黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)と共に異世界へ   作:ヴィヴィオ

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第18話

 

 

 

 

 マスターに報告する為にタルタロスへと帰還し、会議室で円卓を囲んで置かれた席に座りながら成果を発表します。参加者はマスターを始め、ペスト、キャロル、アリエッタ、エセルドレーダね。エセルドレーダはマスターの後ろに控えてお茶くみや書類を渡したりしている。

 

「では、報告を聞こう。アリエッタ」

「……治安維持、良好……悪い人、捕まえた……」

 

 配られた書類には商店から盗みを働いた者が居たようで、追跡に白狼達の鼻を使って犯人を特定し、ハーピィ達と空と地上から連携して捕らえたようね。

 

「ふむ。軽犯罪であれば処刑する訳にもいかんな。罰を与えねばならん」

「鞭打ちかしら?」

「それでは軽いだろう。いっそ、罰として軍隊に放り込んで矯正しようぜ」

 

 ペストの意見は確かに軽いわね。逆にキャロルの意見はいいわね。

 

「任せなさい。しっかりと矯正してあげるわ」

「では、そうしよう。3年の強制超用とする」

 

 玉座に座るマスターの決定で軽犯罪者達の末路が決まりました。良い事ですね、ええ。

 

「次はキャロルだ」

「港町と行政機関が入る城は完成した。残りは内装の一部だけだから、配下の者に任せた。次にオレは軍港の作製に取り掛かっている。場所は5キロ離れた地点だ。ジャンヌに要請されて仮組みだけした施設を本格的に作製する」

「港はいいけれど肝心の船はどうなのよ?」

「え、船?」

「ねえ、まさか船を作れないとか言うんじゃないでしょうね。稀代の錬金術師様がねえ?」

「っ、作れるに決まってるだろ! 誰に物を言っている!」

「本当?」

「ふん、見ていろ。度肝を抜く船を作ってやる!」

 

 キャロルはそう言って出て行きました。

 

「おい……まあ、良いか」

 

 マスターは肘を付き、身体を腕で支えている。その膝の前に跪いたエセルドレーダが膝に頭を乗せている。開いているマスターの手が適当にエセルドレーダの頭を撫でていて、幸せそうに眼を細めている。

 

「ペスト、そちらはどうだ?」

「こちらは問題ないわね。住民の割り振りも終わり、本格的に働いて貰っているから。塩の生産も問題ないし、問題があるとすればキャラバンを組織したいそうよ。でも、護衛が居るからそっちは軍部が整い次第ね」

「それならば出せますよ。小隊を護衛にすれば問題ないでしょう。全員が竜騎士(ドラグーン)ですから」

「それって過剰戦力じゃ……いえ、構わないのだけれど」

「ふむ。では、ジャンヌよ。報告を頼む」

「ええ。預かった全員がデミサーヴァントクラスの戦闘能力を所持し、ワイバーン、またはドラゴンを従えました」

「ほう、それは素晴らしい成果だ」

「この私が関わったのですから、当然よ」

 

 胸を張って答えます。私が鍛え上げたのだから、生半可な戦力じゃありませんよ。ええ、フランスを実際に落とせる程度の戦力はあります。この世界ではどうかわかりませんが。

 

「どんな訓練をしたのだ?」

「そうですね。例えば……」

 

 私は詳しく話していきました。

 

「……」

「……」

「どうしましたか?」

「ギルティ」

「ギルティね」

「……だめ、です……」

「なんでよっ!?」

「いや、やりすぎでしょ」

「うむ。何人壊れた」

「壊れたのはインストールにすればいいじゃない」

「駄目だ。仕方あるまい。ガチャでエリクサーを出すぞ。精神を回復させる」

「そうね。こればかりは仕方ないわ。犯罪者なら構わないのだけれど」

「うむ。して、ジャンヌにもお仕置きをせねばな」

「ちょっと、待ってよ! 本気なのっ!?」

「ええ、もちろん。とりあえず、縛って吊るしましょうか。鞭撃ちからかしら」

 

 私は急いで逃げる。窓を突き破って外に……

 

「令呪を持って命ずる」

「ちょっ、それ反則っ!!」

 

 マスターに捕まった私はお仕置きという名の調教を受けました。鞭打ちから始まり、木馬や焼き印まで色々な事をされたわ。まあ、ちゃんと回復してくれたのだけれどね。

 

 

 

 三日三晩、マスターとの爛れた勤めを終えて外の空気を堪能していると、キャロルがやって来た。

 

「どうだジャンヌ! ちゃんと船が出来たぞ!」

「船、ねえ。いいでしょう、見てあげます」

「ふん、度肝を抜かれるといい!」

 

 キャロルに連れられて港へと移動すると、そこには確かに船と呼べるかも知れない物が有りました。外見は確かに船ね。

 

「ねえ、船は空を飛ばないと思うのだけれど?」

「何を言っているんだ。あのタルタロスは飛んでるじゃないか」

「そうね。あれは陸上でも運用する為でしょう? でも、これは海だけじゃないかしら? なのに海面についてないのだけれど」

「うっ、うるさいっ、うるさいっ! 船には変わらないし、用途は問題ないだろ!」

「まあ、そうね。でも、普通の船を作ればもっと簡単に……」

「知らん。オレはシャトーを初めとした空中に浮かぶ物しか作った事がない」

「まあ、あれはあれで使えそうだからいいわね」

「じゃあ、20隻ほど作ったから好きに使ってくれ」

「作り過ぎでしょ」

「ドラゴンを地上に置くのは問題だからな。基本的に山脈と海上に配置だ。艦載機の扱いにするからな」

「しかたないわね。軍港が出来るまでの我慢ね」

「じゃあ、よろしく。暇だったら漁でもしてくれ」

「それ以前に運用出来るかが問題なのだけれどね」

「錬金術で作ったクローンを操作端末として各艦に配置しているから問題ない。後はそっちで色々としてくれ」

「わかったわ。ありがとう」

「ふん」

 

 これで本格的に働いても大丈夫かしら? まあ、やる事は地図の作製からでしょうね。それが終われば商売を始める港かしら。どちらにしろ、手に入れた資金で奴隷を買って戦力を増やしましょう。訓練内容を変えるつもりはないのだけれど、五月蠅いから少しは手加減してあげましょう。五ヶ月コースを半年コースにするぐらいね。一年コースなんてちんたらやってらんないわ。そうだ、キャロルに精神を記録して元に戻す装置を開発して貰いましょう。それなら問題ないわね。基礎訓練中の記憶なんて別にいらないのだし。そうしましょう。ああ、なんて素晴らしい事かしら。

 

 

 

 

 

 

 


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