宇宙世紀を好きなように駆けてみようと思う!!   作:チェリオ

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 投稿が二週間も遅れてしまい申し訳ない。どうも忙しく過ぎてこちらまで手が回りませんでした…
 次回は来週中に書く……予定


第16話 『月からの脱出 後編』

 月面都市宇宙港

 連邦軍の戦艦が入港しているドックがジオンに制圧されてから30分が経とうとしていた。すでに物資と人員の積み込みは終了しており後は脱出のみとなった。

 ドック出入り口には鏡士郎のアクトザクを始め、リリア達、元グラナダ特戦隊が待機していた。

 

 「状況はどうなっていますか?」

 『現在月面基地よりMS隊8機が発進しておりますがこちらは問題ありません』

 「僕らは問題ありですね…突破しましょうか。リリアさんは僕と一緒に来てください。ユイマンさんとギュスターさんは艦を護衛しつつ出来れば援護をお願いします」

 「「「了解」」」

 

 ドックの入り口を開いて行く中、自身の機体であるアクトザクに違和感を覚えた。頭を捻りながら考えていると手にしているザクバズーカに目が行った。射撃武装として渡されたザクバズーカなのだが漫画で装備したところを見てないからか違和感が半端無い。

 振り返った先には同じくザクバスーカを装備しているリリアのゲルググが映る。

  

 「リリアさんこれを」

 「え…あ、は…い」

 

 アクトザクがゲルググにザクバズーカを渡したそれだけだった。

 『俺のバズをやる。敵の艦を沈めて来い!!貴様ならやれるな!!リリア・フローベール』

 風景が変わる。宇宙空間で目の前のリック・ドムⅡが自身のバズーカを渡してくる。

 

 「…隊長」

 「へ?どうしましたリリアさん」

 

 呟くと風景はドック内に戻っており目の前には先ほどと変わらぬアクトザクが立っていた。

 

 「…いえ、なんでもありません」

 

 なんであんな子供と隊長が重なったのだろうと疑問を抱くが機体が隊長が使っていたアクトザクだからと結論付ける。

 ドック内から外へと身体の向きを変えながら二本のヒートホークを両手に持ちモノアイだけをリリアへと向ける。

 

 「では、行きます!!」

 

 リリアが鏡士郎とマレットの幻影が重なっている事など知るよしのない鏡士郎は最高速度でドックから飛び出して行った。行き成りすぎて唖然としていると「何をしている!!」とユイマンに言われて我に返って後を追う。

 ドックへ向かって月面基地より発進した黄色い鳥らしきマークを所々に描いた黒いジムカスタム八機がかなりの速度で接近している。

 月面基地には他にも多くのMSがいるはずなのに八機程度なのには疑問を覚えたが機体を見て理解した。

 ジオン残党軍掃討部隊『ティターンズ』の主力MSであるジムクゥエル。同じ階級でも連邦軍とは二階級上とされて優遇される『ティターンズ』はエリート意識が高く、連邦軍を見下す傾向があるのを原作で知っていた。

 

 「狩りか何かだと思ってんのかなぁ…ま、良っか。では、エントリイイイイイイ!!」

 

 雄叫びを上げながら馬鹿正直に正面より突っ込んでくるアクトザクにジムクゥエルのビームライフルが集中する。すでに馴れて鼻歌交じりに回避しつつ至近距離へと向かってただ突き進む。

 モニターの端にスラスターの光が目に入るが勘で敵ではないと理解出来た。

 

 『援護します』

 

 無線から声が聞こえたと同時に先のスラスターの光より数発のバズーカの弾頭が飛んで行く。アクトザクに注意が行き過ぎていて誰一人リリアの攻撃には気付いていない様だった。回避もする事無く2機が直撃を受けて爆発する。

 

 「さすがですリリアさん。僕も!!」

 

 突如起こった爆発で驚きで陣形を崩し、注意を削がれた一機のコクピットをヒートホークで切り裂く。近くに居たもう一機の頭部へ一撃を喰らわせる。注意がアクトザクへ戻り攻撃が集中するが頭部だけを破壊したジムクゥエルを盾にして被弾を防いだ。その間にリリアがもう一機を撃破する。

 残り三機になったが彼らは撤退する事無く突っ込んできた。対象はアクトザクでもリリアのゲルググでもなくドックから出航したサラミス改であった。

 連邦軍やティターンズ的には全員を捕まえるか撃破するのが一番良い結果だろうが今回の敵には無理だと判断したのだ。敵機は凄腕のパイロットで旧式MSで新型MSを軽く捻れるほどの技量を持っている。こちらは難しくともMS三機もあれば戦艦は落とせる。敵の逃亡を許しただけでなく地球軍所属の艦艇が敵に盗まれるなんてことはあってはならない。ついでに敵MS部隊の足を無くせればもっと良かったのだろうが最初にジオン艦艇より攻撃が加えられたことからまだこの宙域に潜んでいるだろう事からそこまでは無理だ。

 

 「敵に背中を向けるとは武人として恥を知れ!!」

 

 アクトザクを無視してサラミスへと向かう事を良しとすることもなく振り返り様に投げつけられたヒートホークが一機一本ずつバックパック突き刺さる。刺さった所から火花を散らしてバックパックが爆発し、発生した光に包まれ機体までも巻き込んで大爆発を引き起こした。

 コクピット内で一息付きつつ微笑む。

 

 「ガトー少佐ならそう言うでしょうかね?」

 『そんな事言っている場合じゃないでしょう!!』

 「はにゃ!?」

 『早く追わないと…』

 「大丈夫ですよ。ほら」

 

 鏡士郎が言ったとおりにサラミスに向かって行ったMSは護衛についていたユイマンとギュスターによって撃破された。

 それより問題だったのは鏡士郎とリリアの方だった。ティターンズ機が全滅したことで月面基地よりMS隊が発進した。

 

 「さて、逃げますか」

 『ええ』

 

 撤退しようとスラスターを吹かそうとペダルを踏み込みサラミスへと戻ろうとする。が、後ろの方から鈍い音が響くと同時に計器に異常を示す警告が点滅していた。どうやらバックパックが止まったらしい。サラミスまでは距離があり、戻るには時間がかかり月面基地を出たMS隊を連れて行くことになってしまう。

 

 『どうしましたか大佐?』

 「バックパックに不調が…」

 『な!?すぐにこちらへ』

 

 ゲルググの手をコクピットへと近づけてくれがコクピットから出ることは無かった。いや、出れなかったが正しい。

 

 「リリアさんはサラミスへ。僕はあいつらを撃退してから追いかけます」

 『武装も無しでは無理です。急いでください!!』

 「…ごめんなさい」

 『えーと…』

 「パイロットスーツ着てないんです…」

 『何で着なかったんですか!?』

 「背中の阿頼耶識が普通のノーマルスーツじゃあ邪魔になって…」

 

 泣きそうなのを堪えて答える。状況は最悪の一言だった。何とか離脱しようとアクトザクを引っ張って移動を開始する。

 

 「無理ですって。一機を引っ張ってだったら追いつかれますよ!?」

 

 無言で引っ張られ続け徐々にサラミスに近付くがそれよりも相手の足の方が速い。早ければ30秒もあれば有効射程距離に入ってしまう。無理にでも振り払おうとした時叫び声が聞こえた。

 

 『うおおおおおお!!』

 

 叫び声と共にビームが連邦軍MSに直撃して行く。ビームが飛んできた方向を見ると青いゲルググとケンプファーが突っ込んできた。

 ケンプファーはゲルググにアクトザクが引っ張られている事から理解してゲルググ同様引っ張って移動させる。

 

 「イリアちゃん!?助かったよぉおおお(泣き」

 『お礼は後で、今はブルーメンへ』

 

 どうやら二人はザンジバル級『ブルーメン』と共に月面近くに潜んでいたらしい。その方向に押し出されるとイリアはガトーの援護の為に戻って行く。何とか作戦が成功したことにほっと胸を撫で下ろし。無事に敵機を撃破して帰ってきたガトーとイリアを出迎えた。ひとサイズ大き目のノーマルスーツを着て…

 

 

 

 月面戦闘宙域を離脱しようとする鏡士郎達を連邦軍は易々と見逃す気はなかった。

 月面上に残存MSの中で長距離攻撃や中距離攻撃を可能とするジムズナイパーⅡ三機にジムキャノンⅡ四機が護衛のジム改六機と共に展開していた。狙いはサラミス改級宇宙巡洋艦。今からではMSの足では追いつけないので離脱する前に撃ち落せとの命令を受けた部隊指揮をとっている仕官は苦虫を潰したような顔をしていた。

 

 「射程ギリで二隻とも撃ち落せとか無茶言いやがって…」

 『隊長、射撃許可を』

 「ああ…目標、敵に鹵獲されたサラミス級。先頭を行く奴を集中砲火する」

 

 指示された目標へとスナイパーライフルとキャノンが向けられる。あの艦は弾薬・燃料を補給した後に奪われたのだから弾薬庫か燃料タンクに一発でも当たってくれれば大爆発を起こす。それで後続艦が足を止めれば二隻目も落とせるだろう。

 

 「まぁ…そう上手くはいかんだろうがな。全機、攻撃かいs…」

 

 最後まで言う前に距離を置いて横に並んでいたジムスナイパーⅡから爆発が起こった。

 

 「―ッ!?散開しろ!!」

 

 生死を確認する暇もなく命じたがモニターに爆発の光が映し出される。が、MSの爆発にしては小さ過ぎる気がしたがそれどころではなかった。

 

 「何処からの攻撃だ!?」

 『どうすれば宜しいのですか隊長!!』

 「とりあえず回避を…馬鹿!!足を止めるな!!」

 

 報告しようとしたジム改の頭部のみが吹き飛ばされた。おかげで敵の射線が分かったのは幸いとでも言えば良いのだろうか。スナイパーライフルのスコープからの映像で射線の先に居る機体が判明した。

 ジオンMSのゲルググを指揮官専用の高性能カスタムして一年戦争時最高クラスの性能を持つ機体であるゲルググJ型。しかしデータと違って両肩に丸みを帯びた大型スラスターとバックパックからも二つの大型スラスターが取り付けられていた。

 

 全身をシルバーメタルで塗装しており、周りの月面表面を反射していて擬態能力は高いと見れるが射撃を行なって移動しない事で位置を知らせてしまっていた。

 ……いや、分かっても手出しは出来なかったのだが。

 

 『ヤロウ!!』

 「撃つな!!撃つんじゃない!!」

 『何故ですか!?』

 「奴が居るのはアナハイムの敷地内だ!!」

 

 もし一発でもアナハイムに直撃すれば連邦軍との間で問題となるだろう。そうでなくてもアナハイムにはあの人が…

 ゲルググJのスナイパーライフルとスコープが重なった。

 不味いと察して急加速で回避する。相手の射線を確める余裕もなく、ただひたすらに急加速で発生したGに耐える。放たれたビームが近付いてくる。機体には当たらないとほっとしたのも束の間でコクピット内は爆発の光で照らされた。アラームが鳴り響き装備していたスナイパーライフルが爆散していた事に気づく。

 まだ戦闘可能だったMSに目をやるとその全てが武装や頭部、肩を撃ち抜かれていた。

 

 「ありえない…ありえないだろうこんな事…」

 

 月面アナハイム工場敷地内から現宙域はどう考えてもあのスナイパーライフルでは射程圏外のはずだ。ゲルググJは

高い射撃精度を誇っているが狙撃に特化している訳でもない。

 この距離でピンポイトを撃ち抜いてMSを無力化するなど人間業ではない。

 考えを巡らしていると背筋にぞくりと凍りつくような感覚が訪れた。

 

 

 

 月面都市から離れた月面にはアナハイムの工場の一部と実験場を行う為の施設が並んでいる。敷地内で大きくスペースをとっている実験場に銀色一色のゲルググJがスナイパーライフルを構えながら宇宙を見上げていた。

 ベースはゲルググJ型だが腕とバックパックはゲルググ本来の物ではなかった。肩から腕パーツはガーベラ・テトラでバックパックはゼフィランサスフルバーニアンの物となっている。

 

 「はふ~」

 

 おかっぱ頭の少女は身体中の空気を吐き出す勢いで空気を吐き出すと脱力感でぐったりとする。ヘルメットのバイザーを上げて座席の後ろに置いといたジュースの入ったボトルへと手を伸ばす。

 

 「はぁ…緊張したぁ」

 『終わったかしらアリスちゃん』

 「ひぅ!?」

 

 急に声をかけられた事で驚き奇声を上げ、落としそうになったボトルを何とキャッチして安心する。

 

 「きゅ、急に声をかけないで下さいよぉ…」

 『まったく…いつになったら無線にもなれてくれるのかな?まぁ、それは置いといて良くやったわね』

 「は、はい」

 『連邦軍からは何をやっとるかって抗議の連絡があったらしいけどね』

 「ふぇええ!?待って下さいよ!私、スナイパーライフルのテストで目標である機体を無力化しろってブリーフィングで…」

 『そんなこと言ったかしら?』

 「ナオミさん!?」

 

 涙目で抗議の視線をモミターに映るナオミ・ウミゾラに向けるがクスクスと笑われるだけで流されてしまった。

 

 『大丈夫よ。私が少し話したら黙ったから』

 「なんて言って脅したんですかぁ」

 『脅したなんて人聞きの悪い。私はただそこで戦闘すると射線上にあるアナハイムの敷地に向こうの攻撃が直撃したらどう責任取るの?と、連邦の司令官さんに言っただけ』

 「本当にそれだけですか?」

 『あとは…そうね、『ウィルオーウィプスと戦争でもしますか?』ぐらいね』

 「脅してるじゃないですかぁ!!」

 

 いつもの事だけどどうしてこの人は…いや、考えるのは止めよう。考えたところでこの人は自分の思うがままにしか動かないだろう。

 ため息を付きつつアリスは『ウィルオーウィプス』の戦艦が待機しているドックへと向かってゲルググのスラスターを吹かし始めた。




 何とか無事に脱出した鏡士郎一行は茨の園に到着しアクシズへ…連絡を…

 次回『茨の園よりアクシズへ』

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