宇宙世紀を好きなように駆けてみようと思う!!   作:チェリオ

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第41話 「アフリカ・ジオン2」

 「熱い……」

 

 キンバライト基地から出た鏡士郎はアフリカの灼熱の大地をデザート・ザクも搭乗していた。外に出ても良い様に頭にはターバンを巻いて、服は長ズボンに半袖を着た上にマントで身体を隠して太陽の光を出来るだけ抑える服装を着ていた。しかしこのデザート・ザクはキンバライト基地にあったものを借りたので。戦闘に差し支えないように整備はされているが温度調整は最低限の旧型しか着いておらず、この暑さに慣れてないものからしたらサウナ以外の何物でもない。

 

 砂漠のど真ん中とはいえさすがに連邦軍の目があるかも知れない地でザクを走破させるわけに行かず、砂漠でも物資を運べるホバートラックの荷台に乗せてカバーで隠している。トレーラーの運転手兼護衛はフード付きのローブを着たソフィである。

 

 『出る前までは楽しみでしかたがないようでしたけど』

 「だって熱いんだもん」

 『もう少しです。我慢してください』

 「うー…ジュース飲みたい。扇風機欲しいよ」

 『無理ですよ』

 

 汗を瀧のように流しながら俯きながら歩は進めるがこちらに着てから茨の園や戦艦、基地内で感じる事のない暑さ滅入るのも無理はないだろう。人工的に管理された人工物内でわざわざ自然の暑さ合わせるよりは人が過ごしやすい温度に合わせるだろう。

 

 キンバライト基地に集まったアフリカ・ジオンは付近の連邦軍と本格的に戦争をするにしても足りないものが多すぎた。一年戦争からこの地で暮してきたから地の利や砂漠地帯での戦闘経験は十分だが、一番に戦力が足りないのだ。MSの数も兵士の数もだ。他には各地点に隠れている同胞との連絡方法や情報共有を計るシステム、陸上戦艦などなど。

 

 鏡士郎は今回はジオン残党軍の『カトウフリート』代表ではなく、傭兵部隊『サーペント・テール』のひとりとして、向かっている先に取引先となるジャンク屋から廃棄されたビックトレーを買い付ける事になっている。戦闘行為が不可能なほど破壊され連邦軍に回収されることなく、その場に放棄された艦を動ける程度には修復して売ろうというのだ。陸上戦艦も欲しているアフリカ・ジオンにとっては願っても無い話だが、買うにあたって『私達ジオンが買います』なんて言える訳はない。ゆえの傭兵部隊『サーペント・テール』という会社を設立したのだ。地球圏の届け出が簡単でよかった。お金は積んだけど…。

 

 ようやく見えてきたビックトレーにやっと休めると安堵しながら近付くとゴテゴテといろんなパーツで組み立てたホバートラックが停車していた。付近には背に二枚のプロペラで浮力を得るように改造した装備を取り付けたグフと、陸戦型ガンダムに似ているがV字の角が無いガンダムモドキが周囲を警戒していた。無線を用いてソフィが向こうの業者と連絡を取り合っている間、外部カメラで付近の様子を観察する。

 

 だだっ広い砂漠が広がる場所にMS2機が展開していれば規模の小さい盗賊は襲ってこないだろうが、力のある部隊なら攻めてきてもおかしくない。その為に二機のMSと向こうのホバートラックより気球が打ち上げられ、観測要員が高高度より警戒している。ジャンク屋と聞いていたがかなり手馴れているようで軍隊経験者かかなりこの仕事でのベテランと見える。

 

 『話は通りましたよ。後はお金を確認するだけだそうです』

 「了解しました。今行きます」

 

 ソフィより連絡を受けて金が詰められたアタッシュケースを二つ持ってコクピットより出る。目の前に広がるカバーをどけながら荷台に着地して太陽の下へ出る。

 

 「あづい…」

 

 サウナ状態のコクピットより熱い熱線に項垂れながらケースを運んで行く。ソフィの前には小太りのおじさんが頭の上のカウボーイハットの位置を直しながらにやっと笑っていた。

 

 「これが代金になります。確認をお願いします」

 「おう。重かったろう坊主」

 「いえいえ、これぐらいなら」

 

 ケースを渡しながら顔を見ると鼻が潰れており、鼻の穴が下ではなく正面を向いて広がっていた。どこかで見たような気がするが思い出せない。さっきから上空を飛行して離れない鷹もそうだが…。

 

 確認中におじさんとソフィの会話から彼らはジャンク屋ではなく『砂鼠』と呼ばれる者だという事が分かった。『砂鼠』とはこの砂漠地帯で無許可にMSの残骸や売れそうな鉄を回収し、業者に売りつけて換金して自分達の生活費に変える人々らしい。

 

 「確かに受け取ったぜ。こいつはおたくらのもんさ」

 

 そう言われてビックトレーを見上げるが三門の主砲は曲がり、左右の砲等はぎりぎり使えそうな損傷具合。艦橋はザクマシンガンを受けたのか穴だらけ。彼らが直したエンジン周りと操縦関係の部品以外は全部手を加えなければならない。ぱっとみ超大型の粗大ゴミにしか見えない。鉄材で売ったほうが楽な気も…。

 

 「何だって!まじかよそりゃあ…」

 

 突然インカムを耳に押し付けおじさんが焦り始めた。見ている方向から気球の観測要員より緊急の連絡が来たんだろう。

 

 「ボクは準備を始めます。状況が分かり次第―」

 「連絡いたします」

 「お願い!」

 

 急いで荷台へと戻り、カバーと機体の間を進んでコクピットへと入る。各部の異常がないかチェックしながら外の様子チェックする。すでにグフとガンダムもどきが交戦の準備を始めている。

 

 『大s……状況を報告いたします』

 「あ、お願いします」

 『現状こちらへMS5機に61式戦車と戦闘車両の混成部隊が接近中。どうやらジムが主力らしいです』

 「って事は連邦軍?こちらの動きが見張られていたのかな」

 『いえ、どうやら盗賊の一種らしいです』

 「盗賊にしては物持ち良すぎない?MSが5機もいるんでしょう?」

 『彼らによると近くの基地に所属していた部隊が装備一式持って盗賊になったそうです』

 「えー……それ本当?」

 『よくあるらしいですよ。士気の低い部隊の盗賊化というのは』

 「頭の痛い話だね。連邦軍にとってはだけど…。で、彼らはどうするって?」

 『盗賊達は装備を置いていけば命は取らないと勧告しているので逃げるそうです。足を止めるべく多少の応戦はすると』

 「了解。ソフィさんはホバートラックで一時退避を。ボクが何とかしてみます」

 『近くで待機しているレンチェフにも連絡しておきます。―――ご武運を』

 「うん、行って来ます」

 

 カバーを吹き飛ばし、姿を晒したデザート・ザクを立たせて相手を睨みつける。61式戦車が九両にバギーにバスーカを抱えた夜盗の乗せたのが4台、砂漠仕様にカスタムされたであろうジムが三機と上半身がジムキャノンで下半身が量産型のガンタンクの――ジムタンク?…が2機。

 

 「グフとガンダムもどきのパイロットさん聞こえますか?」

 『聞こえてるよ』

 「失礼ですけど腕の自信のほどは?」

 『私はそれなりにですけどショーンのほうはかなり』

 『これでもリビングデッド師団の生き残りなんでね!』

 「リビングデッド師団のショーン…あ!そういう…」

 『何だよ?』

 「いえ、とても心強いと思って」

 『心強いってこの状況で…』

 「良い様に考えましょう。これで勝てたらMS五機の残骸と多数の車両のパーツが手に入ると」

 『それは良い商売が出来そうだな。出来たらだけど!』

 「ははは、では行きましょうか!」

 

 デザート・ザクを中心に三機のMSは戦闘を開始した。鏡士郎は戦闘よりもサンダーボルトのキャラクターに出会えた事に喜びながら。


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