「考える暇なんてない、今はとにかく進むしかないよ!」
「強行突破しかないか!」
ヘンリーとティルミナは即座にMSを展開。AGE-3とセラヴィーが姿を現す。
「AGE-3にセラヴィー、対の転生者っすか。各員、気をつけるっすよ。こいつらは強いっす」
AGE-1のが光るとその姿が再び露わになる。AGE-1フルグランサ半世紀以上戦い続けた機体の至った姿に変わる。つまりカゲトも本気でかかってくるということだ。
「ここは僕たちに任せて。脱出ポッドの確保を」
「止まるな、走れぇ!」
セラヴィーの全火力が正面に放たれ全面に展開していたドーベンとカゲトたちは退避する。放たれたビームは研究所の隔壁も破壊し侵入ルートも確保した。
「行くわよ!」
楯無の叫びと共に全員が全力で駆ける。
「逃がすかぁ!」
ドーベンが逃がすまいと動きだすがヘンリーのAGE-3の拳が頭部にヒットし地面に叩き伏せられる。
「行くっすよ、ケイニ!」
「わかった!」
「ティル!」
「分かってる!」
AGE-1と3、ティエルヴァとセラヴィーが激しくぶつかり合うのだった。
ーーーー
「くそったれ!」
「ハイメガ…」
ダリル・ケイシーの悲鳴と共にデルタカイのシールドに内蔵してあったハイメガキャノンが放たれ塵一つ残さず消し去られた。
「そっちも終わったか…」
「ユイト!」
無事に戦闘を終えたクリアは様子を見に来たユイトを見て声を上げる。左眼が切り裂かれそこから血を流していたからだ。
「すぐに活性化装置に…」
「計画は最終段階に入っている。組織の頭である俺が抜けられる暇なんてない」
眼を潰されても活性化装置でなんとかなる。だがこのタイミングで彼がゆっくりと休める時間など存在しない。
「最悪のタイミングで眼を潰されたな。まったく、最期まで最高の敵だったよ、スコールは」
楽しそうにスコールの事を語るユイトを見てクリアは若干、むくれるがそれを察知した彼に頭を撫でられ気が落ち着く。
彼女自身、簡単な女だと思うが嬉しいものは仕方がない。
「カゲトの方も上手くいってるかな」
スコールというイレギュラーもあったが全ては掌の上、計画は順調に進んでいる。
ーーーー
「ガードロボットか!」
研究所の脱出ポッド制御室。それに至るルートには無人制御のジンが数機、常駐していたのだ。
「僕に任せて!」
ジンが一夏たちを発見し戦闘モードに移行するとシャルはフェネクスを展開しビームサーベルで1機を仕留める。
「すごい…」
ユニコーンガンダム3号機《フェネクス》、その機体をぶっつけ本番で使った彼女だったがその機体の性能に思わず舌を巻く。
当然といえば当然だが機体の追随性が専用にカスタマイズされたラファールと比べても段違いだ。まるで頭で考えていることをこの機体は知っているような不思議な感覚だ。
「先にポッドに!」
ジンを蹂躙するフェネクスを横目に楯無は制御室に向かい一夏と渚子はミサイル型の脱出ポッドに向かう。
「はぁ、はぁ。待ってよ、一夏くん」
「あのミサイルですよ!」
息も絶え絶えな渚子に声を掛けながら走る一夏。彼が格納庫に入った瞬間、待ち伏せていた無人MSに襲われる。
巨大なクローを4本持つガンダム、ガンダムベルフェゴールはそのクローで彼を掴もうと襲いかかる。
「白式!」
ヘンリーから取り返して貰った白式を一夏は迷わず使用。だがコアも機体もボロボロの白式には自衛すらままならない状況だった。
「くっ!」
二本のクローを押さえ込んだはいいものの残りのクローが白式の脚を砕く。機体のあちこちからスパークが発生し押し潰される一夏。
「これ以上は…もう……」
機体もコアも悲鳴を上げているのが分かる。このままでは確実に殺される。そう思った時、横合いから白亜の機体がべルフェゴールを殴り飛ばした。
「この機体は」
美しい白一色の機体の頭部には一本の角が生えている。まさに伝説の生物、ユニコーンを体現したような機体だった。
「まさか…」
IS学園攻防戦で見た夢のようなもので姿を見せていたユニコーンと重なって見える。その上、その機体は自分を見てまるで待っているかのように動かない。
(私はここまで…行って……)
頭の中に響く女の子の声、一夏はその声に礼を言いながらユニコーンに向けて歩いていくのだった。
ーー
「っ!これは…」
その頃、制御室で脱出プログラムを作成しようとした楯無はコンソールを見て言葉を失う。既に必要な行程は全て終え、後はボタンを押せば済むような状態に整っていたのだ。
「カウントダウンは30秒か。もう乗り込んで、脱出するわよ!」
「分かりました!」
最期のジンをスクラップにしたシャルはフェネクスを解き格納庫に向かう。後はヘンリーとティルミナを待つばかりだが。
「準備は出来てる?」
「早く、通路を塞いだがすぐに追いついてくるぞ!」
「早く乗り込んで!」
肝心の二人が姿を現し楯無は脱出のボタンを思いっきり押す。カウントダウンが始まりミサイルは発射態勢に入る。
「一夏、早く!」
「あぁ…」
ユニコーンとの性能差もあってベルフェゴールをサーベルで壁に突き刺して動きを止めた一夏だが機体はまだ稼働し動こうと藻掻いている。
「急いで!」
30秒のカウントの中でなんとか全員乗り込むが乗り込んだ瞬間、ミサイルは発射されるのだった。
「こちらカゲト。予定通り、奴らの脱出を確認し達すよ」
「そうか、戻ってきてくれ」
「了解っす。……これで終わりっすか」
ミサイルが作った雲を見上げながら通信を終えたカゲトはほんの少しだけ悲しそうに言葉を放つのだった。
ーーーー
「ジン6機 大破、ガンダムベルフェゴール 中破、ギラ・ドーガ2機 大破、爆破されたハンガー内の機体大破なし」
「人的損害としてはギラ・ドーガに搭乗していた2名は死亡、重軽症者多数です」
「分かった、負傷者の手当てを最優先にしてくれ」
「はっ」
報告をしに来た兵を下がらせるとユイトは傍に控えていたカゲトに視線を移す。
「どうだ?」
「義眼の件は了承したっす。でもユイトの激しい戦闘に耐えられる義眼は流石に作れ無いっす。決戦を控えてる今の事態は分かってるつもりっすけどこの不安要素を持ったまま戦いに赴くのは個人的に反対っす。やっぱり細胞活性化装置に…」
「カゲト、そんな時間がないことぐらい分かっているだろう。マドカのプロヴィデンスの調整を終えていないしリョウの機体もな」
リョウは治療中、ケイは決戦のための仕込みのためにラボに籠もりっきり、ハルトは基地の防衛設備強化に必死。基地運営に対してまともに動き回れるのはユイトとカゲトぐらいだ。
そのカゲトも各機のアップデートで忙しい、ここでユイトが抜ければ革命軍は混乱してしまう。
「分かったっす。その代わりにこの世で最も素晴らしい義眼を作らせていただくっす」
「ありがとう、すまないな」
その後、一夏たちは無事に日本に到着。ヘンリーやティルミナがもたらしたオーストラリアの研究所、革命軍本部の位置が各国政府に露呈した。
各国政府及び世界連合は対革命軍戦略を発動。革命軍と各国軍の戦争が始まろうとしていた。