私にはその泰山の激辛マーボーよりも辛くてつらい仕打ちを受けているわ……」

「で……でもほら、さすがに神引きってそうそう起きるものじゃないし……」

「いやいや、涼ならもっとえげつなく行くよ」

「いやな信頼の仕方なんだけどねーちゃん……」

 

・4回目

 

「また礼装だな……お、フォーマルクラフト」

「ごはぁっ!」

「何それ強いの?」

「ああ。ある意味神器の1つかもな」

 

・5回目

 

「あ、今度はサーヴァントだね……フード被ってる人みたい」

「術ニキ乙」

「え。待って、術ニキってストーリー限定でしょ? ピックアップとかにもあまり出ないから基本的にレアな立ち位置でしょそれをナチュラルに当ててるぅぅ!?」

「どうどうっ! よっちゃん、騒がないで!」

 

・6回目

 

「次は礼装演出だね。えっと……赤いドレス着た人だ」

「恋知らぬ令嬢ぉう……待って、ここまでで星4以上は何枚出たのデスカ……?」

「孔明欠片フォーマル令嬢……4つだな」

「術ニキもレア度高いじゃない……実質5つ、外れナシ……?」

 

・7回目

 

「サーヴァント演出だな。あ……金演出」

「この期に及んでまだ殺しに来るというの!? 術ギル!? しかもよりによって術ギル!? フォーマルと相性抜群の術ギルですかそうですかぁ!?」

「うわぁ……善子ちゃんがどんどんおかしくなってくよ」

「よっちゃんから見れば、涼くんの引きは神がかってるようなものだからね……」

「いやぁ、もう1つ山があると思うよ、私は」

「根拠は?」

「姉のカン、かな」

 

・8回目

 

「あ。またサーヴァント……しかも金演出」

「なんで!? 2連続どころか3連続お腹いっぱいあああああニトクリスぅぅぅぅぅ! さっきのヒュドラ・ダガーがフラグだったはずなのになんでこっちに来ないのよぉおおお!」

「なんでキャスタークラスのニトクリスがセイバークラスで呼ばれるんだよ。おかしいだろうそれ」

「にしても……すっごい格好だよねこの人。水着これ?」

「一応これでもファラオだから。偉い人だから。不敬ですよって怒られるから」

 

・9回目

 

「次は礼装演出だねー。ってこれバイクじゃん!」

「モータード・キュイラッシェだな。前に善子が言ってたけどVMAXを武装したとか何とかって」

「」

「あの、肝心のよっちゃんがもう……」

 

・10回目

 

「また礼装だー。えっと、尼さん? 見たいな人が地球を抱いてるやつ」

「魔 性 菩 薩」

「よっちゃんが線画みたいに真っ白にぃぃぃぃぃ!?」

「トドメ、刺されちゃったかー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悲しい出来事だったね……」

 

 と、明後日の方向を向いて憂うねーちゃん。いや、ただガチャ引いただけでなんだよそのリアクションは。

 だがしかし、善子は俺のガチャ結果にオーバーキルされて梨子に支えられてやっと立っているという状態だが。

 

「……ところで涼、今回の引きはどんな感じ?」

「急にいつものねーちゃんに戻ったな……あー、まあそれなりいい感じじゃね? 星4以上のサーヴァントが合計3体、同じく星4以上の礼装が4枚。上々な結果だろ」

「そんな引きでそれなりだなんて……これが持っている者の風格だとでも言うの……」

「よっちゃーん、しっかりー。大丈夫だよ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――」

「ただガチャで――なんですって?」

 

 あ……梨子の奴、今地雷踏んだな。

 地雷ワードに反応した善子がゆらぁっと、幽鬼のように身体を起こして思わず小さな悲鳴を上げる梨子。髪が長いし前髪に目が隠れている様はどこのリングに登場する貞子だ。

 

「よ……よっちゃん? あの、なんだか怖いよ……?」

「ただ、引けなかった……ふふっ、そうよねぇ……やってない人から見たらそんな反応よねぇ……うん――いいの、別に怒ってないし……リリーが言ってることは至極全うな反応だもの。

 でもやっている人から見たらそうじゃないのよねぇ~……ただでさえ(から)い確率で引けること事態が奇跡みたいなものだし。まあ? 中には?? さらりとなんてことの無いような顔して星5サーヴァントや礼装見せてふっつーな反応している人間もいるけど???

 でもFGOって星3サーヴァントでも戦えるし、イベントで星4サーヴァント手に入る事だってあるから不足気味ってわけじゃないし? むしろ高レアほど育成難易度跳ね上がって苦行だし? あのランサーアルトリア(青)なんて大騎士勲章が合計110個も必要って言う先が見えないどころかお先真っ暗な要求してくるし? だから星4がコストと育成難易度含めてちょうどいいって言うか、聖杯転臨でレベル上限解放出来るようになってむしろ星3以下が有利になったし? だから無理して星5を手に入れる必要なんて無いんだけどねぇ~……。

 でもやっぱり愛着って言うか? 信念って言うか? やっぱり欲しくなっちゃうのよね、星5サーヴァントが……でも私じゃ絶対通常のガチャじゃ引けないし、だからこの福袋が数少ない希望なのよ……だけど最初の福袋では本命モードレッドで出たのはオリオン、夏休み福袋はオルタニキ本命だけど出たのはナイチンゲール――って、掠りもしないから一縷の望みを託したのに……。

 あ、それでもやっぱりオリオンもナイチンゲールも育てたわ、当然スキルレベルも全部10にして。だって当然じゃない、数少ない星5で使い所理解しておけば強いもの…………現にキャメロットでバスターゴリラ相手にエウリュアレと一緒にボコボコにしてやったし、ナイチンゲールは支援バフのおかげで火力を底上げできるし……もちろんアルテラだって育てるわよ執念でスキルレベルも全部上げるわだってセイバークラス最強のATK値だしナイチンゲールと組んで文明破壊是非もないねっ!」

「り……涼くん、よっちゃんがおかしくなっちゃった……」

「いや、コレがおかしいのはいつもの事だが、トドメ刺したのは間違いなくお前だからな」

 

 泣きつく梨子に淡々と返して、どうやってコレ鎮めるかなー、と思案。

 と、その時同時に通知音が鳴って、俺はスマホを取り出す……鞠莉から?

 

《シャイニー★FGOで福袋? って言うのがやってたから、試しにやったらこんなの出ちゃった! なんか強そうだよね、悪役っぽくて!》

 

 と言うメッセージと共に添えられていたのは、モードレッドの画像……あ、ランスロットとガウェインまで引いてるじゃないか。

 

「」

「あー……」

 

 スマホの画面を見たまま氷のように固まる善子に、何か声を掛けないとなぁと思って声を掛けようとする。

 

「まあ、アレだ。ドンマイ?」

「――やっぱりガチャは悪い文明なのよ! この軍神の剣で運営を破壊してやるwきゅぶっ!」

「うわぁっ! よっちゃんがぁー!?」

「わー、見事な上段後ろ回し蹴りが決まったねー。しかも飛んで」

「今年も涼ちゃんは容赦無しか~」

 

 やべっ。つい手加減忘れて善子に延髄蹴りやっちまった……卒倒したようだが大丈夫か?

 ……うん、呼吸もしてるし脈もある。気絶しただけだな。良かった良かった。

 

「いや良くないよね!? 延髄に思いっきり蹴りって危ないよね!?」

「そこはギャグ時空的なノリで大丈夫だ」

「うん、身もふたも無い話だけどね……」

「とりあえず善子ちゃん、チカのウチに運んであげようよ……」

 

 その後、凄まじい勢いでアルテラの育成をした善子はわずか4日でレベルマスキルマまで完了させて、ドヤ顔でサポートサーヴァントの剣枠に設定していやがった……。

 

 

 

 

 また後日。

 

「アイエエエ!? キング!? キングハサンナンデ!? りりりりり涼っ、代わりに引いてぇーっ!」

「自分で引け……確か20連くらい行けたよな――あ、出た」

「なんでアンタばっかり引けるのよそのふざけた幸運をブチ壊してやるわジーザスクラァァアイストッ!!!!」




Q.なんでこのタイミングで季節ネタ?

A.年末から体調が少しおかしくて、そのままズルズル引きずって今週医者に行ったら気管支炎と診断されました。セキが辛いです


あ、武蔵ちゃん引けないし福袋は爆死しました^q^

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