紅き外套 オラリオへ行く   作:クグイ

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すみませんリアルが少し多忙で遅れましたクグイです。ちょっと急いで作ったためちょっと変な感じしますがどうぞよろしくお願いします。それではどうぞ!


ダンジョンと白髪の少年

風によってなびく白髪が二つ、それと多数の黒髪が町外れの平地で動く。

 

「僕!ベル・クラネルと言います!タケミカヅチファミリアにお願いがあって来ました!」

 

少し緊張気味で、うわずった声で話すベル少年の言葉をちょっとした自己紹介のあとシロウたちは話を聞いていた。現在はファミリア主神であるタケミカヅチが対応している。

 

「それでクラネル君。用とは?」

 

「はい!急なお話なのですが、僕をファミリアに入れてくれませんか?」

 

やはりか……とタケミカヅチは苦笑する。初見で元気はあるが、覇気がない姿にファミリアの名が書かれたギルドの書類を見れば想像は容易い。

 

「すまないが、君をこのファミリアに入れることはできない」

 

そこで、ベルは暗く俯向く。その姿を見てタケミカヅチは罪悪感に襲われるが、理由をちゃんと言わねばならない。

 

「私のファミリアは小規模でね。人数も少なく、日々入ってくる資金も少ないが故に生活も安定していない。今新しく入れるとなると少々厳しいものがある」

 

これは純粋に、タイミングの問題であった。もし士郎がもう少し遅くくればベル少年はタケミカヅチファミリアに入っていたかもしれない。

 

「もう少し待ってていてくれれば、君を入れることは問題ない。歓迎するくらいだが、君はファミリアを探しているところを見ると、今すぐに冒険者になりたいんだろう?」

「はい」

 

「それならば、私の知り合いがちょうど眷属を探しているらしいんだ。もしそこで良かったら、私が紹介してあげよう」

 

本当ですか⁉︎とベルは歓喜の声を上げる。

そこで一旦話を切り、桜花に話しかける。

 

「私は一度出かけてくる。あとは頼むぞ」

 

桜花は頷き、それを見たタケミカヅチは満足そうな顔をしてベルと2人で外の方に出て行った。

 

 

 

 

 

 

数日後、士郎は休日日にダンジョンに潜るより前に寄るところがあった。ギルドとヘファイストスファミリアの商店にだ。先にギルドではエイナにモンスターやダンジョン関連の著書や図鑑などを拝借し、勉強していたものを返すために。勿論冒険者登録はとうに済ましてある。

 

そしてヘファイストスファミリアに関しては言わずもがな、武器探しである。バベルと呼ばれるそれなりに高いビルのような塔に構えており、階層が上がるごとに武器の性能や値段が上がる。跳ね上がるのだが、士郎は相応の資金を持ち合わせていない。

 

現在資金は5万ヴァリスはある。元々防具は買う気は無いので、純粋に武器を探す。8階には成り立ての鍛冶職人が作ったものが大多数ではあるのだが、中にはなぜこんなとこに置いてあるのか不思議でしか無い掘り出し物が置いてあることを聞いた士郎はすぐにそこに行こうと決めた。謎の主婦力が働いたのかも知れない。

 

そんなことはともかく、現在はその8階にきて、武器を探している最中である。やはり拙いものが多く、士郎の実力に見合ったものが無いに等しい。スキルというか、魔力で強化すれば幾分かマシにはなるだろうが、やはり元々の性能はできる限り高い方がいいのは確かだ。

 

数分、無心にひたすらに探していると、ふと目に止まったものがあった。

それはもはや運命力と言ってもいいかも知れない。性能は幾分か落ちてはいるが、桜花と戦った時に使ったあの宝具。干渉・莫耶そっくりな双剣が。ふと手に持ってみると、重さもリーチもほぼほぼ変わらず、手に馴染むような感覚が起こる。

コレしかないと士郎は確信して、値札を見てみると、それは安い値段と、意味のわからないネーミングセンスをした名称札が付いていた

 

【30.000ヴァリス・ぴょん吉ダブル】

 

数瞬、買うかちょっと迷ってしまったネーミングだが、必要なのは性能であると割り切って購入を確定。どうせならと辺りを見渡し、弓市場を探す。

 

値段的には一万ヴァリスしか使えない。矢を買わなければならないだろうし、砥石やらポーションと呼ばれる回復薬も準備したいために。

またもや探していると、全身赤で統一された丈夫な弓を発見。矢を30本と矢筒をセットで12.000ヴァリス。その二つをレジに持って行って購入。ホクホクした買い物であった。

 

ついでなら上階層の剣でも見て行くかとエレベーターもどきに乗って最上階一歩手前のところに降りて流し見していく。もどきというのはモンスターが落とす魔石の中の成分を元の世界でいう電気の役割を果たしているためと、まぁ時代的な意味で安定感が少ないというだけであるが。

 

上階層の武器屋は流石という値段である。先程の武器たちの値段の桁が一つ違う。そして武器としての存在感が。中には魔剣と呼ばれる存在を知った士郎は是非見たいと思っていた。

適当な店の物品を見て行くごとに刀剣類をストックを増やしていく士郎。そこで一つ気づいてしまったことがあった。解析が出来ない武器があるということに。

 

正確には完璧な投影が出来ないというだけなのかも知れないが。ステイタスにはレベルが上がるにつれ発展アビリティというものがあり、その中に[鍛冶]というスキルが存在する。純粋な武器の効果上昇と、武器に新たな能力を付与することが出来る訳なのだが、その中に魔剣や不壊属性と呼ばれるもの以外は問題はなかった。おそらく神聖力が強いステイタスの補正で作られた武器はあの英雄王のような武器と同じように投影は難しいらしい。つまり不壊属性の武器のような高級品は、切れ味や見た目はともかく肝心の不壊属性自体を用意することが出来ないということが発見された。

 

かれこれ30分経って今は2時。昼ご飯は出掛ける前に済ましていたので、さてダンジョンに向かってみようと足を傾けた時、ふと目に映るものがあった。ショーウインドウにへばりつく白髪の少年を。目を輝かせてみているそれは本当にトランペットを見る少年のようで士郎は思わず笑ってしまう。

その笑い声に気づいた少年は恥ずかしそうに後ろを向きながら話しかける。

 

「あっ、シロウさん……でしたよね?お久しぶりです」

 

「久方ぶりだなクラネル。それで、君は何をしていたのかね?」

 

「アハハハハ。いや〜、いつか手に持ってほしい武器があるとついテンションが上がっちゃいまして……。シロウさんは何してるんですか?」

 

それとベルでいいですよと、ベルはシロウの姿を見ながら聞く。

 

「私は武器を買いにな。今からダンジョンに行くところだ」

 

「そうなんですか!?じゃあ僕もついっていってもいいですか!?」

構わないぞ、とシロウは返事をする。やったーと欲しいものを買ってもらった子供のように無邪気にはしゃぐベルと一緒にダンジョンに向かうのであった。

 

 

 

 

「フッ!」

 

意気込む気合いと覇気が辺りを揺らす。前方にはコボルトと呼ばれる犬頭の人型モンスターと2人は対峙。命のやり取りを行っていた。といってももはやただの蹂躙劇であったが。目の前に現れるモンスターをシロウがすぐに反応して一撃を入れる。瞬間にモンスターは息絶え霧となり、魔石を落とす。ベルからすれば同じレベル1のはずなのに切り結ぶ瞬間が見えない。ちょっと疑いを持ち始めたベルであるがそこまで人を疑う性格でもないためにすぐにその考えを捨てた。それがいいところであり、悪いところであるのだが。

 

一方ベルはというと、師事を受けてないが故にほぼ独学といったものの中、奮闘していた。軽装や短刀のお陰で身軽なため、ステイタスは速さ中心の手数派である。ゴブリンの殴る攻撃を間一髪で避け、相手が傾いたところを逃さず胸にナイフを突き立てる。気味が悪い雄叫びを叫びながらゴブリンは徐々に息絶えていき、霧となる。

 

現在3階層に位置する場所で2人は戦いを終わらせ、探索している。ダンジョンの道筋は士郎は前日までの予習で、ベルは一度や2度入ったがための経験で進んでいる。適当な雑談を合わせながら2人は油断せず進む。

 

不意に今までとは比べ物にならないほどの雰囲気が迫ってくるのを感じた。4階層に続くための階段の方からだ。ダン!だん!ダン!とベルの心を暗くし、恐怖させる足音。

身構える士郎と逃げ出す準備のベル。そして差し掛かる壁の向こう側からーーー牛人二体が獰猛に走ってきた。




さあ大ピンチ!ということで今回は終了させて頂きます。それと次回は基本タケミカヅチファミリア回。命たちの回の予定です

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