IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第五十三革 第2次IS学園攻防戦 ―革命軍最強の男―

 

 

 

接近するバエルに対しラウラはアームドアーマーVNを起動、左手に装備された大型のクローが展開しフィーリアを砕かんとする。

 

「ラウラ、君は戦い慣れてる。でも本当の戦場を知らない!」

 

「なに!?」

 

 伸びきった左腕を掴まれ投げ飛ばされるラウラ、その事に彼女は驚愕する。今までのフィーリアは接近戦を避けている節があった。武器を使った接近戦ならともかく柔術の心得があるとは。

 

「あれは合気道か…」

 

「実力を隠すためにあえて接近戦を避けていたのか!」

 

「大正解!」

 

 投げ飛ばされたラウラはすぐに体勢を整えるがゼロ距離まで詰め寄ったフィーリアは一瞬で無数の打撃を加える。

 

「こんどは八極拳じゃない!」

 

「ぐっ!」

 

「ラウラ、私がやる!」

 

「止めてくれ、箒!」

 

 無数の打撃に堪らず片膝をつくラウラ、それをカバーするように雨月、空裂を振るう箒。それをフィーリアは箒より素早くバエルソードを抜き放ち、振るい切り裂く。

 

「なっ!」

 

「箒、君は一刀流の方の方が向いている。二刀流は箒より私の方が慣れてるんでね!」

 

 次々とフィーリアにやられていく生徒を見て千冬は歯嚙みするが彼女も他人を気遣っている余裕はなかった。

 

(このプレッシャーはなんなんだ)

 

 目の前に立つユイトはただ千冬を見据え刀を構えている。

 

「マドカ…クライネルに連絡して空母に退くぞ」

 

「しかし、総帥を1人織斑千冬と戦わせるのは危険だ。お前がやられたのに」

 

「バカ言ってんじゃねぇ。大丈夫だよ」

 

 革命軍の戦闘長であるリョウを下した千冬、その目の前にはトップであるユイトがいる。もし彼がやられれば革命軍は崩壊してしまう。

 

「どう言う事だ?」

 

 マドカはあくまでも冷静なリョウに疑問を持つ、相手である千冬を軽視しているようには見えない。だからこそ分からない。

 

「…」

 

 先手を取ったのは千冬、明桜の高い機動力とパワーを駆使して彼女は銀花を振るう。全ての元凶はこの機体だ、こいつをなんとかすればフィーリアの件も動くかもしれない。

 

「狙いは良いが、駄目だ…」

 

 ユイトは右足を半歩下がらせ千冬の斬撃を紙一重で避ける。そして雪片弐型に酷似した刀、ムラマサを振るう。

 

「っ!」

 

 斬撃を受け止めた千冬だがその体は宙に浮き吹き飛ばされる。斬撃とほぼ同タイミングで回し蹴りが彼女を襲ったのだ。

 

「まだだ!」

 

 着地と同時に明桜が消える、消えたと認識した瞬間には彼女の三段突が放たれユイトを襲う。ほぼ同時ではなく同時に放たれた三つの突き、避けることも防ぐことも不可能。

 

「流石だな、織斑千冬!」

 

 ユイトが叫んだ瞬間、ウイングゼロの関節から蒼い炎が巻き起こる。二つの突きをムラマサで弾き、最後の一つは腕で軌道を逸らせる。

 

「バカな…」

 

「噓だろ!?」

 

 全ての攻撃が逸らされ、弾かれ…千冬と彼女をよく知る楠木が驚きを隠せないでいた。

 

「これは…」

 

「俺たち5人は同志だ。そこに上下関係なんて存在しない。じゃあ、どうやってリーダーである総帥を決めたか」

 

「まさか…」

 

「1番、最後まで生き残る可能性の高い奴…。革命軍最強の男は俺じゃねぇ、ユイトなんだよ」

 

 よく考えればユイトは基本的に戦闘に参加しない。前線で戦うのはいつもリョウたちだ。

 

「ほとんどの奴が勘違いしてるがな」

 

「ウイングゼロには本来搭載していたゼロシステムとそれに加えナイトロシステムも搭載。どちらも激しく精神を汚染するシステムだというのにユイトは全くその弊害を受けない強靱な精神力を持ってるっす」

 

 ゼロシステムによる予知とナイトロによる反応速度の極限強化。元々、ユイトの高い実力も合わせて化け物クラスと化している。

 

「カゲト」

 

「大丈夫っすか?」

 

「大丈夫に見えるか?」

 

「腕の2、3本は細胞活性化装置に任せれば生えてくるっす」

 

「少しは心配したってバチは当たんねえけどなぁ」

 

「ちょ!リョウ!」

 

 生身のマドカを抱き抱えたリョウはカゲトに助けられながら浮遊する。

 

「暴れるなよ、こっちは右腕がねぇんだから」

 

「う……」

 

「お熱いっすねぇ」

 

 カゲトはリョウとマドカをからかいながら彼女に対悪性GN粒子ガスマスクを渡す。

 

「開発長ほどではないです」

 

「正しくは襲われてるんすけどねぇ」

 

「お前も素直になれよ」

 

「本当の事を言ってるっすよ」

 

 そう言った談義は置いといて現在、戦闘状態ではない他の兵も緩やかに撤退を開始している。束のと言う目的を果たした以上、もうここに長居する必要は無い。

 

「地下施設を制圧したアンドロイド兵も退かせてるっす」

 

ーー

 

 地下をクリアリングしていたアンドロイド兵は眠るシャルを見つけ首を傾げる。

 

「……」

 

「……」

 

 話し合うように視線を合わせるアンドロイド兵は取り敢えず彼女を担いで指示通り撤退するのだった。

 

ーー

 

「くっ……あぁ…」

 

 IS学園の対岸エリア、そこではカリナによって痛めつけられた楯無の姿があった。ミステリアス・レイディは大破、彼女自身も酷く傷つき地面に伏す。

 

「殺す?」

 

「待って、カリナ」

 

 彼女はなぜユイトの事を知っていたのか…恨んでいるような感じではなかった。ケイは気になって仕方がなかった。

 

「連れて行こう、案内役も必要だしね」

 

「わかった」

 

 カリナはビームサイズをしまうとマントも下ろし通常形態に移行する。左手で楯無を掴むとそのまま帰投コースに入るのだった。

 

ーー

 

「喰らいなさいな!」

 

「行きなさい!」

 

 鈴とセシリアによる衝撃砲とビットの全方位攻撃、フィーリアには通じない。

 

「無駄だよ。今まで誰が細かいことを教えてきたと思ってるの?」

 

「くっ…」

 

「鈴は見えないのを良いことに素直すぎる。セシリアは相手の裏をかこうと思って本末転倒してる!」

 

 フィーリアは鈴の頭を掴み校舎の壁に埋めセシリアを蹴り飛ばしバエルソードで切り裂く。

 

「私は友1人すら救ってあげられませんの!」

 

 度重なるダメージによって動けなくなったセシリアは心底悔しそうに言葉を漏らす。その言葉を聞いて表情を曇らせるフィーリアだが顔は装甲に包まれ見えない。

 

「もう止めてくれ、フィーリア!」

 

「一夏の覚悟はその程度だったの?どんなことがあっても仲間を護るんじゃなかった?」

 

「俺はお前も…」

 

「わがままは自分じゃない。周りの人たちを殺すんだよ。一夏はそれが分かってない」

 

 セシリアたちを護るように雪片弐型を構え、立ち塞がる一夏に対しフィーリアは毅然とした態度で言い放つ。

 

「私を捨てるか、皆を捨てるか!2つに1つだよ!」

 

「それでも俺は皆を護りたい!」

 

「それは傲慢だよ!」

 

 剣を交える2人、打ち勝つのは当然フィーリア。

 

「覚悟も度胸もない奴が私の前に立つなぁ!」

 

 フィーリアが見せる本気の感情。怒り、憎しみ、悲しみ、後悔、様々な負の感情が渦巻き彼女を染めている。

 

「フィーリア…」

 

 一夏の悲しげな一言と共に白式は堕ちていくのだった。

 

 


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