宇宙世紀を好きなように駆けてみようと思う!!   作:チェリオ

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第32話 「罠の中の救出作戦」

 行動不能になった多くの民間人を乗せたブライト・ノア中佐のテンプテーションを救出する為に、アーガマを中心にした艦隊はティターンズの罠と知りつつその宙域に到着した。エゥーゴの戦力はアーガマ級強襲巡洋艦『アーガマ』にサラミス改級宇宙巡洋艦『モンブラン』、カトウフリートのサラミス改級宇宙巡洋艦『ポッペンブルク』と『ニュルンベルク』の四隻でテンプテーションの向こうで潜んでいると報告を受けた艦隊より一隻有利であった。左右から三隻ずつと後方の三隻の合計9隻を除けばだが。

 

 囲まれる事を嫌うなら前方の艦隊を突破して逃げれば良い。しかし今回の作戦は救出作戦。エンジン部を被弾しているテンプテーションを戦闘中に回収しなければならない。時間のかかる任務だが時間をかければティターンズ艦隊に包囲されて袋叩きにあってしまう。この作戦の鍵は時間だ。短時間で突破しなければエゥーゴの主だったパイロットとトップのブレックス准将を失ってしまい、エゥーゴは死に体になってしまう。

 

 『全艦、艦隊戦用意!!MS隊発進急がせろ!!』

 

 ヘルケン艦長の声がコクピットに響き渡る。カミーユ・ビダンは操縦桿を握り締めて、順番が来るのをただ待つ。すでにアポリー中尉にロベルト中尉の黒いリック・ディアスはカタパルトデッキより出撃した。

 

 『エマ・シーン。ガンダムMk-Ⅱ、出ます』

 

 ティターンズのパイロットだったエマ・シーン中尉はヒルダ・ビダンを人質として作戦を行なったティターンズには戻らず、エゥーゴにMk-Ⅱごと留まったのだ。その後は30バンチ事件の映像を見て余計にティターンズに不信感を持ち、クワトロ大尉とヘルケン艦長の推薦もあってエゥーゴの一員となったのだ。

 

 『ほらカミーユ、なにしてんの!』

 「あ!すみません。カミーユ・ビダン、ガンダムMk-Ⅱ行きます」

 

 カタパルトにより加速させられたMk-Ⅱが射出される。身体にかかるGに耐えながら後ろを振り返ると胴体を主に緑色の塗装が施されたエゥーゴカラーのジムⅡにネモと呼ばれるMSが急いで発進している。同時に艦隊の砲撃が始まった。

 

 「始まった。アポリー中尉は――あそこか」

 

 相手からも撃ち返される砲撃を見つつ、アポリー中尉のリックディアスを探す。多少離れていたがすぐに見つけれれたのは運が良いのだろう。スラスターを吹かして斜め後ろに移動する。

 

 『ほお!もう編隊が組めるのか』

 「まぐれですよ」

 『この一戦でまぐれかどうか分かるさ』

 『あんまり煽てるなよアポリー。調子に乗られて早死にされたらたまったもんじゃない』

 『それはそうだな。では予定通りに行くぞ。俺とロベルトがMS隊を率いて敵MS隊の排除を行なう。カミーユとエマ中尉はテンプテーションを回収する部隊の護衛を』

 『了解』

 「了解しました」

 『死ぬんじゃないぞ。――っ散開!!』

 

 こちらを狙って放たれたメガ粒子砲を回避する為に散開すると紅色のMSが突っ込んで来た。モノアイがこちらを見つめつつ光った。直感的にスラスターを吹かして後方へ下がった。目の前を放たれたビームが通過するまで生きた心地がしなかった。

 

 「危なかった…」

 『戦場で止まっては駄目よ!』

 「は、はい!くそっ、当たれ!当たれよ!!」

 『前に出ないの!あれはライラ隊のガルバルディよ』

 「ライラ…」

 

 二機のMk-Ⅱの攻撃を回避した機体を睨みつつ、前進させるとエマ中尉の怒声で立ち止まる。ボスニア所属ガルバルディは知っていたカミーユだがパイロットの名にはピンと来なかったが、相手が只者で無い事は理解した。ビームライフルを構えて狙いをつけようとしたが、急転回して移動し始める。何事か理解できなかったエマだがガルバルディに牽制射を入れつつ移動する。

 

 『どうしたの急に!?』

 「テンプテーションに敵が取り付こうとしてます!」

 『見えるの!?』

 

 モニターで見てなくとも分かる。そんな感じがするのだ。テンプテーションにモニターで捉えるとハイザック三機がテンプテーションを盾にしつつ、回収に来ていたネモに攻撃をしていた。素早く狙いをつけて撃ったが、わずかにながら標準がずれて一機の肩を掠めた。錬度が高い奴だったのだろう。こちらをモノアイで捉える前に回避運動に入られて、二発目は完全にかわされた。

 

 三発目を放とうと構えるがネモ隊を突破した一機のジム・コマンドから目が離せなくなった。テンプテーションを盾にして展開している部隊と同じくテンプテーションを盾にする。攻撃しようとしたガルバルディだったが、テンプテーションを破壊すればこちらが負ける事を理解して手を止めた。すると横合いより別のジム・コマンドが現れて一機のコクピットを撃ち抜いた。いきなりの閃光に驚いた一機は撃ったジム・コマンドとは別方向から接近してコクピットだけを撃ち抜いた。残ったハイザックはライフルを構えるが、遅すぎた。最初に接近していた一機がもう目の前まで迫っていたのだ。射撃は間に合わないのは目に見えていた。が、ジム・コマンドはライフルではなくビームサーベルを構えていた。それならばと後方へと逃れようとする。普通なら逃れれた間合いだが逃げる速度よりも踏み込んだ速度で接近して真っ二つに切り裂いた。

 

 『こちらカトウフリートのフィーリウス・ストリーム少尉。ここは任せても宜しいか?』

 『ええ…援護感謝するわ』

 『行くぞバネッサ、ガイウス』

 

 淡々と喋ったパイロットは用は済んだと言わんばかりに部隊をつれて進路を右翼を包囲しようとしている艦隊へ向けた。

 

 一機一機が相手の注意を引いて反撃の隙さえ与えずに殲滅した彼らのコンビネーションに驚いたカミーユは戦場だと言うのを忘れて少し興奮していた。キョウシロウ大佐といいカトウフリートと言うのはどういった連中なのだろうかと本気で気になって来た。

 

 『ちょっとカミーユ!まだ戦いは終わってないわよ』

 「了解です。危ないエマ中尉!!」

 

 言われたのが早かったのが幸いしたのか動けたエマ機はライフルを失うだけで済んだ。エマ機はバルカンで、カミーユはライフルで応戦するが突如現れたガルバルディに当てる事が出来ずにいた。

 

 

 

 ルナツー駐留の巡洋艦ボスニア所属のガルバルディ隊を率いているライラ・ミラ・ライラ大尉は、なかなか落とす事の出来ないガンダムMk-Ⅱを睨みつける。

 

 一機はかなり訓練を積んだパイロットのようだがまだ何とかなる。しかし、もう一機のMk-Ⅱは気持ちが悪かった。動きは素人っぽいのに勘はかなり良い。今も完全に背後を取った筈なのにまるで見えていたかのように回避してこちらを狙う。

 

 「くっ!奴は何者だ」

 

 苦虫を潰した表情で忌々しそうに呟きながら反撃するが、やはり当たらない。一瞬接近戦に持ち込んで一気に決着をつけようとも考えたが相手は二機いるゆえに危険すぎる。そもそも時間稼ぎが作戦目的なのだ。

 

 「無理をする必要もないか」

 

 こちらが引く事を納得しなかったのか何発も撃ち続けてきたがエネルギーの無駄だと理解したのか向こうも後退を始めた。ひと息を付きつつ自分の部隊と合流する。四隻の艦隊による砲撃をボスニアを旗艦とした艦隊に向けられているが、向こうはテンプテーションを守るのと牽制の意図である為に当たっていない。艦隊付近には自分の隊のガルバルディ以外にもハイザック隊が展開していた。

 

 『大尉!?ご無事でしたか』

 「ああ、私とした事が少々迂闊だった…。状況は?」

 『状況は最悪ですね。すでにこちらのMS隊の大半を失って今は我々を含めて6機です』

 

 部隊が無事なことにほっと胸を撫で下ろしたが現状の報告に顔を歪めた。まだ戦闘が始まってからさほど時間が経ってないと言うのに自分の隊以外は壊滅状態と言う事実はあまりに衝撃的だった。しかしそれで今の配置に納得した。艦隊の援護を受けつつ敵機を遊撃するはずだったのが、艦隊付近まで後退して火力を増やしているのはそれが原因なのだろうと。エゥーゴのMS隊も迂闊に近づけずに居る。今のうちに包囲が完成すればこちらの勝利だ。

 

 「包囲の具合はどうなっている?」

 『右翼の艦隊はMS隊の攻撃を受けて足止めを。少し遅れていますが左翼は…』

 「後方のアレキサンドリアからの援軍はどうした?」

 『まだ射程圏内に到達していないと』

 

 聞こえないように舌打ちをする。こちらがティターンズじゃないからこちらに消耗させて美味しいところをだけを奪う気なのだろう。

 

 「これだからティターンズは…」

 

 そう言っても任務を全うしなければならず、近付いてこようとするジムⅡに狙いをつける。あのMk-Ⅱとは比べ物にならないほどあっけなく落ちた。

 

 今は何とか持ち堪えているがテンプテーションを回収し終えたら、突破は止むを得ないのは分かりきっている。つまり相手は早々にこちらを突破したい筈なのに悠長にギリギリ射程圏内からの撃ち合いを続けるのか?

 

 モニターで敵MSや艦隊の位置を確認しているうちにあることに気付いた。

 

 「おい、報告にあった赤いMSと水色のMSは見たか!?」

 『ハッ!自分は見ておりません』

 

 ボスニアに連絡を取ろうとする前に左翼艦隊の方で閃光が上がったのが見えた。エゥーゴのほうが上手だったかと悔やむがこちらからは何も出来ずに再び輝く閃光を見つめるのであった。




 次回は26日に投稿しようと思います。すみません…。

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