宇宙世紀を好きなように駆けてみようと思う!!   作:チェリオ

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第27話 『ガンダム強奪作戦』

 無音と底の見えない深淵なる闇に覆われた宇宙空間…。 

 

 宇宙世紀となり宇宙には人類の第二の故郷となるスペースコロニーが多く建設されていった。中には住処ではなく兵器と使用されたり、軍事拠点として使用された物も多くある。

 

 一年戦争で活躍したホワイトベースがガンダムを積み込む為に入港したサイド7は、ジオンのエースパイロットである『赤い彗星』から受けた傷痕を癒し、主に軍事関係者が住まうコロニーになっていた。名前はサイド7の居住用コロニー・グリーンノア1となっていたが…。

 

 そんなコロニーに三機のMSが取り付いていた。ドム系をベースに開発されたエゥーゴの新型MSであるリック・ディアス二機と水色に塗られたジム・コマンドがコードの先に取り付けられたカメラを設置して内部の様子を窺っていた。現在グリプス1ではティターンズの新型ガンダムの飛行訓練を行なっていた。

 

 水色のジム・コマンドに搭乗している加東 鏡士郎は唸りつつも作業に集中する。ガンダムが初めて動いたサイド7に行く事も『機動戦士Zガンダム』の第一話シーンに立ち会える事も飛び跳ねるぐらい嬉しい。が、ひとつだけ残念な事がある。それは赤い服を着たグラサンを殴れない事だ。

 

 『もしエゥーゴの誰かを殴ったと報告が来れば、水増ししてアクシズに報告しますので』

 

 こんな脅しをイリアにかけられ手が出せなくなったのだ。ハマーンともミネバとも仲良く居たいと望んでいるのが大きい。ゆえに今は殴らない。諦めたわけでもない。とりあえず今は目の前の仕事をこなすのみだ。

 

 …あ!Mk-Ⅱに赤いのが捕捉されてる。バルカン当たらないかなぁ…

 

 鏡士郎の期待を裏切るように避けきった赤いパイロットスーツを着たクワトロ・バジーナ大尉はコロニー外延部へと続く通路へと入って行った。追えない事を理解した黒いガンダム、ガンダムMk-Ⅱ(ティターンズカラー)は来た方向へと引き返し抵抗飛行をして建物へと突っ込んだ。

 

 「ロベルト中尉」

 『どうしました大佐?何かありましたか?』

 「コロニー内の建物に黒いの突っ込みましたよ」

 『うわぁ…新型のMSで何をやってるんだか…』

 『それだけ相手に腕がないと思えば楽じゃないか』

 

 ははは、と軽く笑いながら返してくれた二人だが本気でそう思っている訳ではない。確かに一対一であろうと一対三であろうとアレぐらいの技量の持ち主なら圧倒できるだけの実力はある。が、実戦の経験も積んでない素人同然の相手は何を仕出かすか分からないという不安要素を作り出す。

 

 一年戦争でジャブローに潜入した闇夜のフェンリル隊は狭い通路で二列に密着して並ぶ四機のジムと対峙した事がある。常識的に考えてありえないような行動だ。案の定彼らはバズーカ一発で前の二機が倒れて後ろの二機を押し倒す形で行動不能になった。こんな都合のいい物もあれば、コロニー内でザクの動力炉をビームサーベルでたたっ斬って大爆発を起こした事例もある。

 

 『どうだアポリー。ロベルト』

 

 建物に突っ込んだガンダムを観察していると赤く塗装したリック・ディアスが接近して来た。殴りたい気持ちを押さえ込んで平常心を保つ。

 

 『ガンダムを発見しました。よく動かせないようですが』

 『だろうな』

 『同じガンダムタイプがもう一機確認できました』

 『そうか…では手筈通りで行こう。宜しいですね大佐?』

 「構いません。頼みます」

 

 アポリー中尉のリック・ディアスの目が光を放ち、コロニーにクレイ・バズーカを向ける。勿論居住スペースなんかではなくミラー部分をだ。弾頭が発射されミラーにMSが通れるだけのスペースが出来上がる。

 

 『行くぞアポリー』

 『ハッ!お供します大尉』

 

 赤いリック・ディアスとアポリー中尉のリック・ディアスが、墜落したガンダムMk-Ⅱの方へと向かって飛んで行く。

 

 「ロベルト中尉。援護頼みます!」

 『お任せを!!』

 

 対して鏡士郎とロベルト中尉のリック・ディアスは市街地近くへ向かって飛んで行く。市街地には多くの軍事関係者の住宅が存在する。そこにMSが現れれば防衛の為に多くのMSが割かれるだろう。ようは陽動である。市街地近くに降りた二機は当てないように基地の方へと発砲する。今頃アラームを鳴らして急ぎMS部隊を発進させているだろう。

 

 「―ッ!!思ったより早いですね」

 『六…いや、八機は居ますね』

 

 基地の方からジムⅡがこちらに向かって来ているのが見えた。敵さんが優秀なのかたまたまなのかは分からないが展開が早い。が、それだけだ。数が多いから二手に別けて包囲・殲滅などの手段を行なわずただ突っ込んできている。

 

 「なるべくコロニーへの被害は抑えたいですね」

 『出来るなら…ですが』

 

 戦場では絶対などありえない。素人でもベテランを倒す事だって起こりえるのだから。ア・バオア・クーで出撃したガトーのゲルググが出撃してすぐ腕をなくしたように。

 

 スラスターを噴かして突っ込む。後ろからリック・ディアスがついて来るが追い抜く事はなかった。鏡士郎が乗っているジム・コマンドはただのジム・コマンドではない。中身はジオン式に改修され、足には高機動型のブースターにショルダーをケンプファーの物と交換してリック・ディアスにも劣らない速度を得ているのだ。

 

 そんな高機動型ジム・コマンドに対してビームが放たれる。左右に機体を動かして最小限の動きでかわして行くのだが、その表情は驚きのものであった。

 

 「自らのコロニー内でビーム兵器を使うの!?」

 

 敵の技量より自らのコロニーで、しかも居住区でビーム兵器をなんの躊躇いもなく使用するなど正気の沙汰ではない。これは急いでかたをつける必要がある。ブルパップ型マシンガンを三発ほど放つとすかさず銃口をずらしてまた三発ほど放つ。ビームライフルを掴んでいた右手首を打ち抜かれたジムⅡは、反応する事無くそのまま頭部に弾丸を撃ち込まれて停止、背中から倒れて動かなくなった。

 

 少しでもコロニーと居住区への被害を減らすために敵機を行動不能にする戦法をとる。一方でロベルト中尉はクレイ・バズーカで敵機を爆発させていく。だからといって戦い方を強制する事はない。下手にするとかえって危険に晒す事があるがゆえに。

 

 次々と行動不能にしていくが増援部隊が殺到する。クワトロ大尉達よりこちらが危険視されているようだ。陽動としては良いのだが…。

 

 トリガーを引いたが予定より発射された弾丸が少ない事に焦る。

 

 「弾切れぇ!?」

 

 それに気付いた一機が斬りかかって来たが間合いが取れてなく回避は余裕だった。千載一遇のチャンスを逃したジムⅡは通り様に振り抜かれたビームサーベルにより両足を切断された。斬り終わると同時にサーベルをしまって予備のマガジンと空のマガジンを交換する。

 

 「こんな戦いが出来るのはキラ様とフリーダムだけだよ。ほんとにもう!!」

 

 半笑いで呟きながらきっちりとジムⅡの頭部に弾丸を撃ち込んでいく。アムロみたく『たかがメインカメラがやられただけだ!!』と言って戦おうとする者は居らず、すぐにMSから降りて逃げ去っている。

 

 爆音ではなく建物を崩すような破砕音に気付き振り向くとリック・ディアスが尻餅をついて民家の半分を潰してしまっていた。その正面には二機の銃口が…。

 

 「こなくそおおお!!」

 

 機体の向きが反対方向であったが各部に増設したスラスターを噴かして姿勢変更してビームライフルのみを撃ち抜く。主としていた攻撃手段を失った二機は途惑って固まる。その隙を見逃すほどロベルト中尉は甘くはない。素早く背中からビームピストルを取ると容赦なくコクピットへと放つ。上半身を爆発させたジムⅡを蹴飛ばして、リック・ディアスへと手を差し伸べる。

 

 「大丈夫ですか!?」

 『ああ…すまない。いや、助かりました大佐』

 「無事なようで何よりです」

 

 付近の敵機が粗方片付いた事を確認しつつ、手を掴んだリック・ディアスを立たせようと引っ張る。立ち上がったところで異常がないか外部から確認しようとした時、コロニーが揺れた。

 

 『…時間切れですか』

 「これ以上は不味いですね。撤退しましょう」

 『しかしクワトロ大尉がまだ』

 「来ましたよ」

 

 モニターでガンダムMk-Ⅱを支えるリック・ディアスとその後ろを飛んでいるもう一機のガンダムMk-Ⅱと赤いリック・ディアスを確認した。作戦成功を喜びつつ合流する為にスラスターを吹かす。

 

 「――っ!?………これが…カミーユ・ビダン」

 

 クワトロ大尉と並んでいるガンダムMk-Ⅱのパイロットと惹かれ合うような感覚を得てこれがニュータイプ同士の共感感覚かと感じる。

 

 出切れば赤いのとはしたくないがと付け加えておこうと鏡士郎は心の中で呟いた。




 ガンダムMk-Ⅱ強奪を成功させた鏡士郎達。しかしティターンズも黙ってはいない。

 次回『予期されていた襲撃』

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