黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)と共に異世界へ   作:ヴィヴィオ

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第35話

 

 

 

 とある女性

 

 

 

 ベルニエ王国王都、ベルティエに存在する居城。そこに私は居る。本来、私は前線でラングハイム皇国の軍勢と相対していたのだが、急遽この国の最大戦力である私が呼び戻されたのだ。

 現在、我が国とラングハイム皇国は戦争状態となっているのだが、本来なら楽に勝てる戦だった。その為の準備も入念に行ってきた。実際、陸では被害を出しながらも勝利している。しかし、海の方で問題が起こった。

 

「では、我等が派遣した艦隊が全滅し、ラングハイム皇国に近い港が二つも抑えられたのだな?」

「その通りです」

「馬鹿なっ!? 連中に船を作る技術などないはずだ!」

「しかし、実際に落とされております!」

 

 陸を囮として海から王都に一気に攻め上げる予定だった。しかし、蓋を開けてみれば逆に海側から我等が攻められている。

 

「奪還部隊を組織せねばなりますまい」

「既に派遣した。だが、誰一人として戻らん!」

「だからこそ、ヘイゼル様にお戻り願ったのだ。これで大丈夫だろう」

 

 会議をしていた視線が一気に私へと向いてくる。私はマフラーを口元にあげながら頷く。おそらく、どうにかなるだろうと思う。何せ、私はサモンナイト3に出てきたヘイゼルの力にウィゼルが作り出した魔剣全てを所持している。もちろん、サモナイト石も持っていて適正も高い。

 

「ヘイゼルならば問題無いでしょう。女王陛下、それでよろしいですな?」

「お姉様……大丈夫ですか?」

「任せて」

 

 玉座に座るのは赤い髪の少女。彼女は先に病で亡くなったこの国の女王の跡を継いで即位した私の父親が違う妹だ。私の母は貴族の出ではなく、平民だったのだがこの国の王が母の美貌を認めて父親を殺して奪っていった。母が王の物になる条件として私をちゃんと王宮で育てる事だったのでここで生活している。むろん、そんな母を疎ましく思って殺そうとしてきた奴等は多いけれど、その全てを返り討ちにして逆に殺してやった。そしたら……気づいた時には王位継承権の一位が妹のシーナになっていた。無論、私と母には継承権など存在しない。そんな私達に大臣がすり寄って来て、私達を疎ましく思っている女王と王の排除を伝えてきた。纏めて暗殺してやったら、大臣の天下になった。私と母、妹は特に気にしないし。

 

「でも、陸軍はどうする?」

「そちらは王都の騎士団を派遣しましょう」

「わかった。私の部下もつける。シオンさん。ユエル」

「はい」

「ユエルはここだよ」

 

 二人は私が召喚した者だ。サモンナイトに存在するキャラを8人まで召喚する事が可能だからだ。現在、召喚しているのはシオンさん、ユエル、クノンの三人。シオンさんには諜報部隊として忍軍の訓練をお願いしてある。ユエルも似たようなものだ。クノンはシーナの護衛を任せてある。

 

「シオンさん、ユエルのシルヴァーナを足として陸軍の援護をお願いします」

「任されましょう」

「ユエルは?」

「焼き払ってやれ」

「うん! だから、ミニスも呼んで欲しいな」

「わかった」

「やった」

「よかったですね」

「これであちらも大丈夫だろう。私は敵の上陸部隊と海軍を叩く」

「お願いします」

 

 しかし、生半可な敵ではないだろう。だが、魔剣さえあれば勝てるだろう。

 

 

 

 

 アリエッタ

 

 

 

 ベルニエ王国、内陸部。アリエッタはタルタロスに乗って支配下に置いた街を見ている。今、ラングハイム皇国から文が届いたみたい。

 

「それで、使者はなんて言って来たんだ?」

「陸軍が押されているから援軍を寄越せだと」

「はっ、ふざけた連中だ。このまま首都を落とされて手柄を独り占めされるのが気に食わないんだろうぜ」

 

 キャロルがご主人様の膝の上に乗って悪態をつく。ちょっと羨ましい。ずっとあそこに座ってる。エセルドレーダとペストが居ない今がチャンスなのに。

 

「ふむ。援軍か。直に向かうのならば空路がいいか。アリエッタ」

「……なん、です……?」

「陸軍の増援として敵を滅ぼして来い」

「ご褒美、欲しい、です」

「いいぞ。出来る事ならなんでも聞いてやる」

「やる、です」

「あ、それならオレも……」

「一人で十分、です」

「ちぇっ」

「いや、一人は不味い。ルサルカを付けるから暴れて来い」

「私!?」

「そうだ。おまえ、前はアリエッタの獲物まで奪っただろ。今回はサポートに回ってやれ。軍人のルサルカなら向こうとの折衝も出来るだろ」

「まあ、確かにできるけど……」

「だ、め?」

「まあ、いっか。よーし、ルサルカさんに任せなさい」

 

 前の雪辱を晴らす、です。

 

「ついでに改造したこいつのテストも出来るか」

「?」

「レイジングハート・エクセリオンにダーインスレイブやバロールの瞳を突っ込んでおいた。レイジングハートというよりデモンズハートだな」

「ん、わかった。ルサルカ行く、です」

「おっけー! じゃあ、ルサルカ・シュヴェーゲリンとアリエッタ。任務の為、本隊より離脱します!」

「しま、す」

 

 ルサルカの真似をして敬礼すると、ご主人様達も返してくれる。

 

「許可する。旗も持っていっとけ」

「はーい! あっ、おやつはいくらまでかな?」

「5万だ」

「ぉぉ!」

「ついでだし物資も持っていきなさい」

「ありがとう、お姉ちゃん!」

「必要だからだ。気にするな」

 

 エレオノーレさんが大量の食材が入ったアイテムバックを渡してくれた。後はこれを持って空を飛べばいいだけ。

 

「あ、移動にドラゴンを使っていいかな?」

「駄目だ」

「ああ、駄目だ。代わりにレアバードを使え」

「それも駄目だろ。まあ、移動にドラゴンを使うのは認めるが戦場では使うなよ」

「もちろん!」

 

 それからアリエッタ達は高度1900mの空を飛んで目的地についたら降下した。アリエッタは自力で飛んで、ルサルカはパラシュートを使った。このまま落ちても大丈夫だとは思う。不死身だし。

 

 

 

 


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