黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)と共に異世界へ   作:ヴィヴィオ

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第40話

 

 

 

 ラングハイム皇国王城にある式典などが行われるホールに俺は居る。隣には俺と同じく軍服を着たエレオノーレが立っている。他には豪華な衣装に身を包んだ貴族達や、鎧を着た騎士達だ。そのような中なので明らかに俺達は浮いている。ドミニクも出席している。貴族は全員出席させられる。来られない場合は代理が特別の場合のみ許可されている。

 

「シルヴィオ・ジ・ラングハイム皇王陛下、ご入来!」

 

 銅鑼が鳴り響き、壇上の左右にある大きな門が開いて一人の年老いた皇王が入ってくる。その後ろからは王族の者達が付いてきている。その中にはルドルフやシエルも居る。

 皇王が壇上の真ん中に立ち、その背後に王族の皇子や姫が並んでいく。

 

「此度の戦により、古き時代より我等が宿敵であるベルニエ王国を滅ぼせた事を嬉しく思う。よくやった。ながったるい話は抜きにする。併合にはまだいくばくかの時間があろうからな。おい」

「はっ。これより此度の戦での功労者を発表する」

「お待ちください」

「なんでしょうか、エアハルト殿下」

「消滅した砦の件について、シエルに聞きたいのです」

「陛下」

「よい。答えてやれ」

「その……別の人にお願いします……あの、来てください」

 

 まあ、彼女には何があったかはわからないだろう。とりあえず、呼ばれたので出て行く。ドミニクは真っ青だ。下手をすれば一家断絶とかもあり得るのだからな。

 

「お前は……」

「コルネリウス・リーゼンフェルト男爵です。此度、シエル皇女殿下の配下としてお仕えさせていただきました」

「貴様が……」

「さて、此度の砦の件との事ですが、いたって簡単です。増援要請が送られて来たのでは私の配下である魔導師二名を派遣しました」

 

 魔導士という事で回りがざわついていく。魔法を使う者のランクは基本的に魔術師、魔法師、魔導師となる。それぞれ初級、中級、上級、戦略級とある。一概にはいえないが魔導師の戦略級が一番強いという事になる。今回は砦の破壊から魔導師の戦略級が関わっている事になる。アリエッタの破壊力だけなら、戦略級といえる。むろん、隣にいるエレオノーレもだ。戦略級はぶっちゃければワンマンアミーと考えればいい。文字通り一騎当千という連中の事だ。

 

「私の所には来なかったぞ!」

「エアハルト殿下が布陣している陣地に向かった所、陣にすら入れてもらえず門前払いを受けたそうです。ましてや捕らえられそうになったとの事でした」

「嘘を申すな!」

「事実です。そして、二人は勅令でもあるのでそのまま帰るのはまずいので、邪魔になっている砦を消し飛ばして援軍としての仕事を果たしたという事です。陛下、問題ありますでしょうか?」

「あるはずがなかろう。援軍としての役目は見事果たしておる。後程、褒美を取らす」

「ありがたき幸せ」

 

 後は下がればいい。こちらを睨んでいる連中は無視する。

 

「では、続きです」

 

 それから、様々な者達が褒章を受け取っていく。基本的に切り取った領地の統治権を認めたり、飛び地になる場合の領地を入れ替えたりだ。それと元ベルニエ王国の国民を奴隷とする許可だ。まあ、こちらは事後承諾なのだが。このような時代の敗戦国の扱いなど植民地か奴隷かしかない。領主によっては民にするのだろうが、基本的に反乱など起こされたらたまらないので世代を超えて帰属するまでは奴隷にされる事がほとんどだ。今回の場合は長年争っていたのだから、確実に奴隷とする。さもなければ反乱が起こるのは目に見えているからな。普通なら。

 

「コルネリウス・リーゼンフェルト」

「はっ」

 

 呼ばれたので前に出る。

 

「ベルニエ王国水軍の撃破及び軍船の捕縛。軍港及び港とその周辺地域一帯の制圧を称え……伯爵とする。また、我が国における船舶の扱い、製造の全権を……認める」

「馬鹿なっ!?」

「ありえぬっ!」

「なにかの間違いだろう!」

 

 王族や他の貴族が騒いでいるが、当然だろう。何せ一番の旨味が全て掻っ攫われたのだから。国内の流通を牛耳る事は難しいだろうが、船による大量輸送で経済を牛耳る事は出来る。

 

「静まれ。続きを」

「はっ。ただし、その代わりとしてラングハイム皇国の水軍としての役割を全うする事が条件である。これにともない、水軍を組織し、その長として元帥の位を授ける」

 

 現在、ラングハイム皇国には陸軍の元帥が居るので、完全に陸と海とで別系統となる。

 

「海や川における戦時に軍事物資の輸送も担当する為、各領地への立ち入りを川とその周辺にのみ領主の許可を必要ないものとする」

 

 当然、反発は起こるが、陛下の一言で黙るしかない。これで新しくなった元ベルニエ王国の領地では特に活躍できる。なんせ、あちらは大きな川が沢山あるのだから。

 

 

 

 功労者の発表と褒美の授与が終わり、ドミニクは急いで帰っていった。俺はルドルフとシエルと個室で話す。

 

「まさか、伯爵に元帥とは……」

「これで力を手に入れたぞ」

「はい。どうかお兄様をよろしくお願いいたします」

「まあ、しばらくは卿等に護衛を付けさせてもらう。エレオノーレ」

「はっ」

「彼女とその妹であるルサルカが護衛につく」

「おい、まさか……」

「そちらの想像通りの力を持っている。それと、来い、酒天」

 

 俺が呼び掛けると、虚空から滲み出て来るように酒呑童子が現れる。

 

「彼女達の護衛を頼むぞ」

「了解や。でも、うちにもかまってくれへんかったら……退屈で食らってしまうかもしれへんで?」

「安心しろ。定期的に抱いてやる」

「まてやこら! どんだけ戦力いるんだよ!」

「まだまだ居るぞ。少なくとも、貸し出すくらいにはな……」

「羨ましすぎるんだが……」

「そうだな。卿は魔力がどれくらいある?」

「赤ん坊のころから鍛えていたからな、かなりあるぞ」

「そうか。では卿への援助としてサーヴァントを与えてやろう」

「本当か!?」

「うむ」

 

 シータを手に入れる為に出て余っている手持ちのサーヴァントから選ぶ。持っていてもコスト制限とかで全ては呼び出せんしな。

 

「卿は自らの運に自信はあるか?」

「あるわけない」

「そうか。だが、あえて引かせてやろう」

 

 カードをシャッフルして選ばせてやる。

 

「さあ、引くがいい」

「くっ……君に決めた!」

 

 引いたカードはアサシン。

 

「よりにもよって、彼女だと!?」

「女神を引き当てたか。当たりではないか」

「いやいや、めちゃくちゃ大変そうなんだが……」

「諦めろ」

「いや、まあどうにかなるか? 使い方は?」

「こうだ」

 

 教えてやって、早速召喚させてやる。

 

「サーヴァント、アサシン。貴方が私を召喚したマスターね? 女神たる私を使役しようなんて、いい度胸じゃない」

「あっ、ああ、そうだ。よろしくな……しかし、すごいな。本当に出たぞ」

「当然だ」

「それより、他には何が有ったんだ?」

「ヴラド二枚に、エウリュアレ、メドゥーサ三枚、クー・フーリン4枚、エミヤ、プーティカだ」

「そう、じゃあ、この娘達もお願いね」

 

 そう言って、女神ステンノはメドゥーサとエウリュアレのカードをすっと抜いていきやがった。

 

「おい」

「何? 文句でもあるのかしら? 姉妹で一緒に居たいと思うのは当然ではないかしら?」

「奪い返しますか?」

「まあ、怖い」

「返すんだ」

「まあ良かろう。ただし、金はいただこう。出世払いだ」

「交渉成立ね」

「ぐっ……わかった」

「あの、どういう事ですか? いきなり気配が増えたのですが……」

「ルドルフに嫁が出来たという事だ」

「それは素晴らしいですね」

「嫁って」

「あら、間違いではないわよ、マスター」

 

 抱き着くステンノに慌てるルドルフ。まあ、仕方あるまい。美の女神であるステンノに抱き着かれているのだから。

 

「さっさと召喚しておけ」

「ああ……」

「そうね」

「しかし、閣下。護衛は必要なのでしょうか? サーヴァントが三体も居れば必要ないのでは?」

「そうもいかん。アサシンにアーチャー、ライダーと揃ってはいるが、あくまでもルドルフに関してだ。お前達はシエルをメインに護衛しろ。それに表立ってお前達が護衛するのにも意味がある」

「はっ」

「さて、エリクサーを与えておくが、対外的にはまだ見えないという事にしておくように。その方が警戒されないからな」

「わかりました」

 

 これでここでの要件が終わったので、俺は制圧した軍港へと戻る。その地下で犯罪を犯した者達を生贄にささげてジャンヌを復活させるのだ。

 

 

 

 

 

 


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