黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)と共に異世界へ   作:ヴィヴィオ

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第39話

 

 

 

 ペストから連絡を受けてラーマを自らにインストールする。これにより、二人をインストールする事で激痛が身を焼く事になるが、新たにシータを迎える為なら問題は無い。そう思っていたら暗い空間の中に居た。そこはラインハルトと会った所だ。

 

「卿もようやく来たか」

「ああ」

 

 目の前にはラインハルト・ハイドリヒが聖約・運命の神槍を構えており、その横には倒れている赤髪の少年が居た。

 

「彼は……」

「中に入ってきていきなり襲い掛かってきたのでな……蹴散らした」

「ぐっ」

「おいおい」

 

 身体の様子を確認すると問題無いみたいだ。取り敢えず、席を作って話し合いを行う。

 

「いや、丁度いい。卿にも訓練をつけてやろう。あのようなぶざまを晒すなど、同じ私としても許容できん」

「っ⁉ わ、わかった」

 

 聖約・運命の神槍を呼び出し、稽古をつけて貰う。訓練で徹底的にぼこぼこにされるが、目指すべき理想が目の前にあるので実力がどんどん上がっていくのを感じる。

 そんな事をしていると、ラーマも起きたようで弓を構える。

 

「魔王めっ、今度こそ余が成敗してくれる!」

「ふはははは、良い、良いぞ。二人がかりでくるがいい。Dies irae, dies illa, solvet saeclum in favilla.(怒りの日 終末の時 天地万物は灰燼と化し)

 

 やばい詠唱が行われていく。あれが完成されたらマジでやばい。

 

「おい、協力してこの場を乗り切るぞ」

「うむ。余も流石にアレは無理だ」

 

 俺が前衛を務め、ラーマが弓を持って後衛を務める。

 

「ふはははっ、ぬるいっ、ぬるいぞっ! 卿等っ、もっと奮起せよ!」

 

 徹底的に訓練を施される。殺されても復活させられ、また殺される。この繰り返しだ。

 

 

 訓練が終わり、ようやく話し合いとなった。もちろん、内容はシータの事だ。

 

「つまり、余がシータと再会する為に融合するつもりなのか。しかし、それならば余を召喚すれば……」

「それは断る」

「貴様っ、シータが目当てかっ!」

「そうだ」

「っ⁉ おのれっ!」

「そちらは一度失敗しているだろう。それにこのままでは永遠に出会えないぞ。しかし、こちらの方法なら問題なく出会える可能性がある」

「それは……」

「それにそちらは俺の一部として出会えるのだ。これは譲歩している事だ。別に俺は彼女だけでも構わんのだが」

「くっ、形はどうであれシータと共にいられるのであれば……致し方ないか。だが、必ずシータを幸せにするのだぞ」

「無論だ」

 

 ラーマの説得が終わり、融合を開始する。これで俺は彼でもある事になる。

 

 

 

 

 気が付くと数時間が過ぎていた。回りを見渡せばペストに連れてこられたのであろう、赤い髪をツインテールにした可愛らしい少女が俺が寝ているベッドの隣に寝ていた。彼女を見ると心の奥底から愛しいという感情が湧き上がって来る。

 

「起きたのね」

「ああ、待たせたようだな」

「別になんでもないわよ。それより、これ」

 

 そう言ってペストがフェイトのカードを渡してくれる。これがシータを引く為に出た余りなのだろう。あまりとは言わないか。本命ではないとはいえ、彼等は英霊なのだから。

 

「ありがとう」

「別にいいわよ。それより、わかってるわよね?」

「ああ。ペスト達の事もちゃんと愛するさ」

「違うわよっ!」

「くっくく」

 

 真っ赤になったペストを撫でていると、起きたのかシータが身体を起こす。そして、回りをきょろきょろとしだした。その後、自分で顔を触っていく。

 

「どうしたの?」

「……み、見えません……」

「まさか……」

「声は聞こえるのですが……旦那様、ペストさん……どこですか……?」

「こっちだ」

 

 震えるシータを抱き寄せる。それからペストが瞳をみていく。

 

「呪いね。どうやら、防ぎきれなかったみたいよ」

「どうにかして手段を講じないとな」

「あの、大丈夫ですから、無理はしないでください……私は旦那様と触れ合えるだけで幸せですから……」

「いや、必ず何か方法があるはずだ」

「そうね。でも、先ずはシータを安定させる為に魔力供給を行いましょう」

「シータは大丈夫か?」

「はい、問題ありません。どうぞ、旦那様のお好きになさってください……」

 

 それから二人と口づけを交わしていく。ペストもシータに対抗していつも以上に尽くしてくれる。肝心のシータだが、そちらはやはり目が見えないので不安そうだが、その分敏感になって気持ち良くなってくれた。

 

 

 

 次の日、両脇で眠っているペストとシータの頭を撫でながらシータの目をどうにかする方法を考える。

 

「呪いを消去……呪いを強制解除……生半可な方法では……それこそルールを破壊するような……」

 

 そう考えてると一つ思い付いた。昨日、ペストから受け渡されたカードをみていく。そこには丁度欲しいカードが二枚あった。どちらもキャスターで同じ存在だ。ただ、違うのは年齢にあたる。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 詠唱を行い、彼女を召喚する。

 

「サーヴァント、キャスター。メディアです。あの、よろしくお願いしま……っ⁉ あわわ」

 

 召喚したのは14歳のメディアだ。身長は149cm。そう、リリィバージョン。こちらのメディアなら比較的簡単に俺のいう事を聞いてくれるだろう。そんなメディアは顔を真っ赤にして両手で顔を隠している。そんなメディアにベッドから出て近付くと更に真っ赤になる。

 

「メディア。俺はお前のマスターで夫だ。愛してやる」

「……ふっ、ふつつかものですが……お願いします……」

 

 抱きしめて耳元で囁いてやると、簡単に身体を預けてくる。彼女は純粋で人を信じやすく、マスターに対しても最大限好意的に接する。更に恋話が大好きで、特に“お見合いから始まる恋愛結婚”に目が無く、“白馬の王子様思考なお姫様”という言葉がふさわしい。つまり、ちょろいのだ。

 

「さて、お願いしたい事がある」

「はい、なんですか?」

「彼女の目を直してくれ」

「はい」

 

 先ずは二人を起こしてメディアを紹介する。それから彼女の宝具、修補すべき全ての疵(ペインブレイカー)を使って貰う。

 

「どうだ?」

「だめでした……少し見えたのですが……」

「これはあれです。この呪いの状態が元の状態だと認識されてしまっているので、私の宝具では無理ですね」

「そうか。なら、これを使おう」

「はい」

 

 メディアにキャスター・メディアのカードを入れて合成させる。合成させるのは第五次に召喚された大人のメディア。元々は故郷のコルキスで家族と国民に愛され平和に暮らす箱入り王女であった。しかしイアソン率いるアルゴー船一行の上陸により彼女の運命は狂い始める。女神アフロディテの呪いによってイアソンを妄信的に恋するようにされた彼女は、追っ手を退けるために弟をバラバラに殺害し、アルゴー船へと乗り込む。その後もイアソンに言われるがまま己の魔術で多くの非道を働き、英雄たちや人間たちから「裏切りの魔女」として非難・中傷を受け、そこまでして尽くしたイアソンも一度も労わることなく彼女を裏切る。その後はコリントスの一件でイアソンに復讐。晩年は人々の復讐に遭い死んだとも、不老不死となりギリシャの地を彷徨っているとも言われている。そう、彼女の愛した故郷の土をついぞ踏む事は無いままとなった。そんな彼女の願いは故郷に帰る事だ。そんな彼女が持つ宝具が破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)である。これは歪な形をした短剣。攻撃力は普通のナイフと同程度しかないが、「あらゆる魔術を初期化する」という特性を持つ最強の対魔術宝具である。

 

「そのルールブレイカーを使えばいいのよね」

「それで問題ないはずだ」

「では覚悟はいいですか?」

「はい、お願いします」

 

 メディアがシータの身体に短剣を突き刺す。そして、宝具を発動させる。するとゆっくりとシータの瞳に光が灯っていく。同時にメディアが俺にも突き刺してきた。

 

「これで大丈夫のはずです。相互補完するようにされていたので、破壊しました」

「どうだ?」

「見えますっ、見えます……」

「俺の一部だけがラーマなのだが、構わないか?」

「姿は違ってもラーマ様ですから」

 

 シータが泣きながら抱き着いてくる。同時に俺の瞳からも涙が出てきた。

 

「むぅ、ずるいです」

「いいから、いくわよ。後で可愛がって貰ったらいいでしょ」

「それもそうですね」

 

 二人が出て行ったあと、互いに全てを確かめるようにしていく。それから一日中、シータと抱き合って過ごした。

 

 

 

 次の日、メディアを抱いた後に地下室でルサルカに凌辱されていたヘイゼルをシータと共に助け出す。これは殺されたルサルカの気晴らしの理由でもあるし、手加減するように言ってある。シータの姿を見たヘイゼルも安心したようでなによりだ。そのまま彼女達を抱いて楽しんでいく。

 そんな事を数日間していると、混乱状態であるベルニエ王国王都、ベルティエが落ちた。これにて戦争は終わり、事後処理となった。こちらの戦力は更に強化された事もある。何より妻も増えたので楽しみだ。

 

 

 

 


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