「よし、なんとかこっちも突破できたぞ」
「専用機を全力投入してこの有様か…」
国連軍の搦め手として攻撃していたSフィールド、そこに配置されていたビルゴはそのほとんどが撃墜され他の部隊も次々と進撃していく。
「きっいねぇ…」
「さすがにビルゴは手強いな…」
ティルミナのセラヴィー、ヘンリーのAGE-3、ラウラのバンシィ、クロイのウォード、フォルガーのフルアーマーガンダムを前面に押し出してなんとかやったものの増援を含め、攻撃隊の4割が犠牲となってしまった。
「敵の第二防衛線を突破するぞ!」
「「はい!」」
フォルガーの声と共に部隊が前進、革命軍の有人機体と激突するのだった。
ーー
「Sフィールドのビルゴ隊は壊滅、Nフィールドのビルゴ隊も数が少なくなってきています」
「あの数相手に良く踏ん張った方だろう」
「やはりビルゴでは専用機持ちは抑えられないか。俺が出る」
「あぁ…」
ハルトはそう言い残すと司令部を後にする。それを横目で見送ったユイトは静かにモニターを見つめる。
「総帥、参謀長が出られるという事は…」
「あぁ、射線上の部隊に退避勧告。禁忌を使うぞ!」
「ガルダはもう間もなく到着します!」
スイスまで非戦闘員を運んでいたガルダが本部に到達、ガルダはその巨体をゆっくりと降下させ革命軍本部へと向かうのだった。
ーー
「司令、艦隊後方より所属不明艦が接近中!」
「なんだと、船か?」
「いえ、この速度は…飛行機ですが。なんだこの大きさは…」
全長317m、全幅524mの超巨大空中輸送機《ガルダ》は国連軍の主力艦隊の頭上を悠々と飛ぶとそのまま本部の方へと進んでいく。
「な、なんだあれは…」
その姿を見た全員が絶句する。とんでもない質量の物体が空を飛び、進んでいったのだから。
「が、ガルダ…」
「あんなものまで持ってたのか…」
対の転生者たちもそれが現実のものだと理解できるまで少々時間が必要だった。ガンダムの世界でも規格外の部類に入るそれが作られているなどと誰が思うのだろうか。
「そうか、IS学園の空中降下部隊を運んだのはガルダだったのか…とんでもない物を造ったな、革命軍は」
「感心している場合か、クロイ!」
「しかし、ラウラ。あんな空中要塞に上を取られては制空権が…」
だが姿を見せるだけにガルダが姿を現した訳ではない。ガルダに搭載されていたMSたちが第三防衛線が完全に崩壊したSフィールドに降下していく。
「特務グレイズ隊、降下よろし!」
「よし、降ろせ!」
自身の機体より大きな兵装を担いで黄土色のグレイズが次々と降下していく。
「敵の増援か」
「数は多くない。降下したのは目視で確認できる限り10機だった」
「敵が退いていくだと…」
ラウラとクロイが話している最中、ティルミナは敵の部隊が緩やかに退いていくのに気づき不審に思う。
「敵の部隊って何か持ってた?」
「画像データを送ります」
鉄血の知識に疎いクロイは先程見た画像をヘンリーに渡す。すると彼は絶句した。
「ダインスレイヴ…敵の中央が開いてる。中央にいる部隊に退避勧告を出して!」
《推奨BGM The 鉄血のオルフェンズ Dignity of Lords》
「ダインスレイヴ隊、この世界に禁忌をもって報復せよ!」
ハルト指揮の下、砲撃陣形を整えた特務グレイズ隊は、装備したダインスレイヴと高性能カメラを稼働させ、狙いをつけると引き金に力を入れる。
「退避、退避!」
「敵弾の発射を…」
ダインスレイヴ隊の監視をしていたキハールは敵弾警告を流すも常識の速度を超えているダインスレイヴは警告が終わる前に着弾。
「があぁぁぁ!」
ヘイズルとジムキャノンを串刺しにしながら遥か後方にいた空母の甲板に一瞬で突き刺さる。
ダインスレイヴ隊の目標は前線に展開しているMS隊ではない。遥か後方、Sフィールドに展開する国連軍の艦船、増援として控えており、艦内にMSを満載しているアメリカ艦隊だった。
「奴らは、革命軍はばけものなのかぁぁぁ!」
その指揮艦、IS局局長のフラン・エルフェゴールは絶叫しながら吹き飛ばされた。
アメリカ艦隊、旗艦、空母《ドューリットル》に乗艦していた彼女だったがそのブリッジにダインスレイヴの杭が打ち込まれたのだ。
「稼働可能なMS、ISを全て出せ!道連れにさせるな。うわぁぁぁ!」
艦の乗員が必死に叫ぶがこの艦は艦艇部にも数発着弾したせいで艦が大きく傾いている。叫んでいた乗員は倒れてきたジムスナイパーに押し潰されミンチと化してしまった。
「緊急機乗、緊急機乗!」
「ナターシャ、無事か?」
「ええ、早く脱出しましょう」
「そうだな!」
艦から素早く脱出した銀の福音とファング・クエイク、同様に脱出できた機体は決して多くなく。甲板に固定されていたMSたちは主の到着を待たないまま甲板を滑り、海へと落ちていく。
「これは…」
「なんてこった…」
損害を受けたのはドューリットルだけではない。他の艦も場合によっては黒煙を上げながら船体を傾かせている。たった10本の杭が後方の艦隊に甚大なダメージを負わせたのだ。
「なんなんだよ…」
何とか回避行動を取った前衛隊も後方の惨状に絶句する。
「勝てるのかよ…」
「もう無理だぁ」
「総員傾注!」
あまりの惨状に士気が折れかけた時、フォルガーのやかましい声が無線で鳴り響く。
「あれだけの質量物体を高速で射出させるためには相当のエネルギーが必要なはずだ。この隙に敵の射線上である中央に突撃する!中央突破だ、我に続けぇ!」
「「「うおぉぉぉぉぉ!!」」」
フォルガーの力強い掛け声に残された兵たちは歓喜し男女問わず雄叫びを上げる。このままでは死、退いても死、ならばとことん突き進んでみせる。
フルアーマーガンダムを戦闘に全部隊が最大戦速で突撃していく、この作戦の要は速さだ。ひたすら進み、進み、進む。それしかない。
「ここを突かれる事は想定内だ!」
「ぐぁっ!」
穴を埋めるように急速に移動するMSを押し倒しながら前進する部隊。その正面から現れたのはハルトを戦闘にしたグレイズ部隊。
「くそっ!」
一気に接近されたジムコマンドはサーベルを抜き放ち応戦するがレギンレイズは腹に銃剣を刺し破壊する。
「大型機がいるぞ!」
「なんだアイツ!?」
ハルトに随伴していたレギンレイズジュリアは両手の蛇腹剣を捜査し前面に展開していたジムストライカー、クウェル、ストライクダガー3機を一瞬でなぎ倒した。
「あの機体は…」
「あれはラサ基地の…」
接敵したハルトはウーンドを見つけ狙いを定める。それに気づいたクロイは冷や汗を流しながら百万式を見つめる。ラサ基地戦では手も足も出ずに敗北した相手、正直、今だに勝てるビジョンが浮かばない。
「くそっ…」
「あの時の続きでもするか?」
互いがサーベルを抜き放った瞬間、百万式に体当たりする4枚の盾。フルアーマーガンダムがタックルをかましそのまま連れて行くのだった。
「大佐!」
「俺のことは構うな。それよりお前は敵の兵器を叩け!」
「ええぃ、邪魔だ!」
「俺の相手をして貰うぜ!」
ハルトを引き離したフォルガーはそのまま彼を殴り飛ばすと戦闘を開始するのだった。
「大佐の意思を無駄にするな、行くぞクロイ!」
「はい、ラウラ」
「少佐、准尉!」
「クラリッサか!?」
接近するレギンレイズをリボルバーカノンで吹き飛ばしたのはクラリッサのシュヴァルツェア・ツヴァイク。
砲戦パッケージ「パンツァー・カノニーア」を装備した彼女は接近する敵機を牽制しながら説明をする。
「このまま艦内に待機していても次の攻撃で殺られるかもしれないと、フランツ少将からの指示でして」
クラリッサの背後には増援としてきたシュバルツ・ハーゼ隊のエンブレムが描かれたジムクウェル隊が展開していた。その手には実弾のライフルが握られておりレギンレイズ隊を牽制している。
「よし、このまま敵のダインスレイヴを…」
先陣は敵の第二防衛線を突破している。ダインスレイヴ隊とは目と鼻の先だ。このまま行ける、そんな空気が国連軍で流れた瞬間、ダインスレイヴが再び発射されたのだった。