IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第五十革 第2次IS学園攻防戦 ―陰謀―

 

「くそっ!こいつら堅すぎだろ!」

 

 海岸防衛線に駆けつけたIS隊がグレイズを相手取り打鉄の最大の特徴である刀で斬りつけるが致命打になれない。ダメージこそ与えられているが行動不能が精一杯だ。

 

「インターセプター!」

 

 セシリアはレーザーの弾幕を目眩まし代わりにしつつ突撃、短剣であるインターセプターで斬り込むがレギンレイズの銃剣に止められる。

 

「かかりましたわね!」

 

「っ!」

 

「遅い!」

 

 鼻先に突きつけられた二丁のショットガン、2つの銃口が見えたときレギンレイズは吹き飛ばされ校舎の壁に埋まり沈黙する。

 

「校舎ももうボロボロだ…」

 

「もうここでは学べませんわね」

 

 最新鋭の設備が整ったISの校舎は流れ弾やMS、ISの激突でボロボロとなり穴も空いている。既に割り切ったラウラは校舎を利用して立ち回っている。

 

「なんだと!?」

 

「喰らえ!」

 

 窓を覗き込んだグレイズリッターがラウラのリボルバーカノンに吹き飛ばされ機能を停止する。

 

「機能停止した機体は直ちに回収しろ!損傷した機体は回収に当たれ!」

 

 隊長であるリョウは上空で千冬とやり合っている中、マドカは冷静に指揮を執り部隊を纏め上げる。

 彼女自身、千冬とやりたくて仕方がないだろうがそんな様子は感じられない。

 

「私の出る幕ではないな…」

 

 激しくやり合う2人の間に入れるなどと自惚れては居ない。なら自身が果たすべき事を果たすべきだ。

 たたかうために生み出された強化クローン人間、そんな彼女は自身の在り方を考え始めていた。

 

「私だってね!意地があんのよぉ!」

 

「くぁぁぁ!」

 

 デスティニーのアロンダイトと鈴の青竜刀が激突し激しいスパークが発生する。

 

「なんなのよ!パワータイプの甲龍が押し切られるなんて!」

 

 戦いが拮抗しているかのように見えてはいるが鈴の方が圧倒的に不利だ。敵の戦い方も狂っているように激しく鋭い。

 デスティニーは巨大な戦艦、MAを相手取るために開発されたMS、パワーという点では通常のMSを凌いでいる。

 

「殺してやる、殺してやる!」

 

「うっさいわよ!」

 

 鈴がなんとかデスティニーを抑えている頃、上空で千冬と戦っていたリョウは焦っていた。

 

「くそっ!時間がねぇ!」

 

 第二世代最高の機体とは言えロートル相手に自分があと少しを押し切れない。このままではユイトがIS学園に到着してしまう。

 

「余裕だな」

 

「くっ!」

 

 リョウが作戦時間に気を取られた一瞬、千冬はアルケーの右サイドアーマーを切り飛ばされた。

 

「やろぅ!」

 

 リョウとて黙っていない。GNバスターソードと両脚部のビームサーベル、三つの斬撃が雪片を振り切った千冬に襲いかかる。

 三つの斬撃は全て必殺の一撃、回避することは不可能だ。

 

(ここまでとはな)

 

 力任せに刀の軌道を修正、バスターソードを雪片で受け右足で左足のビームサーベルを押さえつける。だが右足の斬撃は止められない、右側の腰部、脚部のスラスターが切り裂かれる。

 

「っ!」

 

 大きく被弾する暮桜、ここまで被弾するのは暮桜にとって初めての出来事だった。

 頭部にシールドバリアを集中、アルケーに頭突きをお見舞いし距離を置く。

 

「これほどの奴が居るとはな…。私も慢心していたようだ」

 

 暮桜から立ち上る黒煙、なんとか機能は保っているがいつ停止してもおかしくない。

 

「織斑先生…」

 

 レギンレイズをパイルバンカーで仕留めた摩耶は上空を見上げ心配そうに呟く。

 

「俺も驚いたよ。こんだけ性能差があってここまで追いつめられるなんてな…。ここまで追いつめれば良い、役目は果たした」

 

「なに?」

 

「もっと上だ」

 

「っ!まさか!?」

 

 リョウの言葉に察した千冬は上空を見上げる。太陽を背にして分かりにくいが何かが降りてくる。

 

 ザクⅢ、ドライセン、ドーベン・ウルフ等、重MSたちの中、ウイングゼロが共に降下してきている。

 

「革命軍の本隊か!」

 

「上空、敵襲!」

 

「一夏、箒!行くよ!」

 

「おう!」

 

「分かった!」

 

 アドヴァンドジンクスを切り裂いた楠木の言葉と共に迎撃に出たのはフィーリアたち。

 

「行って、山嵐!」

 

 打鉄弐式のミサイルポッドが展開、無数の多弾頭ミサイルが降下してきた本隊に襲いかかる。

 

「ウルフ隊、迎撃しなさい!」

 

 瞬時に反応したのはケイニ、彼女の発した指示に複数のドーベン・ウルフが腹部拡散ビームを撃ち放つ。

 目を焼くような鋭い閃光、48発のミサイルが火球に変わる。

 

「ひぃ!」

 

 その火球の中から姿を現したのは百万式、その姿を間近に目にした箒はあの時の事を思い出し悲鳴を上げる。

 

「一夏は箒のサポート、百万式は私が!」

 

「おう!」

 

「さぁ、守れるのか?織斑一夏!」

 

 ハルトはバルカンでフィーリアを牽制しつつサーベルを抜刀、さらに加速する。

 

「ここは通しません!」

 

「そこをどけぇ!」

 

 百万式の高出力サーベルが試作1号機のシールドを両断、迎撃の隙すら与えられずビームの雨を降らされる。

 

「きゃぁ!」

 

「ここで死ね…。オーストラリアの代表候補生!」

 

「はっ…」

 

 シールドバリアを突破した高出力サーベルは彼女を傷つけ瞬時に蓄積したダメージに機体が耐えられず爆散する。

 

「フィーリアぁぁ!」

 

 一夏の叫びが響き渡り地上で戦っていたシャルやラウラたちにも届いた。

 

「まだ生きてる!」

 

 機体が爆散した黒煙から気を失ったフィーリアが地上に向けて真っ逆さまに落ちていく。シャルは瞬時加速で機体を加速、機体を地面に擦りながらなんとか受けめた。

 

「大丈夫?フィーリア!」

 

「……」

 

 手の部分のみを収納したシャルはドロッとした感触に顔を青ざめる。手には尋常じゃない量の血が流れ出ている。

 

「ラウラ!僕はこのまま地下の医療室に行く、援護を!」

 

「分かった!」

 

 シャルに襲いかかるドーベン・ウルフ、その一撃をラウラはプラズマ手刀で受け止める。

 

「機体のダメージが…」

 

 何十というグレイズたちを相手にしたシュバルツェア・レーゲンの関節からは火花を散らしている。無茶な軌道ばかり取らされた機体はもう限界だ。その上、まだ敵には無傷の重MSが残っている。

 

「お前ぇ!」

 

「一夏、無茶だ!」

 

「ウルフファング!」

 

 怒り狂いハルトの元に突っ込む一夏、慌てて追いかける箒も強襲してきたケイニに阻まれ進めない。

 

「お前だけは許さない!」

 

「許さないだと、俺は言ったはずだ!護ってみろと!」

 

「うおぉぉ!」

 

 一夏は零落白夜を最大稼働させハルトに肉迫する。

 

「無駄だよ…」

 

 振るわれた一撃、それはフォビドゥンの大鎌によって防がれる。

 

「おぅいぇい!」

 

「いただく!」

 

 続いてカラミティの一斉砲火、レイダーのハンマーが一夏を吹き飛ばした。

 

「くそっ……俺はフィーリア1人護れないで!」

 

 弱音を吐きながらも動こうと藻掻くが身動きが取れない。

 

「残念だね。姉さん」

 

「そうだね、兄さん」

 

「体が…動かない」

 

 プラネイト・ディフェンサーで体を固定された一夏は鼻先に突き付けられたヴァイエイトのビームキャノンを見て目を見開く。

 

「「じゃあね」」

 

 引かれる引き金、地面に埋まり沈黙する一夏の姿をユイトは黙って見つめるのだった。

 

ーー

 

 IS学園地下施設、血だらけのフィーリアはたんかに乗せられ束の居る施設に急ぐ。あそこが一番医療設備が充実しているからだ。

 

「急いでください!」

 

「分かっている、医療班も向こうで待っている」

 

 ラファールを収納したシャルは自衛隊の護衛と一緒に地下施設を走る。本来なら生徒は入れないが今回は特別だ、流石に血まみれの女の子を見捨てることは出来ない。

 

「ナノマシン治療システムは動いてる!」

 

「彼女をこちらへ!」

 

 フィーリアを受け取った医療班はすぐさま部屋に引き入れる。

 

「俺は持ち場に戻る。居たいなら好きにしてくれ」

 

「ありがとうございます」

 

 医療班に渡して一安心したシャルを見て護衛も一安心したのか駆け足で元の持ち場に戻っていった。それを見送った彼女は床に腰を下ろすのだった。

 

ーー

 

「おかしいな…」

 

「どうした?」

 

「脈拍も全て確認できる範囲で正常なんだが…」

 

「はぁ?そんなバカな事があるか」

 

 早速、応急治療を施した後。ナノマシン治療を開始しようとした医療班は彼女の異変に気付く。だが医療班の疑問はすぐ晴れることになった。

 

「それは私が元気だからだよ」

 

「え?」

 

 少女の声が室内に響き医療班が声の主を見やるとそこには元気そうに笑う血まみれのフィーリアがいた。手にはサプレッサーを着けた拳銃が握られている。

 

革命軍(わたしたち)の勝ちだね」

 

 最小限まで留められた銃声と共に医療班は撃ち抜かれるのだった。

 

「ん?」

 

 ドンドンっと重いものが床に落ちる音がシャルの耳に何度も届き疑問の声を上げる。

 

「どうしたんですか…え?」

 

 医療室の扉を開けて彼女が目にしたのは異様な光景。血まみれのフィーリアが立ち、医療班の人たちが倒れている。

 

「シャル…心配して居てくれたんだね!」

 

「え、うん…」

 

 いつも通り無邪気に笑うフィーリア、普段ならシャルも共に笑いかける所だが頬が引き攣り上手くいかない。

 

「本当に優しいね。シャルともう少し早く出会えたらこうはならなかったのにね……本当に悲しいよ」

 

「え?」

 

 額に無機質で堅い物が押し付けられる。それが拳銃であるとシャルが認識したのは引き金が引かれた後だった。

 

 ズドン……。


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