宇宙世紀を好きなように駆けてみようと思う!!   作:チェリオ

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一週間で一話って言ってましたがいつの間にか二週間になりつつある現状について


第08話 『鏡士郎vsアクシズのパイロット達』

 ハマーン様の謁見から一週間が経ちアクシズに迎え入れられた鏡士郎は嬉しそうに通路をスキップしていた。

 最近の出来事で注目すべき点は二つある。

 一つ目は彼の階級である。現在は『元総帥直属特務試験化部隊所属少佐』でも『デラーズ・フリート残存戦力副隊長』でも無くなり『大佐』となっているのだ。これは彼の武勲ではなく総帥直属と言う所が大きい。一年戦争時にあった総督府の者は二階級上の扱いであり彼もそうなのだとアクシズ上層部で意見が出て大佐にしたのだ。

 二つ目は彼に副官が付いたことだ。名をイリア・パゾムと言って腕の良いモビルスーツパイロットである。これが今スキップしてまで喜んでいる原因なのだ。『機動戦士ZZガンダム』でゲルググの改修機であるリゲルグでZZガンダムとも互角以上に渡り合ったパイロットで副官などではなくエースとして扱われるのが普通である。そんな原作キャラの彼女が自分の副官と言う事ではしゃいでいるのだ。彼女の視線など気にも留めず…

 鏡士郎に視線を向けているのは彼女だけではない。デラーズフリート救出時の話が広がっており興味や尊敬の視線を向ける者もいるが多くの者が嫉妬や疑いを持ったものである。

 

 「嬉しそうですね」

 「うん。すっごい嬉しいよ♪」

 

 ニッコリと笑う鏡士郎に対しため息を付くイリアはただ付いて行く。

 

 「あ!そう言えばさぁ。イリアちゃんって軍服着ないの?」

 「何か問題でも?」

 「う~ん…無いかな」

 

 本人が良いんだから良いんだろうけどイリアの服装は良い意味でも悪い意味でも目を引いてしまうのだ。上は黒い服を着ているのだが胸より上しか面積が無く、その上で鎖骨の辺りが開いており十字架のネックレスをかけている。ピンク色の上着を着ているものの背中の真ん中より少し上ぐらいから下が無いのだ。下なんて超が付くほどミニスカに白ブーツ、しかもミニスカからは二本の黒い紐が腰の辺りで支えている。どう見てもぜかましだよねって言いたくなる。さすがの鏡士郎でも『軍内でへそだしファッションって良いの!?』って突っ込みそうになったぐらいだ。

 それにしても健康そうな褐色の肌に薄紫の髪と瞳、そして大胆すぎる露出高めのファッション…ついつい見てしまうんだよねー。

 

 「…何か?」

 「はにゃ!?にゃ…何でもないです」

 

 視線に気付いたイリアの刺す様な視線に対して肩を震わして怯えるのであった。

 《加藤 鏡士郎》階級:大佐に対して《イリア・パゾム》階級:少尉…

 《加藤 鏡士郎》年齢:15才に対して《イリア・パゾム》年齢:13才…

 二才差と言えど年上の威厳なしの上に階級社会である軍にて下に見られる。

 まぁ、原因はこの馬k…鏡士郎にあったのだが…

 しょげたままだが歩幅は変えずにモビルスーツデッキへと進む。がその前に立っていた士官が下卑た笑みを浮かべながら歩み寄ってきた。

 

 「カトウ大佐ですよね。少し時間良いですかね?」

 「ほえ?」

 

 男の思惑などまったくと言って良いほど気付いてない鏡士郎は警戒心皆無で話を聞くことに…

 

 

 

 イリア・パゾムは大きなため息を付いた。何で自分はこんなのの副官をしているのだろうか?簡単だ。ハマーン様の命だからだ。信用は出来ても信頼できてない鏡士郎の監視。それが命じられた内容だ。その重要性などは理解しているのだが…本当に必要なのか疑問視してしまう。

 数日前、ハマーン様は謁見の間にてアクシズ上層部のお歴々が並ぶ中、新たな階級章を授与された時に「少佐から大佐ですか!?僕まだ死んでませんよ」なんて言い出す始末…

 私が副官になった時には「イリアさんが副官ですか!?イヤッホオオオウ」と突然叫びだし、歳も近いからとちゃん付けしてくるし、気楽に呼んでくるし…

 はぁ…再びため息を付く。

 今も「モビルスーツが見てみたい!!」と言ってモビルスーツ格納庫へと向かっているのだ。道中にスキップしたり服装の話をしたり最後には「はにゃ」ときた。ハマーン様も言っていたがあれは何なのだろう。

 そんな事を思っている中に鏡士郎がある男と話していた。相手を下卑た笑みを浮かべた30歳前後の男は多分『反対派』の者なのだろう。

 鏡士郎については彼をアクシズの兵士と認めるか認めないかで賛成派と反対派と言うのが出来たのだ。賛成派にはガトー中佐をはじめとする『デラーズ・フリート残党部隊』に最近になって認めたハマーン様、そしてNT研究関係の者達だ。反対派は上層部の大多数を秘めていたがハマーン様が賛成派に入ったことでかなり勢力は落ちたがそれでもあの男のようにまだ諦め切れてない連中も居る。

 

 「模擬戦ですか?」

 「ああ、そうさ。どうだい?やるだろ大佐殿?」

 

 相手を挑発するように言うがまったく気にしてない。と言うか乗り気満々なのだが…

 苛立ちを見せながらも二人でモビルスーツ格納庫へと向かって行く。止める気はないが副官と言う役職柄ついては行かなければならないだろう。

 

 「で、ルールはどうするの?」

 「そうだなぁ…あのデブリ辺りでの戦闘なんてどうだ?もちろんペイント弾だがな」

 「ならやろう!今すぐやろう!!」

 「何をしているお前達」

 

 ノーマルスーツも着ずに宇宙空間に飛び出しそうな鏡士郎に声をかけたのはイリアよりも褐色の色が濃く、ガタイの良い男だった。見覚えはあった。男の名は『ラカン・ダカラン』階級は中尉。一年戦争を生き延びた実力派のパイロットである。噂ではソロモン撤退時にはヒート・サーベル一本で切り抜けたとか…

 睨み付けるように見ていたが相手が分かるとすかさず姿勢を正して敬礼をする。

 

 「これはカトウ大佐でありましたか!!」

 「え?え!?えー!!もしかしてラカン・ダカランさんですか」

 「は?ハッ!そうであります。自分はラカン・ダカラン中尉であります」

 「始めましてお会いできて光栄ですよ♪」

 「は…はぁ」

 

 食い付く様に話しかけてくる為に若干引きつつ上官に対しての態度は崩さない。と言ってもその態度には尊敬などの感情は含まれておらず形式的なものだが。

 

 「それで大佐は何をなさっていたのですか?」

 「これから彼と模擬戦をする話になってね」

 「模擬戦ですか…」

 

 軽く睨みを効かされた男はばつが悪そうな顔をする。これは何かがあるというのは誰の目にも分かる。がそれと咎める気もなかった。ラカンとしても新しく大佐として入った鏡士郎の実力が知りたいと言う気持ちがあった。

 多少であるが心配になって来たイリアを余所におもむろに携帯電話を取り出しどこかにかけ始めた。

 

 「もしもしハマーン姉?あ!待って、切らないで!!」

 

 本当にこの人は何をしているのだろうか。年齢的に二才差と近いが相手はアクシズを率いているハマーン・カーン様。対してこの男はまるで友人に接するように…

 模擬戦の話をしているらしいが内容は聞こえないから待つしかないのだが徐々に頭痛が頭痛がしてきた気がするのだが…

 電話を切った鏡士郎は笑顔で「許可出たよ~♪」と対戦相手となる男に手を振るう。

 

 「じゃあ、機体を選んでくれ」

 「選ぶ?僕のヅダは?」

 「まさか大佐殿は自分専用の機体じゃないと戦えないと?」

 

 一々相手を挑発するように言ってはいるがそろそろその相手に効いてない事に気付けば良いのに。

 目をキラキラさせ辺りの機体を見て周りある機体の前で足を止める。

 

 「これにします」

 「これって…おいおいマジかよ?」

 「マジですよ。大マジですよ」

 「あー…俺はゲルググで行くけど良いよな?」

 「もちろん。はぁ~♪早く乗りたいな」

 

 今にもスキップしそうな勢いでその場にあった解体前のMS-05『ザクⅠ』に駆け寄っていった…

 

 

 

 コクピットで各部異常が無いかチェックする鏡士郎は外より覗き込む二人に気が付いた。

 

 「どうしたの?」

 「いえ…本当に良いのですか?相手はゲルググ。で、こっちは解体前のオンボロですよ」

 「何か理由が大佐にはあったのですか?それとパイロットスーツを着た方が良いかと」

 「だって乗ったこと無かったしね」

 「「はぁ?」」

 「リック・ドムⅡやザクⅡにはアクシズに来る前に乗って来たし、だったらザクⅠにも乗らなくちゃ♪ああ、パイロットスーツは着ないんじゃなくて着れないの。まだ僕専用のがって何してるの?」

 「いえ…少し頭痛が…」

 「右に同じく…」

 

 答えに対して本気で頭が痛くなってきた二人を心配しつつチェックを済ます。

 

 「さてと、動くから避けて貰えるかな?」

 

 ため息を付きながら離れた二人に首をかしげながらザクⅠを移動させていく。

 

 「少し重いかな?…阿頼耶識が使えないから情報少ないなぁ…ま、何とかなるでしょ。キョウシロウ・カトウ大佐、ザクⅠ出るぞ!!」

 

 カタパルトで発生したGを身体で感じながら久しぶりの宇宙空間を舞う。っと始まりを決めてなかった為にオープンチャンネルで開戦を開く。

 

 「模擬戦って何時始める…にょわ!?」

 

 最後まで言い終わる前に下より何かが来る感じがして咄嗟に回避運動を取る。ギリギリかすめる事無く銃弾が通り過ぎて行く。下方にゲルググの姿を捉えた。

 

 「もう始まってんだよ大佐殿!!」

 

 加速してくるゲルググに対して距離を離そうとしたが遅すぎる。むぅと唸りながらデブリに突っ込んで行く。男はニヤリと笑いながら無線を開く。

 デブリを避けつつ身体を左右に揺らす鏡士郎は楽しそうに笑っていた。

 

 「ふふん♪ヅダと違って遅いから操作しやすいかも。それにやっぱり宇宙を飛んでこそだよね」

 

 デブリの影に何か居るような気がして躊躇い無く三発ほど発砲する。当たった箇所にピンク色の液体がこびり付く。当たったのはMSだった。しかしそれはゲルググではなくリック・ドムだった。

 

 「あり?ゲルググじゃない?うーん…ま、いっか」

 

 相手は模擬戦と言っただけで一対一など言ってない。そんな言葉を弁解として用意したいた手段の一人がいきなり消失した。焦りつつもほかのメンバーに指示を出す。

 まだ付近には二機ほど隠れているのだ。ターゲットであるザクⅠが現れるとペイント弾を乱射する。が、弾の軌道を読んでいるかのように回避される。さすがに驚きを隠せなかった。さっきの一体目はまぐれで片付けたかったが、背後からの攻撃もどうやって回避したのかが理解できない。前と後ろからの同時攻撃だったのに…

 

 「ニュータイプとの噂は本当か…」

 

 ドムがまた出てきたことに驚いたが別に気にする事無くペダルを踏み込み加速する。

 ドム二機が追尾するが…

 

 「なんて速さだ!!追い付けねぇぞ!?」

 「死ぬほど早ぇ!!」

 

 デブリと最小限で避け、時には踏み台として加速に使っているザクⅠに負けていることに焦り、無理な加速をしたドムはデブリとぶつかり死にはしなかったものの行動不能になってしまった。

 当の本人は『死ぬほど遅ぇ…』と呟いていた。

 気分が乗ってきた鏡士郎は鼻歌ではなく、歌を歌い始める。『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の『THE WINNER』だ。

 皆も無いだろうか?車の中や自分の部屋の中などの自分だけの空間で音楽をかけているとノリノリで歌うことが。現状その状態なのだ。感情を込めて身体を揺らしながら歌を歌う。まだ気付いてないのだろう。

 

 『聞こえますか大佐…』

 「ななな、何かなイリアちゃん?」

 「…聞こえてますよ」

 「へ?」

 「オープンチャンネルのままです…」

 「………にゃああああ!?」

 

 恥かしくて悶え、急に軌道がおかしくなったザクⅠをゲルググがようやく発見した。デブリ内では追いつけないのならデブリ外より追いかければ良い。見つけ次第マシンガンの弾を撃ちまくる。しかしわずかに機体をずらすだけで簡単に避けられてしまう。

 

 「馬鹿な!?そんな馬鹿なああああ!!」

 「当たらなければどうという事は無い」

 

 左腕を肩に水平に上げ、身体をそこへ捻りいれるようにしてゲルググに銃口を向けた。ガンダムがビットを打ち落とす時のポーズを取れたことに興奮しつつ引き金を引いた。吸い込まれるように銃弾はゲルググの頭部に命中して行き、最終的には頭部だけピンク色のゲルググが出来上がった。

 

 「勝ったのはいいんだけど…ほんとにどうしよ?」

 

 勝敗よりも先程の件について考えて赤面して行く。どうしようも無いのだが…




ザクⅠに乗れたうえに原作に登場したパイロットに出会えた鏡士郎は思いもしなかったやるべき事を与えられていく。

 次回『鏡士郎のお仕事』
 『我が世の春が来たぁー!』

 
 ではまたお会いしましょう。




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