ひとつは前回の誤投稿の件について。
ふたつめは投稿が遅れた件…
三つ目は今回いつもより少ない事です。
まことすみませんでした。
グリプス・2バンチコロニー、グリプス2のティターンズ本部の一室でバスク・オム大佐は書類やコーヒーが入ったカップを気にも留めずにデスクを思いっきり殴りつけた。
モニターを注視しながら動向を随時報告していた兵士達は振り返るがすぐに手元のキーボードやモニターに目を戻す。
「いったいどういう事なのだ!!」
苦虫を潰したような渋い顔をしながら呟く。目の前の大型モニターを睨みつける。黒色MSが防衛に当たっているジムⅡが撃破されていく。見覚えは無いがドム系に類似点が見られるがカスタム機や改修機ではないだろう。
「ジオン残党には見えないねぇ。と言う事はエゥーゴですかね大佐」
「ん?シェリー少佐か。そうだろうな!クソ」
横に並んだ女性仕官に目を向けたがすぐに前に戻した。女性仕官の名はシェリー・ペイジ。元は連邦競技大会で4年連続優勝した機械体操の選手で、高い身体能力を活かしてすぐにパイロットとしての適正を、頭角を現した。が、効率を重視するあまりの独断専行、作戦無視、そして友軍を捨て駒に使ったりと問題が多い。それでもバスクの腹心でありソウジロウの直属部隊に属する程だ。
「まるで赤い彗星だ…」
「誰だ!今言ったのは!!」
ぼそっと呟かれた一言が耳に届いた。怒鳴り問うが誰も身動きすらしなかった。忌々しく睨みつけながら舌打ちをする。
「赤い機体だからと言って赤い彗星なんて事は…」
「それよりも私が気になるのはあの水色の機体です」
「あのジムか」
「多分改修機だろうけどジムであれだけの腕前となると…噂の水色の閃光星みたいですね」
その名を聞いて鳥肌が立つような感覚に襲われた。
艦橋のモニターから見ていた。たった一機の水色のザクもどきが戦艦を真っ二つにし、MS一機を相手にではなく数十機単位で撃破していき、その一機に群がるようにデラーズ・フリートの残党共が駆け抜けていく。護衛のMS隊を行動不能にされて丸裸にされた自艦に迫ってきた。モノアイで睨まれた気がした。死の覚悟すらした。
「その名を口にするな!!二度とな!!」
あの時の事を決して忘れない。奴は絶対に討ち取ってやる。歯軋りして怒りを露にするバスクを鼻で笑う。
「バスク大佐!グリプス1のゲートが破壊されました!!」
「なんだと!?警備の者はなにをしていたのだ」
「MS隊が発進できません。追撃部隊の指示は?」
「防衛部隊のほとんどが大破状態で部隊のほとんどが回収作業に…」
「大佐ご指示を―」
「騒ぐな!!」
グリプスより撤退する機影を見つめながら立ち上がる。こんな時にソウジロウが居れば何とかなったのだろうが。
現在、イレギュラーのソウジロウはジャミトフ・ハイマンに呼び出されていた。ジャミトフはバスクほど信用していない為にここ数年の作戦の失敗により自由に行動できなくなっていた。一般兵にでも任せれば良いほどの簡単な仕事を任されていたのだ。
奴が居ない代わりに奴はいろんなアドバイスを残してくれた。グリプスが襲撃される事も示唆していたが、まさかありえないと思っていても用意はさせた。
「手痛い損害を被ったがここまでは計画通りである。グリプス2機密エリアの追撃隊の発進許可を出せ!」
機密エリアには戦闘準備とMSの搭載を終えたサラミス改が六隻にアレキサンドリアが待機していた。中にはジムⅡではなくハイザックを満載してだ。パイロットも連邦軍の兵士ではなくティターンズの兵士で揃えた。シェリー少佐もそのために呼び寄せたのだ。
イレギュラーであるソウジロウの直属隊は性格や経歴を問わずにソウジロウに認められた腕前のパイロットのみ所属できる部隊である。彼からもルナツーで待ち伏せているだろう。
全ては計画通りだ。何の問題もない
「早く貴官もアレキサンドリアへと行け」
「ハッ!了解しましたバスク大佐」
部屋を出て行くシェリーを見送ったのちに受話器を取る。ソウジロウの指示で急いで呼び出さないといけない者達が居るのだ。
「繋がったか。私だ。バスク・オム大佐だ」
『大佐!?し、失礼致しました』
「挨拶はいい。最重要命令でとあるパイロット達を第十三ゲートへ向かわせよ」
『最重要命令!ハッ!受けたわまります。それでどなたを向かわせれば?』
「ジェリド・メサにカクリコン・カクーラー、エマ・シーンを急ぎ向かわせろ」
『了解いたしました』
「どんな命令よりも最優先でだぞ」
一応ファイルには目は通したが奴が選ぶほどのパイロットには思えなかった。確かに腕は良いのだろうがエースと呼べるほどではない。
「まぁ、良いわ。フン」
鼻を鳴らして背もたれに全体重を任せて、少し気を楽にする。後は成り行きを見守るだけだ。
アレキサンドリアを旗艦とした艦隊に背後を取られ、前にはソウジロウの直属隊にライラの所属する艦隊も向かって来ている。まずは突破できる筈はない。もしあるとなればそれはイレギュラーに他ならない。
鏡士郎はコロニーから離れながら振り返る。
今回の作戦は原作にあったものだ。ならばティターンズのイレギュラーも気付いて準備していると思っていたのだが、別にそれらしい反撃もなかった。
モニターに映るガンダムMk-Ⅱとリック・ディアスを見つめる。自分の背後から何かが来るのを感じて振り返ると同じくジム・コマンドの改修機が三機接近してくる。どれも基本の白ベースではなく、灰色がベースカラーとなっている。
三機は敵ではなくフィーリウス・ストリームを隊長とした部隊で、グリプス1の宇宙港ドックを破壊任務を遂行したのだ。破壊と言ってもせいぜい使用出来ないようにする程度だが。
「なにはともあれこれで……何か来る?」
『どうした?遅れているぞ』
「何か来る気がします。急ぎ撤退しましょう」
『追撃部隊にしては早すぎるぞ』
「読まれていたのかも…兎も角、急ぎます」
アーガマと自分の艦と合流すべく急ぐ。背後より迫る艦隊から逃げるように…。
知らぬうちに囲まれている鏡士郎達はこれからの事を話し合う。が、バスクの作戦は始まっていた。
次回 『カミーユと鏡士郎』