IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第六十二革 王女

 

 

「これが私の知る全てだ。アイツらは革命軍の真実を知ってしまったから殺された」

 

「私のお母様とお父様がイギリスの諜報員だったなんて」

 

「ゴルドウィン准将は軍人だ。知ってても教えなかっただろうな」

 

 バツの悪そうにタバコを吹かす下関は悲愴な顔になっているセシリアを静かに見つめる。セシリアに関する事を話し終えた下関だが話はまだ終わっていない。

 

「そっちの話も聞かせて貰おうか…。お兄様は」

 

 セシリアには失礼だがユイカが気になっていたのはユイトの事についてだ。

 

「信じて貰えないかもしれないけど…。俺達はこの世界の人間じゃない」

 

「フォルガー大佐にも言ってないんだけどね。多分、光一さんも一度、死んでからこの世界に来たと思う」

 

「よく言う転生輪廻と言う事か?」

 

「似たような物です。記憶を持ってこの世界に来てしまった」

 

 千冬の指摘に頷く光一はクロイの話を引き継いで話を進める。

 

「俺達は女神と呼ばれる存在に出会い。こう言われた、貴方たちは世界の抑止力で崩れたバランスを取るために呼ばれた…と」

 

「同じです」

 

「世界を破壊し構築する側、世界の均衡を保ち保護する側の二勢力として転生させられたのならこの花柳ユイトは」

 

「世界を破壊し構築する側…」

 

「仮説に過ぎないけどね」

 

 ユイカはその言葉を聞きどことなく納得してしまう。政治的抗争に巻き込まれ殺された兄、彼はその運命を呪うような人ではない。もし再びの生を得たなら自身のような運命の人々を根絶しようとするだろう。

 

「ユイトさん…」

 

「お兄様…」

 

 一度、会って確かめなければ。その思いが簪とユイカの中で渦巻いていた。

 

ーー

 

 そんな時、地下の部屋に通じる通路にて小型の特務機体《ロト》が降りたった。1メートルと80センチしかない小型の無人機体は戦車形態に変形すると静かに進撃するのだった。

 

 ピリリリッ…。

 

「下関…」

 

「奴らに感づかれたらしい。覚悟はしていたが早いな」

 

 地下通路に仕掛けていたセンサーに何かが引っかかった。このタイミングだと革命軍だと考えるのが妥当だろう。

 

「下水道に繋がる通路がある。お前たちはそこそこから逃げろ」

 

 積まれた本の中からランチャーを取り出した下関は机を倒して楯が代わりにする。

 

「アリエス!」

 

「クロイさんも持って」

 

「は、はい」

 

 光一は念のために持ってきたライフルをアリエスに2つ投げると彼女はもう一丁をクロイに手渡した。

 

「先行します。クロイは殿を」

 

「了解です」

 

「ここは行くぞ」

 

 教えられた脱出口を走って行く光一の後を千冬が手招きしながら続く。ここまで狭い空間、ISだと邪魔になってしまう。なら我々に出来るのは逃げることぐらいだろう。

 

「セシリア君」

 

「は、はい…」

 

「君の両親は本当に仲が良かった。見ていて羨ましいぐらいだ。父親は立派な人物だった、自分の両親を誇りに思いなさい」

 

「はい!またお会いしましょう!」

 

 幼い頃から下卑していた父親、それが立派な人物だった。その事実は彼女にとって大きかった、自身の親は誰だって立派な人で欲しいものだ。

 

「また……か…」

 

 脱出口に全員が消えると下関は静かに呟いた。本当なら自身も逃げたい脱出通路は長く、追いかけられたら追いつかれるかもしれない。

 

「ネメシス、ルシアンナ…。お前の娘は立派に成長してたぞ。たくっ…若ぇ時のルシアンナにそっくりだ、目は親父譲りだったがな」

 

 咥えていたタバコを大きく吸い、吐き出す。目の前の通路からは複数のキャタピラの音がし始めている。

 

「美味い紅茶でも飲ませてくれよ」

 

 下関はランチャーを構え天に居る二人に向けて静かに話しかけると人型形態に移行してきたロトがゆっくりと顔を覗かせるのだった。

 

ーーーー

 

「参謀長に言われて来たのだが…」

 

「マドカの機体ねぇ…」

 

 革命軍本部、そこの開発施設にマドカは訪れカゲトを訪問していた。

 マドカはファンネルやドラグーン等のビット適性が極めて高い。本人はビットを使ったことがないと言う事で機体自体の戦闘力が高いMK-Ⅴを用意したのだが。

 

「通常の射撃と接近戦はどちらがやりやすいっすかね?」

 

「接近戦の方が私は好きだが…」

 

「ふむふむ…」

 

 織斑千冬のクローンとして造られたマドカだ、接近戦が苦手なはずが無いがこればかりは本人の好みに分かれる。聞いておかなければならない重要事項だ。

 

「ならピッタリな機体があるっすよ…」

 

 マドカの駆る機体はだいたいの見当はつけておいたのだがこれが最適だろうとカゲトが選んだ機体が空中ディスプレイに表示される。

 

「これは…」

 

「プロヴィデンスガンダム。リョウのために力を欲するなら半月で慣熟訓練を終わらせるんすね、コイツは使いこなせば化け物になれるっすよ」

 

 SEEDの世界において最強の名を我が物とした機体。合計43門ものビーム砲を持ったドラグーンを搭載。それに加え元々開発が格闘機なだけあって接近戦能力も高い。

 

「プロヴィデンスガンダム…」

 

「リョウにも新型を用意してるっす。精々、頑張るっすね」

 

 画面に映る機体を見つめマドカは静かにその名を口にする。

 

「カゲト!」

 

「うん、おわぁ!」

 

 マドカの機体とリョウの機体の製造に向けて明確なプランが組みあがり満足していた彼に飛びつく影。いつもカゲトにくっついているケイニの姿だった。

 

「新しい機体、作ってくれたんだね!」

 

「まぁ、他の機体を作るついでっすよ」

 

 ケイニが新たに手に入れた機体の名は《ティエルヴァ》AGEのレイナ・スプリガンことジラード・スプリガンが搭乗した機体で暴走したXラウンダー能力で主人公たちを苦しめた機体だ。

 

「本当に仲が良いのだな」

 

「当然よ。私とカゲトは夫婦…」

 

「ではないっすけどね!」

 

「つれないわね」

 

「疲れるっす…」

 

 夫婦漫才を見せられていたマドカはフッと疑問に思う。性格的には真反対の2人がどうしてこんな風になったのか、どうやって出会ったのかと…。

 

「2人はどこで知り合ったのだ?」

 

「聞いてくれるの!あれは2年前、私がまだ王女だった時の話」

 

「王女!?」

 

 考えもしない言葉に思わず反応するマドカ、またいつもの冗談かと思ったがカゲトはそんな態度は示していない…つまり。

 

「本当に…」

 

「えぇ、もうそんなに経つのね」

 

「そうっすね…」

 

 懐かしそうに呟くカゲトは興味を持ったマドカと楽しそうに話すケイニを見て黙って見守る事を決めたのだった。

 

 

 

 

 


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