宇宙世紀を好きなように駆けてみようと思う!!   作:チェリオ

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第36話 『地球への降下作戦と降下阻止作戦』

 地球連邦軍の最大の拠点で一年戦争時にはジオン軍の攻略対象として侵攻を受け、物量で見事払い除けた密林地帯を利用した自然の要害、地球連邦軍総司令部ジャブロー…。現在エゥーゴはそのジャブローに対して大規模な大気圏外よりの降下作戦を実行しようとしていた。すでにアーガマを中心にサラミス改級が八隻も展開していた。合計で三十八機のMSが運用出来る艦隊だがそれぞれが無理にMSを二機ほど牽引しているので五十六機のMSが待機している。ほとんどが地球降下用のパラシュートのように展開するバリュートなる装備品を装備していた。降下機体は四十五機で残りの十一機はカトウフリートのサラミス改とMS隊と共に降下時の援護に回っている。

 

 次々と艦隊よりMS隊が地球に向けて発進して行く。スラスターを吹かせて進んで行く様子を鏡士郎は自機から見つめていた。原作通りならジャブローはエゥーゴの戦力を削る囮として扱われ、核爆弾を使用しての自爆を行なう。ジオン残党軍であるアクシズの一員としてはこれは良い機会である。この作戦を行う事でもうティターンズもエゥーゴも引けない戦いに発展する。エゥーゴとティターンズの戦力が低下すればするほど自分達は動きやすくなる。が、知り合ってしまったカミーユ君の安否だけは不安である。

 

 アーガマのカタパルトへ視線を向けるとちょうどカミーユのガンダムMk-Ⅱが発進しようとしていた。この物語でのカミーユは原作と多少違っていた。鏡士郎が精神が不安定になったカミーユを支えた事により余裕が生まれたのだ。出撃前にはファ・ユイリがカミーユが死ぬかもしれない事に癇癪を起こした時には無視や放置するのではなく、優しく抱き締めながら話して落ちつかせたなど原作からの変化を見せていた。これが大きな流れを変えるような事態ではないけれど多少なりとも変化をさせたことを鏡士郎は気付いていない。

 

 『MS隊の展開を終了しました大佐』

 「了解だよ。さぁて、ティターンズは何処から来るかな?」

 

 カトウフリートの八機のジム・コマンドが防衛の十一機と共に周囲を警戒する。と言っても追撃してくるのはアレキサンドリア級とサラミス改が三隻のMS二十四機程度。こちらはMSの数は五機ほど負けてはいるが十一隻もの艦隊がいるんだ。それにこの前の戦闘で強いのはライラ大尉とジェリド中尉達だろう。ならば鏡士郎とフィーリウス隊で何とでも対処できる。

 

 『敵機確認!』

 「来たね。どっちから?」

 『艦隊の後ろを突く形ですが…その…』

 

 

 ついにきたかとレーダーに目を向けるがMSのレーダーではまだ捉えられず、艦よりの報告を待つがどうも歯切れが悪い。首を捻りつつ待っていると声を震わしながら答えた。

 

 『四十機前後のMS隊が接近中!!』

 「……はい?」

 

 予定していた数より多いMS隊に驚きつつ頭の中で何かが走った。まだ見えないが奴がいる…それに別からも何かが来る…。

 

 「フィーリウス少尉!迎撃の指揮を任せるよ」

 『了解しました。して大佐はどうされるので』

 「ちょっと迎撃に出なくちゃいけなくてね」

 『では護衛を―』

 「いや、単機じゃないといけない。それと右翼から早いのが来るってエゥーゴに伝えて」

 

 伝えるだけ伝えると鏡士郎は感じ取った方向へと向かう。この機体でどこまでやれるか分からないがやるしかないと腹を決めて…。

 

 

 

 

 

 

 エゥーゴ艦隊を何とか超望遠だが発見したティターンズ艦隊は次々にMS隊を発進させた。追撃してきたアレキサンドリアにボスニアを含んだサラミス改三隻に加えて、ミヨシが援軍として連れて来たコロンブス級とマゼランにサラミス改、ホワイトチャペルが合流していた。MSはマラサイ三機にガルバルディ四機、ハイザック二十機とジムⅡ十九機と三個中隊規模にまで脹れていた。

 

 MS隊中央に位置するガンダムジャックに乗るミヨシは楽しそうに微笑んでいた。手首や首をコキコキと鳴らして短く息を吐く。

 

 「さぁて、テメェら。戦争の時間だ。エゥーゴを嫌っている奴に戦友を討たれた仇を討ちたい奴、立身出世を望んでいる奴といろいろ思惑を持った奴がいると思う。自分の欲を満たす為にもこの戦争を楽しめや」

 

 味方MS隊に伝えるとクククと笑い声を漏らす。正直この中で一番楽しもうとしているのはミヨシ本人なわけなのだが…。と、モニターにバリュートをつけたジェリドのマラサイが目に入った。隣に居たシャリー少佐青色にペイントされたマラサイの肩を掴んで接触回線を開く。

 

 『何でしょうか?』

 「アイツは地球に降りんのか?」

 『本人の強い意志で降りた奴も追撃するそうです』

 「仕事熱心だぁね…カクリコンやライラは?」

 『大佐の指示通りですから降下用のバリュートは装備しておりませんが』

 「なら、いいさ」

 

 別に原作キャラが死のうが生きようが気にしないっちゃあしないミヨシだが、だからと言って無理に殺そうとは思わない。ゆえにカクリコンには一個小隊と共に敵艦隊の足止め、ライラには防衛MS隊の排除を命じた。

 

 『それで上手くいきそうですか』

 「さぁな。でも面白いだろ?殲滅戦はよ」

 

 ミヨシは先のことは考えずにこの場でエゥーゴを殲滅しようと画策している。降下したら地上の連中に任せるが宇宙に残る連中は確実に殲滅する。その為に降下阻止作戦には間に合わないがアレキサンドリア級の『ハリオ』と旧式だがサラミスを三隻ほど向かわせている。ハリオが積んでいるMSはジムキャノンと機体性能差があるが艦対戦を想定しているのだからなんら問題は無い。それにこの敵右翼に木星帰りのパプティマス・シロッコを向かわせた。これで負けるなどありえない。しかも自身が居る事で完璧だと信じきっている。

 

 微笑を浮かべて眺めていたモニターに閃光が映し出される。ビームの光ではなくあれはMSの爆発……命が消えた光…。微笑みはそのままで操縦桿に力を込める。

 

 『敵が先手を打って来たようですが…たったの一機。近くのハイザック隊を向かわせ―』

 「止めとけ。無駄だよ」

 

 ため息混じりに告げるがそでに遅く、襲われたジムⅡ一個小隊とハイザックの一個小隊の反応が消えた。

 

 『たった一機のMSに六機が瞬殺!?本当に水色の閃光星とでも言うの?』

 「アイツの相手は俺がする。誰も近付けんじゃねぇぜ」

 『しかし…奴は普通ではありません!』

 「まるでニュータイプみてぇな台詞だな。ま、いいさ。MS隊の指揮は任せる。それと成金趣味の金色MSには手だすなよ」

 

 突っ込んで来たMSはあのイレギュラーだと確信して楽しむ為だけに迎撃に出る。ただ楽しむ為に。

 

 

 

 

 

 

 道を切り開く為に展開していたジムⅡ小隊と迎撃に来たハイザック小隊を撃破した鏡士郎は損傷はしてないだろうが一応自機のチェックを行なう。損傷は無く、エネルギー消費も抑え、各部に異常は認められなかった。

 

 「ふぅ……―ッ来た!?」

 

 感じ取った通りに回避すると感じたように銃弾が通過して行く。口径は通常のザクマシンガン同様の物だが威力は段違いであっただろう。発射した方向を睨みつけると身体はウイングガンダムプロトゼロで腕はデスティニーガンダム、エクシアの頭部と脚部を持ち、背にはABCマントを背負ったガンダムジャックと名付けられた黒いガンダムが向かってきていた。

 

 太刀を構えて突っ込んでくるがもしビームサーベルで受けてしまったらビームごと真っ二つにされてしまう。それだけの圧倒的にな差がある。距離を取りつつブルパップ・マシンガンを撃つ。回避しようとしているのだがこちらからしたら動きはまだ予測できるから対応できて直撃をしているが、機体の装甲が硬すぎてまったく効いてない。

 

 『良い腕してるなキョウシロウ!!』

 「やっぱりミヨシさんですか!!」

 

 直撃しても掠り傷さえ受けないジャックは避ける事をせずに突っ込んできて太刀を振るう。ギリギリのところでかわして頭部バルカンを擦れ違い様にコクピットにぶち込む。

 

 『かっはっ!テメェコクピットばかり狙いやがって…化けもんが!』

 「こちらの攻撃がまったく効いてない化け物機体に乗っといて何を!!」

 『違ぇよ!テメェの腕の話だよ』

 

 放たれたトライブレードを撃ち落して少しでも艦隊より距離を取るように飛ぶと思惑に気付かずに馬鹿正直について来る。

 

 『イレギュラーは己のメイン機体に合わせた肉体を持つ。アリスは狙撃能力が高く、俺は機体レベルが低い為にそこまでじゃないが刀の腕が良い。だがお前は機体を操る操縦技術に反応速度、射撃の命中率の高さとかなり高スペック。その上ニュータイプ適性まであるだろお前!贅沢すぎんだよテメェ!!』

 「そんな事言われたってさぁ!」

 『って言うかテメェの機体を出しやがれ!!』

 

 怒号を発し続けるガンダムジャックを引き付けて少しでも時間を稼ごうと戦い続ける。勝てることの無い戦いを…。


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