黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)と共に異世界へ   作:ヴィヴィオ

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第29話

 

 

 

 

 海賊のアジトを改造して早数ヶ月。ベルニエ王国に対する海上を監視する施設とリゾート施設としての設備も完成した。

 海上リゾート施設はこの世界には存在しない。その理由はこの世界の海特有の生物……魔物の存在のせいだ。海の生物は基本的に大きく、水の中では動きが素早く体力が多い。そんな相手が多いのだ。だが、こちらにはほっぽが居る。彼女は陸上基地をモデルに作られているが、深海棲艦である。つまり、その名の通り海の中でも活動できる。その為、この辺り一帯の狩りをお願いしたら殆ど始末してくれたのだ。流石に潜水艦は無いのである程度しか始末できなかったが、それでもリゾート施設として安全圏を確保出来た。

 その為、妻達や娘に家族サービスで長期休暇を楽しんでいる。

 

「これはこれでよいか」

 

 砂浜にビーチパラソルとリラックスチェアを配置し、俺は水着姿でサングラスを装備して寝転がっている。砂浜や海ではアリエッタやキャロルを初めとした娘達が元気に遊んでいる。ジャンヌやセシル達も水着姿で楽しそうに遊んでいる。

 

「ご主人様、どうぞ」

「ああ、ありがとう」

 

 夏用の色々と短くしたメイド服のような水着を着たセニアがトロピカルジュースを持って来てくれたので受け取って喉を潤す。隣ではエセルドレーダが身体を焼いている。ペストはほっぽと海の底へと出かけている。

 

「閣下」

 

 軍服を着たエレオノーレと水着姿のルサルカがやって来た。二人は仕事のはずなのだが、ルサルカは水着姿だった。その姿で仕事をしていたのだろうか?

 

「どうした?」

「伝令です」

「聞こう」

「本日、1400に本家からの伝令が有りました。ベルニエ王国より、宣戦布告がなされたそうです。よって貴族の者は軍を組織して参戦せよとの事です」

「ふむ」

「参戦出来ない場合は資金と食料の援助をするようにとの事ですが、いかがいたしましょうか?」

 

 大貴族や貴族の一部で参戦したくない者や参加できない事情のある者が金などで参戦義務を免除して貰う事が可能だ。

 

「当然、参戦する。本家はなんと言ってきているんだ?」

「免除金を用意せよ、との事です」

「全く、ふざけてるわよね~。全部、こっちに支払わせる気よ? 後、()()するなって」

「参戦されて手柄を立てられたら困るからか」

「でしょうね」

「肝の小さい連中ですな。しかし、どうなさいますか?」

「リーゼンフェルト家としては参戦しない。だが、伝手は他にも有る。ジャンヌ!」

「何よ?」

 

 ジャンヌが水着姿のブリュンヒルデを砂に埋めながら聞いてくる。

 

「ドラゴンを出してくれ。それとペストも呼んでくれ。実家に向かう」

「いいわよ」

「お、お姉様! 私は……」

「そのままよ」

 

 ジャンヌが召喚陣を作り、瞬時にドラゴンを呼び出す。

 

「咆哮をあげなさい」

 

 そして、ドラゴンは命令通り咆哮を上げる。すると沖合の方で二つの塊が海面から出てこちらに飛んで来る。それはほっぽを抱えたペストだ。

 

「どうしたの?」

「シュタインフェルト家へ向かう。ペストも付いて来い」

「いいけれど……」

「他の者は進軍する準備をしておいてくれ。我々はベルニエ王国との戦争に参戦する。休暇は終わりだ」

 

 ジャンヌと共にペストを抱き抱えてドラゴンに乗る。しかし、順番的に微妙なので俺の前にジャンヌを置き、ジャンヌにペストを抱っこして貰う。

 

「キィィィッ! ずるいっ、ずるいです! 私も行きます!」

「却下よ、却下」

「ブリュンヒルデはエレオノーレを手伝え」

「そんなぁ~」

「ジャンヌ、出せ」

「ええ、任せて」

「コレ、ドウスル?」

 

 ほっぽが持っていた魚や大きな真珠を持ってくる。

 

「ふむ、手土産には丁度いいか持って行こう。キャロル」

「任せて。はい」

「助かる」

 

 キャロルに任せてさっさと出発する。何故なら後で届けて貰えばいいからだ。

 

「ジャンヌ、向こうについたらワイバーンかドラゴンを出してくれ。それも手土産にする」

「ドラゴンは無理ね。ワイバーンくらいなら問題ないでしょうが、乗り手が相応しくなければ喰らい殺されますわよ」

「それもそうか」

「でも、それってあっちの責任じゃない」

「まあな。しかし、選ばせるのはあちらでいいだろう」

「なら、卵にしてしまいましょう。それなら文句はないでしょう」

「だな」

 

 そのまま数時間雲の上を飛行し、シュタインフェルト領に入る。だいたい、目的の場所に着いたら降下していく。ちなみに空の上で暇な間で遊んでいた。

 

「マスター、このまま降りると不味いわよね」

「そうだな」

「私が行く?」

「いや、必要無い。これを使う」

「旗?」

「そうだ」

 

 街が見えてくれば、あちら側もこちらに気付いて慌てた気配を見せる。防壁の上でバリスタの準備が整えられていく。こういう時は早いな。

 

「バリスタが届かない距離で待機だ」

「ええ」

「大丈夫?」

「ああ」

 

 旗を出して一定の感覚で振る。すると、あちらも旗を振ってくる。旗の信号によって敵味方を識別しているのだ。これは勉強させられたのだが、なんとか覚えていてよかった。

 

「よし、降りてくれ」

「ええ」

 

 門の前に降りると門の上から守備を任されている騎士団団長が確認してくる。

 

「コルネリウスだ。父上に用が有る」

「内容はなんでしょうか?」

「妻の紹介と此度の戦についてだ」

「畏まりました。その、ドラゴンは……」

「ああ、問題ない。ジャンヌ、送還してくれ」

「ええ」

 

 送還した事で問題が無くなり、街の中へと入れてくれる。

 

「しかし、よもやドラゴンを使役するとは素晴らしい術者ですね」

「当然だ。我の自慢の妻の一人であるからな」

「それはそれは……」

 

 しかし、やはり警戒されているな。まあ、当然か。ドラゴンなんて危険生物を召喚できるのだから。

 

 領主館へと向かい、応接室で待つ。

 

「お館様がお会いになるそうです。もうしばらくお待ちください」

「ああ。ジャンヌ、ペスト。手土産を用意する」

「ええ」

「わかったわ」

「手土産ですか?」

「そうだ」

 

 それから許可を貰ってドラゴンとワイバーンの卵を呼び出す。他にもあちらで加工してくれた魚や真珠のネックレスを倉庫に繋がるバックより取り出す。そんな事をしていると父上が護衛の兵と兄の一人を連れて入って来た。

 

「よく来たな。出来れば先ぶれを欲しかったのだが……」

「申し訳ありません。何分、急な事でしたので」

「急な事か。なんだ?」

「戦争の事です。ですが、その前に妻を紹介してもいいですか?」

「それもそうだったな。どちらがそうなのだ?」

「どちらも、ですね。正妻のアーデルハイトとジャンヌです」

「よろしくお願いします」

 

 ペストは普通にしているけれど、ジャンヌは真っ赤になってそっぽを向いている。だが、その立ち位置は座っておらず護衛といった感じで俺の後ろに立っている。

 

「しかし、随分とあれだな」

「これ」

「失礼。久しぶりだな」

「ええ、兄上も壮健そうで何よりです」

「さて、今度はこちらが紹介しよう。私はランベルト・シュタインフェルト。こちらはコルネリウスの兄であるアドルフ・シュタインフェルトだ。こちらこそよろしく頼む。それで、戦の事で来たと。まさか、戦の資金を寄越せと?」

「まさか」

「であろうな。ドラゴンを連れている時点で有りえん」

「出たら武功は思いのままだろう」

 

 確かにドラゴンを連れだせば殆どの兵は叩き潰せる。

 

「それが、リーゼンフェルトの本家より参戦するなと言われてしまってね」

「馬鹿な……」

「うちの連中は馬鹿よ。どうやら、お兄様達のせいで父上も臥せっておられるようだし」

「なるほど。それでこちらから参戦しようというのだな。アドルフ、どうだ?」

「問題ありません。こちらとしても戦力が増えるのはありがたい。

 ベルニエ王国との決着は望む所です」

「いや、参加させて貰うが一緒に行くのではない」

「ほう?」

「こちらは海より攻め込ませて貰う。それに伴い、手に入れた領地と武功を認めてもらえるように王に進言して貰いたい」

「海、という事は船があるのか」

「父上、海をコルネリウス達が対応してくれるならばありがたいです。我が国に海軍はございませんので」

 

 こちらの国の軍は陸上が主流で、海上戦闘では負けるのだ。それに船も漁をする程度のものしかもっていないし、造船技術が無いのだ。これには殆ど海に面している場所が崖の上だったり、魔の領域があるからだ。

 

「そうだな。そういう事ならば陛下もお喜びになるであろう」

「紹介するメリットも十分にあるな。いや、それよりも最近出回りだした塩は……」

「私のところで作っております。それと協力頂けるなら手土産としてこちらも差し上げます」

「その大きな卵は……」

「ワイバーンとドラゴンの卵です。我々に協力していただけるならこちらと成功報酬として調教済みのワイバーン2頭も差し上げましょう」

「任せてくれ」

 

 これで我等は参戦する事が出来る。命令としては本家よりシュタインフェルトの方が上だからな。

 

 

 

 

 

 

 


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