IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第七十四革 脅威の革命軍無人機部隊

 

 

「敵部隊、包囲陣形を取りつつ進撃してきます」

 

「来たか、各隊出撃せよ!防衛線の構築を抜かるなよ!」

 

 朝日が顔を少し覗かせた時間、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

「敵はNフィールド、Sフィールドに戦力が集中しています」

 

 司令部内が一斉に騒がしくなり既に第三防衛線を構築していた無人機体が戦闘態勢に入る。その他の有人機部隊は空母、およびドロスから順次出撃し指定された防衛線を張ってゆく。

 

「敵艦隊、砲撃体勢に入っています。MS隊で迎撃しますか?」

 

「いや、MS隊の弾薬を使う必要はない。歌を奏でろ」

 

「はっ、歌を奏でろ!」

 

 ハルトの号令と共に司令部から暗号電文が基地内に響き渡る。島、外周部に塔のような構造物が出現し、島中央の偽装シャッターが開き巨大な砲口が姿を見せる。

 

ーー

 

「MS隊発進と同時に各艦、一斉射。出し惜しみは無しだ、撃てぇ!」

 

 砲弾、ロケット、ミサイル、艦に搭載されたありとあらゆる火力が吐き出され空に舞っていく。

 

「すげぇ…」

 

 その圧倒的な火力はまだ朝日が届かない戦場の空を埋め尽くし革命軍に飛来する。当然の如く、こんな者をまともに食らえば革命軍の戦力のほとんどが消し炭となるだろう。

 ロケット弾とミサイルが生み出す雲によって視界が極端に狭くなるほどの物量が襲いかかった。これは艦隊が保有する弾薬の約六割に相当する量であるという説明を継ぎ足せばその凄まじさが分かるだろう。

 

ーー

 

「なんて数だ、この量は…」

 

「全目標、ロックオン完了。ニーベルング、最大出力の90パーセントで放出できます!」

 

「よし、放て…」

 

 対空掃討砲《ニーベルング》が高出力レーザーを上空に放つ。周囲に出現した塔はニーベルングの命中精度と俯角の拡大を実現させ放たれた火力の九割を一瞬で破壊した。

 

「うわぁぁ!」

 

 暗かった空は砲弾、ロケット、ミサイルの爆発によって一瞬で照らされMSのバイザー越しでも目を塞がせるような強烈な閃光を生み出した。

 

「すげぇ、コイツは強烈だなぁ!おい!」

 

「と、飛ばされる!」

 

 弾薬が一斉に爆発した事で強烈な衝撃波が発生、滞空していたMS、ISを問答無用で吹き飛ばし海が荒れる。それを機体を纏い、ドロスから見ていたリョウは興奮しマドカは必死に地面に捕まる。

 

「ニーベルング、照射終了。再チャージをしますか?」

 

「出力50パーセントまでチャージしろ、こっからは白兵戦だ。MS隊の様子はどうか?」

 

「両軍とも爆発の余波で陣形が乱れています。我が軍に損害無し、取り逃した砲弾は海に着水した模様です」

 

「無人機を前面に押し出せ、ビルゴ隊をその後方支援に」

 

 無人型のジンD型装備が前面に展開し両手に装備したミサイルを構える。

 

「敵機を視認、これより攻撃に移る」

 

 国連軍、前衛のウインダム、ジムⅢが装備されたミサイルを発射させるとジン部隊もミサイルを撃ち放つ。

 互いが互いのミサイルを撃ち落とし、すり抜けた数発がMSを吹き飛ばし粉砕する。

 

「怯むなぁ!敵の防衛線を崩すんだ!」

 

「1対1でやるな複数で叩け!」

 

 研究所の件もあって士気が高い国連軍は咆哮を上げながら突撃する。

 

「Eフィールド、Wフィールドの戦力比は約6対1。搦め手のSフィールドの戦力比は10対1、主力のいるNフィールドは15対1と思われます」

 

「やはりオーストラリアで補給を受けたか…」

 

 明らかに数が増えている国連軍を見て呟くユイトを見てハルトは小さくため息をつく。

 

「当たり前だろう、敵も必死さ」

 

「あぁ、良い感じに盛り上がってきたな。ケイ…」

 

「了解!」

 

 頃合いと見たユイトはケイに合図を送ると彼は黙って頷きコンソールを操作する。

 

「ん、なんだ?」

 

「なんだこれは!?」

 

 その瞬間、ケイの仕込んであったシステムが起動。世界中の軍事システムがダウンし乗っ取られてしまう。

 

「なにをしている!とっとと止めろ!」

 

「ダメです、既に乗っ取られました!」

 

「クソが!」

 

 真っ暗になったモニター群を見つめる将校だったがモニターはすぐに復旧する。

 

「これは…」

 

 モニターに映されていたのは現在行われている革命軍と国連軍の戦い。各国の強力な通信機能を使ってリアルタイムで映しているのだ。

 その映像は各国のメディアの元へと流れその場を騒然とされる。早朝のニュースにて組まれていた国連軍の進行ニュースがリアルタイム生中継へと変わった瞬間だった。

 

ーー

 

「よし、無人機相手ならなんとかなるぞ。このまま戦線を…」

 

「ガルフ!」

 

 先行していたストライクダガーが正面から襲いかかったビームに穿たれ爆発する。味方機である105ダガーは前方を見つめると黒い死神が浮かんでいた。

 

「くそっ!」

 

 ダガー隊が出現した機体たちに向け、攻撃を加えるがフィールドのようなものに防がれたと思えば敵は巨大なビーム砲を撃ち放ちダガー隊を一掃する。

 

「やはり出てきたか…ビルゴ!」

 

 革命軍第三防衛線の要。ビルゴ軍団が国連軍の前に立ち塞がる。

 ビルゴの放つビームの隙間をジン、シグーどもが襲いかかる。国連軍の攻撃隊が完全に足止めされ逆に押され始める。

 

「この無人機…何かしら…」

 

「動きが良くなっているのか」

 

 サイレント・ゼフィルスを駆り、後方支援に徹していたセシリアはジンたちの動きに違和感を覚える。初弾は一撃で仕留められた、だが時間が経つごとに避け、レーザーを斬場刀で切り裂いてくる。

 

「奴ら、学習しているのか」

 

 イルフリーデはビギナ・ロナのランサーでシグーの攻撃を防ぎながらランスに内蔵された銃で銃撃するが避けられ蹴り飛ばされる。

 

「これはまずいな…」

 

 革命軍の無人機に搭載されているのは共有式戦闘学習型AIと呼ばれるもので戦闘を行うことによって学習し進化するものだ。しかも全機がそのデータを共有しているので進化スピードは異常なほど高いのだ。

 

「それでは時間が経てば経つほど不利ですわ!」

 

 味方部隊を突破し、スナイパーであるセシリアを潰そうとゲイツが2機、接近してくる。

 

「くそっ!」

 

 やけに進化の早いシグーに足止めされゲイツに抜かれるイルフリーデ。

 

「ブルーティアーズ!」

 

 セシリアはすぐさまシールドビットを展開しゲイツのビームを防ぎつつ後退。スターブレイカーを撃ち放つが敵のシールドに阻まれてしまう。

 

「こんなところで終わるわけには行きませんの!」

 

 ゲイツはシールドのビームサーベルを展開。セシリアもランスを展開し突く。ビームサーベルとランスが交錯する、先に届いたのはランス。

 ゲイツの胴体が貫かれ爆散するのを見届けた彼女だがゲイツはまだ残っている。ランスを振り抜き、腕は完全に伸びきっている状態での反撃は不可能だ。

 

「こんな…」

 

「セシリア!」

 

 その時、駆けつけたのは黄金の機体。フェネクスはビームマグナムでゲイツを撃墜すると側に来て滞空する。

 

「大丈夫?」

 

「シャルさん。ありがとうございます…」

 

「あきらめちゃ駄目だよ。まだ僕たちにはやることがあるんだから」

 

「そうですわね」

 

 押されつつあるイギリス軍の援軍に駆けつけたのはフランス軍、増援のおかげで何とか持ち直したイギリスだが戦況は中々に不利だ。数的な戦力差でなんとかしているがそれも時間の問題かもしれない。

 

「なんなんだ、あれは本当に量産機なのか!」

 

「どうやってやればいいんだ!」

 

「くそ、やはりビルゴ隊が抜けないか…」

 

 口々に愚痴る部隊員を横目に増援が加わり戦線を持たせたがその中にはデュノア社で製造されたBD2号機と3号機の姿があったのだがそれはまた別の話。

 

「織斑千冬、明桜出るぞ!」

 

 その時、世界最強が力強い声と共に出撃したのだった。

 

 

 


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