「良く気付いたわね…」
「女神…」
全員が来るべき未来を予知した瞬間、女神はその姿を七年ぶりに現した。
「概ね予想通りかしら、貴方たちならISの登場前に気付くと信じていたわ」
「紛争地帯のど真ん中に放り込んでおいてよく言うぜ」
「生温い状況でチヤホヤされた人間なんて必要ないの、死んだらその程度って事よ」
「随分と厳しいっすね」
「神は平等よ。神は仏と違って人に罰を与えることが出来ることは知ってるわよね」
仏は慈悲深い存在だが神は確かに違う、人に力を与えることも罰を与えることが出来る。やはりこう言ったものでは神は容赦ない。
「合格祝いよ」
女神は5人に向けて小さなアクセサリーのようなものを投げつけ5人は受け取る。
それはウイング、スローネツヴァイ、AGE-1、アストレイゴールドフレーム、デルタの5機のガンダムの待機状態であるアクセサリーだった。
「ガンダムの力は強大よ、ISが幼い頃はあまり使わない方がいいわ」
時代の節目に姿を現し大きな爪痕を残していく機体たち、ガンダムの力はユイトたちもよく知っている。
「言って置くけど、それはただの機体。つまりISのように進化しないわ、強化したいんだったら自分たちでするのね」
「それだけで十分だ」
「……」
女神は5人の目を静かに見つめる。ほんの少しだけ迷いが彼女の目に現れたがそれを捉えたのはユイトだけだった。
「貴方たちがどのようにして世界を救うか…楽しみにしてるわ」
瞬きをした瞬間、女神の姿は消えた。
「じゃあ、行きますか…」
「そうだな…」
一息つきケイが言葉を発するとユイトも続いて動き出すのだった。
ーー
その頃、篠ノ之束がISの試作品の開発に成功。ナンバー00《白騎士》と名付けられたこの機体は歴史に名を残す機体となる。
ーー
ユイト達が行動を開始して1年後、中東などで散々としていた少年兵たちを吸収、纏め上げそれなりの規模へと成長していた。
「ハルトの予想じゃ今日がその日らしいっすけど」
革命軍の本格的活動より10年前、それなりの身なりになったユイトとカゲトは日本へと足を運んでいた。
小説では本編開始の10年前としか記されておらず詳細な日時は分からない。だからこそハルトの予想だがこればかりは材料が少なすぎて確実とは言い難い。
「来たか…」
高いビルの屋上で待機していたユイトは閉じていた目を静かに開ける。それと同時に日本の軍事無線が騒ぎ出す。
「あれが最初にして最強のIS操縦者、織斑千冬」
2341発のミサイルが日本に向けて放たれ、突如出現したIS《白騎士》がそれらを撃墜。白騎士を捕獲しようとした各国部隊の戦闘機207機、巡洋艦7隻、空母5隻が無力化されるという事態に至った。
「……カゲト」
「なんすか?」
「勝てるか、奴に…。織斑千冬、篠ノ之束とISに」
「当然…」
何を言ってるんだと言わんばかりの彼の返答にユイトは静かに笑みを浮かべる。
「それなら戦争だ。世界が震え上がるような組織を作り上げてやる」
ギラついた眼を千冬に向け笑う彼は実に愉快そうだ。
「計画を始める。他の奴らにも伝えろ」
白騎士事件の勃発と共に計画は始まりを告げ、5人は動き出す。この世界を救うために…。
ーー
まずユイト達が行ったのは裏の世界のパイプを作り上げることだ。それらを無視して行動を開始しても良いがそれだと後々、面倒なことになってしまう。
「それで、話とはなんだ?」
「純粋に取引をしに来たのですよ」
ISの登場から1年が経過した頃、各国の裏の阻止たちは随分と肩身が狭くなっていた。
政府、警察組織を含む多くの組織の頭が女性至上主義の人物に変わり裏を牛耳っていた男社会を貫き通していた組織は軒並み徹底的に弾圧されたのだ。
「取引か…やっぱりただの子供じゃなさそうだな」
日本の裏を牛耳っていた組織の頭が住む屋敷。その客室でその家主である頭とユイトが対峙していた。
「随分と住みにくくなったでしょう。この世の中は…」
「まぁな、この世のルールを無視するバカどものせいでこっちは大変だよ」
「女性が尊ばれるのも男性が尊ばれるのも不釣り合いだ。だから戻しませんか、元の男女平等の世界に」
「話が見えねぇな、確かにうまみはあるが」
頭はタバコをふかしながらユイトを静かに見つめる。本来なら鼻で笑って追い返す所だが目の前にいる少年から目を離せない。そんな独特の雰囲気を彼は持っていた。
「ISの地位を地に墜とすことで世界を均衡状態に持っていく。我々が行うのはそれだけです」
「ISは世界最強の兵器だぞ、それ以上のものを持っているのか?」
「当然、我々はISが産まれる前から行動を開始していたのですから」
はったりではなさそうだな…そんな事を思いながら頭は大きくタバコを吸いはき出した。
「そのために協力しろと…」
「話が早くて助かります」
「ふむ…」
「協力は我々が行動を初めてからで結構です」
「わかった…」
しばらく思案した後、頭は了承するとユイトを丁寧に送り出した。
「親父、よろしいのですか?」
「お前はアイツの目を見たか?」
「目ですか?」
「随分と修羅場を潜ってきた目だ。怖ぇぞ奴は、血の匂いを思い出したぜ」
頭の話を聞いた部下たちはその話を聞いて少し身震いする。話の内容もそうだが頭から漏れ出てる雰囲気に対して恐怖を覚えたからだ。
この様な協力体制を各国で取り付けたユイトたちは実質的に反IS派閥のトップを務めることとなる。
オーストラリアの根回しの際、孤児と化していたフィーリアを発見、保護することとなる。
ーーーー
ISの登場から半年、その頃から急激に世界が変わり始めた。ISの開発とそのパイロットの人材育成のために女性に有利な法などが制定されたからだ。
後々から見れば愚かな行為だというのがよく分かるのだが当時の各国は最強の軍事兵器であるISをどこよりも早く開発することを望みそのために暴走した結果というのが悲しい事実だろう。
そんな時代の混乱は3年間と言う長い間まで続く事になる。それは革命軍の急激な成長と重なり、ほとんどの人に気付かれることなく革命軍が膨れあがっていったのだ。
「これは…」
「どうしたの?」
そんな混乱が続く時期、ISの登場から1年半が経った頃。1人の人物がその存在の片鱗に気付くことになる。
「行方不明者がここ最近、多すぎじゃないかな」
「本当ね、しかも強制的に退役させられた軍人も少なくない…」
それに気付いてしまったのはセシリアの両親、父のネメシス・オルコットと母のルシアンナ・オルコットだった。
イギリスの諜報機関に所属していた2人は謎の行方不明者について調査を開始する。その結果がどんなものになるかは当然ながら2人は知るよしもない。